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― 広場 ―
そうね。
噂話を聞くよりもテッドとこうして話している方が
私はずっとずっと愉しいと思う。
[頷きに目を細めテッド
……テッドは私の事子どもっぽいとは思わない?
[違うという声に何だか嬉しくなる]
事あるごとに頭を撫でられたり
お遣いに行くと飴を渡されたりとかしてたの。
今思うとあれって子供扱いよね。
[頬に手を宛がい悩ましげに吐息を漏らした。
何故だが愚痴っぽくなってしまったのに気づけば
ふるふると首を振り
それから不思議そうな様子のテッドに小さく笑う]
[ふと、「ミツカイサマ」に似た何かを持っていた男の事を思い出す。]
……ニールは、知っていたのかな、ニールが死んだらおいらには「ミツカイサマ」と同じように見えるって事を。
[今も彼は、炎に包まれているように見えるのだろうか]
メモを貼った。
メモを貼った。
―広場―
……今夜で最後、か。
まさか、こうなるなんて全然思ってなかった。
[静かに屋根の上から広場と、その周囲に広がる森を見下ろしている。
ぽつり漏らした言葉は、心の底から放たれたもの。
村が嫌いだった。伝統が嫌いだった。
祭が嫌いだった。儀式が嫌いだった。
壊してしまいたいと、願っていた事も、あった。
燃やしてしまおうと口にした事も、あった。
もちろんその象徴であるミツカイサマは、今でも憎い。
のに――]
……何で、こんなに胸の底がざらざらするんだろう。
―広場―
うん、俺も。
[マーゴ
マーゴが子供っぽかったら、俺なんか完全に子供だっていわれそーだし……
マーゴはちゃんと大人だと思うけど。
あれだ、きっと小柄なせいだよ。
だからつい、撫でたくなるんじゃねぇの?
[うーん、と腕組みをして考えながら答える。
小さく笑うのをみればまあいいか、と笑い返し]
マーゴは綺麗な娘になったと思ってた。
大人に混じって話もしてるし……ソフィアさんとは違う意味で憧れでもあったんだよなあ。
[ソフィアが、大人の女性に対する憧れなら、マーゴへは一足先に大人になった友達への憧れで。
死んだ今だから、言えるけど、と鼻の頭をかきながら誤魔化すように呟いた]
あ。
[少し離れた屋根に影を見つけ、顔を上げる。
ふわ…と跳ねるようにして一度姿を消し、次に姿を現したのはオスカーの背後だった]
だーれだ?
[後ろからオスカーに目隠しをして声をかける]
どうかしたの、オスカー?
[どうしてこのようになってしまったのだろう。
どこで我らは人の子と道を違えたのだろう。
大いなる信仰不在の台座を前に、思う。
既に、答えは幾人から耳にした。
我らは生きながらゆっくりと消えて行く。
最後の巡礼の犠牲者たちの気配を想う。
今夜も、きっと誰かが来る。]
だがそれで、今夜で、終わる。
全ての巡礼者に祝福と鎮魂を。
そして同胞には、悲願の達成を。
[嘗て大きな信仰の対象であった筈の神像を前に、今は祈る。]
― 広場 ―
テッドは……、子供っていうより男の子って感じかな。
いつも元気でまっすぐできらきらしてるの。
[テッドと二人並んで大樹の傍で語らう。
隣にいる幼友達を見詰める眸は少しだけ眩しげで。
小さいという扱いが小柄なせいと言われれば]
むぅ。身長はもう伸びないけど……
[結局子供扱いされない為の打開策は見つからない。
けれど、思わぬ言葉が聞け娘は驚いたように眸を瞬かせた]
テッドにそんな風に思って貰えてたなら嬉しい。
綺麗なんて言われることないから、
ちょっと恥ずかしくなるけど。
ありがとう、テッド。
[嬉しそうに花の綻ぶような笑みを浮かべる]
[
祈りの言葉を終え、強い視線を感じて振り返る。
そこにはヘクターの姿があった。
森全体に響き渡った、咆哮の主。
踵を返し、彼に歩み寄る。
三歩の距離を残し。]
ここでは、何とお呼びすればよろしいのでしょう?
メモを貼った。
うーん、誰かな。
ホリーかな。……よし、当たり。
[振り返って、口元を綻ばせる。
しかしどうかしたのかと問われれば、再び視線を下に降ろして]
――うん、ちょっと、考えてたんだ。
これで……儀式は終わるじゃない?言い伝え通りに、終わりそうじゃない?
そうしたら……村は、どうなるのかなって。
ちょっとだけ、ね。
は…なんでもいいさ、今まで通りヘクターで。
どちらにしろ俺は御使い様の力を失った。
[それに、と言葉をつぐ。]
もしかしたら肉体が滅びる以前に
「御使い様」は既に死んでいた…そんな気がする。
[こうやって、正体を明かして話せていれば、
彼女の話
…いや、今となっては遅いか…。]
―広場―
男の子……子供よりはましなのか?
