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[娘は理由を知らない。
娘は最期の感情を覚えていない。
だから、自分の浮かべた最期の表情さえ
何を思ってのものかなど理解出来なかった。
テッドの呟き
ごめんね、テッド。
[哀しませた事に対してか。
苦しませた事に対してか。
秘密を打ち明けずにいた事を悔いてか。
謝罪の言葉をポツと紡いだ]
[テッドの背へと触れようとした娘の手に
触れる感触はないまま身体を擦りぬけてしまう。
残念そうに眉尻を下げた娘は行き場の無い自らの腕を抱いて]
――…“私”を見つけて呉れてありがとう。
[首を抱き上げ村へと戻る幼友達の背を見詰める。
娘は漸く自らの死を実感しはじめた。
触れられないことがさびしい。
言葉がかわせないことがかなしい。
話したかったことはたくさんあるのに
もうそれを伝える術は失われてしまった]
[一人取り残されたようにある娘の耳にとまる歌声
聞き覚えのある旋律の主を探してきょろきょろと
あたりを見回して、彷徨い歩く。
歌声を辿ればとある樹の許に辿りついた。
声は聞こえるのに姿が見えなくて
探すのを諦めかけたその時、風に誘われるように空を仰いだ]
――…あ。
[樹の上で歌うピッパが見えて思わず声が漏れる。
邪魔してはいけないと慌てて口を塞ぎ
ゆっくり聞く事が出来なかった彼女の歌に耳を傾ける]
[ひゅるり、風が吹く
風は感じるのに、髪が浮く事もなく
私の肌は、風を感じるのに
風が触った時の、くすぐったさは感じない
ああ、私はただ空を仰ぎ
口から出る音楽にのみ、魂が乗る
ああ、私の瞳は赤い月を映すのみ
音を聞く耳はあるのに、音が皆死んだように静か]
あ――――…
[さぁ、私は気がつくだろうか
もし何かの音が、私の耳に届いたなら
私は彼女に気がつくのだろう]
[歌が止んで、ピッパのくちびるから声が漏れる
………ピッパ!
[娘は堪らず名を呼んだ]
ん…――――
[私の名を、呼ぶ声がする
深く深く、地の底から…――――
いや、地の底じゃぁない 私が高い所にいるんだ
ああ、そうだ この声は、あの子の声だ]
なんだい、マーゴ
[ふわり、そこから飛び降りる
飛び降りたら、死ぬような高さなのに
今は、まったく怖くなかった気がする]
![]() | 【人】 ランタン職人 ヴェスパタイン―夜の森>>101― (129) 2010/08/07(Sat) 01時頃 |
[高い樹の上から飛び降りるのが見えれば
娘は慌ててピッパ
死んだ実感がわいたといっても
条件反射のような行動だったから
気づけば動いていたというのが正しい。
ふわり、と舞うピッパに目を丸くした。
危なくないのだと知れば安堵の息を漏らし]
逢いたかった。
[微かな笑みを浮かべてみせる]
ピッパは歌が上手なのね。
やっと、ちゃんと聴けたわ。
[素敵だったと素直な感想を彼女に伝えた]
逢いたかった…――― ?
そうか、随分逢わなかった気がするな
[伸びた彼女の手に、きょとり
なんだろう、なんだかおかしい
何がおかしいのか、わからないのに
何かおかしいのは、よくわかるんだ]
歌? ああ、歌か…―――
そういや、ちゃんと歌った事なかったな
[彼女の感想に、少し気恥ずかしさを感じ
だんだんと、私が元に戻る
ぼーっとした頭のまま、彼女に手を伸ばすんだ
朧な感情の中にある、寂しさが埋まるよう]
![]() | 【人】 ランタン職人 ヴェスパタイン―午後・礼拝堂― (135) 2010/08/07(Sat) 01時半頃 |
[優しくてあたたかな人。
失いたくなかった存在。
疑問符付きの返しにこくっと大きく頷く]
たった一日のはずなのに
逢えなかった時間がとても長く感じる。
寂しかったよ。
[あの時の喪失感は心寄せていた故のもの。
それを寂しさと表現して]
……うん。
だから、聴けて嬉しかった。
ピッパの声、私は好きよ。
[耳に心地好い歌声を思い出すようにゆるく目を細める。
伸ばされた手に返す仕草は抱擁の其れ。
生者には触れられなかったけれど同じなら触れられるだろうか]
一日…――――
そっか、一日逢わなかったか
[一日も、たったのか
月は今もそこにあり、昨日もそこにあったのに
私の赤い月は今もほら、空高く輝いたままなのに]
寂しい想いさせたな、悪かった
[何が悪かったのか、私にはわからない
記憶に霞がかかり、思い出す事が出来ない
わかるのは、彼女が暖かかった事]
ん、そっか
聞きたかったら、いつだって歌うよ
[魂同士ならば、きっと触れられる事だろう
抱擁に、感触があるかはわからない
ただ、魂が記憶した人肌の温かさくらいは、感じるはず]
![]() | 【人】 ランタン職人 ヴェスパタイン―午後・礼拝堂>>141― (144) 2010/08/07(Sat) 02時頃 |
私には特別長い一日だった。
……ピッパは悪くないよ。
それに、また、逢えたから、それで十分。
[あの時、見ていることしか出来なかった。
守るといったのに動くことが出来なかった。
何も出来なかった自分が悪いと思いながら
其れを口にしないのは彼女の死を語りたくないから。
自分も死んでいるのに、おかしい、と
心の片隅で思いながら言葉を綴る]
やっぱりピッパは優しいよね。
またピッパの歌が聴きたい。
ねぇ、私にも、……歌えるかな?
