207 Werewolves of PIRATE SHIP-2-
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―副船長室―
[グロテスク、が。武器の手入れをする光景への感想だった。
この程度じゃない所業を、酔った自分がしていたことなど知らずに。
ベッドに寝そべり、ヘクターの動きをぼんやり眺める。
仕事の合間によくそうしていたから、習慣のように今日も。
生きてたころは、ぎゃあぎゃあと騒いで怒られてた気もするが。
今日は酒が入ってないから、静かなもので]
……あ。
俺の部屋の酒、持ってっていいですよ。
[などと考えてたら、溜め込んだ安酒の存在を思い出した。
聞こえるなどと思ってないから、独り言で言っておく。
死んだ味方の部屋から持ち出した酒も、襲った船から持ち出した酒も。
調理場から盗み出した酒も、街中で宝と交換した酒も。
もう飲めやしない。
鎖から解放された気分だ]
─ 甲板・船首楼 ─
[ふらふらと漂うように、足は、甲板へ向いていた。
月が出るには、まだ少し早そうだが、空は少しずつ黄昏色に変わりつつあったろうか。
誰も居ないことを確かめて、船首楼へと向かう。
いたところで、どうせこちらの姿は見えないのだが。]
[覗き込んだ黒い海には、殆どと言っていいほど波がない。
そういえば、昨日からずっと風も吹いていない。
今頃になって、この船が、ずっと止まったままになっていることに気が付いた。
……止まっているからどうするということは、多分生前だとしても、何もないのだけれど。]
……兄貴っ!
[悲鳴のような声を上げて、ホレーショーに駆け寄る。
船長の一閃を受け、その腕からは血が流れていた]
こっ、これ以上。やめろォ!
[グレッグは思わず、激昂して。
ホレーショーを庇うように、両手を広げて船長の前に立ち塞がる。
その身体を、するりと船長はすりぬけて]
……あ。
[床に転がったホレーショーは、容赦なく踏みつけにされた]
[やや時を置けば、漸く、東の空に月が顔を見せはじめた。
───ああ、今夜も、朱い。
思い出すのは、己の力を知った、あの日のこと。
物心ついた頃には、もう親はいなかった。
とはいっても、人ではなく、獣として。
路地で残飯を漁ったり小動物を食らったりな、どこにでもいる野良犬。
ただその野良は犬ではなく、狼だった。
もっといえば、ヒトオオカミだった。
いつの頃か、ヒトの姿をとれることに気が付けば、路地に干されている服を盗り、周りの人間がするように、着てみたりした。
ただ、まだその頃は、自身の幼い爪が、簡単に人間を引き裂けるほどの力を持つことなど知らなかった。
そして、人間の血が、肉が、残飯や小動物よりずっと美味だということも。
───あの日、路地で襲われるまでは。>>*15
そして、返り討ちとした男達の血肉を齧るまでは。*]
……っ。
[息を飲んで、グレッグは決闘の行く末を見守る。
なにもできない自分の存在が。ひどく忌々しい*]
[生粋の獣は、ずっと、闇の中に生きてきた。
はじめの頃は、人間に見つかり、危うく殺されかけたりもした。
しかしやがて、音なく獲物を狩る術を覚えた。
そして年齢が13を数える頃、路地で、狩ろうとした男に逆に捕まった。
殺されるのかと思ったが、逆に、暗殺の仕事を持ちかけられた。
寝床、食事、身柄の保証。
怪訝に思いながらも頷き、その男のもとに1年ほど身を置いた。
今思えば、あの男もまた人狼だったのだろう。
自分と同じ、生来のものか、後天的なものかは知らないが。
───いつの頃からだろう。
裏社会で『闇猫ヴェラ』などと呼ばれるようになったのは。]
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