253 『はじまりの むら』
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「そう、無事だったんだね、よかった。古着だったけど、少しは役に立ったかな」
輝く大きな剣を背負った少年剣士の噂は、徐々にこの辺境の村にも届き始めた。
平静を装っていたものの、王都にたどり着く前に譲り渡した衣服の牙避けの加護が切れてしまうのではないかと内心気が気でなかった友の安堵に、サイモンもほっと胸を撫で下ろした。
しかし、古龍討伐の話になるとかわせみ色の目がほんの少し曇ったことには、サイモン以外の誰も気付かなかった。
(0) 2016/09/18(Sun) 08時半頃
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「ワンダおばちゃん。なんか揚げたらうまいやつ、ある?」
今日は仕事のない日。ザックは晩の食事の調達のために市に寄った。彼にはなかなか魚の名前は覚えられない。植物と森の獣の知識はそこそこなのだが、水の生き物というのはどうにも不得手だ。
「悪いね、一回ヌマじいにも教えてもらったんだけど、やっぱり泳ぐやつは覚えられないや。おれは走るやつ専門」
ザックは珍しく小脇に酒瓶を抱えている。琥珀色に揺れる北国の酒は、彼の父親がよく飲んでいたものだ。
「たまには、いいかなって。おやじがさ、よくこれに揚げた魚合わせてたんだよね。同じやつほしいんだけど、どれだか覚えてなくて」
(3) 2016/09/18(Sun) 10時半頃
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「ありがと、たすかる」
包みを受け取って、代金を支払う。そこへ、ここに来るまでに既に五回は聞いた噂話。女将はいかにも信じられない、といった口調だ。
「どうかな……。おれもびっくりしたけど、子供って急に大きくなったり、するじゃない。それに、本当だった方が、あの子が元気でやってるってわけでさ」
(8) 2016/09/19(Mon) 00時半頃
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女将の思いは信じられない、よりも信じたくない、に近いのかもしれない。ザックはそう思った。だから、強く肯定も否定もせず、ゆっくりと言葉を選ぶ。
続く言葉を探しながら村の入り口の方へ目をやると、そこには女将のさらなる心配の種になりかねない未来の剣士の姿。これはいけない、と、ザックは素早く視線を戻す。
(9) 2016/09/19(Mon) 00時半頃
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「ほら、それならさ、オスカーも案外早く帰ってくるかもよ、ね」
無意味に伸ばした指がくるりと宙を舞い、元来得意ではない笑みを見せる。それからふと真顔に戻って、呟いた。
「大丈夫だよ。あの子は強いから」
(――おれとは違って。)続けようとして飲み込んだその言葉は、しばらくの間、小石のように胸につかえていた。
(10) 2016/09/19(Mon) 00時半頃
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