167 あの、春の日
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そうですね、本当に。
……不思議です。
[メイクを施されるキャサリンと、ジェレミーに視線を移す。
彼らのやりとりも、寮では良く見る光景だった。
先ほどまで夢で見ていたはずなのに、もうひどく懐かしい。]
ふふ、ありがとうございます。
――人形にはまだ、なれていませんけれどね?
[思い出すのはそんな一場面。
黒眼は懐かしく、それでいて少し寂しげに細められた。]
なんか馬鹿みたいだな、私。
本当はここに来るの、躊躇ったのよね。
結構自分にいっぱいいっぱいで。
―――でも、来てよかった。
[ 視線はお冷の氷。
独り言のような本音を誰かに向けるわけでもなく
ただただ吐き出す。 ]
私、いろいろ間違えてたなぁ
不幸せなんかじゃ、なかった。
[ みんなのおかげでね。と加えて笑みが溢れた。** ]
[少し長めに夢を見ていたようだ。
ぱちくりと瞬いて目を覚ます。
きょろりと周囲を見渡して、
一瞬、これが現実なのかわからなくなった。
昔の夢なんてみた日には、涙が止まらなくなるのも珍しくはない。
けれど、みんながいる。
これは幸せな夢なんかじゃなくて、本当に。
嬉しくてにへら、と、崩れた顔で笑った。]
ー 回想 ―
[青い空に手を伸ばしてた、あのころは
記録が伸びていくことが嬉しかった、
おいしいごはんが食べられることが嬉しかった、
仲の良い友だちがいて、楽しい先輩がいて、
ただそれだけでよかった。
マドカにはそれ以上はいらなかった。]
[記録を残すことにこだわっていなかったから、
選手として生きることはできなかった。
頭悪いなりに勉強して、みんなといっしょに大学に行って、
陸上サークルには入ったけど棒高跳びの設備はなかった。
それでも陸上がしたくて、
そのためにサークルの付き合いも頑張った。
お酒を覚えた、メイクも始めた、
連れて行かれた合コンで出会った男の子に
告白されて付き合ったけど、キスもしないうちに別れた。]
[そのうち就職して、
どんくさいながらもコピーとお茶汲みを覚えて、
毎日パソコン叩いて、笑顔でランチして、
それから、それから……]
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[フィリップが言葉を紡ぐ。>>58 八つ当たりに大きな声を出した自分を責めることもなく、ただ必要だと繰り返して。]
………貴方達の気持ちなん、て知らな…
[言い掛けて、感情に身体が震えて、エルゴットはグラスを落とす。 ガシャン、とそれは床で砕け、押し黙る。
彼の手が伸ばされれば、びくりとして、また雫が零れ堕ち。]
(70) 2014/03/09(Sun) 23時半頃
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[重ねられるルーカスの言葉。>>63 必要とされないわけがない、と涙混じりの声が聞こえて。
諦めないで欲しいと、訴える。
続いて、いつのまにか戻ってきていたハルカは>>64、 見返りと求めろ、と言う。]
…ハンスト…
[考えもしなかったことに、ぽそりと呟いて。 いつのまにか皆の視線に取り囲まれていることに心臓が跳ねた。]
(71) 2014/03/09(Sun) 23時半頃
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[恋とはどんなものかしら。
あの春の日、青い空に問いかけた、
その答えはいまだに、見つからないまま。
見た目は大人になった。
でも心はまだオトナになれなくて、
心だけ、あの日に置きざりにしたまま。]
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…、…、……っ
[ガタガタと恐怖で身体が震えだす。 掛けられた言葉と綯交ぜの感情に、大粒の涙がいくつも溢れて、手で顔を覆うようにして慟哭した。]
(72) 2014/03/09(Sun) 23時半頃
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― 現在 ―
[そこまで思いを馳せたところで、ふと我に返る。
聞こえてきた声に、ぴょこんと肩揺らして頷いた]
私も……私も、です!
みなさんのおかげで、幸せです!
[声を出してから、振り返る。
大人っぽすぎて近寄り難くて苦手だったはずの
ジリヤの姿にびっくりして、目を丸くした。]
そうか。
……今じゃなくても、泣きたい時に泣ければ良い。
ただ、一人で泣くな。
[ジェレミーに頷くように告げる。
あの頃は、傍に誰かがいてくれた。
陸上部を辞めると決めた時、話を聞いてくれたのは確かフィリップだった。
話を聞いてくれる友人と、陸上の代わりになる物があったから、怪我をしたことも、そこまで腐らずに済んだのだ。
あの頃のように支えてくれる友人は貴重だったのだと、今なら分かる。]
[エルゴットの頭をぽんぽんと撫でながら、ジェレミーにメイクをねだるキャサリンを見た。
あの時。
夢の中、耳元で聞こえた気がした声は気のせいだったのだろうか。
それは確かめることはしない。]
[聞こえたくしゃみに、個室の入り口を見る。]
おかえり。
[戻ってきたマユミへ声を掛けたが、その視線は自分の顔よりも下に向けられている。
眼鏡を確かめようとしている目的は知らないまま、嫌われたかと思い、視線を外して息を吐いた。]
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