25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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私の病は、受け継がれるもの
この世のありさまを、壊す
そのために……酷いことを山ほど。
業を返すどころか、増やし続けて
……主さまもおなじ?
[半歩後を手引かれながら
ふわり、雲の上を歩くような心地
柔かで
それで居て物足りないと思うのは
死しても欲が出るものなのか]
一緒に逝けるなら、どれほど良いか
今このように、手を繋いで
何処までも
お前が犯してきたことは、お前の意思がそうさせたのか。
それとも、病であるからか。
――どちらでも、良いか。
[ふわりと。
応接の間を出て廊下を歩く。今は誰にも見られることはなく。
否。
あちらにいる二人の花には見えたかも知れず]
一緒に逝かないのですか。
辿り着く場所がどこでも。
私はこの手を離すつもりはありませんよ。
[艶の混じる硬質な声。
眉尻は微か下がっている]
…―わがころもでは
つゆにぬれつつ……
[小さく呟く。
りん、と現世が啼く度に
響いて常世もりん、と泣く。囁く歌。]
…… ――――
|
[乱れた呼吸を整えながら]
屋根の上に桃色の髪の影が見えて。 この屋敷にあんな髪の色は幸得しかいないから――っ。
ロビンの事でまさか……。
[最悪の事態を想像して、幼いかんばせを曇らせる。 目の端には涙の粒が浮かび、 友を助けて…と。小さな声で願った]
(337) 2010/08/08(Sun) 02時頃
|
……私はイビセラの花
言ってしまえば病そのもの
今は
人を喰らう力こそ無くとも
[同じ場所、同じ道を通る。
されど現世のひとには見えず]
逝けるでしょうか。
人でなくとも
其の手が私を離さぬなら
[桜の傍らに、ざわめく気配。
冬の色は彼の内]
――
[櫻は
要らぬかどうか答えは無く。
ただ、現世で告げた言葉
彼に届いていなかったのかと、愁い混じる]
[駒鳥と、センターの人間がやってくれば
彼の傍にあった気配はなりを潜め息を殺した]
|
[刷衛の声に、涙を拭って。こくりと小さく頷く。 大きな身体の後ろを着いて、屋上へ向かえば。
鋏を手に笑う友の姿見えて]
……幸得っ。
[泣きそうな声で、その名を呼んだ]
(343) 2010/08/08(Sun) 02時頃
|
[届く鈴の音。
そちらを一度見て]
思うのならば、今は届かぬほうを思うと良い。
寂しいからですか。
貴方がなくのは。
その鈴の音は、貴方の涙のようです。
[見る視線は生きていた頃と同じ。色はなく。
けれども僧であったものとしての慈悲を浮かべる]
|
セシルって……どうしてあなたがその名前を?
[冬に凍える駒鳥にしか許さなかった名前。 それを目の前の黄泉花が口にすれば、 ちり…っと胸の裡が痛む]
生きるって、謂ったんですね? なら、あの鋏は……。
[黄泉花と友と。 紅石榴は交互する]
(346) 2010/08/08(Sun) 02時頃
|
小僧 カルヴィンは、始末屋 ズリエルが友へ近づいて行くのを、じっと見守っている。
2010/08/08(Sun) 02時頃
逝ける。
逝けぬなら、私も往かぬまで。
[足を止めて、空を見上げた。
欠けた満月]
ロビン、お前は私の花です。
こちらに来た以上、それはずっと。
お前が厭というまで。
[月の下、花の身に触れて、心の臓が時を止めたのと同じように、かき抱く]
――…ボクの為に、染めた髪
[小さく呟く声、僅か。
これは聞こえぬ方が良い
きっと、彼にとっては]
|
嘘は……つかない。 じゃなきゃ、ロビンが心を許したりしない。
[紅石榴は正面の友を見詰めて]
彼は、何処までもまっすぐで不器用だか、ら――…っ!
[剪定され行く桜の花弁に、息を飲んだ]
(355) 2010/08/08(Sun) 02時半頃
|
[鈴の音に、主が声かけるを花は傍で控えている。
主が話すに口を挟むのは――
そう雛鳥に告げたのは、未だ昨夜の事。
足を止めた彼を見ている]
ボクも……法泉さまの花
ずっと
切り捨てられる事は、無い?
[不意に視界が覆われて、腕に擁かれたのだと知る。
頬を胸に摺り寄せて、鍵爪の無い手が背に回る]
厭などと、誰が謂うでしょう
私は主さまの花
人食でも良いと、選んでくださったのは主さま
お傍に置いてください。
共になら、奈落に堕ちても構わない
|
[友の言い分に、つかつかと。その前へ。 笑う顔へと平手を振り上げる]
心配するに決まってるじゃないか。 ロビンがあんな事になって、君までって……。
僕は友を二人も、亡くしたくはないよ……。
[俯き、長い睫毛が震える双眸から雨が降る]
(364) 2010/08/08(Sun) 02時半頃
|
何故切り捨てると?
