88 吸血鬼の城 殲滅篇
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[「私が必ず君を護ってみせる」と、傍らの修道士に約束する金髪の男の姿に、ふつふつと苛立ちを掻き立てられる。
それは、自分が果たせなかったこと。 側にいながら、むざむざとクラリッサを死なせてしまった。 その苦しみが狂おしいほどに満ちてくる。
ならば。
この男に与えるべき絶望は──定まった。]
(82) 2012/05/02(Wed) 21時頃
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[心臓の位置まで裂けてぶら下がる鎧が邪魔だと、血に染まったシャツごと手で掴んで引き剥ぐ。 そのまま壁際に投げ捨てた。
外気に晒された肌は寒さを覚えることもなく、どこか鉱石めいて無機質に白い。 自分の躯ではないように感じたが、いずれ慣れるだろうと漠然と思った。]
(83) 2012/05/02(Wed) 21時頃
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…剣を。
[呟きながら右の手首に指爪を添え、鋭利なそのエッジで細く脈を開いて血を導く。 先ほどヘクターがそうするのを見た、その模倣だが、使ったのは闇ではなく血。 ヒューの躯に注がれた、闇の力をふんだんに含んだヴァンパイア・ロードの血はヒューの意志のままに武器を形づくる。 ガーネットにも似た深紅の波刃剣が、しっくりと手に馴染んだ。
それを心地よいと感じたのは剣士としてか、魔としての性か。]
(84) 2012/05/02(Wed) 21時頃
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[戦いの支度を整え、まずは小手調べとばかりに、「竜の牙」を握り込んで血を与え、大広間へとバラ蒔く。
地に触れるや生じるのは、レオナルドが警告したとおり骨の兵士たち。 だが、その色は風雨にさらされた骨の色ではなく──澱む紅をしている。 強く魔の気を帯びた血塗れの竜牙兵だった。
死者のレギオンは生ける者を弑さんと突進する。*]
(85) 2012/05/02(Wed) 21時頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2012/05/02(Wed) 21時頃
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またそれを言うか。
[いまだ自分が吸血鬼である自覚のないヒューは、ムパムピスの言葉(>>91)に暗い衝動を高める。 クラリッサを魔物と断罪し、今また神の名のもとに困難を退けんとするその信念。
どこか似た者同士であることは気づかぬまま。]
(103) 2012/05/02(Wed) 22時頃
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[死者を神の元へ帰す祈り(ターン・アンデッド)を唱えるムパムピスの声に、感情など死に絶えたはずの竜牙兵たちがおののく。
そして、弾けた光の束に捕まった竜牙兵たちが脆くも崩壊するのを見れば、ムパムピスの信仰の力は本物だと認めざるを得なかった。
いくら竜牙兵を呼び出したところで、ムパムピスに触れることすらできずに一掃されるだろう。]
(114) 2012/05/02(Wed) 22時半頃
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[ならば、自分が斬るまでのことと、下段に剣を構えたヒューの行く手には金髪の剣士が立っている。
そのたたずまい、相当、場数を踏んでいると見た。]
(120) 2012/05/02(Wed) 22時半頃
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[金髪の剣士と対峙しつつも、視界の端に、修道士の動きは捕えている。
彼がラルフに被せていた白布を引き剥がしたのは見ていたが、さして脅威とはみなしていなかった。
むしろ、床に溢れたラルフの血の匂いに惹かれる。]
(126) 2012/05/02(Wed) 22時半頃
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[祈りに触れてすでに攻撃本能を失っていた竜牙兵が、浄化の炎に包まれる。 思わず左腕をかざして目を守ったのは、その光があまりに強く感じられたから。
言い知れぬ嫌悪感が募る。
瞬間、金髪の剣士の一撃が風を裂いて飛んで来た。 その刃は聖別されたものであったか?]
(135) 2012/05/02(Wed) 23時頃
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[女は魔法に長けていた。
元々そのような力を有する家系だった。
占いをし、薬草を扱い、魔法を扱い怪我や病を癒す。
ヒューが白い魔法と称したように白魔女とも呼ばれる系譜。
魔女狩りにあわずに済んでいたのは
必要とされた時にしかその力を使わなかったから。
もう一つの理由は害無き白魔女よりも
この地の民は吸血鬼と噂される領主の方をおそれたから]
[常に身につけていた紅玉も
占いに使う道具のひとつで。
師ともいえる祖母から譲り受けたもの。
今は手元に無き品。
ずっと大事にしてきたものなのに
手の届く場所になく
何処にあるかも知れない。
触れられぬことを少しだけ心細く思う]
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[初撃から首筋を狙ってくる相手。 充分な勢いの乗った攻撃だった。 身を引いても間に合わない。 とっさに判断すると、かざした左腕の篭手で剣を受け、流す。 が、予想外の白い痺れが腕を貫いた。]
──… っ ?!
(143) 2012/05/02(Wed) 23時頃
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[それでも、動きを止めるわけにはいかなかった。 斬られたくなければ。
そのまま、深く礼をするように上体を折ってもんどりを打つと、踵落としに男の肩を狙う。]
(144) 2012/05/02(Wed) 23時半頃
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[手応えはあった。
踵落としの大技から死に態となった身体を横に転がして素早く立ち上がり、距離をとる。 その左手は肘から先が禍々しい闇に染まり、痺れていた。]
…穢れ …だと
[自分の肉体から血を抜き取った後、傷を塞いだヘクターの力がなんであったのか、ようやく合点がいった。]
(151) 2012/05/02(Wed) 23時半頃
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ああ、 この城に、吸血鬼は──
確かに 居たんだな。
[薄く唇を引いて、笑む。]
(152) 2012/05/02(Wed) 23時半頃
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[金髪の男が投げた木片──聖属性のそれが、今は明らかに凶器に見える。
大きくステップを踏んで飛び退った。 そのまま、じりじりと距離を稼ぐ。
ただし、剣士が追撃を諦めるほどにではなく。
巧妙に、修道士と彼を引き離すべく誘う。]
(161) 2012/05/03(Thu) 00時頃
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