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たぶん…、限界、かな。
[何があったか――って?
ナナオは、知らない。
せんせーは、ナナオに何も言ってないから。
寝ている間に、ここにいて――。
寝ている間に、これがついていた。
だから、それ以上は話せなかった。]
これがあたしの毒を吸いとってくれているみたいだけど…、たぶん、…。
[そう言って、黒い小手のような機具を示した。
誰かが入る気配に、言葉は途切れた。]
[――まるでその毒を、採取するために用意をされていたような――黒い小手。
…外しちゃ、駄目な気がする。
だから、ケイトリンさんが外そうとすればナナオは止めるだろう。
外したら、みんな死んじゃうよ。
あたしにさえ効く毒なら――きっと、今は誰にでも効くんじゃないかな。
そう言おうとしていたから――。]
あ。ごめん、これ外せるんだ。
関節外して…ほら、マジックショーとかで、縄抜けとかそんなの見たことない?
っと…、ケイトは余りいなかったし、ナナオはピエロの彼知らないからよく知らないか。
一応ね、これ以上拘束されたら溜まったもんじゃないから。付けてるだけなんだ。
[
…メルヤ。
[つい先日まで、あっちにいたのに。
みんな、こっちにきたの?…なんて、思って――困ったように微笑んだ。
力なく微笑むだけで――言葉は、名前を呼んだだけだった。]
……。
[ややあって。彼も部屋に入り込む。
角度を気にして僅かに重々しい扉を閉めた。締め切るのを躊躇ったのは、ここの設備が気になったからだ。]
ナナオ。おとといの朝振り、かな?
と、言っても僕が食堂で見掛けただけだけど、ほら、近くに座ってたから、ね。
[
静かな声で近づきつつ、ナナオの痛ましい姿を見つめる。]
…ナナオ
重要なのは黒い小手だけ、かな?
[じいっと観察するような、問い掛けるような視線を送る*]
……そう
[限界、という言葉を聞けば...は歯噛みする
あんなに、元気だったのに
あんなに――明るく笑って、いたのに
私も隔離病棟で治療を受けたほうが良いとは言われたけれど
彼女程は悪化はしていない
――外見、上は]
それは毒を吸い取るものなのね
でも、何だか物々しいわ
[その毒は何処に捨てられるのだろう
外そうとすれば止められて。その事に小さく眉寄せよう
硬石化した身体なら大丈夫な気もしたけれど
メルヤも現れた事で...は外そうとする手は止めた]
……。
[そしてやってきた彼の発言
思わずジトっとした視線を送ったのも致し方ないか
ピエロやマジックはあまりみた事がない
...の家庭は清貧であったので
外せるなら外しなさいよなんて思うも、
確かにこれ以上拘束されたら自由には動けまい
...は無言を貫く事ことにしたのだった]
分からない…。
[
ナナオには他にも、点滴らしい管や――用の管や瓶もベッドについていたりする。
開放区にいたころのように、歩き回るのは難しいだろう。
力なく首を振った。]
[
ケイト、ちょっとあっち見ててくれる?
[指差したのは扉の向こう側。暗に、少し見張ってて欲しいと頼む。
なるだけ、女性の視界の入らないところに言って、手首の関節を捻る。ごきっ、ばきっ…余り聞きたい音でもないし、メルヤも余りやりたい技でもない。
手錠を外せば再び手首の関節を戻す。はずした手錠は指で一回転させた後にポケットに忍ばせた。]
ナナオ。
[
鱗が増えているのをぼんやりと眺めながら。
覇気のない
会いたいひととか、いるんじゃない…かい?
