25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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[長い睫毛が震えるを見る。
心振るわすように胡蝶は肩を揺らした。
浮かぶ表情は微笑。]
礼を謂うんは、わての方やよ。
[悲しみも愛しみも、入り乱れて。
哀しくも、美しい、物語の行く末を、二羽は並んで見詰める。
と、糸が新たに結ぶを感じるか。
白鷺も共に感じるなら、貌見合わせて。
視線向ける先に、憂い帯びた主はあるやなしや。
――主が求めるのなら、花にもなろう。
糸を手繰り寄せるように、重なる二つを見守る人の元へ。]
朧様……―――
[声をかけたは、鵠か華月か、両方か。]
霞の事は気にかけてやれば良い。
あれには花もいる。
あれ等も…良きほうへ向かえるよう、必要なら手を引いてやるがいい。
[男は告げる。
それから焼けてゆく館を見る]
お前達は花主が殺したも同じ。
だから、死後ぐらいは好きに望み――――自由に。
落胤 明之進は、ふと、そこにある存在に気づく
2010/08/09(Mon) 20時頃
|
[憂うまま、重なる二つを見守るその姿、 ――何を想うのだろう、言葉も無く見つめる。]
(@15) 2010/08/09(Mon) 20時半頃
|
…――霞さま
かりょう
鳥もけものなら
彼らは同じところへ
ゆくでしょうか
[呟き、視線は二人へ]
自由に……なら、花主辞めた貴方さまは?
死した後の魂は何処へ逝くか
追いかけてみたいと思えども――
[現世に気を留めることはこの二つだけなのか、
燃える屋敷で逃げる他の者達の行く末までを
すべて見ようとも思わずに。
何か、繋がるものを感じる。
それが花達と繋ぐ糸だとは知らず、結ばれる先を見て。
名を呼ぶ二つの姿に浮かぶのは憂い混じる微笑み。]
―――…鵠、
―――…華月、
[呼ぶのは、花の名前。]
|
[重なる二つを見守る姿に、 双花のその人を呼ぶ声に憂いに微笑みが混ざるを見れば、 ひとつ頭をさげて――]
……花のうてなにて、 お会い致しましょう。
[恨み言の一つでも 言うべき相手は既に彼岸の身 燃える鳥籠を――花と月を一度振り返れば、
業火の中に歩み去る]
(@16) 2010/08/09(Mon) 20時半頃
|
……朧様
[――かける声は重なる。
名を呼ばれ、
並ぶ双翼は共に憂う朧月を見た。
高嶺の、朧の、花として。]
|
[逃げいく人々の影が見える、 軋む家屋、燃え爆ぜる音――いずこかでまた梁の落ちる。
焔の中で、煤にも穢れず、 白き衣をたなびかせ、
逃げる人々を見送るように、佇む。 その薄れゆく姿を目に留める者はあろうか]
(@17) 2010/08/09(Mon) 21時頃
|
[主を呼ぶ声は重なった。
憂う微笑みの主を前にして、躊躇うように華月は言葉を紡ぐ。]
ロビンは、霞月夜様は
欲しいもの全部手にいれよった謂いました。
朧様は、朧様の願いは、叶うとりますか?
[聴いてどうすると云うのか。
もしかすれば、傷を抉るような言葉なのかもしれない。
それでも、尋ねた訳は……―――。]
[不意に名が出ればそちらへ意識を向けるけれど]
……
[主の手を握ったまま、口を開かない。
視線は紅く染まる屋敷へ]
[現世に在った頃見た儚き姿が此方に頭を下げる。
現世の者と気に留めていなかった姿が不思議と、
近い場所に在るように感じられれば察するのは早く]
……熱いぞ…?
[引き止めるでもなく、それを感じぬことも判っている。
冗談の類のひとつのつもりなのだろう。
黒檀は、現世よりもはっきりと見える花の姿を見つめ]
――…想う場所で…逝けるよう、
[彼岸へと。業火へと入る花を見送り]
……悔いなく…、な…
|
[―――想う場所、 ああ、その場所で彼の人は逝けたのであろう、と。 うつつに聞いた、悲鳴の出来事、 片割れを語るその姿を思い出す。 ――想う場所、描けども、 描けども]
それもまた、未練にしかなりませぬゆえ…… そうですね、せめて散るなら、
花らしく。
[振り仰ぐは本邸、燃え盛る大広間]
(@18) 2010/08/09(Mon) 21時頃
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[焔はその紅を深くし、大きく咲く業火の花弁。
鵠と華月、二つのこたえが返ると小さく頷き、
結わず下りた黒檀の髪が動きに合わせて揺れた。]
―――…華月…?
[常とは少し違う躊躇うような様子。
訊かれる言葉に黒檀が華月を見とめて、一度瞬く。]
……未だ、わからぬ。
[瞳を伏し添う月と鳥を見下ろすこともなく、
朧の月は選んだ二つの花の姿を映し]
…何故、そのようなことを…?
|
[何処なりや、知らねども。 おそらく声は届くであろう]
―――こてつ、 共にひとさし、如何です?
