190 やどかりさまの、暇潰し
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それならなんとか、せめて戻れるようにして頂かないといけませんね?
[憑かないで下さい>>4:*4と笑いながら言われれば。私も少し笑ってそう返します。そうして、彼の持つグラスを、私も見て。]
何も起こりませんように。
[私は小さく、呟きました。]
あ…れ…?
[グラリと身体が傾く。目の前に広がる黒。
そして、かつての感覚。自分が何者でもなくなってしまうような、虚無感。
また"僕"は、存在しないモノになってしまった。]
……なんで……?
どうして、またこの体……
[薄くすけた身体。その姿がひどく醜く、無意味なものに感じられてーーーー]
このまま、消えちゃうの、かな……僕……
――部室の外――
……
[エイリの声を部屋の外で聞く。
名乗る声は、悲痛な叫びよりも辛く届く。
身体から離れた意識でも
何故かしっかりと煙草の箱だけは握られていた。]
………嫌だ………よ……。
消えたく……消えたく………な…よ……。
[薄れる気配。薄らぐ肉体。声までも、かつてのように虚空へと。]
誰にも、届きやしないんだよ。
[先ほどまで入っていた肉体の声が聞こえるような気がした***]
なんだったか
これは、そうだ
[手の中の煙草の箱に少し力を込める。
それは妙に暖かく、
けれど決して潰れることの無いカタチだった。
じっと見つめながら]
漸く分かったんだ
少し、似ているんだな
[誰にともなく呟いた。]
そうやって
[ 声を聞く。
自ずとアイツなら。
エイリならそこに行き着くだろう、と。
自身の水が、費えるまで。
緩く首を左右に振った。]
自己犠牲をするんだ
お前も、俺も
けど、お前の声を聞いて――
[辛そうな、その声を聞いて。
間違っていたんだ、と気づいた。
時は帰らない。ただ、エイリの声を聞くしか出来ず。]
……
[扉を開けないだろうか。
そっと手をのばす。
しかしそこには膜のようなものがあり、
扉に触れるより先に、手を弾かれる。]
報い、なのかもしれないな
[そう呟く表情は、情けないものだった。]
……
[その場に座り込み。
中の会話を聞いている。]
あと少し
[右から左へ。
煙草の箱を移し、
右の掌を握ったり開いたりしながら、]
あと少し、なんだろう
[後悔をすればきりがない。
けれどそれももう、長くはないんだろう。
つい先ほどの光景を思い出す。]
俺に出来る事は、
[人差し指を見つめながら、]
おつかれさんって言ってやるくらいだ
[きっと、頑張りすぎて
眉尻を下げながらも笑うその顔を
おなじように、人差し指で撫ぜてやるくらいだ、と。
会話を聞きながら、薄く笑む。]
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