タルトは、君の約束を健気に待っていたし。
ヒナコだって……いなくなって悲しんでいた。
[僅かに間が空いたのは、彼が逡巡だった。]
あと、トレイルが凄い動揺して僕がびっくりしたよ
[普段からやたらトレイルに構われるので、実は気づいていた。
トレイルとメルヤがいる時に、ふとナナオがこちらを見ていること。
視線はメルヤとは合わない。その意味がわかったのは、やたら構われてたせいだろう。
……鎌掛けも入っていたのはご愛敬である。]
・・・うん。
[――ああ。そうだ。
ぼんやりとメルヤの鱗を眺めながら。
あたしはきっと、だから、まだ生きていられるんだと思う。
でも。――もう、このままでは会えないような気さえする。
また眠りに堕ちたら、帰ってこれないかもしれない――。
目覚めるたびに、生きている感触が遠のいているのだ。
――もう、長くはない気がする。次は無い――。
その不安は、とても現実的だ。
――それでも、会いたい、と想った。
だから、あたしは頷いた。]
・・・会いたい。
[――でも。会えない、と思って。
哀しそうに、眼を伏せた。]
――ええ、わかったわ……?
[何をするつもりかわからないが、素直に頷き
すると何か関節の外れる音
割と きいていて こわい
振り向けば手錠が外されているのを見て成程と思う
でもやっぱり...はちょっと怖いなと思ったのだった
そして、ナナオとメルヤの会話を聞いて
――ナナオにも、どうしても会いたい人がいたのかと思い至った
それが、トレイルとは気づかないまでも
タルトやヒナコだろうなと...は思い]
――会いたいけれどあえないというのは
気持ちはわかるわ
[あう時はきっと、隔離病棟の中だから
私は平和な思い出を、抱いて生きていける、はず]
[なのにどうしてこんなに 哀しいのだろう
ころん
転がるのは、小さなアイオライト]
[トレイルが――、と聴いて。
ナナオは、ほろりと涙を流した。
嬉しかったのか、哀しかったのか――何故だろう。]
……うん。
僕も、ね。ケイトには気づかれてたし、ナナオも、気づいてたかも、しれないけど。
最後にちょっと未練があって、さ。
[包帯の解く音だけが、室内に響いているようだった。
元気で、明るかったナナオ。本当に病気の進行だけだろうか。]
…僕も、体がだるいんだけど…ね
どうも、筋弛緩剤みたいなの…投与されてるみたいなんだけど…
ナナオも、そういうのあるかもしれない…けど、さすがに器械も点滴もわからない、か。
[包帯を解ききった彼が手にしていたのは
ピンセットと紙やすり。上着だけを羽織って、包帯を椅子の上に置きナナオの方へと向く。]
[顔を背けていため
ただ近づいて。どうしても。一言だけ告げたくて仕方がないことがあった。]
ナナオ…余り僕こんなこと言いたくないんだけど
――趣味悪くないかい…?
[ケイトに聞こえないように、小声でぼそりと呟く。昨日の会話の応酬の名残があった。
苛立ちはほとんど自分に向けられているのだが、どうしても言いたくて留まれなかった*]
[ナナオは、その言葉を聴いて。
きょとんとした――意外な言葉だったのだろう。
不思議そうに、どうして?というように首を傾げた。]
・・・?
[一つだけ、思い至ることがあって――。
そっか。
あたしのことを、忘れたのか――と。
――少しだけ、眼に生気が戻った。]
・・・そんなこと、ないよ。
[震える声で、ナナオは言い返した。
約束。――それは、何の為にしたものか。
あたしの方こそ、忘れかけていたじゃないか。
涙が、また落ちる。・・・そうだ。
忘れられたく、なかったんじゃないか。
その想いが、消えかけた蝋燭の火を少しだけ大きくさせた。]
メルヤ。
・・・その辺に落ちてる、ペンをとって貰っていいかな。
そう……
未練、は寂しい、わね
[しゅるり、しゅるりと響く音
筋弛緩剤の存在や手錠、脚の鎖
――嗚呼その存在を感じるだけで嫌になる、と思った
まるで牢獄、まるで煉獄
囚われてしまった終末病棟の様ねなんて
...は振り向けば――メルヤの持つモノに眉をひそめる
なんだ それは
というか貴方何で其れをもってるわけなの?