まあ、元気だけが取り柄だしなあ。
[よくわからず首を傾げるが、マーゴ
村の大人達はへんなところで大人扱いしたり子ども扱いしたりだから、あんま気にしててもしょうがないと思うしなあ。
[大人として考えろといった直後にこれだから子供は、などと手のひら返されるのも日常だった若者にとっては、大人は理不尽なものだと、ため息をついて。
気恥ずかしい言葉のあと、マーゴの花のような笑みを見れば、あー、うん、と笑って気恥ずかしさをごまかし]
お礼を言われるようなことじゃねーけど。
あと一年もすれば大人たちだって子ども扱いできないようになってたんじゃないか、とは思うけどな。
うん、終わりそうだよね。
……ね。
どうなるんだろう。
[オスカーの疑問は、自分も先ほど考えたもので…。
オスカーの隣に腰を下ろし、村を見下ろした]
今までは、村を守る代償に儀式が行われてたんだよね?
…なら、少なくとも次のお祭までは平和なんじゃないかな?
…でも、その次はどうなんだろう…その次も…またその次も…こうやって続いて行くのかな…。
[そう呟いたホリーの表情は、何処か悲しげだっただろうか]
「御使い」は既に死なれて……。
酷いことをおっしゃいますのね。
[身振りで村人たちを差し。]
皆信じますわ。きっとまた長い間信じていくでしょう。
これだけの人が死んだのですもの。
家族や、友人や……。
[死者の森に響いたあの声は、生者には届かなかったのだろうか。
ふとそう思えて、最後の単語を飲み込んだ。]
それとも……私たちが、貴方に酷い重荷を負わせていたのかしら?
― 広場 ―
[大人の理不尽さを語るテッドにこくこくと頷く]
気にしてもしょうがないけど……
やっぱり如何見えてるのかとか気になってしまうのよね。
[個として見られる事より肩書きで見られる事の方が多かった。
それでも望まれる姿であろうとそれなりに努力してきたから
結果が伴うか如何かが気になっていたようだ]
一年もすれば……
うん、そうだと嬉しいな。
一年後の私、大人っぽくなってるのかな。
でも一年後のテッドもきっと大人びて見えるね。
……一年後も、その先も、こうやって話していたかったね。
[失われた先の話にはやはり未練が滲む。
それでも今こうしてもう一度話せたのだから、と
納得しようと思う自分もいて複雑な面持ちとなる]
[パピヨンに指し示された先を見、
自嘲めいた笑みを浮かべる。]
俺は信仰の無い儀式に苛立っていた。
我らを忘れた人の子に
儀式を遣り遂げ、我らの意志を示す。
それが目的だった。
我らが姿を見せずとも、人の子だけで、
それを思い出して欲しくて、な。
村を護る代償に……。
そう、だね。次の祭まで、村は、平和に……
[そうであればいいと思う。
そうでなければ、ならないと思う]
続いて行くのかな。
でも、もう……今はさ、昔じゃないんだよね。
[ホリーの手に己の手を重ねようと、腕を伸ばした]
残ってるミツカイサマは……どう、思ってたの、かな。
重荷…か……。
いや、我らも汝らに重荷を背負わせていたのだろうな。
―広場―
マーゴは大人に混じってがんばってたから、余計に気になるんだろうなあ……
[しみじみと、幼友達
まだ見習いだから、と目こぼしされてた若者よりは、よほど立場的にも大変だっただろう、と解らないなりに推測して]
一年たてば、きっといろいろ変わってたはず、だよなあ。
うん……そうだな、生きて、こうやって話していたかった、な。
まあ、しょうがないん、だろうけど。
御使いがほんとうに居たんだし……俺だって、人を殺したし、な……
[明るく話していたけれど。
未来がないことにはやはり、暗さや苦さや未練がにじむ。
考えても仕方がないことだけど、と肩をすくめるのは考えたくない若者の癖だった]
貴方がたがおられなければ、私たちのどこが、森の外の人々と違いましょう。
ああ……きっと私、今貴方に酷いことを言っているのでしょうね。
でも私たちは、何の変哲もない人間なのですよ。
その時々の迷信や流行の言葉を信じてしまうような……。
自分の愛する人のことをしか、考えないで生きてしまうような……。
[軽くうつむいて微笑する唇の形は、ヘクターと同じ形にゆがんでいる。]
…そうだね。
[伸びてきたオスカーの手をそっと握る]
昔のままじゃない…。
でも…ソレは私たちだけじゃなくて、ミツカイサマも…ミツカイサマ自身も、そうなのかも知れない。
だって、何十年も儀式は行われてなかったんだよ?
もしかしたら、ミツカイサマも世代交代したかも知れないし…。
…なんでいきなりまた始まったのか…これからどうなって行くのか…ソレはわからないけど…。
もしかしたら、なにかが変わったから、今回再び儀式が行われた…のかも…。
テッドもテッドにしか出来ない事を頑張っていたでしょう?
