94 眠る村
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[素直じゃない紅茶屋の言葉に、くすり、と小さく笑みを零す]
そう、ね……
私は、あなたが居てくれて、よかったわ……
[こくり、と頷き]
それは残念――
また、いつか、のみたい、わね。
[お茶を切らしているという言葉に小さく吐息を零す。
――案じてくれていると感じられるのは素直に嬉しい]
……こうして、お話してくれるだけで、いいわ。
私だって、楽しい話題なんてむりだもの……
[こまったようなクリストファーにゆるりと首を振った]
そうかい。
それじゃ楽しい話の出来ないもの同士、
こうして見守っているとするか。
……、ま。
あたしもこうして、言葉交わせるのは──悪くない。
暇をつぶせるし、
( ───ここに居ても良いと思えるし、)
悪いね。
お詫びに手に入ったら、いいやつを振舞おう。
…──ブローリンが羨むような、最高の紅茶をサ。
[だから彼女のいとこはここに来ない。
そう、悪だくみとばかりに素直ではない願いを*告げた*]
ふふ。
そう、ね。
見守っていましょう……
[クリストファーの同意を得られて小さく笑む]
それなら、よかったわ……
ふふ、愉しみ……
ブローリンには可愛そうだけれど、
二人で愉しみましょう。
[言葉にしない願いを受け止めて。
ゆるり、前髪の下で菫色が笑みを浮かべた**]
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[―――――――――夢を、見ていた。]
(30) 2012/06/18(Mon) 08時半頃
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「まてよ!おいてくなよ!しめおんー!」
[いつから一緒だったのか、もう覚えてはいない。 気づいたら隣にいて、一緒に時を重ねた。
シメオンは聡く、フィリップは鈍かった。 怖がりで泣き虫のフィリップにとって、堂々と大人にも立ち向かえるシメオンはヒーローだった。 シメオンと手を繋いでいれば、何でも出来るような気がした。]
(31) 2012/06/18(Mon) 08時半頃
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[シメオンの両親がいなくなって、彼は学者の家に引き取られる事になった。 同じ頃、フィリップの父親が酒に溺れ息子を殴るようになった。 「家」の地位によるすれ違いは決定的かと思われたが、シメオンはフィリップを見捨てなかった。 相変わらず情けないフィリップの姿を横で大笑いしてくれて、惨めな気持ちを吹き飛ばしてくれた。]
(32) 2012/06/18(Mon) 08時半頃
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[父親がとうとう家から出なくなり、フィリップは酒を買いに走らされる羽目になった。 酷く殴られて目に青あざが出来たまま酒場兼宿屋に行った日、一人の年上の女の子に出逢った。 案じる言葉と共に伸ばされた手はこれまで見た誰の手よりもうつくしかった。
「チチはローズ程じゃねぇけど、おねーさん可愛いな!」
ドキドキを隠すように言った言葉は祖父の使いで丁度やってきていたローズマリーの耳に入り、しっかりと叱られた。
後日、それを知ったシメオンは相当悔しがった。 フィリップの態度から目当てが酒場の女の子――クラリッサだと知ると、事あるごとに揶揄うようになった。 揶揄われると、「そうなのかな」という思い込みが働いて、思春期特有の異性への興味も加速装置となり、どんどん意識するようになった。]
(33) 2012/06/18(Mon) 08時半頃
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[此方を案じる控え目な瞳。 見ない振りをするでもなく、揶揄するでもなく、ただ「心配」してくれた。 手当てはいつだって一定に優しかった。 何度通っても、彼女は「くん」付を崩さず、距離はちっとも縮まらないように見えた。 それでも良かった。 「女の子にドキドキする」、そういう「普通の経験」が、普通じゃない環境で生まれ育ったフィリップにとっては、とても貴重だったのだ。
妄想の上では、告白をした。 キスをして、抱き締めて、それ以上の事もたまに、いや結構、妄想した。 自分で自分が恥ずかしくて、「うは、エッチだ、オレ……」と零す、その「エッチ」という響きを気に入ったのか、いつしか鳥が真似をするようになった。]
(34) 2012/06/18(Mon) 08時半頃
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[酒ばかり飲む父親の身体がもう長くは持たないとは気づいていた。 「終わった」ら、この村を出よう。 酒の匂いのないところへ。 暴力の呪縛のないところへ。
シメオンはなんだかんだ言ってセンセーが大好きだから、きっと別の街に一緒に行く事はできないけれど。 今度は、「逃げた先の森」で会うんじゃなく、「遊びに来る場所」を作るんだ。]
――――……なぁ、シメオン。ずっと、一緒だよな。
(35) 2012/06/18(Mon) 08時半頃
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―翌朝―
[血臭が鼻をついて咳き込んだ。 隣の寝台で、鳥が異常に啼き声を上げている。]
ん………
――シメオン?
