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[どうやら、階段の下でまた少し寝入っていたらしい。
―――気を失った、というべきかもしれないが。
なんとか起き上がり、中庭に出ようとした。
ふら、と壁に何度もぶつかり、右腕の包帯が解けていく。
これはまずい、と自室に戻ることを考えたが、階段を上ることがどうしても出来なくて、手近なベットを、と考えた結果、医務室に辿り着く]
[ベッドの下に伸びた包帯もそのままに、
ベッドにもぐりこめば、そのまま目を閉じた。
夢に、落ちていく。
薔薇の香りが滲む、夢がやってくる**]
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【人】 執事見習い ロビン命令…… (15) 2018/05/21(Mon) 00時半頃 |
【人】 執事見習い ロビン……熱、出たのかな。 (32) 2018/05/21(Mon) 01時半頃 |
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[
もしも、この口が動いたなら。
どんな言葉を返したろう。
苦痛を伴う行為をされ、辱められた。
否、くちづけを求め衣服を脱がされただけでも怒りと恐怖で拒絶するものも少なくないというのに、笑み浮かべ眠っているのだから、奇異に映ってもおかしくない。
ただ、それでもこの身は、満たされていた。]
[手を伸ばしたかった。求められたかった。
欲望のままに貪り、けれど甘やかに寄り添いたかった。
だからこれでいいのだと。
これが、いいのだと。
言ったのかもしれない。
言わずに笑い誤魔化すだけだったかもしれない。
揺るがないのは、モリス・レーヴェンは甘美な幸福の中にいたことだけだ。
それがたとえ、薔薇の魅せる夢だったとしても*]
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[眠るモリスには、誰の声も届かない。
届かないけれど、突然の笑い声
夢の中、手回しのオルゴールがゆっくりと回るように、辿々しいメロディが流れた。]
[
Sento un affetto Pien di desir,
Ch'ora è diletto, Ch'ora è martir.
Gelo e poi sento L'alma avvampar,
E in un momento Torno a gelar.
]
[
Voi che sapete Che cosa è amor,
Donne vedete S'io l'ho nel cor.
]
― 医務室 ―
[いつもより上等なスプリング。
静寂に満ちた、けれど誰かを感じる白い部屋。
薔薇の香り。
覚えていない夢を辿って、
床にのびた包帯の先を目で追った]
[包帯を拾い上げる。
適当に腕に巻き付けて、留めるものを探そうと見渡して]
………あ
[さっき感じた誰かの気配。
ベッドに眠るモリスの姿を、見つめた。
熱が出ているのかもしれない。
何故ここにいるのだろう、とか
大丈夫だろうか、とかそういうんじゃなくて、
彼を見て、咄嗟に考えたのは]
先輩は、 何が好きなんだろ……
まだ、夢の中にいるのかもしれない
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[手の力が緩み、包帯がまた床に伸びる。
左手では拾い上げることも上手くいかない。
不器用な指先は、包帯をつかみ損ねる]
あ、 やべ
[左手だから、だけじゃない。
滲む涙を拭って、見られていないか、とモリスの方を見やるけど、
起きる様子がなければ、それは寂しさに変わる]
[小さな呟き
一度はっとしたような顔になって、少しの間のあとシャツの胸元きゅっと握って、眉を下げた情けない笑顔を俯いて隠して、考えたことなかったなと溜息をつくかもしれない。
それから改めて、好きなものを考えたろう。
考えたことがないのは本当だった。思い浮かぶのは食堂にある珈琲のクッキーだとか、フェルゼと紅茶を飲む時間だとか、即物的なものばかりで苦笑したに違いない。]
[けれど、夢は醒めず。
後輩に寂しさを与えていることも知らずに、夢に囚われたまま。]
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― 春の思い出 ―
[そういえば、―――モリスは覚えているだろうか。
あれは、入学式の日だったか。
新生活への高揚感なんて、この学校ではわずかなもの。
ただの、新入生じゃない。
自分以外ではほとんど出来上がってるコミュニティへの参入だ。
明るく振舞うことに疲れて、中庭の隅。
俯きがちに歩いている時、何かを見つけて拾い上げた。
小さな木彫りの意匠。
可愛らしい、と普段思うことのない表現が頭に浮かんだ。
それから誰が拾ったのだろう、と見渡して――]
[辿る思い出は、薔薇の香りに覆い隠される。
不器用ながら留めた包帯をシーツにもぐりこませた。
静寂に満ちた、けれど誰かを感じる白い部屋。
誰か、が一人なら。
それはただの寂しさであって疎外感ではない。
だから、大丈夫。
喉が渇いていたけれど、抗えない眠気に、夢に落ちていく]
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【人】 執事見習い ロビン[新しい、別の家族が増えるかもしれず。 (137) 2018/05/22(Tue) 01時半頃 |
【人】 執事見習い ロビン…………。 (138) 2018/05/22(Tue) 01時半頃 |
――春の日に――
[続く夢は霞んで、とある一日の出来事をぼんやりとリフレインする。
鳥の羽が小さな珠を抱くような細工をひとつ、中庭に落とした。
小さな不運だった。手が滑って、風が吹いて。
