35 WWV 感染拡大
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―回想 死の直前―
何故?
言ったでしょう。
馬鹿は大嫌いだって。死ねばよかったって。
[近づくゾーイに投げ続ける言葉。
危ない。私の冷静な部分が警告する。
けれど、恐怖に急かされる言葉は止まらない。]
[ゾーイがバールを拾う。私が手放した。
頬擦りする。自らの手へとめり込ませる。理解できない。
気味が悪い。怖い。吐き気がする。]
人のわけないでしょう。
娘でもない。
鏡でも見たらどう。
その姿のどこが人なのよ、化物!
誕生日なんて知らないわよっ!
そんなの一人で―――。
っ――――――――!!!
[音にならない絶叫。訪れる暗黒。滴る生暖かい赤。
迸る激痛に心臓がどくりと跳ねる。]
はっ…あ…………。
[短く搾り出すような息。
どくどくと不規則に鳴る鼓動を聞きながら、私は崩れ落ちたのだと思う。
痛みと恐怖と混乱と不安と憎悪と。
様々な抑えの聞かぬ感情が入り混じる中。]
誰…が………。
[愛してなんてやるものか。
闇に閉ざされた視界。
意識もまた闇の中へと消えた。**]
[《弟》に向かって呟いた言葉。
足元に転がる、幾多の死体。コレが全て星になると言うのなら。]
とても、綺麗なんでしょうね。
[見たことのない――記憶の無い、星空を思い浮かべる。]
Twinkle...
Twinkle...
Little star...
[口ずさむ声は、静かに廊下に響いていた。**]
―回想/死の直前―
[どさりと身体の上に何かの重さを感じるが、動けはしない。
引き抜いた鋏の先の目玉が自分の眼窩に押し付けられ、離される]
あひぁ、ひ、いあ、はひぃ
[片方しか無くなった視界が暈ける。
距離感がつかめなくなるのは、意識が朦朧としているせいもあるのだろう。
ひきつった笑い声も、だんだん弱く、微かな物へと形を変えて]
いや、よ。
うた、な――。
[めきめきと音がする。自分の顔からだ。頬を喉を穿たれる音。
何度目かの衝撃で、鋏が眼窩の奥の脳に至る。
ぶつんと途切れる神経回路。身体の機能が、動きを止めた。
最期に聞いたのは、グチュ、と何かを潰すような音―**]
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