まさか、この様な事態を察していた?
言葉にならず...は唯無表情に彼を見る
――思う事は唯1つ]
[貴方って後何を隠し持っているのかしら
完全にナナオとメルヤのターン!お話になっているのは感じたから
...は思うだけで、口には乗せないでおいたのだった]
[ナナオは、メルヤが何をしようとしているのか――。
ぼんやりと見つつも、見当がつかなかった。
背中の鱗は、きれいだな――と思ったけれど。
――しかし、それが何の為か。
ピンセットや紙やすり。筋弛緩剤や手錠――。
その意味を分からないまま、見つめている。]
(あ。ダメだ。完全にトレイルに夢見てるよね)
[
彼から見れば、ナナオにはトレイルは勿体ない、が。野暮な口を挟むまい。
(いやいやいや。あいつ、何だかんだで自分本位だし、拾った子犬みたいに構われるこっちの気にもなれっていうか。……いや、ナナオは悪くないから、やめておこう。)
[つらつらと並べ立てられた悪態は、ここにはいないトレイルという名の男に投げつけた。
ペンを、と頼まれれば僅かに床の上を探す。少し変わった形のペンを見つけ、ナナオの黒い小手にしっかりと渡した。]
……ナナオ。ピンセットと紙やすりで、僕、たぶんピッキング出来るよ
鍵開けマジックは得意でね。昔、色んな人の部屋開けて怒られたんだよね。
…手品辞めた頃にはナナオいなかったから、知らなかったかも、だけど。
で。…ちょっと時間掛かるかもだけど、拘束解いて大丈夫そうなところ解いてもいいかな?
[念のための確認。生きる力を見せて欲しいという願望まじりであったかもしれない。
なお。ピンセットと紙やすりは本当に簡易のピッキングツールです、良い大人は真似をしないようにしましょう。]
[
辛いのかなあ。どうだろう、ね。
[小さく零す、彼自身。昨日気づいてまだ持て余している部分だった。
・・・ねぇ、メルヤ。
メルヤから見たトレイルの話、聴かせて?
[と、ペンを受け取って――そう訊ねた。
――そう。あたしは、きっとメルヤよりもトレイルを知らない。
惹かれてはいても、そんなに話をしたことはない。
助けにきてくれたから。
遠くから眺めていたから――。
だとしても、きっと、全部を知っているわけじゃあない。
どんな人だったのだろう。
もっと知りたかった。もっと――。
少しづつ、だけれど。
ナナオは、もっと――生きたくなってきていた。
あの人のことを――もっと、知りたい。
そう。この気持ちは、きっと恋だ。]
――あら、辛くないの?
そうだとするなら心がなんとも強い、ものだわ
[私は、キルロイの事を考えるだけでああ、未練が鎌首もたげる
とはいえ何故か何時もの傍観者が、この時だけは動揺しているように見えて
あなたも、未練があるのかもしれないわね
なんて思った
しかしこの道化師さん、ピッキングまで完備しているなんて
――彼の、多芸ぶりに思わず目を見張ったのだった]
・・・でも。
それ、せんせーが動かないようにって固定してるものだから・・・。
[ピンセットで外せるよ、と言われれば少しナナオは渋った。
ナナオから見たせんせーは、医者としては信頼している。
嘘は、よくつくけれど・・・。
この固定が無ければ、ナナオは暴れ落ちていたかもしれない。]
・・・でも。
また、ペンが落ちたら拾うくらいは自分でしたいな。
本当に、外せるの・・・?
[と不思議そうに。
メルヤの手品を見ていないので、半信半疑・・・といった感じのようだ。]
[ナナオが尋ねる、メルヤから見たトレイルの事
其れを見ればなんとなく、ぴんときて
ああ、あなた″も″恋をしているのか
と]
……恋とは偉大ね
[小さく呟き、生気が戻った彼女を見つめる
ピッキングか何かで彼女の固定を外そうとしているのを見れば
できる事はない私は唯、2人を眺めるだけ]
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