25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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…… ―――誰 だ
[―――静かに、
消え入りそうな声がした。]
……聴こえてるよ、迦陵
ボクは冬の蕾のままだけど、此処はとても暖かい
[秋色撫ぜられた感触は無く
それが少し寂しいと思う
振り払っていた過去を微かに悔いて
ふと、落ちてくる主の唇
小さく困ったような笑みを浮かべた]
でも主さま、私は叱られるようなことをしてきたのです。
ひとつ
望みを叶えてきてしまった
イビセラの、血を受け継ぐ種を……桜の腹に
[線香くゆる其の先に、
冬が憧れた先の花がひとつ]
……名乗る礼儀は、無きや?
[消え入りそうな問いに
返す複雑そうな声音]
[沈黙。
知っている声だった。]
……鵠。
[ぽつり、と呟くように名が落ちる]
種を。
それは、困りましたね。
身をもたぬここでは、些か感情が出やすいのかも知れぬ。
お前だが誰ぞと契ってきたなど。
私の身に宿して欲しかった。
[見下ろす眼に僅か燃ゆる嫉妬。
死した身ではそれは叶わぬことだと、思えばそれもやがて鎮まる]
…ですが。
お前の生きた証が残るのなら、私はそれでも良いと、思う。
鵠。
やはりか。
何故、貴方がここに。
疑いでも向けられましたか。
[冬を抱いていた腕を解く。けれども肩に手は乗せたままで]
もう、言うても遅いことか。
私が居らずとも
私の子が
次の代へ、其の次へ
望みはひとつ
願いはひとつ
肉を喰らって血を啜り
人の身に種を植え付けて
――――幾日かけても
幾年かけても
必ず果たす
不条理なこの世を壊す為
[主の瞳に灯ったいろ。
見詰めた花が満足気に笑みを浮かべて、詠った]
……主さまの背がもう少し低ければ
私にも襲えたやも。
主さまは
現世に残すもの有りや?
[擁かれていた腕が解かれ、それでも傍は離れない。
肩に乗った手に首傾けて、名乗った方へと名を告げる]
私はイビセラ、ロビン
ひとつ目論見叶ったと謂うてみよう
主さま居らねば
喰らうは高嶺の華ひとつと
……そう謂う案もあった故
現世に残すもの…
残さずとも良いと、思っていたから。
何も。
背など、横になれば関係ないように思うのですが。
[花を見下ろして、少しばかり考える。
肩に置いた手で、首筋へと触れる。
目論見を語る言葉に触れた指に少し力が篭る]
その案が通らず、良かったと。
――ロビン。
[欲しているのは自分かと、裡に篭る思いに片方の手を自身の胸に当てた]
…――――白鳥は、
伝承から
逃れられなかった、らしい。
[さらり、と
黒髪が流れ俯いた。
言葉少なだった鵠はしかし
――イビセラの言葉に目を見開き、紫苑色で、睨む]
そう、――睨まれますな。
それが病からか本心ゆえかは別として。
いま現には高嶺様は生きていらっしゃるのだから。
それよりも。
いまだ残る獣にかからぬかの方が心配でしょう。
何も……?
血の繋がりもあったでしょうに
……背は、そうやもしれません
実の所
唆しも後押ししていましたが。
[首筋触れた指、促されたように顔を上げた。
それから、白い鳥に視線を流し]
案はどの道先送り
先ずは忌わしき使者の片割れをと
……謂うてあったのを
二人に独断で
私が主さまを。
高嶺さまには、
選んだ花の一輪散ったさまを
見せ付けて
そう煽ったのはかの人
私は其れに乗っただけ
其の後どうする気かまでは知らねども
嗚呼、元は花故に
人を誘い捕らえる術は
芽吹いたばかりの私とは、比べようも無い
今も
……声が
若者 テッドは、メモを貼った。
2010/08/07(Sat) 13時頃
…―――――
[睨んでいた眼が、
一瞬、揺れた]
霞月夜
か
それは……―――
[りん、と鈴が鳴る]
……髪を同じに結えば良いと
かの人に。
[鈴の音にそうと取れる答え]
ボクの、巣箱から
雛鳥を浚っていった月は
私の花開くを待っていてくれたひと
真意は知らぬが
彼も、彼も
望みは望んだ数だけ
願いは願った数だけ
手に入れる
血など。
今の世にはさほど重要ではありはせぬ。
それに、どちらにしても残せなかったのですから。
[父はどうであろうか。
自分が亡くなれば、又新しい子を作るのかも知れずと]
元は花、霞の方か。
あの方は――。
[夢で契った相手。夢と思えばこそ。あれはただ一度だけのもの]
嗚呼、そうだ
ひとはもう
血を受け継ぐものでは、ありませんでしたね。
今の世ならばこそ
私の血は必ず、後へ残さねば
[霞の。
主の口から出た言葉に、淡い笑みを浮かべた。
冷たい色の瞳が見上げる]
……その霞の方が
良い体つきと、褒めていらっしゃいましたよ?
