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メモを貼った。
[そうして、店のほど近くまで来れば、つないだ手をゆるりと解いた。
もしかしたら不安に思われたかもしれないが、夜の街歩きはここでおしまいだ。
ゴールを告げるみたいに、払えなかった蝙蝠たちが先立ってぱたぱた飛び回る。
その中を、一歩、二歩、進み出て。
仄明かりこぼす深緑の扉にくるり背を向ける。]
――いらっしゃいませ、お客様。
cafe & bar ≪Twilight≫へ、ようこそ。
[胸に手を当てて、深く一礼する。
練習した。このために今日まで練習した。営業時間中にできるだけ、いらっしゃいませ、と発声してみたり、家で礼の角度を考えたり。
白黒服ではない普段着では締まらないが、笑ってでもくれればそれでいい。]
[あっー コウモリですコウモリ!夜見ると不気味です!
……などと騒ぎたい気持ちと不安を、無理矢理押し込めて。虎徹と手を繋いでいるから、騒ぎ立てずに済んでいる。
こっちは……Twilight?
[その見慣れた風景に気づいた時、繋がれた手がするりと逃げる。
一瞬不安が解放されそうになるも、手を離したということはここがゴールだと示されたと考えて良さそうで。
……は。
[しっかりと通る声と、深くて角度の綺麗な一礼。
何の心構えもしていなかったこちらは、呆気に取られた。
…ひどい間抜け面をしていなければ良いが。
あっ、はい?
い、いらっしゃいました!
[綺麗な礼に、思わず深々とお辞儀をし返した。
顔をあげれば、かけられたプレート、カフェの横に「バー」の文字が追加されているのが見えた。夜用の看板に架け替えたのだろうか。]
ふあ……
虎徹くんが紹介したかったのは、夜のTwilightだったんですね?
[目を瞬かせながらも、これが秘密か、と納得する。]
【人】 採集人 ブローリン …いーの? (27) 2015/08/11(Tue) 23時頃 |
そう。で、それだけじゃ、ない。
[Twilightが夜にもやっている、だけだったら、簡単な話。
それだけじゃ済まないから、こんなに勿体つけているのだ。]
招待制、って、話、聞いたことある?
ないか、な。
[彼の祖父は、どこまで勘付いていたのだろう。少なくとも、中で顔を見たことはない気がした。
理由は入れば、わかるだろうか。客の入りはどうかと、少し店員らしい不安を覚えつつ扉を開ける。
片手を添えて開けたまま、どうぞ、とゴロウを促した。]
メモを貼った。
[隙を見てか、蝙蝠の一羽が入り込む。このやろう、ケイに捕まって食われろと念を送って、店内を見渡す。
お誂え向きにハルピュイアが一人、文字通り羽を伸ばしていた。
目が合って、軽く頭を下げる。手――のように器用な、翼を振られた。]
どこでも、お好きな席、どうぞ。
[
逆に、彼の心配を、別角度に加速させた様
憂いの矛先が己の身の按配であった事に、
思わず――手を伸ばして
亜麻色の髪に触れてしまう
喜色の指から伝わる頭部は、与えた酒の所為か幾分か熱い
また頭を撫でる事は有るか
それは未来のお互いしか把握できない、幸福の形]
[抱きしめた体は、もっと身に馴染む熱量
グミやコーヒーフロートを運搬する手は
自分を縋ることを選んだ
その行動に、翼の生えた背中を、押されて。
始めは戸惑いと怯えを見せていた彼も
やがて腕の中で、次第に夜風に馴染み始める
ほら、欧州の夜景は、彼の瞳をより一層輝かせ
宝石の様に美しいのは、さて何方だろう。
彼の唇が紡ぐ、有難う。
ただ、静かに、綺麗な彼を見て]
―――…
[笑みを作っていた唇へ、微かに痙攣が走る。
それは自然と
自分から顔を寄せていた結果か、不意か]
[梧郎の祖父は、人ではないモノたちの気配を少しだけ、感じ取ることが出来る人間だった。だから、この喫茶店が普通ではないことには薄々気づいていた。
けれど、年齢のせいで夜更かしは苦手だったから、夜に近づくことはなかった。もし夜の時間に誘った者が居ても、「24時まで起きているなんて無理」だと断っていたことだろう。孫に教えていたのは、「行ったら面白い物が見られるかもな」という情報のみ。
招待制?
特別な店などではたまにあるみたいですね。
ここもつまり、誰かに招待されて来ることが出来るお店なんですねえ。
[そういうことだと自分なりに理解して、開けられた扉から中へ…]
…………
[入った所で足が止まった。
……仮装、パーティー?
[ハルピュイアの姿を見て、よく出来た…出来過ぎていると感心する。
人間の常識の範囲内で理解するなら、そこまでが限度。
しかし。]
ぎゃっ!?
