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だめか、
[身体を捉えた腕は離すまいとするが
薄らと、瞳を開ける。冷たい舌の感覚が熱を吸い取ってくれたのか、幾分先程よりも楽になったと思う。相変わらず左目の視野は赤いまま、しかし見上げるニコラエの表情ははっきりと捉えて]
……わり、
[それほど夢中であったのかと、やっと笑う余裕の出て来た男は、笑みを浮かべながらタキシードの襟元に手を伸ばした。
殆ど腕を通したことのないような、触り心地の良い生地。形のいい仕立て。
背中へ向かってずらし、腕を抜くようにと触れて。
やがてその衣服を脱がすことが叶ったのなら、ベッドサイドの椅子の上に手を伸ばし、その背にかけた。]
—— ……ほら、いいだろ
[それで皺にならないのか、果たしてわからなかったが
今度こそ我慢はしないと再び手を伸ばした。
自分でもらしくないとは思う、ただ。熱が齎した衝動に任せて、今はこの時を楽しもうと]
ニコラエ、……いい匂い、するのな、……
[そうして再び、彼を一つ知る。
抱きしめることが叶ったなら、今度は離さずにそのまま微睡んでしまおうか**]
メモを貼った。
[風邪か何かを齎しているのか。
もしも明日も冷まぬようならば
それこそ誰かに相談すべきか
無意識に大きな尻尾を指で弄んでいると、
首を横に振る様が見え、手を遠退けさせ]
駄目、じゃないよ
――君の寝顔がその……、可愛かったので
[言い訳ではあるとして、正直な気持ちを明かし。
両目が薄く開かれれば視線を交わし、
共に寝たいと望まれることを少なからず喜んで。
床で座っていても良かったけれど、
彼の温もりを得ていても良いというのなら――]
ふふ
[眠たげな顔に浮かんだ笑み。
上衣を脱がされている間、頬を撫でたいのを耐え
袖を抜きやすいように腕を時折浮かせ。
スラックスは線が曲がってしまうが
もしみっともない状態になったとして、]
ええ、
だめだったら、君の服を貸してくださいね
[どうせ陽が高い間は移動すらままならないだろう
ドナルドが子供たちへ菓子を配っている間に
家で眠らせて貰うのも悪くは無さそうだ。
彼の薫りを預かる布団を借りれるのなら
それは、どんな棺桶よりも寝心地が良さそうで。]
ほんとに?
……君が厭がるノートじゃなくて良かった。
良かったら……故郷に帰ったら送りますね。
[一番心配をしていた香水も、彼に嫌われる要因にならず済んで
ほっとした心地を憶えながら。
帰る、と先の話を口にしてしまったことで
胸に過る寂しさと哀しみが吹き抜けるも、
腕の中に収まってしまえば、不安も愛しさに変わる]
私は、君の……ドナルドの匂いが好き、だな。
[汗の薫りも、彼自身の体臭も、そして体温も。
何ひとつ拾っても好むものであると、
寝物語のように、優しく。
眠気を妨げないよう小声で届け、首筋に鼻先を押し付け。]
おやすみ、――ドナルド。
[寝顔を見詰めながら、甘い心地に包まれて。
いつしか己も心地よさに寝息をたてていた**]
メモを貼った。
[ホテルの前で声をかけられる。声の主は、予想通りに沖元さんだった。
別の幽霊モドキを見かけていないこと、キリシマさんというゾンビの薬屋さんなら自分を見えた事を伝え。
ついでにキリシマさんが火葬やお祓いの類いを苦手にしていることも伝えておく。
そうして、情報を伝えたのちの、沖元さんのこちらを心配してくれる言葉に、少しだけ驚いてから、ゆるりと微笑みを向ける。]
『ありがとうございます、沖元さん……僕は、大丈夫。』
[彼の、彼らしい優しさなのだろうと思う。
親切が嬉しかった。
落ち込んでいたつもりはない。
人に気付かれない寂しさは積もり始めているけれど。
戻りたいと強く思いはしていない。
それでも、]
『戻らなくちゃ行いけませんね。沖元さんに、心配かけられませんから。』
[キリシマさんに、これ以上嫌われたくないから。
僕はそんな理由を抱き締めて、何でもない事のように、笑う**]
メモを貼った。
—— 朝 ——
[良い香りがする。
鼻腔をくすぐるそれは、一体何の香りだったか。
ゆっくりと目を、開けた。
ここのところ迎えた朝は、どれも10月31日の眼帯を外さぬままの朝だったのに
今日の朝は、左目もしっかりと見えていた。
しかし、見える色は赤いまま。
どうして、と考えるより早く
ふと視線を下ろすと、]
…………あれ、
そうか、しま、った……
[隣で眠っているのは、上着を脱いだ状態のニコラエ
そこでようやく昨夜の一連の行動を思い出し、思わず両手で頭を抱えた。
左目から発生したような全身の熱に浮かされていた、とはいえ、ニコラエの指先や舌の感覚が心地よかったのは事実。一緒に眠りたいと思ったことも事実。
事実ながら、いい歳をして、とひたすら恥じるものの。]
……綺麗、だな。
[眠るニコラエもやはり、ガラス細工のように美しい。
髪に指を滑らせて、そのまま頬へ、唇へと触れる。
自然と口端には、笑みが浮かんで]
Trick or Treat
ほら、悪戯すんぞ……ニコラエ
[カーテンを閉め切った部屋の中に陽光は射さぬが、その外から聞こえてくる騒がしさは、何度めかのハロウィン到来を告げている。
彼がそうした
最後に微かなリップ音を立ててその唇を味わい、身体を離した。
離さなければ、——どうも朝から、盛ってしまいそうで、]
……いかん、いかんな、
[ふると首を振って、顔でも洗おうと一人ベッドから下りる。
ジーンズがずれ落ちそうになって、慌てて腰元を押さえた。
どうしてずれているのか、いまいち記憶になく。
しかしベルトに手をかけて引き上げようとしたところで、何か引っかかりを感じた。
触れればざわりとした、妙な感覚。思わず背に、腰に、手を伸ばし。
その引っかかりを確かめれば]
…………ぁ、!?
