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[うーん、と悩む
確かに、クラスの男子達がそんな事をやっていた
彼らにとってはそれは「遊び」の一つ
「可哀想」であり「気持ち悪い」とも思ったけれど
大人にとってはそれが「残酷」であると]
でも。
人を殺すのは「わるい事」じゃないの?
それをさせるのも、イタズラですんじゃうの……?
[だんだんと語尾は弱くなって
コリーンが頭を押さえる様子を見、そっと目を伏せた]
―裏通りを離れる前に―
自分の死体を見るのは一度もなさそうですよね。
死んだらなかなか見れません。
[至って真面目に同意してみせてから。
不思議そうな反応を返す相手に、男も同じ方向に首を傾げる。
何か得心したよう、しきりに「うわー」を繰り返され
更に距離を取られてしまえば。
流石に男もちょっと心に傷を負ったよう]
……いえ、皆さんのようなお化け姿になっているのだろうとは思っていましたが。
そこまでの反応をされると。
大体、御嬢さんも結構な姿でしたよ。
顔面が壊れたようなお人形で。
[負けじと相手のかつての容貌を口にする]
でも、死んでしまえば元通りですね。
そう言えば……エリックさんも居ない……。
[骸骨のお化けの押さえとして任せきりにしてしまった長身の細身の男を思い出して、口元に手を当てながら眉根を寄せる。
多分リンディも死んだのだろうなと頭で理解しつつ、であれば結局誰が骸骨なのかが判断出来ない]
もし先生がエリックさんを探しに行った上で戦っているとしたら、
やっぱり骸骨はあの人なんでしょうけれど、ね。
[難しい表情でアイザックを見つめる。
けれど、スティーブンは誰かのために戦う人だっただろうか、単純に自分の欲望のために戦う人なのかもしれないとそういう気持ちもあって、素直に彼らを応援する気持ちにもなれなくなってきた]
―裏通り→ ―
[建物の上を伝い歩き、けれど足音はなく、アパートメントの傍まで。
果たしてその人は、とこが近づいた時も座り込み、俯いていたのだろうか。
男は建物の上から降りずに声をかける]
ご気分はいかがです?
人に食べられた気分は。
[高低差のせいか、見下ろす表情はもともとの人相の悪さと相まって無機質な印象を放つか。]
ああ、別に危害を加えるつもりは、ないですよ。
聞いてみようかと思っただけです。
[建物の上、しゃがみ込んで]
メモを貼った。
[ゾーイの言葉にはフルフルと小さく首を振って]
そう、なんだけどね。
それって、結局私たちではない誰かが勝手に決めた事なのよね。
例えばゾーイちゃんは、
どうして人を殺しちゃいけないのって聞かれたらどう答える?
私には答えられない。
誰かが決めた悪い事だからというルールが、
本当に正しいものなのかどうかという事さえ分からないのよ。
普通にしなさいとか、当たり前って本当はどういう事なのかしら。
[頭を抑えたまま、憔悴しきったように戦っている4人を見る]
メモを貼った。
[ゾーイはまだ小学校で習っていないだろう言葉は飲み込んだ。
人間は戦争を繰り返している、そうして歴史は作られてきたのだ。
果たしてそれは悪い事だったのだろうか?