[何らかの小動物の骨だけの生き物?がかっぽかっぽと歩いているのを見れば、思わず虎徹に飛びつくようにして抱きついた。]
――― 夜のこと ―――
[今生、今の感覚ばかりは
おれよりもリツ
たどたどしい説明に耳を傾ける
その心地よさに、身の内から来る熱とは裏腹
とろりとした睡魔を覚えた、獏の性質。]
うん。
悪い気は、しないねえ、おれも。
あんたがそういう顔をするなら
冷めてくれるな、とも思うな、…、ふわあ。
[欠伸が、締まらない。]
[体温を伝播させる柔らかい弾力
甘いリップノイズと共に、継ぐ呼気を、塞がれた
空の輝きも意識が削がれ
月光を浴びる彼を只管意識]
……、あつ い…な
[唇が離れて零れたのは、吐息でも無く、照れ隠し
余裕が剥げて、声は震えて居ないだろうか。
唯、酒で思考が蕩けて覚束ない彼を、其れでも愛おしむ
精霊の身体と違い、体温のある翼は
歓喜に、ふるり震えて
雪の如く街に一つの羽根が降下]
[――…上手な説明でなくて、構わない。
うん、相槌を、合間に含むのも束の間。
涙声が、リツ
此方にも混ぜ融け込んだ感覚、どうして、胸が痛い。
元々酔ってはいなかった
ただ睡魔はその痛みに、晴れた気がした。
晴れた意識に、唇を落として、手を差し出す。
拒まれるとは、不思議と此方も考えなかった。]
あんた、嘘…… 下手。
[下手になったのか、下手にさせたのか。]
[目許を乱暴に拭う仕草に
涙を理解しても、拭い損ねた。
繋いだ指先が、震え、結局、繋ぎ直す。
自分でも理解出来た、口惜しさから。]
はは、 ……泣かせたから。
次に、あんたが払ってくれたら良い。
[支払い
彼を泣かせたことで相殺にしたい、ズル。
揺れる指を引いて、店を出たんだった。]
……………
[忘れられない思い出を彼に作る筈が
年月に埋没されない記憶が出来たのは、私のほう
身を溶かすような熱が、ぬるい空中で増す]
…… 此処?
[少し乾いた音色で、見当つけた目的地のすぐ傍
まだ余裕が回復しきれない儘
2人揃って、数刻振りの地面に足を付けようか*]
うん。
[覚えのある、リツの住まう集合住宅の前。
引かれた指と、物言いたげな口
先を促すいらえを溢しても
その先は有耶無耶に、求めたものを得られない。]
………
何でもない顔は、していないな、あんた。
[このままおめおめと帰るほど
鈍い獏でもない、それに、目を伏せる寸で
寂しさを匂わす表情に、つい足を留めた。
それから、少し考える、素振りで。]
いやな夢を見そうなら、一緒に居る。
メモを貼った。
【人】 放蕩者 ホレーショー いいよ。 (29) 2015/08/12(Wed) 00時頃 |
【人】 放蕩者 ホレーショー ゴーゴン酒は、残ってたかな。 (30) 2015/08/12(Wed) 00時頃 |
【人】 放蕩者 ホレーショー …うん、 (31) 2015/08/12(Wed) 00時頃 |
[とても不思議な、不思議な、夜だった。
月明かりの下、足元に地面は無く。
指に触れるだけで心臓が弾けそうだったのに。
今も鼓動はせわしなく、
彼の冷気が追いつかないほど身体は火照るけど。
時計の針が廻る前の不安と焦燥は、もうない。
あるとすればこの出来事が夢オチだったらどうしようとか。
酒のせいで、記憶が飛んだらどうしようとか。
そんなくだらないこと。]
[仮装ならよかったかもしれない。いろいろな意味で。オレたちは隠れなくて済んだろうし、うちの店もなくても――いや、それは困るか。
悲鳴とともに抱きつかれて、予想以上の反応にこっちも戸惑う。
ええと、どうしたらいい。どうしたら。まずは。]
……踏まれるよ、お兄さん。
[ぴょん、と跳ねるのはひょうきんな常連。オレは踏みはしないが、慣れない客を連れているから危ない。
それから、ゴロウに、大丈夫だからと囁き背を撫でる。]
ようこそ、Twilightへ。
ようこそ、オレたちの世界へ。
[オレたち、そう評したところで、本当の秘密が伝わっただろうか。
小さなお客様に気をつけながら、カウンターへ行こう。
好きな席へ、といったけれど、この様子だと知った顔が近いほうがよさそうだからだ。]
― 夜のこと ―
[
けれどそれも、なんだか
いい、と思うのだから
俺も、おかしくなったものだ。]
――、さめないといい
[願いを、口にする。]
[見つめて、交わして、掠めるくちびるに。
それすらも杞憂だと。自身を笑い飛ばしたくなる。
こんなにも素敵で、特別な夜。
たとえ夢だとしても、忘れられるはずがない。]
――…もーいっかい
[不意打ちに狼狽える様に、得意気な笑みを見せて。
今度は彼の協力を仰いで、吐息を奪う。
ん、…… あっつい、ね
[それが照れ隠しだとは気づかないまま。
僅かに揺れる声音に、確かな喜色を感じれば悦に浸り。
そのまま身を委ね、暫し空の散歩を楽しみ――。]
― 夜のこと ―
……う、うるさいな
[
――……次は
ちゃんと、払う
[泣かされたのは、確かだけど。
勝手に泣いたのは、俺だ。
うやむやにされた気がしながら、指をつないで、引かれて。
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