ん、気になってしまうのは、もう癖なのよね。
[困ったように幼友達
少しずつでも変わっていければ素敵だったのにね。
しょうがない、かぁ……。
[結局、御使い様が何を思い何をしたかったのか知らない。
知れば納得できるのかと言われれば微妙な所なのだけど]
私も、ね。
別の誰かを殺していたかもしれない。
いつも守り刀を持っていたし、
殺したくないとは思っていたけれど
生かす為に殺す事を何処かで受け入れていたから。
[何時かのようにテッドの手へと自らの手を伸ばして
自分も同じなのだと小さく告白した]
…そうだな。
人間とは、実に弱く、実に強い存在だ。
[今はそれも良く分かる。]
我らも数が減り過ぎたのだ…。
その理由は貴女ならすぐ解るのではないか?
村にも外からの血が随分入った。
[エデンの園から、ぐるりと村を見回し、パピヨンにそう呟いた。]
まさか、
あの英国人が此処まで関わってくるとは思わなかったがね…。
[大樹の傍から見える光景に何時の間にやら
村長夫人とヘクターの姿がある。
その傍には供物台――また誰かが其処に寝かされるのだろうか。
厭な考えが過り娘は柳眉を寄せた]
――…優しい村にしたかった。
今より少しでも笑顔が増えて
優しい人が哀しまずに済む村に……
[娘の想いを継いで呉れる人は居ないだろう。
それが残念だった]
願わくば……、泣いていたあのこが
笑っていられる村でありますように。
[ピッパの死を悼んでいた純粋な少女。
守る為なら傷付ける事を厭わぬと言った娘が
彼女のしあわせを望むのは滑稽だろうか。
矛盾を抱えながらも娘の願いは変わらずにある**]
[死んでも、そこに重ねられた手のぬくもりを感じた。
確かめるように、そっと瞳を閉じて]
……そう、なんだよね。
何十年もやってなかったのに、どうしてこんな事になっちゃったんだろう。
今まで、……そりゃ、ミツカイサマにしてみれば、何十年なんて短い時間なのかもしれないけどさ、でも、僕達人間にとってみれば、何十年っていったら、結構長い時間じゃない?
外の世界じゃ、色々大変だっていうしさ。
でも、村は……儀式なんかやらなくても、上手く行ってて……
[そう思いこんでいただけなのかもしれないけど]
変わったとしたら、何が変わったんだろうね。
……外から、あの人が、来た、から……?
[ただの思いつきを、ぽつり、漏らした]
儀式の行方を見届けるべく、その双眸は真っ直ぐに――**
英国人?
[それは……死者として過ごす間に、薄れかけていた記憶だった。]
ああ……。
彼はまだ生きているのですか?
……そう。さっき、姿を見たような気もしますね。
貴方以外にも御使いがおられるなら……森から出ることはできないでしょうか。
彼には、悪いことをしてしまいましたね。
メモを貼った。
我らは確かにこの森に在り、
人の子らを愛し、この森を駆け、護っていた。
それだけを、憶えて―――。
[ああ、月が満ちてきた……。
「最後」の巡礼者に、どうか祝福を。]
真円となる月を見つめ、彼は誰を想ったか――**
メモを貼った。
わからない…。
[重ねられた手に、もう一方を重ね、オスカーの肩にもたれかかる]
もしかしたら、今まで村がうまくいってたのは、ミツカイサマが守ってくれてたからなのかも知れないし…そうじゃないかも知れない。
なにかが変わったから儀式が行われたのかも知れないし、そうじゃないかも知れない…。
…なんにしても、私にわかるのは…私たちに出来るのは…。
[す…と、オスカーと同じようにまっすぐに村を見つめ]
…ただ、見守ることだけ…。
―広場―
がんばれてたのかな。そうだったら、いいな。
[癖だという幼友達
起こってしまったことは受け入れるしかない、って親方がよく言ってたしな……
[死んでしまったことを受け入れるしかない。
殺したことを受け入れるしかない。
御使いがいたことも――受け入れられるか、ととわれると微妙だと若者は思う。
マーゴの告白を聞きながら、伸ばされた手を、幼い頃のように握り返して]
そう、だな。
人を殺せる道具を持っていった時点で受け入れてたんだな。
でも、やっぱり、守るために、使いたかったな。
殺すためじゃなく。守るために。
[かなわなかった願い。それを小さな呟きとして吐き出し。
幼友達の視線の先
次に、あの祭壇に乗るのが、誰なのかと考えて、祈るように、瞳を閉じた**]
[「ミツカイサマ」を嫌いなのかと、教会でヴェスパタインに問われた事があった。
自分の大切な人、好きな人が誰かを殺めていたら、ともいいかけていた。]
──イアンは、ヴェスが「ミツカイサマ」でも、ヴェスの事が──?
[だったらいいな、そう思わずにいられない。]
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