戦争の勝者はいわゆる後世の人間の決めた悪い事をして世界を作った。
ならばその子孫は皆等しく罪人なのではないだろうか]
そう言えば、あの女……。
[妙に古めかしいドレスを身に着けていた。
であれば、これは過去からの復讐なのだろうか]
……なんて、そんな馬鹿な事はないか。
[今自分の在る状況が既に馬鹿な事ではあるのだけれど、口端を歪めてから頭を振って考えを振り払う]
メモを貼った。
なんにせよ、私たちはみんな不幸だったのよね。
あの女にこんなところに連れて来られてしまったのだから。
[そう、憎むべきなのは今ある生者達ではなくて、あの女だけを憎めばいい。
けれど、死という状況は、自分の考えを酷く昏いものにしてゆくのが分かる。
生きている間嫌いだった怪奇譚などに出てくるオバケと称される者たちはこうして生きている者を恨んで力をつけるのだろうかと、嫌な気持ちになった**]
メモを貼った。
[男はそのまま、俯き、怯え続けていた。近付く気配には、気付く事はなく。だが声をかけられれば、はっと顔を上げた。慌てたように素早く辺りを見回す。そして、建物の上の姿を認め]
……な、……何だよ……お前……
[見覚えのない姿に、呟くように声を出した]
……気分……って……
なんで、そんな事、聞く……んだよ。……
それに、人って……何だよ、……どういう事だよ……
何…… お前、……
あいつの仲間、なのか……? おい、……
[よろりと立ち上がりながら。その黒衣の姿に向ける表情と声色は、怯えと困惑に満ちていた。一歩、後ろに下がり]
こわれた、おにんぎょー…?
[言われた言葉を反芻する。
そして想像するのターン]
……。
でろでろのギパギパよりはマシじゃないかしら…。
[想像し終えた頃には、それをいった男は居なかった。
しかし意に介さずに首を振る]
メモを貼った。
メモを貼った。
メモを貼った。
[辺りを見渡す姿に、口元を覆った。
少しだけ上がった口元が見られない様に。
男の口調はいつも静かなもの。ただこのときは、微かに面白がるように。]
大分。怯えているようですね。
死んでから、なおも怯える必要はあるんです、か?
なんで。どういうこと。聞かれても、あまり面白い答えは返せません。
知りたいから。俺にはあの人が人間に見えていたから。ってところです。
仲間かどうかは……
[考えるように首を捻るが、答えは割と早く見つかった。]
多分、違うでしょ。彼は俺とも戦おうとしてました。
さ。俺は答えたんだから教えてもらえません?
食われるのはどんな、感覚でした?
[一歩下がる相手を見つめる目は微かに潤む]
貴方は、とてもあまそう。
メモを貼った。
……お、俺は……そう、だよ。
死んで……でも、だから、……
[死んでから怯える必要はあるのか、と問う言葉。きっと、ないのだろう、と、頭の何処かでは考えられた。が、感情がそれを上回り、押し留めていて。そのせいで言葉はただ混乱したように]
あの骸骨が……人間、に? ……
……冗談、だろ? 人間、だったら……
そういうの、カニバリズムって、言うんだぜ……?
[告げられた内容に目を見開く。震えた声で言ってから、冗談だろ、と繰り返した。死ぬ恐怖。殺される恐怖。喰われる恐怖。人間に喰われたのではないかという、その可能性は、新たな恐怖の現出だった。共食いへの忌避。原始的な恐怖。
また一歩、後ろに下がり]
……い、嫌だ……思い出したく、ない……
[呟くように言葉を発する。実際には、未だに頭の外から追いやれずに、断続的にその追想が続いていたが]
っ、……!!
[黒衣の男の瞳が、何かの感情を宿す。あまそう。その言葉を聞いた瞬間、男は驚愕を表情に浮かべた。そして、叫び声もあげられないままに、その場から走り出した]
メモを貼った。
うー……わからない、けど……
[すっかり頭を抱えてしまう
どうして、と聞かれても分かる訳が無い
でも、一つだけ言える事は]
自分が殺されるのはイヤだから、かな。
自分がされてイヤな事はしちゃいけない。
……コリーンさんは、ちがう?
[コリーンの話はどれくらい理解出来ただろうか
少女の「世界」はまだ街の中
学校と、友達と、街の中の一部
まだまだ狭い、「自分の世界」]
やっぱり、わからないよ……
[その「世界」も、自身の死と共に崩壊しているのだけれど**]
そうですね。カニバルでしょう。
俺にはあなたが死ぬとき、人間が人間を食べているように見えました。
路地裏が、甘い匂いでいっぱいでした。
[口元を抑えていた手はもうない。
屋根に手を付き、身を乗り出すような格好で男は口を開く。
拒否する言葉は小さく、力がこもらない様にも聞こえる。
その言葉に男はゆるゆると首を傾げた。
相手は一言も言わずに、走り出す。]
……ああ、振られてしまったようです。
でも、逃げたということは。
思い出したということ、ですか?
