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― 翌日・brise marine ―
[サイラスへ納品する装飾品とランタンを
自室に置いて床につく、夜が明けて朝日が昇りきらぬ部屋に
コツコツと何かを叩く音が聞こえて目を覚ます]
うぅん……早すぎるでしょ、起こすの……。
[カーディガンを羽織って目を擦りながら窓へ近づく]
あら、お前どうしたの?
ウェーズリーさんとこの伝書鳩じゃない。
[脚に筒の付いた鳩から手紙を取り出すと内容に目を通して]
なるほど、この街の人から集めるだけかと思ったけど……。
結構考えてるんだ……よしよし、お疲れ様。
[鳩の脚についている筒の蓋を戻し、鳩を再び空へと放つ]
もしかしてアイツもこれ手伝ってるのかな。
私の答えは決まったんだけど……。
会いたいな……。
[未だ光が登りきらぬ部屋で鈍く輝く彼へ渡すペンダントを
一瞥してからバスのチケットと手紙を化粧台に置き
髪を梳かし始める]
まさか昨日の今日で遠出する事になると思わなかったわ……。
とは言えそんな遠くないけどさ……っと。
[髪を束ねてポニーテールを作るとぱちりと頬を叩く]
よし!
それじゃ、まずは……ソフィアー、ごはーん!
[叩き起こされ寝ぼけ眼のソフィアに朝食を作らせ
ハムトーストとスクランブルエッグを口に運びつつ]
ちょっと隣町まで行ってくるわ、ランタン集めに。
大丈夫よ、昨日の話とは関係ないから。
ビアンカさん居るのもっと遠い街よ?
なんか今朝手紙が届いてさ。
バスのチケットまで同封されてたから行こうかなって。
ランタン集めするって言ってもノープランだっし、
乗ろうと思ったわけ。
[泣き出しそうになるやらほっとしてるやらのソフィアを見て
笑いながら説明をしてコーヒーで喉を潤す]
ってわけで、ちょっと出かけて来るから留守は頼むわね。
代わりに加工の練習したり、作業台自由に使っていいから。
[一息ついてから大きく伸びをして再び部屋へと戻り
着替えとランタンを入れるための大きめの鞄を引っ張りだす]
もし、アイツが居たら渡せるように、
これも一応持って行こうかな。
[サイラスへ渡すためのペンダントを箱に入れて鞄にしまい]
よし、準備オッケー!
じゃあソフィア、店番お願いね。
もし泊まりになるようだったら電話するから。
[とソフィアに声をかけてから家を出た**]
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[オスカーの物騒な警告を背中に受けると、
笑みを浮かべながら、街の中へと姿を消した。
―――そして仕事が終わる頃になれば、一匹の伝書鳩がふわりと肩に降りてきて]
ん、俺?
[その脚にくくりつけられた手紙を広げて、読む]
…こんなことだろうと思って
[明日の仕事の予定空けといて良かった、と洩らす。
最近見なかった人も、もしかしたらこれを手伝っているのかもしれない。]
サイモンに会ったら、礼言わなきゃな。
― 夕方 ―
[ベネディクトの家、もしくは本屋へ
ランタン運びを手伝うという約束をしていたため、
それを実行するために尋ねていった。]
な、ベニー。
俺ちょっとこれ終わったら、出かけてくるよ。
[多分、理由は言わなくても分かるだろう。
目の前の男はそれほど鈍くない。]
あいつの誕生日、盛大に祝ってやろう。
[そう言いながら肩をぽんと叩くと、
去り際に小さく 一言]
ヨーランダの傍に、居てやってくれよ。
[自分は、ヨーランダの兄の代わりにもなれなければ
想いを伝えて、傍にいてやることも出来ない。
ベネディクトに全てを任せ、ランタン探しの旅へと。]
ジジ、俺ちょっと家空けるけど
お前は一人でも、大丈夫だよな?