お前が私の花だという以上は――。
私の花はお前だけだ。
[摺り寄せられる頬。
頬に触れて、その眸は此方を向くのだと、向けさせて]
堕ちるまえにも。
もう一度歌を聴かせておくれ。
お前のその顔で。
私の為に、啼いてほしい。
[笑みを見せて、唇に触れる。
触れる感触は、生きていた頃と同じもの]
[僧の慈悲。
届くのは、こえ。]
……、ないてなどいない。
[――――りん、と
小さな鈴の音。
眉はきつく寄せられて
けれど涙は流さない。
重なるように華月と、朧の会瀬を意識に重ねる。]
[見ている]
[感じている]
[願っている]
―――――朧さま、
……―――華月……
[己をきつく、抱いて。
震える肩、
―――りん、と鈴は鳴るばかり**]
[幾人も、花を囲うなら
気に入りが変われば切り捨てられる
習ったこの世の有様は、恐ろしいもの。
なれど]
うたを
……詠いましょう、主さまのために
[頬に触れる手に僅か震えて
冷たい冬色は嬉しそうに細まる]
奏でる曲はお任せします
穏やかな春でも 熱さ溢れる夏でも
実り多き秋も 身引き裂く寒い冬でも
[そっと瞳を閉じる。遠くで鳴る鈴の音も
流れる血の鮮やかさも、今は意識の外に追いやって]
|
……善くない。 ロビンは泣き虫は嫌いだったもの。
[カルヴィンと、彼が口にすれば。 ぐしっと、袖で涙を拭いて]
その名前……久し振りに、聞いた。 君と、ロビンと。二人だけの名前……。
[思い出すのは、学び舎での戯れの日々。 それを遠くに感じるほどに、 自分たちは変わりすぎてしまって。
また一つ。鳥は雨を降らせた]
(377) 2010/08/08(Sun) 03時頃
|
お前の歌は、心地よい。
啼く声と、同じだからかも知れぬ。
[手折った朝のこと。
今は遠く感じられて。
けれども、腕の中にあるのは確かな]
ここでは、少々無粋か。
月の見える場所でと思うたが。
[窓が開けられるのなら部屋にでも、
あちらの騒ぎは僧の耳には僅かに届くだけ。
未練は今ここに。
現世になどないのだから]
――思いの為らぬ秋の歌を。
[そう耳元で告げて、触れる指は優しく。
あの朝とは違う、慈しむ様な口付け。
ないていないと言う鈴の音。
目は向けず、ただ思うだけ。
やはり頑固だと]
ロビンは、駒鳥の名ですから。
[温もりに擁かれ、背伸びをして唇啄ばむ戯れひとつ。
喧騒はそこかしこ
腹に残した種は思うところあれど、花は主の為に咲く]
月の下で……嗚呼
狭間にあっても風流な
[くすくすと、毀れる笑み。
薄灰の、洋装でなく着物を纏うて
耳元囁く言葉に震える]
――思いは、為らぬのですか
[柔かな肌を慈しむ指に、唇に
短く、切ない吐息を漏らした]
|
腹の子……?
[刷衛に抱き上げられた友の言葉に、 紅石榴を向ける]
……ろびん、の?
[震える声で呟いて。 まじまじとその腹部を見詰める。
心の裡では、いつかあの人に…と。 遠い夢に恍惚しながら]
(383) 2010/08/08(Sun) 03時半頃
|
秋には様々な色がある。
お前の声に合うものを探すと、そうなった。
冬でも良いが、冬では寂しすぎる。
物悲しいくらいが、ちょうど良い。
[月の見える廊下。
庭を前にふわりと腰を降ろす]
風流だというなら、ここでも良いか。
[膝の上に花を抱き寄せる。首元の合せを緩く、その白い首筋へと触れて]
|
ずっと呼びたかった。せしる、って。 月の瀬に、幸せを識る―――
呼んでいいの……?
[そう尋ねたのは、 刷衛に若桜が抱えあげられる前のこと]
(385) 2010/08/08(Sun) 03時半頃
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[欠けた月のした
人は二人を見ること能ず]
それでは、あきさめのうたを
主さまが望むままに
[膝の上に乗れば、見上げずとも唇が触れる距離
薄灰の、着物の上でなく直に触れた指
感触は確かにあって、思わず息を呑む。
身じろぎ、両の手が縋るように着物の両袖を引いた]
|
[刷衛に抱きあげられる若桜の姿に、主の温もりが恋しくなる。
きゅっと、自分の身体を抱く様に腕を回して]
……僕、そろそろ帰る。 きっとなよたけの君が待っていらっしゃるから。
あまり刷衛さまを困らせちゃだめだよ。
[なんだかんだと言いつつも、彼の指先が。 刷衛の服を掴んで離さないのを、鳥は判っていたから。
最後に、せしる…と。名を呼んで。 鳥は鳥籠へと戻っていく]
(387) 2010/08/08(Sun) 03時半頃
|
|
[鳥は知らない。 否、知っていて、知らない振りをする。
桜が本当は散るを望んでいる事を。 だけど先に逝った友の望みが、宿る種が。 彼を辛い現に置き留めている事も]
(――……だけど、ね。 僕はそれでも君に生きていて欲しいんだ。
君の生は、ロビンの生きた証。 三人在るのが、僕たちの常だったから……)
僕は一度だって。 君が友である事を、知られたくないと思った事など、ないよ。 セシル……。
(390) 2010/08/08(Sun) 04時頃
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[紅石榴を濡らした侭、鳥は笑って。
残酷に知らない振りをしたまま、 主の元へと翔けて行った]
(391) 2010/08/08(Sun) 04時頃
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