238 聖痕の空〜Knockin' on heaven's door〜
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/*
なかのひとはつげんオッケーだよね?
お疲れ様でした
―天界・龍山の城―
[天蓋付きのベッドに、横たわる快流。
そして、彼の傍には、実体の龍王が傍に居た。]
『すまなかったな、快流……』
『おぬしには、重荷を背負わせた……』
[辛そうな表情の、龍王。
快流は、まだ目を覚ます気配は無い*]
[私は泣き濡れ、そして溢れる雫は頬を伝い昏い世界に細波を齎す。
されどここには今、玉露さんとわたしだけ。
カイちゃんがいない。
カイちゃんの命の燈火、消えるのを確かに、感じたのに。
其れなのに――ああ、貴方がいない。
同時期に消えたもう1つの魂の行方も知らず。
私は唯、謝り啜り泣くのです*]
/*斎さんもカイちゃんもおつかれさまなのですよ、とactで。
…そう。ですか。
貴女が、天の門を開こうとしたのですね。カイルくんの為に…
[少女の告解を静かに聞き]
何てことを。
私も天の門について詳しく知りえませんでしたが、確かに門が開かれれば世界は変わらざるを得ないでしょう。
けどね、アヤメちゃん。変わったとしても世界は優しくなんてなりません。その変わった分、歪な帳尻を合わせるように優しくない不幸が訪れるでしょう。
[現在、守るために都市を壊し、守るために闘う者たちのように。12柱の当主として厳しい言葉をかける。
けれど、この場所で自らごめんなさいと涙を流す彼女はもうそれを理解っているから]
けれど、アヤメちゃんは勇気があるわね。
たったひとりを選ぶことも
辛いことを辛いと言えるのも
「強さ」だと思うわ。
そういうまっすぐな気持ちが、少しだけ世界を美しいって思わせてくれるから。
私は好きよ。アヤメちゃんのこと。
私が臆病で意地っ張りだから、選べなかった色よ。
[世界は優しくない、けどそれゆえに美しい。
私は、この騒動を起こした一人である彼女のことを、ゆるしたい]
巻き込まれたなんて思ってないわ。私は、私の人生を生きたから。
[そうして、私も、すきなひとがいたの、と囁くように誰にも言えなかった恋の話をした。もう、時効でいいでしょう?*]
うん、そう。なの。
――彼が望まないこと。だったけれど。
それでも私は、彼を傷つけるであろう世界が、怖かった。
カイちゃんがいつか、死ぬのが怖くて。
[禁忌だとわかっていても。私は世界を変えたかった。
そう言い募る私に、気高く優しき麗人は、告げる。
扉を開けた世界が、全てを叶えてくれるとは限らない事。
理解はしていた。当主としての務めも。
開けた後のリスクも。
――でも、一番そのあおりを受けた貴女が。
貴女の声は子供に言い聞かせるように。
憎しみをぶつけられても仕方ないとも思っていた。
厳しき言葉をかける声。それは投手としてのもので。
ああ、強くて美しい人だ。
心根も、何もかも。
起こりうることもなかったであろう可能性を信じず、
己が願いのまま行動し、結果こうした争いを巻き起こしてしまった。
後悔する私を諌める声は、厳しくも温かい。]
[そして。勇気がある、と告げるその声に。
私は大粒の涙を零したのです。]
玉露、さん。
……わ、たしは。
―――――わたしは……――
わたしも、好き。玉露さんの事も、日向ちゃんだって、
カムイ君だって、斎さんやリッキィ、史夏さんのことだって。
みんなの、こと、好きだったよ。
優しくて、楽しくて、悪い子コンビが馬鹿をやるのを眺めて。
そんな日常も、大切だって、おもって、たのに。
[それでも、選びたい思いがあって。
その結果を起こした事。誰かを傷つけ、悲しませ。
大切な人をも傷つけたこと。
それが、哀しくて、辛くて申し訳ないと。
強いという、貴女を死なせてしまった事が、とても悲しくて。]
……玉露、さぁん……
[私は彼女に抱き付き、涙を流しました。
でも、耳に届いた彼女の秘めた恋の話。
それは、私がカイちゃんに抱いていたものと同じ様な、
キラキラ輝く美しいもので。
私は彼女の顔を見て。
素敵な恋ねと、泣きながら微笑んだのです*]
……ん。
[ぱちり、と目を覚ます快流。
外傷だらけで、痛々しい姿だったが、龍王の力で、その傷もふさがりかけていた。]
『目が覚めたか』
[語りかける龍王。]
俺……俺は、何を……。
[彼の記憶の欠如。
それはどこまで影響を与えているのか。]
『大丈夫か。 おぬし、名前は分かるか?』
[そう、問いかける龍王。
快流は、布団の端をぎゅっとつかみ、うつろな表情を浮かべる。]
……分からない。
何も、思い出せないんだ。
[戦いは、彼の名前をも奪ってしまった*]
[アヤメちゃんと話した後だったのか。それとも最中であったか。
蝶野の聖痕と呼応してか、私の執着かでイツキのまわりで起きていることがわかると気づくのはちょうどアキハくんが土御門に訪れたとき:84]
え、…アキハくん?