[思わず大声を出そうとしたものの、眠っているニコラエの存在がなんとかそれを押しとどめた。
ふわふわとした毛並み、触り心地の良い毛流れ、太く長い尾。
それは、まるで——獣の尾
得体の知れない感覚は、それに触れられたせいだったらしい。]
昨日のアレも、副作用……か?
[参った、と思いながらも、この程度で済んだのならと安堵もし。
キリシマに提出するレポートは、とりあえずバラエティに富んだものになりそうだ。
——だが、その時点で気がつくべきだったのかもしれない。
服装や体調などほとんどがリセットされていた、今までのハロウィンと違うことに。]
ん、?
[洗面台の前に立つ、が、鏡には何も映らない。
見えているのは、キッチンへ続く短い廊下。
それだけでは一体何が起きているのかわからず、手を伸ばして蛇口を捻った——はずが、蛇口は動かない。
動かないだけではなく、するりと指先は空を切った。]
…………………
[最早、意味が分からない。
副作用で透明人間にでもなったというのか。
しかし、先程までニコラエに触れていたのも事実。
考えても、考えても、やはり答えは出ずに。]
[結局、ベッドの元へと戻って来た。
途中、壁が抜けられるのか、モノが取れるのか、
いくつか試してみたものの、何でもすり抜けられるわけではないらしい。
腰掛けられるベッドもその一つだろう、手を伸ばし、ニコラエの手に自らの手を重ねた——触れられる。
彼はこの状況をどう考えるだろう、意見を聞きたかったこともあるが、今は無理に起こすことは無く。
外の状況を確認してくる必要もあったのだけれど、ただ今は傍に居たかった*]
メモを貼った。
メモを貼った。
[一通り、人通りの多い場所は見て回ったつもりだったけれど、生憎、僕と同じ幽霊モドキを見つけることは出来なかった。
それでも、「居ないから」と「単に見つけていない」に区別は出来ない。
きょろきょろと見回しながら、]
あ、キリシマさん。
[ふと見かけた、自分が見える人…ではなく、怪物
思わず名を呼び近づくも、どうにも元気がなさそうに見えた。]
……に。
荷物、重そうなのに、持って上げられなくてゴメンナサイ!
[声をかけるべきときでは無かった気がして、慌てて取り繕う。
何も出来ない。
もしも、誰かが彼と共にあるとすれば、余計に。]
メモを貼った。
― 4度目のハロウィン ―
[吸血鬼の朝は遅い、いつもの事である。
隣で眠るドナルドが目覚めても
身動ぎひとつする事なく、
規則的な寝息を立て、肩口に側頭部を預けていた
枕代わりの存在が遠くなっても
目を覚ますことは無く。
髪の毛を、皮膚を撫ぜる指は心地良いもので、
唇を擽る感触に、薄く開いたままの隙間は、
指先を食んで、軽く吸って。
ヒトの暖かさに落ち着いてしまい、
覚醒しない状態で血液を摂取しようと
かぷかぷと柔く噛むが、何故か血は啜れず。]
ん……ふ。
[指が遠ざかる代わりに唇が近づけば、
好む温度と弾力に睫毛を幾度か揺らし。
それでも目はさめず、離れていく顔に
惜しむように眉根を寄せただけで。]
……すー…、
[
眠りの深い男は目覚めることなく。
ただ、隣から消えてしまった体温を探すように
緩慢に腕を浮かせたが、ぱたんとシーツに降りた。]
……ん、どなるど、
すき、
[暫し体温を求めるように布団に包まっていたが、
指を握られる感触
そうしている内、思考はゆっくりと
覚醒に近づいてゆき、
薄目を開きドナルドを見上げ、]
……おはよう……?
