8 DOREI品評会
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[舞台上の少女の悲痛な願いは客席に、私の耳にも届いて。
じくりと胸は痛む。
客席の男と主人が入札する様子も無く。
恐らくこのままでは、あの子は―――。
自然と眉が下がる。
無情にも時は過ぎ。
道化師のアナウンスが響き渡った。
落札されたNo.は…5。]
―――…。
[問いかけても、返らない答え。
その理由を知る由は無い。
ただ、向けられ続ける背中に漆黒は徐々に翳って。
俯き、りん――…と鈴が啼いた時。]
『ごめん、 な さ、…。』
[唇から零れ落ちるように紡がれたのは。
彼の背だけに向けられた、謝罪の言葉。
小さく、震えたその声は彼の耳に届いたか。]
[痛い。
―― 痛い。
―――― いたい。]
……
[だから 尚、痛みを与えてはいけないのだと
振り返らない。
振りかえれない。
耳に小さく届くのは鈴の音と、 謝罪の言葉。]
ッ…
[唇を 静かに引いて 堪える。]
─ オークション後 用意される花束の話 ─
[ジェレミーの元へ送られる花束。何十本もの薔薇で埋められた柩のようなもの。装飾的な箱の中に、かぐわしい薔薇とジョーゼットのドレスで飾られたカルヴィナが横たえられている。]
清らかなまま死んだ乙女か、
女装の少年のようにみたいだね。
後、スカートをめくらなければさ。
[梱包は奴隷品評会の主催者ヨアヒムに完全に委任する事も出来た。グロリアは最初そのつもりだったかもしれない。けれども、今、イアンが梱包の最後を仕上げようとしている。]
ねえ、カルヴィナ。
手枷と足枷は、会場に運ばれた時も付いてたっけ。
意識があるまま、箱詰めされて運ばれるのは怖いかな。
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