[考えるよう、人差し指を口元で立てる。
唇が緩く開きかければ、除くのは尖った歯。
男は立ち上がってゆっくり歩き出す。
到底追いつこうとは考えていない速度で、建物の上から見える背中を追うように]
メモを貼った。
……い、嫌だ……
嫌だ……
いやだ……
[走りながら繰り返す言葉は、何に対してだったか。思い出される死に際に対してか、同じ人間に喰われたのだとする話に対してか、あまそうだと口にした黒衣の存在に対してか。
あるいは、その全てだったか]
助けて……助けて、くれ。
誰か……助けて、……
[尽きない悪夢の中にいるような気分だった。誰にも届かないだろう助けを求める言葉を零しながら、男は走る。路地裏から路地裏へと、生前に何度もしたように。壁や建物など、今ならすり抜けられるのだったが、そうはせず。出来ず]
メモを貼った。
[屋根から屋根へ伝いながら、長身の男の背中を追いながら
男は声をかける]
怖いんですよね、今も。
もう死んでるはずなのに。
ねえ、助かりたいんですよね。
[届いても届かなくても。
男はそう声をかける。
「助かるかも、しれませんよ」
愉悦の混じった静かな声は路地裏に反響する。]
メモを貼った。
[黒衣の声が後ろから聞こえてくる。
怖いんですよね。そうだ、俺は怖い。死んでも、怖い。
助かりたいんですよね。そうだ、俺は助かりたい。助かりたい。
内心で応えながらも、止まろうとはせぬままに走った。
けれど]
……っ、……
[助かるかも、しれませんよ。
そう響いた声を聞いて、足を止めた。
足を止めて、しまった。冷静に考えれば、あの黒衣が助けてくれるわけなどない、と判断しただろうが。強い願望に関わってくる言葉に、反射的に、揺り動かされてしまって]
[長身の男が足を止めたのを屋根の上から見下ろす。高低差を抜きにすれば隣り合う、そんな位置。
けれどすぐに降りていくことはせず、少し考えるよう男は首を捻った。
屋根に触れる手、触り方を変えるように撫でて。「ふむ」と一言。
実体のない存在ゆえか通り抜けられることを確認すると
屋根を、建物を通り抜けるようにして1階へと降りる。]
[この壁の向こう、恐らくあの男がいるのだろうと目を向けた。
もうすでに爪の、粘着質のない右手を開いて閉じて、確かめると。
壁越しの男を目がけて、伸ばす。
攻撃目的でも、なんでもないその手は首を捉えるか、否か。
もう一度繰り返すのは]
「助かるかも、しれませんよ」
[助かるかもしれない。本当に、そんな事があるのだろうか。俺は、助かる事が出来るのだろうか。まとまらない思考で考えながら、揺れる瞳で屋根の上の黒衣を見つめた。
ふっと屋根をすり抜けて視界から消える様には、瞬き]
……
……――!?
[それから間もなくして、突然に、壁から何かが伸びてきた。目を見開く。手だ、と、気が付いた時には、それは男の首を捕らえていた。背筋が震える。揺らぐ指は、その手に触れようとして]
……な、……に、……
[繰り返される声に、暴れ出す衝動が抑制される。
ぽつりと、声が漏れた]
[捕えた首は、もううたない脈の震えでも伝えるかのように
震えている。そう男は思う。
人差し指でその首を真横になぞりながら、壁のこちら側から男は問いかける]
ここ――食われたんでしたっけね。
ああ。
死んだら、生きながら食われた苦しさは無くなったでしょう?
……もう一度死んだら、
[もう片方の手も壁から突き出て、長身の男の首元へ]
もう苦しくはないのかもしれません、ね?