ふぁ…
[手に助けられる形で上体を起こすと、
ゆったりと欠伸をし、肩へ懐くように額を押し付けてから]
顔、あらってきますね…
[寝ぼけたままの細い目でシーツの上で立ち上がる。
ふら、と後方へ倒れ込んだかと思えば、
壁を突き抜けて、上体が壁から外へ生える。]
―――え、
[強い陽の光を浴び、一気に目が覚めた。
同時に、最大の弱点の前に躯を晒していると理解し
危機を憶えて顔面は蒼白に、毛穴から汗が浮き、総毛立つ]
ッ ひぃぃ゛ぃ?! とけッ、はげるぅぅぅ!!
[断末魔は劈くように街に響く。
しかし、街往く住人たちは吸血鬼の悲鳴にも、
その奇っ怪な状態にも反応することなく
ハロウィンの宴に浮かれ、はしゃいでいる。
このままでは髪の毛も顔の皮膚も爛れ、溶けてしまう。
日光を浴びているのだから!
両腕を前でクロスさせ、壁の外に生えている足を
ばたばたと忙しなく動かして。]
………?
[しかし、肌を焼く熱も感じなければ痛みもない。
違和感に顔を隠していた腕を下げる。
お天道様は高く、暖かい日差し。
確かに目の前に存在しているはずなのに、
太陽は、外敵として己を殺そうとしない]
どう、 …して…?
[壁の外側に生えたまま、呆けていたが、
このままでは間抜けというか変人もいいところだ。
無機質の厚みに片腕を突き通し、
ドナルドに引っ張って貰おうと
つながっていない方の手を、指を伸ばした]
[元気が無さそうなのは、僕が見たことのある殆どの彼がそうだったように思うけれど、キリシマさんの様子は、やはりどこか、疲れのようなものを感じさせた。
横を歩き、じっと顔を覗き見る。
お店へ帰るところデスか。
どこか出かける所なら、邪魔になりマスから良かった…
いえ、既に頭痛の種という意味ではお邪魔していマスが…
[黙れと言われなければ、独り言のように話しかけてしまう。]
メモを貼った。
[その悲鳴のような声はどこからか。
ハロウィンの街の騒がしさに紛れながらも
悪戯へのリアクションデショウか。
迫真の演技力、デスねえ。
[声の主が見えるほど近くは無く、周囲の人並みもそれに注視はしていない。
けれど聞こえたというのは、それほど離れた場所ではないのか。
聞き覚えがあるような無いような声に、のほほんと感想を述べる。]
メモを貼った。
……俺も。
[唇から零れた言葉を拾い上げれば
その二つの緋色が開けば、「おはよう」と挨拶を返す。
まだ幾分眠そうな様子に、起こしてしまったかと悪く感じながらも、普段とのギャップにまた口端を緩ませて。]
……ああ、それなんだけどな、 ——!!
[まだ手は繋いだままに立ち上がりかけたニコラエが、そのまま勢い良く倒れ込む
恐らく通り抜ける——とわかっていても、咄嗟に手を引いたがそれも遅く]
ニコラエ、落ち着け、大丈夫だから、
俺も一緒だから、
[それは謂わば断末魔
こちら側にあるばたつく足を宥めるように撫で、伸ばされた指
[通り抜ける壁からの抵抗力は全くない。
勢い良く引っ張って、ベッドの上にニコラエの上半身を引き戻した。]
大丈夫か、怪我は?
どこか痛むか?
[身体はとりあえず何ともないように見たが、あれだけの声を聞けば不安になるというもの。
確かめるように肩や腕に触れながら確認し]
……起きたら、こうなってんだよ。
尻尾は生えてるし、外はまだハロウィンみてぇだし。
[次々と訪れる変化に、軽く肩をすくめた。
それでも悲観的にならずに居られるのは、やはりニコラエのおかげだろう。]
メモを貼った。
[通りまで響いたけたたましい聲
山彦のように轟き、そして靜かになる。
視界に映る範囲のニンゲン達はこちらを気にも留めていない。
不自然と思われていない、ということは――
壁から飛び出る習慣でもあるのだろうか。]
ふあっ……、なにがどうして……
[ドナルドに壁の内側へ引き戻してもらい、
その反動でへたりと抱きつく形に。
シャツの上から撫でる彼の五指は壁のようにすり抜けない。
それに、温度すらある。
――何故か透けているように、見えるのに。
己の手も広げて観察してみるが、やはり不透明なそれ。]
だいじょうぶ……
でも、何故溶けないのかさっぱり……
[半透明な何か。
霊体?幽体離脱?
しかしベッドに自分の躯が落ちている――なんてことも無く。]
尻尾、あぁ昨日の夜に生えてました。
伝えようと思ったけど、眠そうだったので
[尻尾にも触れるのだろうか。
手を伸ばし、柔らかな毛をもふりと撫でて。
そういえばとドナルドの頭を何故か触って観察し、
尻尾の他に異変がないか――譬えば耳とか。
変化を確かめてみるが、それらしきものは無く。
ニンゲンの耳を軽く引っ張り、
それがきちんとヒトの形であることも確かめ]
相談?
[>>*1不意に友人の聲が聞こえたので、
疑問符と共に呟くも、反応はない]
ジェレミー? 聞こえてないのか?
[問うてみるが返るものはなく。*]
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