42 廃棄人形ーeverlasting love marionetteー
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―― 国立総合病院 ――
ふぅ
[真っ白なコートに身を包み 大きな病院の下で小さく身体を震わせた。 両手でフードを掴むと]
寒い……
[すぽりと深く、頭に被せた。]
(62) 2011/01/14(Fri) 01時半頃
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[フードに埋もれた小さな頭がふらりと揺れる。 見上げた先には、先程まで世話になっていた 大きな、大きな病院が冷たく佇んでいる。]
…………
[無表情に動かす唇は]
後、どれくらい通えば 良く、なるのかな
[在り処の分からない希望を求める。]
(65) 2011/01/14(Fri) 02時頃
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[もぞもぞとポケットに手を入れると 小さな紙片を一枚、取り出した。 じっと見下ろして、溜息をつく。]
次は―――、 …………三日後。
[病院へ向かい、微かに頭を下げると]
また、来ます。
[独り言を残し、ゆっくり歩き出す。]
(70) 2011/01/14(Fri) 02時頃
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―― 国立総合病院→広場 ――
あ
[病院から自宅へと向かう道すがら 広場に差し掛かる少し手前辺りで見つけたお店。 じっ、と見つめ立ち止まる。]
…………買える、かな
[ポケットからお財布を取り出すと その"中身"へ、すぅ、と視線を落とした。]
(78) 2011/01/14(Fri) 02時頃
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[お財布の中には銀色の硬貨が3枚。 そして茶色の硬貨が5枚入っていた。 どうやら寒いのは気温だけでは無いらしい。]
幾ら、かな
[お財布を閉じると、目的の店へと近づいていく。 其処には可愛らしい文体で「クレープ」と描かれていた。]
………
[カウンターまで寄ると、落ち着かない素振りで メニューをちらちら、と覗き見ている。]
(84) 2011/01/14(Fri) 02時半頃
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………。
[視線は二つの、品物の間を行き来する。 一つは持ち金の範囲でぎりぎり買える、もの。 もう一つは倍額くらいしてしまう、もの。]
あの。
[どちらが食べたいかと謂えば無論、後者だったが]
…………これ、下さい。
[無いものは、無い。 仕方ない、とばかりに買えるほうを指差した。]
(88) 2011/01/14(Fri) 02時半頃
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……
[作られる工程を見たいが為に 少し高い位置の作業場を爪先立ちで覗き見る。 常にその体制ではいられないから 踵が浮いたり、地に着いたりを繰り返し]
あの。 ………こっちの、なんですけど。 ダブルクリーム生苺チョコ。
はい。
[作業中のお姉さんに話しかけたりもして]
(93) 2011/01/14(Fri) 03時頃
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この、ダブルクリームの。 ダブル、って何ですか?
何か、ダブルになってるんですか?
[クレープを普段、食べる事があまり無いせいか カリュクスはそういった事を全然知らなかった。 丁寧な説明と、笑顔を受けると]
………そう、ですか。 ありがとうございます。
今度は、こっちを買いに来ますね。
[にこり、と笑って頷いた。]
(95) 2011/01/14(Fri) 03時頃
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あ。 ………どうも。
[そんな遣り取りの末に 出来上がったクレープを差し出され 小さな辞儀と共に品物を受け取った。]
チョコレートクレープ。 凄く美味しそう。
[お姉さんに微笑を見せて、 お財布の中の硬貨を全て手渡すと]
それじゃあ、また。
[空いた手を小さく振って、店を*後にした*]
(98) 2011/01/14(Fri) 03時頃
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―― 翌日・自宅 ――
ジャン。 そっちは、危ないから。
[自宅の庭先に小さな椅子を出し、 深く腰掛けては、愛犬の所作を見守る。 顔色は昨日に比べ、幾許か蒼白い。]
おいで。 こっち。
[大きな木の下を駆けずり回る愛犬へ ちっち、と舌を鳴らしながら呼び付ける。]
(185) 2011/01/14(Fri) 17時半頃
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[愛犬は木の上の何かに向かい、わん、と一吼えした。 何があるのか、カリュクスの位置からは視認出来ない。 椅子から立ち上がり、見に行けば済む話だったが]
………おいで。 おいで、ってば。
[今日は、下半身に全く力が入らなかった。 声には若干の苛立ちが乗る。]
――――、ジャン。
[愛犬の名を呼ぶ声は悲しげで、 段々と、小さくなってしまう。]
(186) 2011/01/14(Fri) 17時半頃
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あ―――、
[其処へ掛かる、低く重い声。 びく、と小さく震え畏まってしまう。 なんとか上半身を其方へ向けると、]
お父さま。
[人物へ呼び掛けて、ぎこちない笑みを浮かべた。]
ええ。 身体は………早朝よりは良い、です。
[そして、若干の嘘をつく。 下半身は早朝同様、上手く力の伝わらない張りぼての様。]
(188) 2011/01/14(Fri) 17時半頃
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ですから、早朝のように お父さまの手を煩わせる事は無いです。
私一人で、部屋に戻れます。 ありがとう、ございます。
[肉親に向けるには随分と堅苦しい言い回しをし、 静々と頭を下げる。 人物は、髭を蓄えた大柄で、50代前半と思しき男。 アヴェリン製薬会社の会長だった。]
あの。 ………お父、さま。 一つ、お聞きしてもいいでしょうか。
[遠慮がちに言葉を選びながら首を傾ぐ。]
(190) 2011/01/14(Fri) 17時半頃
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私の、中学校の頃の卒業アルバム。 何処にあるか、ご存知無いですか?
