147 書架の鳥籠
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―書架の何処か―
……此処に来て、少し慣れたとはいえ、 やっぱり、暗いのは怖いな… 地下室がないだけ、ましだけれど。
[ランタンの仄かな灯りを頼りに、 貴方は、書架の迷宮を歩き出す。 ラルフの為の絵の具と、次に読むべき本と。
――…叶うなら、魔女の姿を探し求めて。
絵の道具は、専門家のラルフの方が 先に見つけられそうだけれど、とは思いつつ]
(225) 2013/10/04(Fri) 20時頃
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―書架の何処か―
屋敷の図書室も暗かったけれど、 “夜”と“闇”が、いつもついて来てくれたから、 こわいと思ったことは、なかったのにな…
[同じ日に生まれ、種族は違えど兄弟のように育った、 2匹の黒猫の姿が――…そのぬくもりと、 愛おし気に呼ぶ鳴き声が、耳に蘇る]
(226) 2013/10/04(Fri) 20時頃
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にゃあ、にゃあ…
(227) 2013/10/04(Fri) 20時頃
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闇の中で、夜の姿を持つ猫たちが、鳴いている。
(228) 2013/10/04(Fri) 20時頃
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にゃあ、にゃあ、にゃーあ。
真っ赤な血に濡れた姿で、鳴いている。
鳴いている…ないている…。
(229) 2013/10/04(Fri) 20時頃
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―――… 泣いているのは、だあれ?
(230) 2013/10/04(Fri) 20時半頃
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ん、大丈夫、だよ…。ごめん。
[ラルフに問われた際>>224には、 目元を隠した掌を外し、小さな笑みを浮かべようとして]
ありがとう、少ししたら、僕も探しに行くね。
[念おしされれば、うん、と素直に頷きつつも、 そう言って。離れる背を、見送ったのだったか]
(231) 2013/10/04(Fri) 20時半頃
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[>>202 ルーカスの声の名残がかすかに届き、私は振り返りました。が、そのときは既に姿が無く。 急にどうしたのでしょう。
―ことん
私の肩を叩くかのように、背後の棚から音がしました。 仄かに光る本。]
(232) 2013/10/04(Fri) 20時半頃
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[豪奢だけど、枯れかけた庭のような装丁の本です。伝記物みたい。
飾り文字は、ルーカス、と綴られています。
もしかして、彼はこの本になってしまったのかしら?なんて面白くもなんともないことを思いながら、私は適当にページをめくってみました。]
(233) 2013/10/04(Fri) 20時半頃
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― 2階 ― ルーカス君は違う場所の調査に行ったようだな。
[私が振り返ると、ちょうど方向を変えるルーカスの姿を捉えた。>>202彼の声は届かなかったが、レティーシャが心配しないようそう言った。 先程指先でなぞった本の表紙に埃はなかった。こんな場所を細かく掃除しているとも思えなかったけれど、そう、時が止まっているのならと仮定すれば――]
…、おや。
[私は指先を擦り合わせて姑のように、ふ、と指先に息をふきかけながらレティーシャを見下す。何か本を手に取っているのが見えた。]
(234) 2013/10/04(Fri) 20時半頃
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[今更。
夫
(235) 2013/10/04(Fri) 20時半頃
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[私は……
ぞわりと全身に鳥肌が立ったので、あわてて本を閉じ、棚の奥深くに埋めました。
私は何でも忘れます。だからもう、本の場所も何も覚えていません。 覚えていません。]
(236) 2013/10/04(Fri) 20時半頃
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―書架の何処か―
子猫ちゃん、子猫ちゃん、何処へ行くの? 王子様に会いに行くんだ。 月の裏庭を、飛び越えて。
子猫ちゃん、子猫ちゃん、何しにいくの?