[彷徨う花に呼びかける]
(@19) 2010/08/09(Mon) 21時頃
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天上の鳥ならば、空へ続く道も知っていよう。
[それに、と、そこでは言葉を切った。
傍らにいた童を思えば言葉が切れる]
私は
[口が何かを告げかけて]
お前に言う事ではないな。
[明之進が業火に呑まれて行く様を、主の後ろにて見守る。
熱くはないのだろう。
けれど、その姿は、主が紡ぐ言葉が、華月の心を焦がす。
生まれる感情は ―――やはり、哀しい。]
朧様は、わての願いを叶えてくれはったから
やから……でしょか。
全ては巡り合わせもあるやろうけれど。
でも、もし、朧様の願いが叶ってないんやったら
[問いの理由に応える苔色は、少し揺らめいて。]
朧様は厭やろうけど、霞月夜様を憎う想います。
[怨み嫉み持つこと少なかった故の戸惑い。]
花の立場で出来ることは、あんまない想いますけど。
なんや、あったら謂うてください。
[いつになく上手く言葉を選べずに、眉尻が下がった。]
|
―本邸・廊下― [本邸は火の回り、いまだ多少の余裕はあろうか。 色硝子の廊下はもゆる炎に照らされて、 夕焼けよりもさらに赤く華やかに]
―――……、
[月瀬と天満月を連れた、イアンの姿。 そこに狂気は伺えず、ふと眼差しを和らげる。
屋敷の外に彼らが出れば、 門の傍ら、青く茂る桜の木陰、 絵描き道具と共に、紅の一厘――黄泉銀花]
(@20) 2010/08/09(Mon) 21時半頃
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|
[逃れた、と思ってくれるだろうか。]
(@21) 2010/08/09(Mon) 21時半頃
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[音にならない音
矢張り告げられはしなかった
人喰花は、花主をやめた獣を見る]
…――――謂わずとも
構わない
です。
それで充分。
[吐息を洩らす。
紅い大輪の華が咲いた屋敷の大広間
ついに登る事のなかった舞台
ひとつ未練があるなら
歌曲を
聴いてほしかった]
|
[現世の声の、遠くなる。 遠くなれども]
――……主様、
[その呼ぶ声だけは、 黄泉よりの声よりもまだ強く響く、
一つ呼ばれるたびに、強く]
(@22) 2010/08/09(Mon) 21時半頃
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若者 テッドは、メモを貼った。
2010/08/09(Mon) 21時半頃
落胤 明之進は、炎の先を仰ぎ見れば、ひとつ足を踏み出して
2010/08/09(Mon) 22時頃
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―椿の間― [翻る白装束に緋色を燈し、 それはその部屋の入り口に静かに佇む]
主様、 どうぞ、早くお逃げ下さい。
[心揺らがぬように俯いたまま]
……お別れにございます。
未練となりますれば、 ご挨拶するつもりも、なかったのですけれど。
[薄れた姿は、両手で太刀を差し出せど、 その片手は既に現世の者にはうつらない]
(@23) 2010/08/09(Mon) 22時頃
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[かけられた言葉に、ただ ふるふると首を振る]
――主様、私は……、 行けないのです。
もう、ご存知でいらしたでしょう。 私は――、私が、
[見上げれば、黒紅に緋色。 躊躇う口唇は、小さく震えて]
黄泉の花であること、を。
(@24) 2010/08/09(Mon) 22時頃
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[苔色が戸惑うように揺らめく。
その色を見ながら言葉を待ち、
憂いの黒檀は驚くように 少し、大きくなる。]
―――…華月、
[名前を呼ぶ…、笑みが零れた。
困った時に零れる、微苦笑に近いもの。]
…心配をさせたか。
[鵠と華月、二つの花を見る。
双花となった二つ、
けれども選んだ理由は個と個への想いに。]
――…霞は私の願いをひとつ、叶えてくれた。
恨んでやるな…、そのようなことを考えるよりも…
[そこまで言って、迷うように一度言葉を切り]
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― 本邸・廊下 ―
[赤く、紅く染まりゆく屋敷。 激しく哀しく、業火は天高く燃え上がる。]
―――…。
[その中、火の粉を巻き上げて風が立つ。 屋敷の中を彷徨っていた虎鉄は、声に呼応するように、とん、と廊下に降り立った。 しかし其処に声の主はもう居らず。 次いで耳に届くは、黄泉花の別れの言葉。
焔舞い狂う中、虎鉄は庭を眺めて狭間の声を静かに聞いた。]
(@25) 2010/08/09(Mon) 22時頃
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――…花の姿である時は…、
……私の傍に…在って欲しい…。
[迷いの後紡がれる言葉は、
吐息のように消え入りそうな音…掠れた。]
…―――――
[話すから、黙して聞いて。
呼ぶ声が重なって。
双つ花はますます対の様相を呈した。
燃え盛る炎、
椿の花に、あの日手にした枝の感触を思う。
りん――――と、鈴が鳴り。
映すのは朧月、花の主。]
…―――花となって散り
命(めい)も守れなかった花で…
申し訳、なく
[いつの言葉切れたときか、詫びて。
流れる黒髪を見る。
結ったのはただ一度。
霞月夜と重なる下ろし髪に、どうすべきか迷い]
|
>>115 ……いけません。 生ける者と死す者は交わらぬがさだめ、
我が身もまた、 夏の宵のひと時の幻に過ぎませぬ。 夢とうつつの交わる、今この時が過ぎ去れば
ただ、消え行く……
[掴もうとするその腕は、 既にその躯を掠めるのみであろう。 一度、見開いた瞳は、哀しげに伏せられて]
……もう、怒ってなどいませんから。 主様―― だから、早く。
(@26) 2010/08/09(Mon) 22時半頃
|
――――、…
[迷う間、黙して。
主を見、言葉はどちらへか]
はい。
[華月の名に返事をする。故に今は花。
主の浮かべる微苦笑に、浮かぶ感情――哀しい。
心配、その単語に頷きを一つ返す。
続く言葉に、緩く唇を噛むのは否定か、それとも。
少しの間、俯く。]
[けれど、途切れる言の葉に、苔色を黒檀に合わせた。
沈黙を持って、先を待つ。
まだ、鵠とは手をつないだままだったろうか。
そうであれば、少し握るを強めた。]
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