189 とある結社の手記:8
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―牧場―
………………っ!!!!
[飛び起きた。
どうやら眠ってしまったようだった。]
………あ、れ………?
……なんで……。
[立ち上がって辺りを見回す。
自分の家にどうやら戻っていたようだったが。
誰も自分のことに気付かない様子に眉を下げた。]
……………。
[首を傾げたまま、霧になった自分の手を見る。]
……え、へへ……。
…じごく……におちる…とか…
おもってた……かもぅ………。
[それとも、ここが地獄なのだろうか。
何も接触ができない、この世界が。]
………しんだんだなぁ…。
[せめてもの、と――――――。
痛くない方法で殺してくれたのは救いだったかもしれない。
ふと視線を感じて、そちらに顔を向ける。]
[1匹の馬がなぜかこちらをじっと見ていた。
ちなみに、少女はこの馬のことを『うま』と呼んでいる。
『うま ごはん』とはこの馬にご飯、という意味だ。]
……………な、んで……
……みえてない……よね…?
[動物に不思議な力があることは聞いたことがあった。
けれど、具体的にどうなのか、などは分からない。
けれど、うまの瞳は明らかにこちらを向いている。]
…………そっか……
……かえったんだ……やっぱり…
[溢れる涙を拭いながら、そう呟いた。]
[馬の嘶きが高らかに響く。
それと同時、牧場にいる動物たちの声が耳に届いた。]
………うん………。
ありがとう……。
[風が駆け抜ける。
それに声をのせて。
満面の笑みを浮かべた。
それから振り返って見たのは、あの集会所。
心配になって――――その姿は霧に溶けていく。**]
―村 湖のほとり―
……………?
[集会所に行こうと思って走り出したはずだった。
けれど、現れたのは湖のほとりだった。]
……………?
[首を傾げつつ、辺りを見渡せば1人の老婆の姿が見えた。
昔、馬の折り紙を教えてくれた優しい人。]
…………、……!
[声をかけようとして、その言葉を飲み込む。
聞こえるはずがないのだ、自分の声は。
老婆は生きているのだろうから。]
………………。
[その姿が湖に映っていないなどと気付かず。
老婆の背中をじっと見つめる。]
おばあちゃん………ありがと……。
[届かなくてもそれでいい。
小さく感謝を伝えると、また走ろうとその姿は霧に消えた。]
──回想:昨夜の部屋──
[椅子を進めても座らない少年の立つ姿を、
黙ってみやって、中へ入るようにと促す。
夜も更けて、鉄格子の向こうに見える窓は、
すっかり黒々としていた。]
……、中には入りな。
[そう言って、立ち尽くしたような、
少年の後ろのドアを閉めた。
ぱたん。と、軽い音だけが廊下に残る。]
───。
[外に声が漏れなくなった部屋で女が窓を背中に子どもに見向く。そうして、少年はあちこちとつっかえながら、話をはじめた。]
[やさしい人が好きだ。と、
子どもが言う。
──掃除夫の青年を、同じにやさしい人と、
そう評した言葉を思う。]
……
[優しい人が、人間が好きだから、
自分もやさしくしたい、、
守りたいのだと、そう少年は話を続けた。]
[黙り、その言葉を聞く女の前で、
あの日。と、不意に話は過去へと飛んだ。]
────。
[先を促すような言葉はないまま、
ただ、黙って常の表情を変えず、
けれど目を子どもから離さずにいる。]
[説明しづらそうに、言葉はぽつりぽつりと繋げられる。
──魚屋の女の表情が変わったのは、
気がついたら、と、子どもが言ったとき]
……
[──ああ。と、思った。]
[最初に感じたのは、落胆だった。物悲しさのような胸に
すうっと冷たい水が沁みる感覚。
ついで、悪戯心でなされたと、そう聞こえた言葉に
──とまれなかったのかと、腹立ちのようなものと共にそう思った。
やさしい人が好きだと、
そういうのなら。
自分なら、できないからと、
酷く単純な理由で、
──掃除夫の青年を、子どもが食べるようなことはないのではと、
そんな風にも、思っていたからだ。]
[ラルフを殺すことができないのなら。
目の前にいる子どもは、
狼ではないのじゃあないかと、
──そう、信じることはできないかと、思っていたからだ。]
……
[リーの忠告を思い出す。
イアンが挑発めいて、自分で狼を見つけられるのか、と
そう言った言葉がついでよぎっていった。
自分は結局、情のようなものや、
村で生きる自分の常識や、
ごく狭いものの見方でしか、
きっと、判断ができていないのだろう。]
