30 ─今夜、薔薇の木の下で。
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[フィリップには聞えているだろうか。
蒼薔薇が、弦を伸ばし、フィリップの魂へと絡みつく様に。 そっとそっと、密やかに、秘めやかに囁く声を]
(フィル、君は、誰よりも僕のことが好きなんだろう?)
(ねぇ、セシルを殺して?君なら、殺せる。)
[セシルを殺してと、甘く囁く声が薔薇園の中に響き渡った]
(17) 2010/09/10(Fri) 02時半頃
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本屋 ベネットは、メモを貼った。
2010/09/10(Fri) 02時半頃
[情念と欲望を吸って生きてきた蒼薔薇は、
それを糧に咲いてきた蒼薔薇は、
もう木の精霊の域を抜けていく……。]
(燃したいなら、燃せばいい。)
(表面上はそれで、滅びたように見えるだろう。)
(呪いを持続する力もきっと、なくなる……。)
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――…っ
[噎せ返るような蒼い薔薇の香にそれ以上近づけない。 違う―――…近づけないのは他の理由で。
裡からじわりじわりと浸されていく。 燃やしても消えぬ抜け殻、 中身は何処に。眠る少女のような少年の中にか、 それとも紫水晶の瞳の中にあるのか。 それとも…
その場に、崩折れるように蹲る。 呼吸が、できなくなるほどの痛み。
―――…ころされて、 ―――…ころして、しまう。]
(18) 2010/09/10(Fri) 02時半頃
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……フィリップ。 君は何か知っているの?
[蹲る彼へ翠を向ける。 はらはらと散る蒼い花弁。それを一つ取り、握りしめて]
君は……どっちを、望むの?
[少年が問うたのは、人と、薔薇と。どちらをと言う意味だったけれど。 それは偶然にも、蒼薔薇の言葉と重なりフィリップへと選択を迫る]
(19) 2010/09/10(Fri) 02時半頃
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[蒼薔薇は笑う。
笑って、火を持つものには、燃せばいいと再度言った。]
(知っている。
知っているよ。君は自分のために、燃したいんだろう?)
(その気持ちはよくわかるよ、そんな気持ちもいままでいくつもいくつも…)
(人は、自分の想いのためならば、どんな犠牲も厭わない)
(だから、僕も、人が犠牲になるのを厭わない)
[それは火を持つベネットへの声かけ]
(いいよ、約束しよう)
(その木を燃せば、呪いは一旦解けるだろう。)
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(フィリップ、君が望むのはどっち?)
(20) 2010/09/10(Fri) 02時半頃
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……ベネッ ト…
[甘く、囁く声が脳裏に吹き込まれて。 刻まれていく蒼、魂まで支配されていくかのように。 痛みに、甘さに、今にも花咲かそうとしている首筋を押さえて 蒼薔薇を殺そうとする人を呼んで。]
…そこ に、蒼薔薇は…いない、よ。
[居場所を―――…教え、なければ。]
(21) 2010/09/10(Fri) 02時半頃
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(そのあと、その人物が自ら、また呪いに落ちるかもしれないけどね)
(そうならないように、幸せになるんだね)
[ベネットに問いかけ、また蒼薔薇は笑う。
そう、蒼薔薇は、人を犠牲にするのを厭わない。]
[血濡れの手で掴んだ荊棘の蔦。
そこに揺れるささやかな一輪の花。
毒に侵され、樹液に酔ったままの隻眼は、ぼんやりとそれを見つめる。]
なぁ、アンタも寂しかったのか?
アンタも…誰かに愛されたかった?
もう一度咲いて、美しいと褒められたかったの…かな?
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――…薔薇は…、"此処"だ。
[そう謂って、指差すのは翡翠の首元。 赤と蒼を混ぜて咲き始めようとしている花。
声は魂から聴こえた。 宿るのはセシルではなく――…既に、翡翠の裡に。 蒼みを帯びた瞳を細めて。]
… 俺、 を… ころさなきゃ…だめだ。
[ころす、それは言葉通りの意味のものなのか。 それともサイラスやドナルド、ロビンに施したようなものか。 吐く吐息は、老木よりも甘く香を放ち]
(22) 2010/09/10(Fri) 03時頃
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[蒼薔薇の笑う声に、少年は心の裡でその言葉を肯定する。
僕の手は小さいから、ディーンの様に幾つも抱え込む事は出来ない。 ならたった一つ。 譲れない大切なものだけはもう二度と手放さないと、もう決めたから。
その気持ちだけは、なんと言われても揺るがない]
(23) 2010/09/10(Fri) 03時頃
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[樹液に寄った檻の獣の声に口端をあげる。]
――……淋しい?
愛されたい?
褒められたい?
そんな人間みたいなこと、思わないよ。
[そう、植物の本能、願いは、繁栄すること。
生への執着。]
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[紅と蒼。 二つの花弁が散る首を見て、少年は息を飲む]
そんな……。
[自然と震える声。 一歩、また一歩と。甘い芳香の吐息を吐くフィリップの傍へ行き]
……呪いはディーンで最期じゃなかったの? この木を燃やせば終わりじゃなかったの?
(24) 2010/09/10(Fri) 03時頃
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…根を生やし、空へ伸び、花を、種を…か。
[ぼんやりとそれを聞き、くすりと笑った。]
アンタにとっちゃ、俺達も…蝶や蜂と一緒だったのかな?
香りに、甘い蜜に惹かれて、花から花へ…
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[突然のフィリップの言葉に、少年は混乱した様に首を振る。
蒼薔薇は自分の中に居ると言う、フィリップ。 その表情はとても苦しげで、嘘を付いている様に見えない。 だけど……。
手の中のマッチをぎゅっと握る。 この木を放っておく事も出来ない。今この木を滅する事が出来るのは、きっと自分だけだから]
(25) 2010/09/10(Fri) 03時頃
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[形はともあれ、どうしても欲しかった唯一つのディーンのもの――…。
『お互い壊して壊されたい』この感情だけは自分だけ――…。
これだけは他の誰にも渡さない――…。これさえ手に入れたから
もう、満足できるはず――…]
[そう、思い込めど。満ち足りない思いは微かに残っているのは
自分でも分かってる――…。
いつか忘れられたら―――…
多分、その時に、
完全に
この身に巣くう種は消えてなくなるのだろう――…*]
(終わるよ、燃せばいい)
(終わるように見えるから)
[木を燃せば、蒼薔薇の【呪い】いは、一旦解けるだろう。]
純粋に、欲しいのがソレだけだってんなら…
起きたら俺らみんなで庭の手入れして、アンタの種育てて…ってんじゃダメ?
俺らが卒業する時には、後輩たちに引き継いで…さ。
[檻の獣の言葉には笑い]
でも、そんな人間を、狩るのも、面白いかもしれないね。
[蒼薔薇は悪霊と化していく…。]
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フィリップを、殺したとしても。 この木が在る限り、また同じ事が繰り返されるんだ。
君が完全なる蒼薔薇の死を望むのなら、 この木が完全に滅した後に。 僕が……君を殺すから。待って、いて。
[持ってきた油を蒼薔薇の老木へまき、マッチをする。 その先に燈る炎を見詰めた後、全ての元凶たるそれへと放った]
(26) 2010/09/10(Fri) 03時頃
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