[右手で首を抑えながら、左手は首筋をなぞるよう]
それか、痛い原因をすべて取ってしまえば。
良いんじゃないでしょうか。
食われた指が、後を引くなら。指を。
千切れた皮膚が泣くのなら。皮膚を。
[ね?
静かな、低い声は壁を通り抜けて。ただ根拠のない発想を投げかける。
口調も視線もどこか酩酊に引き込まれたように、蕩けかけて]
……あ、……あ……
[首を指先でなぞられる。男の体は、瞳は、声は、震えて。体を強張らせたまま、もう一本の手が首に触れるのを感じた]
……お、……俺は……
俺は、……もう……
[死にたくなんてない。死んで尚死にたくなんて、ない。そう口にする事は簡単な筈だった。だが、喉が詰まったように、言葉が出てこなかった。本当に、この恐怖から、絶望から、悪夢から、開放されるのだろうか。開放、されるのなら。
そんな、泡沫のような思いが浮かんできて]
俺は……
[首を横に振りも、縦に振りも、相手の手を払いも出来ず。
ひ、と、引き攣った吐息のような音が口から漏れた]
「俺は」……?
貴方は、どうしたいでしょう?
[首を締める手はあくまでも、力を込めずに添えるだけ。
身体の緊張が喉元に全て集まったような、そんな音が聞こえて。
左手はゆっくり上がっていく。
途中戦慄く唇に触れることはあったのだろうか。
途中ピアスに触れることはあったのだろうか。
恐らく目のあたり、そんな曖昧さが支配した世界で男は左手を止めた。
視界を覆ってしまうよう、暗闇に引きずり込むよう。]
もう一度死ぬか、思い出すものを
[首触れたままの右手が肌をなぞる]
取ってしまうか。
どちらが、助かる道だと思いますか。
[その二つしかないのだとでも言うように、繰り返して
選択をしろと迫る。波風たたぬ声のまま]
……、
[左手が体に触れていく。クロスのペンダントの鎖に、顔の輪郭に、揺れる髪に、薄く開かれた乾いたような唇に、ピアスを失った左耳に。ふっと、視界が奪われて]
あ、……
[闇に落ちた世界。かちかちと己の歯が鳴る音が聞こえた。荒い呼吸や鼓動の音が聞こえてくるかのように錯覚した]
……俺、は。……
……何……だよ、……思い出す、もの……って。
なんて、……
わかんねえ、よ……
[弱々しい、半ば涙混じりのようにも聞こえる声を零す。迷子になり、途方にくれた小さい子供かのように]
あの男に、食べられたところ。
取ってしまえば、食べられた痛みなんて
思い出さないんじゃないですか。
[困惑に塗れた声に返すのは、それまでと同じ静かな音。]
首、噛み切られてましたよね
指、無くなってましたよね
[男はその死体を観察まではしていないから
自然、部位もあやふやで。
けれど左手で視界を覆ったまま、呼吸の必要のない気道を探るよう
右手は緩く首に爪を立てる。]
甘い匂い、させてましたよね。
[けれど声に反するよう、右手はその首を離れる]
……食べられた……とこ、……
[そう繰り返した時には、声の震えは一際増して。首、噛み切られて。指、無くなって。損なった部位を並べていく言葉を聞くと、映像が鮮明に浮かんで、苦痛が半ば反復されて、強く歯を食い縛った。結局下ろされた拳も、握り締められ]
……甘い匂い、なんて……
俺は、……
[なんで、あいつも、こいつも。俺を、おいしそうだなんて、あまそうだなんて、いうんだ。だから、俺は、あんな羽目に。こんな羽目に。どうして、俺は、こうなった、んだ。
切れ切れの恨みめいた思考が渦巻いて]
……本当に、……思い出さなくなるって……
怖くなくなるって、……言うのかよ……
助かるって、……言うのかよ……
[言葉は、独り言のように]
[未だ視界を覆ったまま。壁のこちら側で、男は口端を持ち上げた。ゆる、と口を開きかける。
声だけでも理解できる震えは、喉に触れていたらより知れたことだろう。離した右手を少しだけ後悔した。
尋ねられる言葉に、男は視界も解放させた。すうと壁にのまれて消えていく両手を、長身の男は見たのだろうか。
選択肢だけ与えて、それ以外は知らないと。
少しく開いた口元で男は言う。声音にも少しの笑いが混じるよう]
さあ……?