(36) 2012/06/18(Mon) 08時半頃
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[目を開けた先が、赤い。 握ったままの右手、触れているシーツが、濡れている。]
う、 そだ ろ、
[心臓が耳から飛び出してしまいそうな位煩い。 怖い。 確かめたくない。 でも―――――――――]
シメオン、
[呼んで、見上げた先。 その顔が、紙のように、白い。]
(37) 2012/06/18(Mon) 08時半頃
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シメオン、おい、
[右手は握ったまま、左手で頬を叩く。 昨日のように揺すぶらないのは、 ……壊れてしまうと、本能が悟っていたから。]
おい、起きろよ、冗談だろ……?
[キスが高いと言った>>187その唇が、渇いて色を失っている。]
オレを騙して嗤おうってんだろ? もう十分驚いたよ、もういいって。
[視線を動かした先、刺青があった腹部が、ごっそり 『ない』。]
(38) 2012/06/18(Mon) 08時半頃
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なぁ…… なんで起きねぇんだよ……
[握った手はまだ温かくて。 現実を受け入れられない。]
起きろよ……っ
[視界がぐちゃぐちゃに歪んだ。 頬も鼻の下も熱い。]
オレ、今、最高に無様だぜ? 16、にもなって、男が、こんな……っ、 ぼろぼろ、泣いて、さ……っ
[案じた鳥が背後で「シメオン!シメオン!」と叫ぶ。]
見てる、 んじゃ、なかっ……、 たのかよ、 ずっと、ずうっと、オレが、この先も、失敗して、怪我して、フラれて、 ……って、 全部、見てるって、 言った、ろぉ……ッ!!
(39) 2012/06/18(Mon) 08時半頃
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ば か、 やろ、
おい… て、 くなよ…………ッッ!!
[絞り出すように低く。 やりきれない思いは、大声で叫びたい衝動を生んだけれど、誰にも邪魔をされたくなかった。
握った手が、もう硬直して堅い。 その事に気づいてまた涙が溢れた。]
(40) 2012/06/18(Mon) 08時半頃
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――ああ世界が、終わってしまった。
(41) 2012/06/18(Mon) 08時半頃
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フィリップは、ブローリンの言葉>>60が起動装置となり、意識が戻る。
2012/06/18(Mon) 21時半頃
[残された猫は、与えられたえさを気紛れに食べる。
飼い主が死んだことも「にゃ」と一声鳴くだけで済ませていた。
そんな様子を村娘はただ眺めている]
そう、シメオンが――
[皆の話がきこえれば、
人狼に襲われたのがシメオンだと知れる。
ゆるりと眸を瞬かせて、周囲を見た。
彼もまた、こちら側に来るのだろうか]
[ ブローリンも、ローズマリーも。
まだ、無事だ]
あなたたちは、
こちらには、来ないで欲しいわ……
[小さく呟きながら、皆をみている]
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―――――クラリスが、人狼……、
[腫れた目元、薄くしか開かない瞳の奥に、光が宿る。 世界は、終わってなどいない。 護れなかった自分を恨んで現実逃避している場合ではない。]
……このまま全部投げてたら、オレが死んであの世で会った時絶交されそうだもんな。
[漸く手を離す。 長い時間握っていた所為で、右手は痺れていた。 血に濡れたシャツはそのままに、鳥を抱き上げて部屋を出ていく。
「行って来い」 そう、言われた気がして、唇が緩んだ。]
(68) 2012/06/18(Mon) 21時半頃
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――……クラリスが人狼に乗り移られてるんだったら。 オレは、クラリスを、救いたい。
[丁度食堂に入った所で聞こえたしずかな声>>69。 答えるブローリンの声が低い。
今まで緊張して、怪我をしないと近づけなかった彼女の近く、顔が見える場所に腰掛けた。]
(74) 2012/06/18(Mon) 22時頃
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フィリップは、鳥の包帯を取る。鳥は、弱く羽ばたいて、赤く染まった肩に止まった。
2012/06/18(Mon) 22時頃
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[ブローリンに頷く。]
この――クラリスの中が、全部クラリスじゃないなら。 「消えろ」って、「願えば」いいんだろ?