[にゃー、と変わらない声がする。
任せろ、ってことだろうと意訳して。
遠出のための用品が色々と入った鞄を担ぐと、]
じゃ、ちょっと行ってくる。
[猫の声援を受けつつ、自宅を後にした**]
[バスチケットを運転手に見せて乗車する]
なんだかクジラ見に行ったのがすっごい前に感じるわ。
[ラジオを聞きながら目的地まで海が離れていくのを見て]
そう言えば遠出するのも久しぶりだなぁ……。
なんだかんだでずっとここに居たんだもんね。
良くも悪くもずっと足踏みしてたんだな、私。
[小さくため息を漏らして窓ガラスに頭をつける
そのまま目を閉じるといつの間にか眠ってしまって
気が付けば目的の街に着いていた]
……あ。
やっぱ朝早かったもんなぁ。
[呟くと欠伸をしながらバスを降りる]
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― 回想・ベネディクトとの会話 ―
もちろん、間に合うように帰ってくるさ。
[当たり前だろ、と付け足して]
生きてる人の為に、か。
俺は――― …俺の為に。
[ヴェスパタインの為に、自分が祝ってやりたいだけ。
それは自己満足にも似たようなものがあって。
今、「誰かの為に」なんて綺麗なことを言える自分でもなかった。]
ん、ありがとう。じゃあまた
あー、そうです。
ランタンをお借り出来る、という手紙を受け取りまして。
[馴れない言葉遣いに四苦八苦しながら
荷物に仕舞ってあった手紙をランタンの持ち主に見せる]
ええと、ヴェス……彼の誕生日に合わせて、
交流のあったみんなでランタンを灯そうと、そんな感じです。
俺たちの住んでいる街は丁度坂道になっていまして
その道沿いに、灯したランタンをずらっと並べてみようって。
[事情を説明しながら話し込むと、
やがて、今も大事にされている証明のように、
よく磨かれて埃一つ無いランタンをゆっくりと渡された]
ありがとうございます。
ところで、あまり顔色がよくないですが……。
[ランタンを受け取りながら、
どこかお加減でも、と、首を捻りながら老人の顔を覗き込む]
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[手紙に同封されていた地図を片手に街をうろつく]
ソフィアのお土産も買ってあげないとなぁ。
うーん、でも最近甘やかしすぎかしら?
って言うか、甘い物あげすぎ?
太ったソフィアは見たくないかな……。
[洋菓子店なども覗いたりしつつも
地図の示す先へ向かうとサイラスが検診している姿が目に入り]
あ、やっぱりサイラスもこっち居たんだ……。
って事は帰ってないのかな、泊まり?
って言うか何やってんだろ。
[咄嗟に隠れて物陰から様子を伺う]
薬とか持ってきてるのかしら、アイツ。
ああ、そうですか……。
ええ……。
[老人は疲れたような笑みを浮かべて
自らの身体の状態を語り、足を寂しそうに手で叩き
窓際に置いた、海の透かし彫りが入ったランタンが
孤独な夜にいかに自分の無聊を慰めてくれたのかを教えてくれた]
俺の爺さんも、海が好きでした。
いやね、爺さんの爺さんから引き継いだ薬屋をやってて
凄いひょろっちい身体で、薬屋のくせによく熱出しては寝込んでて。
とても海の男なんて呼べる体つきはしてなかったんですけど。
[微かに懐かしそうな笑みを浮かべ、目の前の老人の瞳を見つめながら]
それでも、俺をすげえ嬉しそうに海に連れて行くんですよ。
今日は小船を浮かべて気儘に釣りだ、とか。
クジラが来たぞ!店なんてほっといて見に行くぞ、とかね。
[何かを思い出すかのように苦笑を浮かべては、時折頬を掻く]
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すげえいい加減な人だったんですけど、俺に底抜けに優しかった。
親父は元々いなかったし、お袋も小さいときにどっか行っちまった
ぽつんと残された俺と、どう接しようか必死で考えて
悩みながら、手探りで一緒に居てくれた人なんです。
[預かったランタンの波模様部分に視線を移して、微笑を浮かべ]
もしかしたら、本当は海なんて好きじゃなかったのかもしれない。
ただ俺がいつも堤防に腰掛けて、跳ねる水飛沫を眺めていたから。
ただ、それだけのことだったのかもしれないです。
爺さんは、ある日魚を獲りに潜ったまま、帰って来ませんでした。
頑丈な漁師じゃなくて、ただの酷く痩せた、薬屋だったから。
そう、だから、まだ潜っているんです。あれからずっと。
息が何年も続くような、そんな薬を作ったに違いないんすよ。
[だからきっと治りますよ、と老人に告げて、
海のランタンを抱えたまま、一礼して、その場を立ち去ろうと]
って、なんでここに居るんだよ……!?
[物陰に隠れた と思われる
ミッシェルの姿に驚愕の表情を向けた]
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[サイラスの声にびくりと身を竦めて]
いやー……あはは。
な、なんでだろうね?
私もさー、ランタン集めようかなと思って来たら。
たまたまサイラスと同じとこだった、みたいな?
ほ、ほんとに偶然なのよ?
[物陰から顔を出したままでおずおずと答えて]
あ、そうそう、サイラスの注文の品できたよ。
ここで会えたのも何かの縁だし、料金は後でいいから
とりあえずつけてみて。
気に入って貰えるように頑張ったんだから!
[鞄からペンダントの入った箱を取り出すと
サイラスに駆け寄って差し出す]
[もしかしてあのこっぱずかしい話を
聞かれていたのだろうか、と片手で顔を覆うと溜息]
まぁいいか。ミッシェルの秘密も聞かせて貰ったし。
[ほとんど聞き取れないような小声で、ぶつぶつと呟いた]
そうか、偶然同じところ……だったのか?
薬は持ってきたんだけどな。あの爺さん……。
まぁ、ランタンは借りれた。返せるとも、思う。
[かちゃりと海のランタンを鳴らして、
微かな自嘲に、少しだけ唇を歪めた]
あ、本当か!?