[これまでは、その狭い視野で、
生きることに不都合もなかった。
好きな相手を殺す感覚なんてものはわからない。
魚屋の女にとっての好きな相手は、
一緒に、時間を重ねていきたい人間だ。]
……………
[ただ漁師、と。少年が口にするのに、
ぴくりと瞼が引きつった。]
[少年が、オスカーが、一歩一歩を歩みくる。]
……そりゃ、何年前の話だい
[── 違うかもしれない。
サイモンの部屋に、
最初に行ったときと同じに、
声が震えかける。
けれど。]
…そいつは、
[漁師だった、その男は。
ときおり、湖の近くを歩くのが好きな男だった。
口数は多くはないが、優しい男だった。
もとより、暗く人の輪から外れがちの女の傍に
随分根気強くいてくれた、根っこがどこか、心配性の奴だった。]
[微かに震えそうな声で、女の声が尋ねる。
──2年も前の話だ。そのときのオスカーは、
まだ年齢も一桁の子どもだ。]
──ダンって 名のりゃしなかったかい。
[だから、──違うかもしれないと思いながら、
確かめずにはいられなかった。]
……
[一歩、また一歩と距離が詰まる。
足は、その場から動かなかった。]
……
[ラルフの名前に、眉を寄せて、
女は、大きく口を曲げた。
胸の内が苦い。]
…… ずっとね、
[問うた言葉に返事はあったかどうか。
女は子どもの顔を見たままに、
顔を顰めたままに、
低い声を漏らした。]
あんたが泣く気持ちがあたしにゃあ
よく、わからなかったよ。
[ダンがいなくなったときには、実感がわかなくて。
結局、今にいたるまで女は、夫のために泣いたことがない。]
[目の前にいる子供の手にかかったのか。そうだとするなら、と考えるだけで胃が焼けつくようだった。]
……、ガキだからって甘えてんじゃあないよ。
[その感情を押さえ込みながら、
詰まる距離から逃げずに子どもに真向かう。]
男の子なんだろ。
守りたいんだろ。
……生きていきたいんじゃあないのかい。
[きっと楽しい。と子どもが言った、
夢の話をうちこわしてもだ。
少しは。後悔を──しているのか、それともそこまで演技なのか。
女にはわからない。]
[ただ、リーは、話のわかる人狼がいると言っていて、
ラルフにとっては、この少年は、
──大事な人間だったのではないかと、
そう、ワンダは思っていて、
だから]
泣くぐらいなんなら、
──我慢のひとつでもしてみせな。
[要求を、ひとつ子どもに*投げつけた*。]
[遠く、遠く]
[ ── 狼の とおぼえが聞こえる*。 ]
愛人 スージーは、メモを貼った。
2014/08/19(Tue) 21時半頃
―集会所 外―
……………っ
[集会所の中に入る、という頭は働いておらず。
窓の外から集会所の中を背伸びして覗きこむ。
人参頭が広間の窓の外からちょこちょこしているが。
鉄格子が邪魔して――――――。
いや、そもそも見えないだろう。]
……………。
[ああ、まだ、出られないんだ。
そう思ったまま、暫く広間の中を覗き込んでいた。
背伸びをしたまま無言で首を傾げる。
魚屋のあの人の姿が見えない気がした。]
……………。
[もしかして、が頭を過ぎる。
名前を書いてもらったメモを思い出して。
そして眉を下げた。]
|
ー広間ー
[聞こえた声について、女は口を開かない。 リーの視線を感じたが、口を開かなかった]
───一票入れたのは、あたし。
[キャロライナは人間だと、再三繰り返す声に落とす。 薄く目元を隈で染めながら、息を吐く。 耳を引っ掻きながら騒ぎ立てるオスカーを見る]
馬鹿ね。 狼を見つけないから狼だなんて決まってるの、それは。
狼が好きで、わざと狼を見つけない人だったら? 狼を見つけたくても占いの力がない人間だったら? 別におじさんの擁護をするわけでもないけど、正直あんたに共感できるわけでもなさそうだわ。
(81) 2014/08/19(Tue) 22時頃
|
|
…もう、面倒だからどっちでもいい。 ハナでもリーでも、誰でもいいから、死んでよ。
[ガリガリと、耳を引っ掻く。 引っ掻きながら、ため息とともに吐き出す]
(82) 2014/08/19(Tue) 22時頃
|
……………うー……?
[なんだか、想像以上にもめている。]
わたしが……バケモノだったら……
よかったなぁ………。
[そうしたら、今日で全てが終わっていたはずで。
みんなが、こんなに苦しまなくていいのかな、って。
背伸びが疲れたのか、一度降りて。
もう1度、背伸びを繰り返した。]
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