俺には、保証できません。
ですが。
死んだはずなのにこうして“生きて”
いつ終わるか分からない、苦しい思いをするよりも。
[とん、と壁際から離れる。声はさらに遠く、静かに。]
救われるのでは、ないでしょうか。
……試すときは、教えてくださいね。待ってますから。
メモを貼った。
……っ、……あ、……あ……
[視界が開ける。体から手が離れていく。壁に消えていく手が、刹那、見えた。震えの一端のように視線を彷徨わせる。口からは、呻きとも喘ぎともつかない、弱く掠れた声が漏れて]
……お、俺は……
俺は、……俺は……っ、……
[呟く。ぐるぐると捩れ回る思考を、そのままに]
……っぐ、……ぐえ、
っえ……は、……かは……っ、
[不意に、口元を押さえ、前のめりになった。体中に激痛を、胃の奥に甚だしい吐き気を、喉に熱さを感じて。
えずく男の口から、吐瀉物や胃液が零れ落ちる事はない。代わりに、肉片や内臓の欠片のような得体の知れないグロテスクな物体が、赤黒い血のような大量の液体と共に、幾つも吐き出されて]
……が、……はあ、……
ひ、……あぁ、……ひ……っ、……
[吐き出された全ては、床に落ちると間もなく跡形もなく消えていった。男は口元を押さえたまま、よろりと踵を返し]
い……いぃ、……あぁ、……
[呻きながら、蹌踉と何処かへと歩き出した。男の内は黒き思いに、絶望に満ちて。死して尚、気が触れそうだと、思った。もう、触れているのかも、触れかけているのかも、しれないと、思った。死しても開放されない、地獄。
呪いのかけられたお菓子を口にした男の陥る、
それはまさに、*呪いのように*]
メモを貼った。
メモを貼った。
[すうと引いた手が可視範囲に帰ってきて、男は一度緩く握る。
開きながら、再びの屋根の上を目指して歩き出す。今度は通り抜けるのではなく、階段を使って。
途中キッチンを抜けた。誰もいないのに掛かっていた薬缶は暖かかった。途中寝室を抜けた。赤ずきんよろしく、狼の化け物が寝台で寝ていた。途中子供部屋を抜けた。クラウンの布人形が落ちていた。]
子供には、クラウンは人気なんでしょうか。
[止まってしまった足はなかなか歩き出さない。ふ、と手を伸ばすが決して触れることはない。
埃の被った白い肌と赤い口、頬には涙と星のペイント。彩り鮮やかなクラウンは、にっこりと笑っている]
[メイクが為されているような手付きで、男は頬に触れた。赤い笑んだ唇を、全てを隠すペイントを想像した。なぞるように、反対側まで引っ張ってから。
力を抜いた。]
[男は再び歩き出す。階段を登り終えれば、天井を抜けて屋根の上に出た。足音を立てない散歩を開始しながら、ゆっくりふらふらと。]
メモを貼った。
[歩きながら、爪を心臓付近の皮膚に立てる。だいたいこの辺だろう、突き刺さったのは。
凍えるほどに熱かった一瞬を思い出そうとして、男は眉を寄せた。]
――ああ、やはり分からない。
思い出せるのは、少なくて。
……あんなに怯える気持ちが分からない。
[この手にまだ爪があったなら、皮膚を引き裂き体験出来たろうか。まだ粘着質が溢れ出ていたなら、染み込む毒液から辛さを思い出せたのか。]
ねぇ、貴方は何にそんなに怯えていますか。
[言葉を放りなげた先は、
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