8 DOREI品評会
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早く、衣服を……。
それとも、風呂とやらに入ってからでないと、駄目なのか?
[舐められたとはいえ、余計にべたつく皮膚は確かに気持ちが悪いけれど。 どうしてもライトアップされた水槽で鯛や鮃の舞い躍りをする気にはなれなくて。 もう一度小さく訴える。犬女の提案が耳に入ったが、それでは何の解決にもなっていないと渋面になるばかり。]
(498) 2010/04/05(Mon) 19時半頃
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あ、あの……だから。
[激昂するらしき声が檻から聞こえて、舞台遠くの吼える彼を見詰めた。]
僕のために、あなたが怒る必要……ない。
[ぶるり、また白い身体を震わせ、背を向ける。 今は彼の視点が無理矢理東洋の女に固定されていることに、少し安堵していた。 客席のみならず、他の奴隷候補にまであられもない態を曝していたなんて考えると、顔から火が出そうだった。]
ありがとう。
[舞台上でも離れた彼には聞こえぬほど小声で零す。 俯いていた顔を上げて一度、彼の方を見て銀の睫毛をしばたたいた後は、またすぐ両膝に頤を埋める。]
(500) 2010/04/05(Mon) 20時半頃
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[馬鹿な人。 逆らえば逆らうほど、反対に悦ばせるか、興を削がれて買われなくなるだけなのに。 けれど、その馬鹿みたいな率直な直情さが少し羨ましい。 家の再興という義務を背負い、利害一致を探そうとする自分が、結局この場の雰囲気と快楽に逃避しているだけのような気がして。 それでも、残忍な彼らと真っ向から対立する気なんて、無防備な一糸纏わぬ姿の少女には湧いてこなかった。]
なん、て……弱いんだろう、僕は。 ……無力、だ。
[殻に閉じこもるように、抱き込んだ脚を強く引き寄せた。]
(506) 2010/04/05(Mon) 21時頃
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小僧 カルヴィンは、子守り パティの声も、強さの象徴のようにいっかな動じていないそれを、聞いている。
2010/04/05(Mon) 21時頃
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[舞台向かって右側の巨大なアクアリウムは、人の身長より丈が高い。 そのため、短い一辺に梯子がかかっていた。下手をすれば溺れ兼ねない水位だ。 底には砂利の変わりに、様々な色硝子の珠が敷き詰められていて、ショウの舞台として相応しい様相を呈している。 その中に何かが放たれようとしていることを、少女は知らない。]
(507) 2010/04/05(Mon) 21時頃
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[へたりこんだ尻が冷たく体温を奪っていく。 耳を塞いでも、誘惑を加速させるような、青年の罵声交じりのなやましい声が聞こえてきて。基本的に彼は声が大きなようだと、猿轡の理由を今更に思い知った。 初めて知った、男の生態と女としての官能。 あまりにショッキングな出来事であったが、それを真剣に検分する彼らもどこか葡萄酒色には滑稽に映り込む。 陵辱に対する背徳心と屈辱と好奇心、様々な感情が胸でとぐろ巻いていた。]
(511) 2010/04/05(Mon) 21時半頃
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…………これ、を
僕に着ろ、と……?
[客席に列べられていた衣装の群に、そして自身の足元に何故か置かれていた幅広のリボン半眼になる。 どれも、少女の求めていた「衣装」の概念からは遠い。 拒否しようにもまだ気怠さの残る身体が男たちに持ち上げられ、くるくるとリボンが巻かれてゆく。 わざとなのだろう、脚の付け根のスリットに食い込ませられるのも、斜めに下腹部を横切る二筋の合間から銀灰の恥毛が飾りのようにちらつくのも、片方の乳房だけ剥き出しに巻くのも。 幸い、手足を纏めて拘束されることこそなかったが、]
……ッ……、
[誰へのものとも知れぬプレゼント包装されてしまい、なるべくなら自身の姿を再認したくない、と思った。]
(513) 2010/04/05(Mon) 22時頃
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悪趣味なこと、だ。
[恥ずかしいがれば恥ずかしがるほど、彼らは喜ぶ。 そう分かっていても、冷却されたはずの熱がまたじわじわと頬を咲き初めの薔薇のように馥郁と染め上げていく。]
(514) 2010/04/05(Mon) 22時頃
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[ご丁寧に赤い本繻子の蝶結びは、首元と乳房の頂点、尻の割れ目の上部で揺れている。]
これで、お気に召したのか?
[杯を傾けたりでずっと客席から動こうとしない男に向かって、含羞を捨てきれぬ表情のまま、努めて冷たく問う。]
(518) 2010/04/05(Mon) 22時半頃
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小僧 カルヴィンは、紐 ジェレミーを怨めしそうにキッと舞台上から睨み付けた。眦にはまた朱が散っている。
2010/04/05(Mon) 22時半頃
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僕を必要として買ってくれる者は、 どうしても必要なようだから。
…………着ろと、言ったのは……オマエじゃないかッ!
[半分開き直って、客席に殴り込みかけて、踏み出した一歩がジャムで滑った。リボンを巻きつけただけの格好で、盛大にすっ転ぶ。]
……っぎゃ!
[この時ばかりは色気のない悲鳴。]
(522) 2010/04/05(Mon) 23時頃
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>>525
……傷ついて、買われなくなるのは自業自得だ。 少なくとも、僕が僕の身体を傷つける分には。
それくらいの自由は、あるだろう。
[強い意志の炎を宿した瞳が、口ぶりだけ心配した風な男に挑みかかるように投げかけられる。 眩しい舞台上と違って、暗い客席で彼の動向はあまり窺えなかったが、少しでも自分の行動で彼を動かせたなら、僅かな優越感を覚えた。]
(536) 2010/04/06(Tue) 00時半頃
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