いつも通り執着などないはずで、このまま捨て置くことも考えたが、何故だかその日は拾いに行こうと思って、庭で彼に出会った。
あの頃は名前も知らず、どころか顔を合わせるのすら数えるほどでしかなくて、呼びかけることも出来ずに一度、おろ、と戸惑って。]
――欲しいなら、あげるよ。
[そんなふうに、きっと的はずれなことを言ったんだったか*]
[すぐ傍で眠りに落ちた誰かが、その相手と知るすべはない。
ない、けれど、或いは。
夢の中ならば、薔薇がいたずらに邂逅を許すやも、しれず――**]
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【人】 執事見習い ロビンあの、どうして…… (186) 2018/05/22(Tue) 12時頃 |
【人】 執事見習い ロビン[結局理由はわからなかったけど、 (190) 2018/05/22(Tue) 14時半頃 |
【人】 執事見習い ロビン[見ている者がいるのも忘れて、ただただ翻弄されて。 (191) 2018/05/22(Tue) 14時半頃 |
――来客――
[振り返っても、何も見えないのがこわかった。]
[あまり子宝に恵まれない両親の元、ようやく生まれたひとりがモリスだった。
勉強や運動の方には――特に歴史と器械運動がひどく残念だ――目立った成績はないものの、伸び代があると笑って、いつもより少しでも良ければ褒められるような甘い家族に囲まれていた。
幼少期から少し絵は描いたが別に好きにもならず、談笑とじゃれ合いばかりで過ごす日々が続いたあと、この学校でようやく趣味らしいものに出会った。]
[それからは没頭した。少しの絵の経験が、作品のイメージを記すのに役立った。学年下の絵描きにも手伝ってもらったし、庭いじりの先輩には木切れをもらった。なんなら間接的に本来の庭師である用務員とのコネクションも出来た。
失敗ばかりでごみを増やした時期が過ぎれば、徐々に校内での認知も広がっていく。
夢中で、夢中で、それからふっと立ち止まった。
そう、それはいつだったか、奇しくも眠りの外
[考えたことなかったなと、振り向いた。
過去を思えば、何もなく。自分を構成しているのは木片とナイフとやすりと針だけに思える。
それをこわいと思ったのは、単なる自分の感性の話だ。
染まった人生を振り返り、堂々と好きなものは木を彫ることだと言える人だっているだろう。
いつか怯えを問いかけた時、フェルゼはその類の人間だと思っていたから、返って来た言葉は少しだけ意外で。
けれど失くなることのほうがこわいと告げるその気持ちもわかる気がした。
染まるのをこわがるくせ、この手は木と枝に触れるのを止めなかったのだから。]
[穏やかだった心に少しの亀裂。くく、と微かに眉が寄ったのに、手を撫ぜるだけのフェルゼ
そしてその内、ゆっくりと思いを振り払ったかのように表情は穏やかなものに戻る*]
【人】 執事見習い ロビン[夢と現の間を、ふわふわと彷徨うような心地。その中で、薔薇の声を聞いたように思う。>>223 (254) 2018/05/22(Tue) 22時半頃 |
― 春の記憶と ―
[あの細工
何かを抱く鳥。
大事なものを抱きしめているような、優しさ。
落とし物だと思ったのに。
欲しいなら、と言われたら、「はい」なんて咄嗟に頷いて、
なんとなく気まずくってその場はすぐに辞したのだっけ。
持ち帰った細工を、同室者が「モリス先輩の?」って聞くから、それで名前を知った。
でも、それだけだ。
そのあとすれ違っても、何の視線も動かなかったから、いまさらありがとうなんて言えなくて―――]
― 夢の中 ―
[優しい音が聞こえる。
ヴァイオリンとは違う、鍵盤の音。
明けない夜、月の隠れた星を探すような、音。
あるいは、暗い夜。傍らに眠る家族に手を伸ばすような、安心を約束された安らぎの曲]
[表面を撫ぜる誰かの気配。
額に触れた唇は、夢の中に、濃い薔薇の香りを齎す。
それは、質量のある「想い」だ。
その色は知らねども、確かにある感情。
生まれかけた、微かな欲を、薔薇の香りが増幅させる。
それは、まだ名づけなくていいはずのもので。
形にするのも躊躇われる儚さで]
― 夢の中の、医務室で ―
[聞こえるはずのない音量で、鍵盤の音が響いている。
それは、心地のよいBGM。
心を揺さぶるに十分な情熱は、窓から太陽の照らす明るい医務室の中を軽快に彩る]
あぁ、 ……夢か
[シーツの中。
右手の指を一本ずつ、ゆっくりと折り曲げた。
明るい光がこそ、夢だと知らせる不思議。
現実と繋げるのは、この甘い香り。
中庭の薔薇が、今を盛りと花開く]
メモを貼った。
[きらきらひかる、
おそらのほしよ。]
[例えば、小さなつむじ風が薔薇の花弁を巻き上げて、すべて飛ばしてしまうように。
例えば、虹色に渦巻いていたシャボンの玉が、はつんと弾けるように。
穏やかなぬくもりに揺蕩っていた自我が、ふいに帰ってくる感覚がした。
瞬間、どこか遠くに聞こえたピアノの音も、ふつと途切れる。
現実でもないピアノなのに、途切れればどこか残念な気がした。]
……あれ、
[ゆっくりと目を開ければ、見知った医務室だ。
明るく、太陽が差し込んでいる。
夢の中で目を覚ますという珍しい経験をしたことには気づかないまま、隣にいる人影に視線を向けた。]
時が止まったことを、知らなかったので。
[包帯を纏わない右手で、やあ、という具合に軽い挨拶]
おはよ、 モリス先輩
[といっても、下級生の怪我の具合なんてそれこそ知らないだろうから。それだって夢の証拠にはなりえないし。
そもそも、名前を憶えてくれているかどうか。
夢だから。
思うように出来たらいいのに]
【人】 執事見習い ロビン[──気だるさに負けて、しばらく体を預けていたけれど、手だけは応えるように動いて。 (294) 2018/05/23(Wed) 00時頃 |
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