[眠たげにも見える切れ長の二重が ぱちりぱちりと瞬きながら、じっと見つめる。 父は、一瞬挙動を止め、後に首を左右に振った。]
………そう、ですか。 昔の自分を、知りたくて。 友達は居たのかなって。 ですから、探したのですが――――
[カリュクスには此処5年間の記憶しか、無い。 最近は自分の過去を探る時間ばかりが長くなっていく。]
(194) 2011/01/14(Fri) 18時頃
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昨日。 病院の帰りにクレープを買いました。 ………美味しかった。
[少しだけ恥ずかしそうに、俯きながら はにかみ、告げる。 5年よりも以前の記憶は一切無い。 話によれば、記憶喪失だと、言う。]
お姉さんが、良いヒトでした。 私………友達が、欲しいです。
[自宅と病院を往復する日々。 小さな世界に望む、小さな希望。]
(199) 2011/01/14(Fri) 18時頃
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え?
[父は優しく笑い、告げる。 友達なら何時か必ず出来るから、と。 それまではジャンを大切にしてあげなさい、と。 声は穏やかで、庭先の一時にすぅと馴染み、溶けて行く。]
――――、そう、ですね。 私には………ジャンが。
[けれど、カリュクスは素直に微笑む事が出来なかった。 ジャンを見つめる眸は、物憂げに揺れる。]
(202) 2011/01/14(Fri) 18時頃
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あ。 ………お父さま。
[其処へ父の手が、優しく頭部に触れた。 大きな掌が柔く、愛しむように撫ぜていく。]
誕生日? …………もう。
そんな歳でもありませんよ、お父さま。
[そして、父が漏らした言葉に少し苦笑いをする。 明日、カリュクスは21歳の誕生日を迎える。 その誕生日プレゼントは何が良いかとの問いだった。]
(203) 2011/01/14(Fri) 18時半頃
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――――。
[娘が幾つになっても誕生日は誕生日だと主張して止まない父。 カリュクスは父を見つめ、ふ、と仄かに微笑んだ。]
じゃあ。 …………ジャンのおやつを。
ほねっこ。
[ぽつり、呟けば。 父は、なんだか微妙な面持ちで小さく頷いた。]
(205) 2011/01/14(Fri) 18時半頃
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カリュクスは、サイラスがクレープ屋さんの前に居る事は知らないが、傍に居たならどんな顔をしたろうか。
2011/01/14(Fri) 18時半頃
カリュクスは、慶三郎の事は知らないが、傍に居たのならくすくすと笑うだろうか。
2011/01/14(Fri) 19時頃
カリュクスは、芙蓉が薬剤師だという事をどこかで知る日が来るかもしれない。
2011/01/14(Fri) 19時頃
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今日は、
[ふい、と眸を空へ投げる。]
風が気持ちいいです。
[薄っすら微笑みながら 庭先にて父との一時に身を*沈める*]
(209) 2011/01/14(Fri) 19時頃
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―― 自宅・自室 ――
ん
[庭から自室へ戻った後、本を読んでいたら 何時の間にか椅子の上で寝てしまったらしい。 人差し指で目元を擦りながら窓の向こう側を見遣る。]
………
[特有の喧騒が傍の公園から響く。 年端も行かない子供たちが、愉しそうに遊んでいる。 それをぼうやりと見下ろしている。]
(264) 2011/01/14(Fri) 22時半頃
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[机から画用紙とペンを取る。 窓の向こう側、元気に遊ぶ子供達を見ながら]
……
[さら、さら、とペンを滑らせ始めた。 幾度目になるだろう。 手の届かない光景を紙の中に留めるのは。]
あ、間違えた。
[思った以上に余分な線を引いてしまい、 消しゴムで消したりもして。 画用紙と公園を交互に見遣りながら作業は続く。]
(276) 2011/01/14(Fri) 23時頃
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[合間にちらりと時計を見遣る。 薬を飲まなくてはいけない時間になっていた。 引き出しをあけて幾つかの薬を取り出した。 錠数にして、12,3かという程度。]
………お水
[机の上のペットボトルを手にすると きゅ、と蓋をあけて2錠ずつ飲み下す。]
ん、ん、……っ
[定期的に薬が変わる理由を、カリュクスは知らない。 飲んだあと、高確率で体調が悪くなる理由も。]
(282) 2011/01/14(Fri) 23時頃
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[全てを飲み干せば、 ペットボトルの蓋を閉じ、傍に置いた。 十数分後、酷い頭痛と下半身の痙攣。 そして、腹部の痛みに支配される事も知らずに。]
……あ。 ちょっとだけ。
ちょっと、止まって―――。
[愉しそうに子供たちを、紙の中に*写しこんでいる*]
(286) 2011/01/14(Fri) 23時頃
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