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メモを貼った。
――……そんな力なんて無くとも
その妖しさで、充分わかるやろう。
[此方に見せる亀吉の微笑は、
瞼の裏に鮮やかに、焼きついているのと大差ない。
肩を竦める亀吉に肩眉を上げて見せ、]
へえ。
僕はこんなに優しいのに?
[此方をつつく烏の雛に、気を悪くする事もなく
離れていけば、もの寂しそうにそちらを見やり。]
その眸で見透かしてみたら?
せっかく、見えるようになったのやしな。
[首を傾げる亀吉に、ふっと殊勝な笑みを向けた。]
[その雫の根源を、探すかのように空を見上げ
次いで、共に向かうという亀吉へ
ゆるりと視線を巡らせ首を傾ぐ。]
――……別に、ええけど。
僕ご老体やから、ゆっくりな。
[特に拒む理由もない。
されど一つばかり、注文をつけたのは
何となく、少しでも長くこの雨に
触れていたいと思ったからで。**]
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―下界―
[井戸水を桶に汲み、柄杓をからからと鳴らしながら小道を行く。
村の中に数多ある祠を祀る日々。
一日ですべてはまわれないから、数日に分けて。それを繰り返せば、毎日何かの神と向き合うことにはなるのか。
晴れた空を見上げる。]
――はしけやし、
わぎへのかたよ
くもゐたちくも
[こうして仰ぎみていれば、たまこに、高天原の神たちにいずれ見えることもあるだろうか、と。
戯れに古歌を口ずさむ。]
【人】 飛脚 甚六─まだ昨日の丘でのこと─ (36) 2013/08/16(Fri) 19時半頃 |
[道の神の祠には米と小豆を供え、機織りの神の祠には水と花を置く。
花は、いずれこのように、美しい布を織れますように、と里の子供たちが摘んできたものだった。]
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【人】 飛脚 甚六─そうして、夜明け─ (39) 2013/08/16(Fri) 20時頃 |
【人】 飛脚 甚六[祟り神の被害にあったのは、朧だという。 (41) 2013/08/16(Fri) 20時頃 |
――兄妹二人旅、後――
[毎日が驚きの連続であったと思う。
雨に打たれれば寒さに震え、日に差されれば暑さで茹だる。
人の身は不便なことも多かれど、
それもまた新鮮で、興味深く。
――何より兄に、こんな表情があったとは。]
(……ようございました、お兄さま。
お兄さまは、立派に「ひと」と生きられましょう)
[兄の抱き続けた、浮世離れしたような、
妖しい雰囲気が柔らかくなったような気がして。
闇夜に縛り付けていたのは己も同じかと、苦笑したり。
そんな折だったろうか。
これからどうするか、問われたのは。
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何処へ、参りましょうね
……この頃まれびとの訪れがあった、
そんな里の噂を聞きましたけれど
[それが事実であれば、天上での知己に会えるのでは?
言えば、兄はどんな顔をしたろうか。
どのように、答えたろうか。
何にせよ、いつものように微笑んで。
ひどく穏やかに廻る日々を、噛み締めて]
[あてのない旅の途中か、目的ある移動の最中か。
兄は、鳥の雛が巣から落ちているのを見たのだそうで]
……志乃には、見えなかったけれど……
それより、嫌な風の音。一雨来るのではないかしら。
[早く巣に戻してあげるか、助けてあげないと。
そう言って、眩しげに空を見上げ。手分けしようと。
木など上れぬ自分は、雨を凌ぐ道具を取りに、
一旦兄と別れたのだったか]
【人】 飛脚 甚六─それは昨日の丘でのこと─ (45) 2013/08/16(Fri) 20時半頃 |
【人】 飛脚 甚六─それは昨日の丘でのこと─ (51) 2013/08/16(Fri) 21時頃 |
[麓の村まで下りて、傘を手に戻ったのは、
ぽつぽつと雨粒が落ち始めた頃。
懐かしいような、声を聞いた。
(華月さま?)
[思わず声を上げ、顔を覗かせそうになるも、
それはできぬと己が両足を戒めて立ち。
心から気遣いの言葉をかける兄を認めれば。
ホッと、胸を撫で下ろすだろうか]
――……ようございました、お兄さま
[吐息だけで囁くと、そっと道の傍に傘を置いて。
自分が来たことも、村へ戻ったろうことも、
おそらくこれで伝わるだろうと、そう思っている]
[
……志乃さんは、一緒やないのか?
[甚六の術に因って、共に堕ちたと触れがでていた筈だ。
古い神だからとて、己の力に縋ろうとする程に、
守りたい、離れ難い相手であったろう。
その姿が見えない事に、首を傾げ。]
その、雛は。
怪我でもしてるんか?
[亀吉の手の中で蠢く、黒い雛に眼をやって。]
【人】 飛脚 甚六う。くっそ日向お前ほんとかわいいな。 (56) 2013/08/16(Fri) 21時頃 |
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【人】 飛脚 甚六[日向が気になって様子を見に来た、というたまこの言葉に] (60) 2013/08/16(Fri) 21時半頃 |
――どこかの村――
[村へ戻れば、先ほど傘を貸してくれた宿へ。
髪についた露を払いながら、書くものを、と女将に請うた]
……お兄さまは……怒るかしら。
もう、いつかのように泣かないとは、思うけれど。
[身体は元気、筆を持つ手も確かだが、
白く滲む視界は最早どうにもならない]
【お兄さま、志乃は嘘を吐きました】
[まずはそんな書き出しで、お別れを]
【人】 飛脚 甚六つーか、たまこって下界に行けんの? (67) 2013/08/16(Fri) 21時半頃 |
怪我してへんのやったら、
その辺に捨て置いたらええよ。
烏の雛は、巣立つ前に一度、巣から落ちるものや。
それで翔ぶ練習するのやて。
怪我してるのやったら、差し伸べて、
連れていったらええとは思うけど。
[さて、これは。
一体何処で聞いた智慧だったか。
永く 永く、在り過ぎて最早忘れてしまったけれど。]
――……いつまでも、鶸やと思うてるのは人間だけやな。
[煙を一つ、吐き出して そっとその火を掻き消した。]
メモを貼った。
[気付いたのは何時だったろうか。
もう聴こえないはずの"声"が、未だ、耳に届いていると。
朧に会いに行く、と。>>4:*3
引導を渡すのだ、と。>>4:*2
そう呟く声は、最早あの醜い音に包まれてはいなくて]
……道連れに堕ちたのでしょうか
わたしが、――……祟り神の幾分かを
[実のところは分からない。何がどう天上で変化したのかも。
けれど何にせよ、"声"が聴こえる代わりにか、
瞳は段々ものを映さないようになってきた。
天の神に仇なした、おそらくこれは天罰かと]
後悔などありません。むしろ清々しい程ですわ。
わたしはわたしの思うままに在っただけ。
恨むなら恨めばいい。憎ければ憎めばいい。
【人】 飛脚 甚六
(74) 2013/08/16(Fri) 22時頃 |
その憎しみごと笑い飛ばして、愛しましょう。
[それが最大の反撃だろうと、くすり、笑って]
【人】 飛脚 甚六
(78) 2013/08/16(Fri) 22時頃 |
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