[そう謂って、視線を外す]
知って、いらしましたか。
褒めてくださったのならそれは嬉しいことでしょう。
花は花主だけのものですが、花主は、一人の花のものではなく。
けれど今は。
私にはお前しか映らぬと言うのに。
[はずされた視線を追う]
何故、…そんなことを。
[怪訝そうに
ロビン、を、イビセラを、見た。
髪結いを叱られた、なのに]
もう
届かない
[唇を噛んで、俯いた。]
――――、朧様…
…かげつ…
[自分を抱くようにしながら、俯いた。]
誑かしてはと、煽ってくれたものですから。
ただ
私は未だ、人食いの花としては未熟もの
すっかり主さまのもと根付いてしまいました。
……花主は一人の花のものでなく
けれど今は、主さまには私だけ
[外した視線は白い鳥に]
もう、届かない?
これまでも
届いていたとでも、思うの?
さあ……何故そんな事をしたのか
総てはあの方の手の内やも
[風が運ぶ囀り]
ボクは、
[戀は糸と言うと心で出来ているのだと
柔らかくも切ないその言葉に
憧れていた遠い記憶]
失せもの探して
声を裂く
いとしや、いとし
我が吾子は
――…そら、其処にいるよ。
[登る声は拾えども
冬の声は届かない]
[――――りん。
微かな鈴の音を立てて
顔を上げる。]
…―――届いていたなどと
思っては、いない。
死しては
手、伸ばすも 叶わぬ …
執事見習い ロビンのただ傍に立ち、あちらを*見やる*
|
[弾け飛ぶ珠は過ぎ去った日々の如く。
羽ばたく羽音は誰のもの。
冷たい鈴の音は哀しげに りんと啼き。
千切れた糸はもう 元には戻らない。]
(@12) 2010/08/07(Sat) 14時半頃
|
|
― 朝・雛菊の間 ―
[虎鉄は、ハッと琥珀を開いた。 額には薄らと汗が滲んで、背中も湿り気を帯びていた。 気がつくと虎鉄はまた机に突っ伏して寝ていた様子。 いつ戻ったんだったかと朧げな頭で振り返って。]
それにしても…何か夢見悪いな…。
[先程まで見ていた夢を思って、ぽつと呟く。 起き抜けの感情は気だるいと言うより、何処か寂しく、哀しい。 それはこの屋敷で起こった事件のせいか、それとも―――]
………腹、減ったな。
[くう、と鳴った腹には溜息をつくように呟いて。 虎鉄は服を着替えると廊下へと出た。]
(@13) 2010/08/07(Sat) 14時半頃
|
若者 テッドは、メモを貼った。
2010/08/07(Sat) 14時半頃
望みはひとつ
願いはひとつ
二つ心抱いたなら――
[薄い唇から、うたを零すは主持つ花]
ふぅん
飛ぶ白鳥すら
あの高い嶺には届かないんだ。
[複雑な色帯びて呟くのは冬の蕾]
誰なら、届いたんだろうね。
[傍らにある法泉の
手を取り指を絡めて寄り添う。
遠く、現世を見遣る瞳は雪空の色
何時しか、気付けば其処にあるべきレンズが無かった**]
|
― A棟渡り廊下→本邸・廊下 ―
[本邸へと向かう廊下。 何やら屋敷の中は慌しい。 人を捕まえて何かあったのかと聞いてみようとしたが、声をかけてみれど此方に反応する様子は無い。]
忙しくても一言位返してくれりゃいいのに…。
[少しだけムス、とした口調で呟いて。 廊下の先に羽織が見えれば、丁度いい所にと駆け寄った。]
おーい、夜光! …なあ、何か朝から皆バタバタしてっけど、何かあったのか?
[昨夜の封鎖時よりも淀んだ屋敷の雰囲気。 宵にあった出来事が未だ耳に届いていない虎鉄は、何か知らないかと問いかけるのだった。]
(@14) 2010/08/07(Sat) 15時頃
|
|
― 本邸・廊下 ―
知らせ?
[何も、と首を振り。 続いて紡がれた言葉には一つ瞬いて。]
は――――
[琥珀が大きな円になった。]
…マジかよ……
[呟くも、夜光の表情を見ればそれが事実であるだろう事は見て取れる。 そも、こんな状況下でそんな冗談を言うような奴とも思えないと、唸り。 淀んだ空気の正体を知れば、不思議と身体が重くなった気さえした。]
…お?アンタは…、…。
[やがて下駄の音が近づいて、声が掛かれば其処には先日手を弾いた相手。]
(@15) 2010/08/07(Sat) 15時半頃
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