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[彼はきっと、なにひとつだって理解しちゃいなかっただろう。それでも自らを引く腕を拒まなかったのは、それを支えて進む方向へ自らの足先を向けたのは。
ひとつ、大事なものはまだ残っていたから。]
――――嗚呼そうだ、“花”はこの部屋にあるかい。
[全ての喪失と同時に彼が得たのは、己の意味*]
タルトは今は眠ってる。小さい体に…睡眠薬が多かったのか、わからないけどちゃんと呼吸はしてたよ。
[
このやり方はどうにもトレイルに似てしまった感があるが。
”今”のメルヤは気にしなかった。]
ケイトも、ナナオも、強いね。
恋する乙女は、無敵だ。
[少しだけ茶化したような、声を出す。]
ケイトに頼んでる。きっと、彼女なら連れて来てくれるよ。
正直言うと僕はまだ、トレイルがどんな状態か知らないんだ。
でも。予測は、つく。
……ナナオ。少し僕の話を聞いて貰えるかい?
[僅か距離を取ったのは、体が硬質化しているケイトでさえも冷気を覚えたからだ。
心の一部が冬の夜空に投げ出されたまま。体の震えを悟られないように、ゆっくりとした声で語りかける]
トレイルのことが、好きなら…少しでも、一秒でも生きることを、選んだ方が喜ぶかもしれない。
あいつはね。あれで、寂しがり屋だよ、多分ね。
本当はみんなに覚えていて貰いたかったんだ。
自分はさっさと綺麗に消えて、ね。
[どこか。遠いところで話しているような気分だった。
それでも、メルヤは必死に、穏やかな笑顔を浮かべる。
どこか空虚なものを、ナナオに悟られないように。]
メモを貼った。
別に貴方が与えるとか与えないとかはどうでもいいの
[一刀両断
私は、与えられた恩恵に気付かず笑みを浮かべる男に、眉をひそめる
つまりは――私は非常に、目の前の男にむかついていた]
貴方自分が神様にでもなったつもり?
いいこと、良くお聞きなさいな
――貴方が与えるんじゃない。与えると感じるのは受け取り手次第
互いに、受け取るのよ
[緩慢な動作で、もう片方の手は彼の頬を打つ
打つといっても触る程度しかできない。其れほどに私の関節は手の方も硬化していた
″人の気持ち″を、
舐めんじゃないわよトレイル・ステーラー]
[其れでも彼を連れて共にナナオの部屋に行くのは
きっと私は見たいから
メルヤをからかって笑っていたトレイルを
ナナオの歌に耳を傾けていたトレイルを
トレイルを恋うた輝くナナオを
嫌そうにしながらもトレイルを気にかけていたメルヤを
私は、この施設の仲間が好きだから]
[花の事に関しては勿論と、告げよう
ああでもね]
あるわよ。この部屋に花はある
――それと、貴方の瞳にもね
[告げれば目指すはナナオの部屋
其処につけばノック――は、流石に体力的にきつかったので
そのまま扉を開けたが
果たして中に居る2人は、何をしていたかしら*]
【人】 透明女子会 ヒナコ 『キルロイさんの翼やわたしの羽は、 (60) 2015/06/14(Sun) 01時頃 |
[タルトちゃんの容体を聴いて、逸る気持ちを抑えて。
どくり。胸に手を当てる。――内心。この拘束に繋がれていても。
次、があるか――分からない、と思うけれど。]
うん。
[
――でも。あたしは、強くなんてないと思った。
不安で――。今更ながら、臆病風に吹かれそうになっている。
・・・うん。分かるよ。・・・消えて、か。
[わずかに距離をとったことに、ナナオは気がつかない。]
ね、メル・・・・あ。
[――あたしに、トレイルに出来ることはあるのかな。
ここに来て。――そんなことを、思ってしまう。
それを言葉にする前に――、再会の扉が開いた。]
…それでこそ、ナナオだよ。
[
メルヤは恋を知らないが、恋愛相談では上級者と言って良い。
本当に、彼のことが好きなのだろう。命を張ってでも、一目会いたいと思う程に。
寒気が増してきた。遠く遠く、子どもの声がする。ナナオに意識を向けるべく鳶色の双眸を真っ直ぐに見つめた。]
[
メルヤは扉を開き、ケイトと連れて来られた風情のトレイルを交互に見る。
開け放しにして、一度ナナオに近寄り、小声で告げる。]
「僕は嘘が下手だからね、無いかもしれない。…だけど、あるかもしれない。
君の心が、彼に届くことを願ってるよ」
[そう告げて、メルヤはナナオから離れる。かすかに全身纏う冷気に気づかれたかどうかは、わからない。]
【人】 透明女子会 ヒナコ[ (66) 2015/06/14(Sun) 01時半頃 |
・・・?
[メルヤの囁きと一緒に、冷風に吹かれたような気がする。
不思議そうに首を傾げたが、その小声で囁かれた内容もナナオはよく理解していなかった。
――あたしの心の中を読んだような、気がする。
それが不思議で――、]
メルヤ・・・、それってどういう。
[訊ねて。――扉の向こうへ見えたトレイルに、眼が逸れた。]
[
体の内側から軋む、寒々しい体に纏う気配は雪山の遭難者のように今はメルヤの体に熱を放ちはじめた。熱気と寒気が、メルヤから放たれる。]
やあ。トレイル。昨日振り。
……目も見えてないのかな?