[言葉を変えただけで、矢を向けるのは同じだけれど。 「呪う」という言葉を、思いを、使いたくなかった。]
(81) 2012/06/18(Mon) 22時頃
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フィリップは、クラリッサに話の続きを促した。
2012/06/18(Mon) 22時頃
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[フィリップは、ブローリンが人間だと言ったハナを呪ったけれど、ブローリン自身の事は信じていた。 嘘はついていないと、言ってくれたから。
だから、目の前にいる彼女は、きっともう100%のクラリスではないのだろう。
儚げな微笑を目にすると、胸が締め付けられるように切なくなるけれど。 涙に濡れた彼女の瞳をじっと見つめた。 正面から見る彼女は、やはり綺麗だと思った。]
(85) 2012/06/18(Mon) 22時頃
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……違うよ、落ち着けよオッサン。
[クラリスから目は逸らさないまま。 急に大人びた風貌で小さく首を振る。]
人狼だけ、なんて出来る訳ねぇだろ。 人間だって消えたじゃねぇか。
[彼女が人狼だと、信じた時に心は決まった。]
――クラリスごと、消えるよ。 オレは、それを……願う、んだ。
(88) 2012/06/18(Mon) 22時半頃
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フィリップは、ローズマリーの「大切な人」に顔を歪ませた。
2012/06/18(Mon) 22時半頃
[――――熱かった。
その次に、寒かった。
目を開けたら、そこに自分の顔があった。]
――…、フィル。
[幼馴染が最高にみっともない泣き顔を晒していた。
横にしゃがんで覗きこんでやる。
女の子に振られた時ですらこんな酷い泣き方はしないんじゃないだろうか。]
だらしないなァ。
[自分の死体より、何より。
幼馴染のその姿が、自分の死を鮮明に意識させた。]
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[ブローリンの反応>>90。 彼は、「クラリス」に会えたのか。 力のない自分には分からない。 けれど――根拠なく、それが彼女の本心だろう、と思った。 否定的な言葉遣いで良心を揺さぶろうとする>>92彼女自身の口から出た言葉よりも、それは「彼女らしい」と思えたのだ。]
(98) 2012/06/18(Mon) 23時頃
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見てるよォ?
今も君の横でじっと見てるのに、君が気付いてないだけじゃないかァ。
[揶揄っても言葉はもう届かない。
僕の言葉で赤くなったり青くなったりしない。
――おいてくなよ。
傍にいても届かない、絶対的な隔たり。
死ぬってそういうことなんだ。]
いつまでもアヒルの子よろしく僕の後ろついてこなくてもいいよォ。
君は君が出来ることをしたまえ。
僕の手いつまでも握ってないでさっさと立てっていうのォ。
[項垂れたままの幼馴染に向かって足を振り上げる。
いつもなら的確に相手を捉えるのに、すか、とかすりもしない。]
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[一瞬も彼女から目を離さなかったから。 小さな空気の振動が、近くにいたフィリップにも伝わった。]
――やっぱり、クラリスは、苦しいんじゃないか。
(103) 2012/06/18(Mon) 23時頃
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「願う」よ。
[上書きする>>92。]
好きだから。 金もない村中に嫌われてるアル中の息子のオレにも文句も言わずに毎回手当てしてくれた、クラリスの事、ずっとずっと好きだった。
[ケヴィンとローズマリーの間にあるような強固な愛情ではなくても、恋と呼べる程成熟した想いではなくても、彼女が特別な女性である事は変わりない。]
これ以上、苦しんで欲しくない……。
(107) 2012/06/18(Mon) 23時頃
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シ、メオン、を……
[彼女が人狼だという事は、そういう事なのに。 語られたあまりに残酷な事実に思わず掴みかかりそうになる。]
なん、 っで! なんでだよおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!!
(111) 2012/06/18(Mon) 23時半頃
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僕は特等席で君の無様な一生を見届けてあげよう。
だからなるべく沢山面白いものを見せてくれたまえ。
[願わくば――幼馴染が、死にませんように。
声は届かないけれど、幼馴染は立ち上がる。
せいぜい頑張ってこい、とばかりに親指を立てて見送った。]
――、僕のこと、忘れんなよォ。
[残された部屋。
腹のない自分の身体と、鏡以外じゃ見ることのない自分の顔。]
……、無様だなァ。
[ブローリンのいうとおり、黙っておけばよかったのかな。
良かったのか、悪かったのか。答えはでない。]
フィリップは、絶叫は涙声。喉が焼けるように熱い。
2012/06/18(Mon) 23時半頃
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[伸ばされた手>>112が、肩を掴む。 それ以上、進む事能わず、歯軋りする。]
なんで、シメオンなんだよ。 なんで、なんで……っ!!
[「オレも連れて行け」と、続く願いは口に出来ない>>109]
(115) 2012/06/18(Mon) 23時半頃
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フィリップは、クラリッサの唇の動き>>113に、また呻きを零す。
2012/06/18(Mon) 23時半頃
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