94 眠る村
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――フィリップ、くん。
[死ぬ前の――彼の告白を思い出す。
シメオンと彼がその後、どういう会話をしたのか知らない。
ただ、困ったように笑って。]
ありがとう―― "願って"くれて。
[返す感謝。
くらいくらい感情を塗り替えようとしてくれた、言葉へ。]
[追い抜かされたから、シメオンがどんな表情をしているのかは分からない。
一瞬触れた信じられない程やわらかな感触をパッキングするように右手で抑えたまま食堂に入る。
少なくとも、きもちいー事は、次の生でなくても出来てしまったと自覚すれば耳が熱かった。
入った先、見知った――死者たちの顔。
ラディスラヴァの言葉には、眉を下げ、頷いた。]
うん、死んだみたいだ。
[呼ばれた自分の名前に、心臓は動きを止めた筈なのにドキドキする。]
クラリス…………
[困ったような笑顔に、此方も微笑み返す。]
良かった、また逢えて。
……今度は、100パークラリス、だよな?
オレが願いたいと思ったのは、クラリスだったからだよ。
オレの方こそありがとう。
[――ドキドキの日々をくれて。]
おばあさま、 飲んでくれたら いいな。
[祖母と孫、たった二人。
その孫は、人狼となり死んだ――
残して逝ってしまった親不孝を想う。]
……、残念です、 クリストファーさんの、紅茶。
飲みたかった な。
[そう、こぼし――シメオンが見えたなら、
やはり言葉を失うけれど。
おかえりと、言われたわけじゃないけれど
少し迷って、控えめな声で――"ただいま"と、*言った*]
……かなしい、わね……
[さまざまな思いを詰め込んだ吐息を一つ、零し。
しずかに、みまもっている*]
──…、ああ。
[目覚めれば、老女には残酷な現実が待っている。
あの日、老女に縋って泣いていた孫娘はもう、この世の人ではなく、]
すまないねえ。
そのうち仕入れられりゃあ、いいんだが。
その時にはクラリッサ。あんたにもご馳走するよ。
とびっきりの、美味しいやつをネ。
[藪睨みを細めて、小男は笑う。
願わくば、これ以上の惨劇を見ずに済むことを。
そして───生者に死が、
穏やかに伝わってあればと目前の人のために、*願った*]
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