[おずおずと彼女に教えを乞うてみる。
触れるぬくもりはきっと彼女の心のぬくもり。
寂しさを埋めるようにぎゅっと抱きしめて
顔を上げて彼女を見詰める娘の顔は何処か幸せそうだった**]
![]() | 【人】 ランタン職人 ヴェスパタイン>>146 (149) 2010/08/07(Sat) 02時頃 |
メモを貼った。
ん…――――
いくらでも逢えるよ 同じ場所にいるんだもの
[そう、彼女は、私は、ここにいる
本来は、悲しい事なはずなのに
自分自身の姿を知らない私は、そう綴る
同じ場所にいる事を、悲しむ必要があるんだろうに]
優しい、のかな
[彼女を抱く私の手、私を抱く彼女の手
ああ、なんと暖かい事だろう
体の温もりは、心に届かないものなのに
魂だけのこの身だからこそ、心が直に暖まり
幸せそうな彼女の顔が、私の心を直に掴むから]
うん、きっとマーゴも歌えるさ
私が教えてやるから
メモを貼った。
メモを貼った。
メモを貼った。
![]() | 【人】 ランタン職人 ヴェスパタイン>>151 (154) 2010/08/07(Sat) 02時半頃 |
メモを貼った。
[彼女の希望に答えようと、私は歌う
彼女を抱いたまま、彼女の温もりを体中に感じながら
肉体を失った虚ろな存在が、喉が無いから魂を震わせ
耳がないから心で聞いて、曲に乗るのは本当の感情
生者の歌は、死者の歌に敵する事など出来ないんだ
心の籠った歌どころじゃない、心が即ち歌なのだから]
ノックの音聞こえたら 今夜は舞踏会
紅のドレスにしようか 貴方が望むなら
風の記憶追いかけて 雲の様に舞い
森の鼓動聞きながら 川の様に歌うよ
夜空に散る水晶は 紅や蒼に輝き
張り付いた女神の矢が 今日はとても眩しい
手を取り合い歌いましょう
暁が 私を 迎えに来るまで
メモを貼った。
メモを貼った。
メモを貼った。
メモを貼った。
![]() | 【人】 ランタン職人 ヴェスパタイン―真昼の森― (165) 2010/08/07(Sat) 10時頃 |
![]() | 【人】 ランタン職人 ヴェスパタイン―昼間の森>>166― (168) 2010/08/07(Sat) 12時頃 |
![]() | 【人】 ランタン職人 ヴェスパタイン―真昼の森>>170― (171) 2010/08/07(Sat) 13時頃 |
![]() | 【人】 ランタン職人 ヴェスパタイン―午後・礼拝堂>>169― (172) 2010/08/07(Sat) 13時頃 |
![]() | 【人】 ランタン職人 ヴェスパタイン―礼拝堂>>176― (178) 2010/08/07(Sat) 14時半頃 |
![]() | 【人】 ランタン職人 ヴェスパタイン>>178 (179) 2010/08/07(Sat) 14時半頃 |
[どくんと、あるはずのない心臓が脈打つ感じがする
彼女の髪の香りすら、感じる気がする
そっと彼女の頬に伸ばした手が届いたのだとしたら、彼女の柔らかさすらも感じる事が出来るのか
潮が満ち、月が満ちるように 私の心の奥底の、からっぽになった井戸の中 暖かさと優しさが、満ちる事はあるのかな
もっと近くに、もっと深くに、もっと奥に、もっと、もっと
私はもっと、温もりが欲しい
彼女を感じる事の出来る部分が、出来るだけ多くなるように 体全体で擦り寄る私の事を、彼女はどう感じるだろう]
悲しい歌聞こえたら 今夜も舞踏会
今日も一つ一つと 足音は消えて
炎の矢すら追いつかず ただゆらめくのみ
剣より槍より 君に捧ぐ踊りを
大地に散る星々は 夜の闇にとらわれ
流れを知る女神の目は 今日もやはり美しい
手を取り合い踊りましょう
暁が 貴方を 迎えに来るまで
![]() | 【人】 ランタン職人 ヴェスパタイン―礼拝堂>>180― (184) 2010/08/07(Sat) 15時頃 |
![]() | 【人】 ランタン職人 ヴェスパタイン―礼拝堂>>182― (185) 2010/08/07(Sat) 15時頃 |
![]() | 【人】 ランタン職人 ヴェスパタイン―真昼の森>>174― (187) 2010/08/07(Sat) 15時半頃 |
![]() | 【人】 ランタン職人 ヴェスパタイン―真昼の森>>187― (190) 2010/08/07(Sat) 15時半頃 |
![]() | 【人】 ランタン職人 ヴェスパタイン 私は本当のことを話している時に一番嘘を吐いている。 (192) 2010/08/07(Sat) 15時半頃 |
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