[しかし、ペンダントの話を聞けば、表情を一転。
満潮のように喜色の満ちた表情で箱を受け取る]
これ……。綺麗だな。
なんつーか、海の蒼さと
水面の反射みたいに、光の網が絡まって……。
[取り出したペンダントを目の前まで掲げると、感嘆の唸り。
微かな金属音を立てながら自らの首に掛けて、指で摘んだ]
ありがとう。大事にする。
[駆け寄ってきたミッシェルと、ペンダントを交互に見つめて
やがて、心底嬉しそうな笑みをじんわりと浮かべた]
良かった、気に入ってもらえて。
職人冥利に尽きるってものよ。
[サイラスの笑みに吊られて笑顔になる]
あ、それと、一昨日はゴメン。
昨日お店行ったら薬が出てたからビックリしたわ。
そういうところ全然気づかなくて、無神経だったよね。
って言うか……私って、こういう無神経な奴だけど。
それでも本当に良いの?
[サイラスの顔を見ながら首を傾げる]
酒癖もお世辞にも良いとは言えないし、
もしかしたらサイラスの事嫉妬させちゃうかもよ?
引き返すなら今がチャンスだよ?
本当に気に入った。ずっと付けてるわ。
風呂に入るときも、海に潜るときも、寝るときも。
[ちらりと歯を剥いて、
喜びの余韻から快活な笑みへと表情を変えると]
ああ、急にバス券が手紙に入ってて。って何で謝るんだ。
あー……。いんや、俺はまだまだ適当だと思うし。
日頃の行いがこういう所で跳ね返ってくるだけ。
[無神経じゃねえよ、と穏やかに手を振る。
やがて続く言葉には、群青の双眸が真剣さを増して]
前も言ったけど、俺はミッシェル一筋だから。
無神経っつーか、そんなことないだろ。
俺は、変な壁が無くて、近くに感じて、可愛いと思う
あっけらかんとしたそのままのミッシェルが好きだ。
酒癖が悪かったら俺も飲む。この前介抱さんきゅ。
嫉妬……はちょっと困るから何とか惚れさせる。
此処を引き返すのを、俺はチャンスとは言わない。
[聞かれたことには、逐一真剣な面持ちで答えていく]
そこまで気に入ってくれたなら本望だわ。
珍しい石が手に入ったから使ってみたの。
ま、黒蝶貝のお礼も込めてね。
[サイラスの喜びように腰に手を当てながら胸を張り]
私も同じ、家に手紙が届いて、バスのチケットが入ってたの。
で、乗ってきたってワケ。
日ごろの行いとかは……ま、不真面目よね。
でも、頑張ってる人に鞭打つような事言ったのは
悪いと思ったの。
[サイラスの言葉にかぁっと頬を赤く染めて]
ありがと、私の答えはね……。
[サイラスの目の前まで歩み寄り背伸びをする]
サイラスの頬に軽く唇を触れさせる。
……これが答えって事で……。
私ってわざと空気読まないからね、
ヴェスパタインの事で悩んでるネルにも意地悪しちゃった。
ま、不真面目云々は、私も似たようなものだし。
似た者同士かもね、私たち。
って言うか、一緒に酔っぱらうって……。
私を止めるのがサイラスの役目でしょ。
十分サイラスもカッコイイと思うけどね。
容姿じゃなくて、性格的なとこでさ。
……さ、ランタン回収行こっか?
[ぎゅっとサイラスの服の端を掴んで
上気した顔のままにっこりと笑顔を浮かべる**]
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[胸を張るミッシェルに、おー、とペンダントを掲げ]
そっか、ミッシェルの所にも同じ手紙がなぁ……。
まあ、そのお陰でこれ受け取れたし。
[頬を赤く染めるミッシェルを眺めれば
徐々に自分の頬も紅潮してきた気がして、小さく呻く]
答えは……?
[頬をかすめるような感触。やがて鼓動が一度大きく波打つ]
なんか、すげえ嬉しいんだけど……。
勘違いじゃねえよな?
[頬に指で触れながら、一度ミッシェルの瞳を覗き込んで]
どうかな、あんまりあれもこれも気を遣ってるとしんどいし。
ただ、ネルに意地悪したと思うなら、謝るか?
そーだな。不真面目なのは、どっちが上だろうなぁ。
[込み上げてきた幸福感に破顔一笑]
俺が止めるのか? そこは交代でいいんじゃねぇの。
あと、容姿も褒めていいんですよー? ぐぐ、礼を言うべきか。
……よし、行こうぜ。ランタン回収。
[端を掴まれた服をちらりと横目で見て
可笑しそうに笑顔を浮かべて、おもむろに手を伸ばし繋いだ]
んで、いつ好きって言ってくれるのか、聞いてもいいのか。
俺は結構言いましたよ?
[ランタンのある場所に向かいながら、
傍らの愛しい人に、そんなことを囁いたり**]
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