随分、早く広まったんだね。
[メルヤが彼に話しかけるにしては、至極穏やかで冷静だった。
冷静過ぎると言っても良いだろう。
付き合いが長い者には奇異に思えただろうが。最早何も残っていないような態のトレイルには届かなかっただろうか。]
僕は君に、言って置こうと思うことがあるんだ。
[メルヤはトレイルに近寄り、彼に聞こえるように耳をそばだてた]
君が大事だったのは、薄紫だけだったの?
[トレイルを見る目にも、触れる手つきにも。
怒りも悲しみも何も込めていない。
かつて胸の内にあるものを、”ナナオ”のために吐露しているに過ぎなかった。]
他の何も誰のこともどうでも良いなら、はじめからそうしていれば良かったんだよ。
適当に構った挙げ句に本心はどうとも思ってないなんて、溜まったものじゃないからね
どこまで進行したか知らないけど
臓器移植の話を知ってる?
心臓を移植した人が、全く知らない相手の記憶を鮮明に追体験するんだって。
心は、そこにだけあるんじゃないよ。
全身にあるんだよ。
出なければ……。
[そこでひとつ区切る。トレイルにだけ、聞こえるように、声を潜めた]
”ぼく”はこうは、ならなかっただろうね。
[あの冬の日に君が見つけなければ、凍死していただろう。
だから、幼い自分が、七年前の幼いメルヤが蹲って泣いている。ピエロの彼が亡くなったと聞いて。
どこかで、メルヤは彼ならば愉快に生きていると心のどこかで思っていたようで。
支えを失った心が泣いている。あの冬の夜空の下の《幻》の中で――誰も来ないと嘆いているのだ。]
……さて。ナナオ、僕にはもう頑張ってってしか言えないけど。
もしタルトが起きたら連れて来る。
[トレイルにだけ聞こえるように潜めた声は、身近にいたケイトに聞こえたかどうかはわからない。
どちらでも今のメルヤは気にならなかった。]
ケイト?
車椅子どうしたの?
持って来ようか?
[そう、ケイトに話を振った*]
[トレイルを待っていた2人
メルヤが囁いた言葉はわからなかった――否、うっすらとは聞こえていた
でも、それは″ケイト″が口を出す話ではないから
...は黙って彼がトレイルに紡ぐ言葉を、聞いていた
ナナオの瞳はトレイルを捕える
希望にあふれた、優しい瞳が伽藍堂の微笑み浮かべる男を捕える
少しだけ、メルヤの言葉がわかった気がした
″ナナオは彼にはもったいない″と
奇遇ね、私も今そう思った所よ
なんて、過去に戻れたら貴方に言うけれど
生憎タイムマシンなんて便利なものは此処にはない]
[と、メルヤから話を振られて...は小さく、小首を傾げる]
ああ、私この人連れてくるのに邪魔だったから置いてきちゃったわ
……正直脚が辛いのはあるけれど
でも貴方車椅子の輸送方法とか知らないでしょう?
良ければトレイルの部屋にあるから、其処まで私を送っていってもらえないかしら
多分今こけたら、私立ち上がれないかも知れなくって
[というお願いを、1つ
――こっそり、ナナオとトレイル2人っきりで話をさせてあげたいなと
そんな思いも、あったり]
――――言うね。
[説教染みた口調と、手荒い頬打ちに零した言葉。仮に触れる程度のそれだったとしても。見えない彼には、触れられるだけでも、それは自らへの大きな干渉になりえる。]
当然何を言い出すかと思えば、説教かい?
そこまでおひとよしじゃないよ、俺は。見くびられたね。
[荒い言葉に反して、口調は落ち着いていた。むしろ淡々としていた。込められているのは冷たくも感情の確かにこもった声。]
残念だったね。
――――俺にはもう、君と誰かが望むような“受け取り”はできないんだよ。
[とん、と左手が示すのはこめかみ。軽くさした指先でぴしりぴしりと音がする。]
・・・えっと。その。
[ナナオは少し、困ったようにトレイルの方を見た。
何て声をかけて良いのかと、迷ってしまったのだ。
髪の毛が結晶化しているのを見れば――、何も言えなくて。
――そして、トレイルと話すメルヤを黙ってみていた。
メルヤは、トレイルに怒っている・・・?
それが、どうしてなのか。
あたしには分からない。
トレイルは、病状が悪くなって記憶を失っているように見える。
それを見たメルヤが、"ナナオのため"に吐露していることにも気がつかない。]
分かってるんだろう、君は。
保たれない記憶に、求めちゃならないものだってある。でも俺は、できることなら、きっと、たぶん、なんて穴を無理有こじ開けて
――――――行こうって言ってるんだ。
[上がる言葉に対して、冷たい言葉。口角を上げる口元は、変わらなかった。終わりは、近い。人は出来ることを探すのかい。違うだろう。…………したいことを探すんだ。
言葉は違えど、きっと彼女と為そうとしてることは同じなのだろうけれど。“トレイル”の精神はまだ、彼の中にちゃんと、ある。]
――……“花”があるなら、いいんだ。
[それが、俺の持てる“全て”を表してるから。呟くことのないその言葉は、彼の瞳を虚ろにさせれど、盲にさせど、決して――濁ることのない、水晶に。
手を引かれそのまま連れられれば、どこかの部屋の、扉があいた。]
メモを貼った。
【人】 透明女子会 ヒナコ『白い世界にひとりきり (77) 2015/06/14(Sun) 02時頃 |
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