86 「磊落の斑猫亭」より
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― 回想:深夜の出来事 ―
[ごそごそと寝返りを打つ。
眠れない。
隣の部屋でソフィアが殺された、今夜も誰か狙われるかもしれない。
そんな状況で呑気に寝られる程図太くはいられなかった。
どうせ鍵を閉めて閉じこもっていた所で意味があるとは思えない。
恐らくソフィアも今の自分と同じような状況で襲われたのだろうから。]
……喉、乾いたな。
[水が欲しい。
それよりも酒を。
酔って寝てしまえたらきっと楽だろう、そう思い厨房へと向かった。]
[厨房でコップに水を汲んで飲み干せば、冷たい刺激に頭が冴えるようで。
すでに誰かがここに来たのだろう、食料を漁った形跡が見えた。]
ま、人間食うよりはよっぽど真っ当だな。
[食い散らかしたまま放っておくのは頂けないが、片付けろと煩く言う人間もいない。
酒はその人物が持っていってしまったのか、それとも元々なかったのか存在していなかった。
暫し考えて、地下へと降りる階段へと向かう。
確か女主人自慢のワインセラーがあるとか聞いた覚えがあったからだ。
地下に降りる階段は暗く、明かりを持って来なかったのは失敗だったかもしれない。
職業柄少々の夜目は効く方ではあるが、それでもほとんど足元しか見えない。
慎重な足取りで階段を降りていると、ふと気配を感じて顔を上げる。]
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