35 WWV 感染拡大
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[単刀直入に聞かれ、]
違うわ。
もしそうなら、さっきユリシーズ先生と二人きりの時に先生を殺していたわね。
[歌うように。プリシラの手が伸びてきても気にしない。]
貴方こそ、適応者なのかしら?
……それこそ、どうでも良いわね。
[彼の手が首に掛かる。手袋の感触。 ]
こんな時にも人に触れるのが嫌なのね。
[その頬に触れようと、点滴の刺さっていない手を伸ばす。
――しかし、それは叶うことが無いまま。手は力なく落ちる。
笑みを浮かべ、そっと目を閉じ――意識は闇の中へと。]
Twinkle, twinkle, little star...
How I wonder what you are...
Up above the world so high...
Like a diamond in the sky...
Twinkle, twinkle, little star...
How I wonder what you are...
[意識が遠ざかる前。
最期に口ずさんだのは、いつもと同じ歌。]
―回想:談話室―
[本を読むでもなく、ソファに座ったまま蛍光灯を眺めていれば談話室の扉が開く。
視線だけそちらへと向け。]
ユリシーズ先生、ごきげんよう。
[彼がギリアンの遺体に対して声を漏らしたことに気付いたが、特に何も言わず。]
歌…?
そうですね。先生の邪魔にならなければ良いのですが。
[雑誌を手にしたユリシーズへ、笑みを浮かべたままそう断り。
そして口ずさむ。]
Twinkle, twinkle, little star...
[いつもとは僅かに違う声色。どこか、祈るような歌声。]
――ねぇ。ギリアン。
人は死ぬと星になれるって、貴方言ってたわよね。
貴方、星になれたのかしら。ここには星の光すら届かないけど。
それでも――。
[心の中で、ギリアンへと話しかけながら。
『弟』を悼むように口ずさんでいた。]
[他の歌は知らない。同じ歌を何度繰り返していたか。
プリシラが談話室に入ってくる。
声をかけられることもない為。こちらから声をかけることもしない。ユリシーズに対する悪態は聞こえていないかのように。
彼がギリアンの遺体を蹴りつけても、何を言うでもなくただ歌を口ずさむ。]
Twinkle, twinkle, little star...
How I wonder what you are...
[歌い終わる。少しだけ喉が渇いたようにも思う。
プリシラがユリシーズに対して投げたペットボトルを目で追いながら、自身も水を飲もうかとぼんやり考えていると。]
あら。
貴方が私のこと、美少女なんて言ってくれるとは思わなかったわ。ふふふ。
[珍しく声を出して笑う。彼が嫌そうな顔をしても気にしない。
ソファから立ち上がり、ドリンクサーバーへと向かうと、冷えた水のペットボトルを取り出す。
再びソファまで戻ってから一口だけ飲み、二人が話していることを笑みを浮かべたまま聞いていた。
→へ**]
[首が捻じ曲がった自分自身の遺体を見下ろす。
小さな体。細い腕。
それでも、今まで『弟』が自分を『守って』くれたように誰かを守りたいと思ったのに。]
ねえ、ギリアン。
私には無理だったわ。誰かを守るなんて。
[白い患者服から零れた小さなカプセルを見つめながら小さく呟いた。]
[暫くそうしていたが、珈琲を飲むプリシラの傍へと向かう。
彼には見えていない。先程触れることが出来なかったその頬へそっと手を伸ばした。]
触れられない、わよね。
[己を殺した相手に対し、それを気にしていない。
寧ろ、慈しむような笑みを浮かべ隣へ座れば、男が入ってきた。]
貴方とは、もっとお話したかったけど。
もう出来ないわね。
[《外》から来たばかりの被検体。
実験前の被験者とは滅多に話すことが出来ない為、男から《外》のことを色々聞きたかった。もうそれは叶わない。]
そういえば、結局名前聞いてなかったわね。
私も名前言ってなかったけど。
[そんなことを思いながら、二人の会話を聞く。程なくケイトが談話室に入ってくれば、そちらへと視線を向けた。]
あら。ケイト先生。
残念ね。プリシラが私を殺そうとした時のデータが取れたら、貴女の実験に貢献できたかもしれないのに。
[殺人行為。感情を研究している彼女なら、興味を持っただろうと。
そんな事を思いながら、三人を見つめ口ずさみ始める。]
Twinkle, twinkle, little star...
How I wonder what you are...
[談話室で話される内容を、静かに口ずさみながら聞いている。]
Up above the world so high...
Like a diamond in the sky...
[サイモンが殺された時に傍にいたからと言う、男の言葉。
自分自身も同じ理由で彼は《適合者》ではないと思い――他にも理由はあった気がしたが、今はもう覚えていない――守ろうとした。……その前に、殺されてしまったけれど。]
Twinkle, twinkle, little star...
How I wonder what you are...
[プリシラの言葉に、口ずさむのをやめて笑みを深める。]
今日は、本当に貴方の口から意外な事を聞いているわね。
私の事、可憐な女の子だなんて。
[彼が実際もそう思っているとは思ってもいないが、プリシラに微笑んだ。]
実年齢なんて、私にだって分からないのよ。
[僅かに笑みを陰らせて。小さく呟く。]
[プリシラが談話室から出たのを見送り、残った二人の様子を見ていたが。]
そういえば、オスカー先生も亡くなったんだったわね。
ホリーはどこにいるのかしら。
[談話室から出ると、ふらりと廊下を歩き始めた。]
Twinkle, twinkle, little star...
How I wonder what you are...
[廊下を歩く。折り重なる死体に躓くことも無い。
寧ろ、そこに死体が無いかのように歩いている。]
Up above the world so high...
Like a diamond in the sky...
[廊下の先に人影が見えたのは、ホリーがヨーランダの瞳を見つめながら何か問いかけていた時か。
足を早めるでもなく、傍に近寄った。]
鋏…運命の糸を切るのは、誰だったかしら。
[昔読んだ神話を思い出しながら、そんな事を呟く。
鋏を下ろした様子のヨーランダを見つめ。]
貴女は、運命の糸を断ち切れなかったのね。
[表情を変えぬままに、その場からふらりと立ち去った。**]
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