なんで…貴方が
[彼も、イツキを問い詰めにきたのだろうかと不安に思えば、そうではなく、聖痕を奪いに来たと隠しもしない]
おかしいわ。だって、アキハくんは…
[人一倍、掟を守り、世界を観測する仕事に従事して毎日を過ごしていると思っていた子が。
けれど、そのせいかあまりに子供らしさの抜けてしまっていた子。
彼もまた、アヤメちゃんと同じく譲れない何かの為に門を開けようということなのか。
先代の犯した罪の意識からだったとしても。もう一人の弟のように気にしていた彼のその決意に気づくことのできなかった自分が恥ずかしい]
蝶野の遺産…ですって
そんな…恐ろしいことを…アキハくんに…あの男(ひと)は…
[私はきいていないわ。先代は…守りを忘れ、鉱石に狂い、12柱を害そうとしたとしか。
蝶野の当主を継ぐとき、先代がまだ小さい大須賀から聖蝶を使ってまだ見ぬ鉱石を作り出そうとしたと聞いた。
聖蝶カラットは、蝶野の聖痕から魔力を蜜のように奪い、そうして蝶野の秘宝ともいえる緋火色金≪ヒヒイロカネ≫のもとを生み出す。
わたしの使っていた金色の槌であるジャックもそれを素材に創った。
けれどその秘宝のもとも、すぐに集まるものではなく、毎日少しずつ糧(魔力)を吸われることでできるものだから]
[だから、もし鉱石を作り出すほどの魔力をアキハくんから取ったのなら。アキハ君は死んでいただろう。だから、それは未遂…とまで言うつもりはないが、成功には至らなかったのだろうと。
そう、蝶野は判断したと。]
[けれど、蝶野が知りえぬ二重聖痕≪デュアルスティグマ≫ならば、
傷だらけの灰天使≪キル・ミー・エンジェル≫ならば、
その虚脱に耐えられるだけの魔力を生み出せたのかもしれない。人体への影響がどれほどあったかは図り知れないが。]
―幕間―
「不服かい?鉱石のもとまで灰色なのが遺憾なのかな?」
[蝶野の少年は、聖蝶によって魔力の抜かれた大須賀には目もくれず、
大須賀の願いを知ったうえで逆撫でするようなことを愉しげに言う。]
「君たちは、灰色だから美しいのだと思うけどね」
[聖蝶からもたらされた、鉱石のもととなる鈍い光をはなつそれを大事そうにかかえる]]
「まあ、説教なんて僕らしくないね。やめやめ。
いいだろう。キミが望む意思≪イシ≫、確かに見せてもらったよ。
ふはははっ面白い。
≪起動≫とはね。ふふふ。
こども見るアニメのような陳腐さだが、純粋な願いだ。
こどもでなければ見れない夢ともいうべきかな。
素晴らしい宝石を作り上げてみせよう。約束しよう」
[昏くて寒いこの場所で。
今迄あったのは玉露さんしかおらず。
カイちゃんはどこだろう。
そして――もう1つの気配の主も、どこだろう。
分からぬまま、知らぬまま。
私は瞳を唯、閉じていたのです。
地上では結界の中で奪い合いが加速して。
裁きなのかそれとも。光が周囲を焼きます。]
[その中でも泣き続ける私は、ある意味滑稽なのでしょう。
後悔はしていなかった。ですが
今、私は悔恨か懺悔か。
大粒の涙を、零していたのです**]
[最期の記憶はとても寒かった。
だから今もとても寒い。
凍ったこの身体は動くまい、そう思っていたけど。]
は……、
[吐き出す息は白く、
無理矢理に身体を動かせば、ぱきん、と音がして指が折れて落ちた。
カ……ツァ――――――――ン
凍った指が地面を叩く音。]
[痛みなどない、感覚もない。
しかし驚きはそこあって、でも動く事もできず。
呆然としていれば、やがて。]
…夢?
[身体は凍っておらず、指もそのままだった。]
ああ、幽霊も夢を見るのか。
[死して尚、夢に縋る、なんて罪深い]
[ここがどこだか分かってはいない。
だが死と現実の狭間なんだろうと思っていた。
だからきっとここには彼女がいるはずで。]
……ふむ。
[今会うには少々気まずい。
彼女を殺したのは間違いなく己であったし。
そこは信念が故、仕方ない部分もあった。
だが続くロボット戦は。
あれは、完全に趣味だった。]
[ちなみに言っておくがロボット開発は土御門の秘匿すべき情報ではない。
あれは純粋に”斎”として研究開発していたもので、土御門は関係ない。
土御門の技術の結晶ではあったけど。
土御門が秘匿にしてまで研究していたのは生物兵器であった。
その研究の流れで斎の能力、血を扱う能力は生まれたのだ。
己の中に最近を取り込みばら撒く事。
それを目的とした実験、研究。
斎の血液は未だ無害だが、このまま研究が進めばなんらかのウィルスを注入していただろう。
ウィルスの種類によっては爆発的に火力が増す物、毒を孕む物、精神を犯すもの、様々な効果が期待できた。]
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