王女様を助けにいくの。 魔法使いの箒を、ちょいと借りて。
[幼い頃に母が歌ってくれた、戯れ歌を口遊む貴方の声は。 歩みにつれて揺らめくランタンの灯火と共に、 書架の影と、それを取り巻く暗がりを、震わせる]
(237) 2013/10/04(Fri) 21時頃
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[私はじりじりと後ずさると、忘れた棚に背を向けて駆け出しました。足がもつれそうになります。
そう、あの時も、私は転びそうになりながらも必死に走って]
(238) 2013/10/04(Fri) 21時頃
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[暗い森の、木の葉の音。気配。]
(239) 2013/10/04(Fri) 21時頃
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レティ嬢?
[私は突然駆け出したレティーシャの姿に驚いて、 思わず声を投げる。]
(240) 2013/10/04(Fri) 21時頃
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―書架の何処か―
[昔、キツネ狩りに連れて行ってもらった際に、 熊を仕留めたというハンターが、教えてくれた。 こわいものがいる時には、それが近づいてこないよう、 なんでもいいから、歌うといいと。 たとえそれが、自分の中に在るこわいもの、でも]
(たしかに、ちょっとだけ。気持ちが紛れる、かな…)
[嗜みとして家庭教師に習ったけれど、歌は上手くない。 誰かの耳に入ることがあったなら、かなり恥ずかしい。 調子っぱずれは、大目に見てもらえるように 心の中で祈りながらも、 やはり、沈黙の降りる暗がりはこわくて]
[私は、知っている限りの乏しい数の歌を、 かなりでたらめな歌詞でリピートしつつ、 いくつもの角を曲がり、幾つかの階段を昇った]
(241) 2013/10/04(Fri) 21時頃
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[階段を降りるのは、嫌い。
父の屋敷の地下室へ、続いているような気がするから*]
(242) 2013/10/04(Fri) 21時頃
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[――― 子猫ちゃん、子猫ちゃん、と。 どこからともなく聞こえる歌が私の耳に届く。
狭い路地でも、高い屋根の上でも、必ず依頼された猫は見つけた。時折、間違って違う猫を捕まえる事もあったが…。
それ故、私には本棚の隙間を抜け、積み重なった本を崩す事無く歩く事は容易な事だった。無論、帽子を落す事もない。]
…、レティ嬢。 慌てて走ると本を倒して怪我をしてしまうよ。
(243) 2013/10/04(Fri) 21時頃
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[私は走りました。]
いや!
こないで!……こないで!!
[暗い森の木の葉の音にまぎれた気配に追われる私は木の根に足を取られ―]
(244) 2013/10/04(Fri) 21時頃
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っ !
[私は足を積み重なった本にひっかけて、転んでしまいました。 抱えていた本も投げ出してしまいます。
痛い。固い床に全身をぶつけたので。 そう、ここは魔女の本の森……。
私は血の気が引いた頭のまま、ゆらゆらと立ち上がりました。 足首を痛めていてもよさそうなのに、痛くはありませんでした。 それともあとで痛むのかしら?
オズワルド、オズワルドはどこ?]
(245) 2013/10/04(Fri) 21時半頃
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…っ、…
[来ないで、と。 その言葉に、レティーシャを追う私の足の動きが止まる。]
どうして、
[私の声は動揺した声色を隠せない侭、倒れる姿が視界に入った。 レティーシャが1人で立ち上がるのを確認するも、 私の表情は困惑したものだった。]
――…、レティ嬢。大丈夫かい?
(246) 2013/10/04(Fri) 21時半頃
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良家の息子 ルーカスがいたような気がしたが、気のせいだったようだ……(良家の息子 ルーカスは村を出ました)
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[今から何年前になるだろう。
男にまだ縁談の兆しもなかった頃。 肺の患いが悪化した]
(247) 2013/10/04(Fri) 21時半頃
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[家人は此度もあれやこれやと手を尽くし 大事な跡取りの命をつなぎ止めようと努めた。
そのうちの一つが洗濯の業者を変えたこと。
結局ところ何が功を為したか判らぬが、 彼の心を満たしたのはひとつだけ。
たった一枚の真っ白で清潔な寝具の香り。
魔法のように彼の病は治しはしないが、 生きるに喘ぐ胸を慰めひと心地をもたらした]
(248) 2013/10/04(Fri) 21時半頃
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[こんなにも違うのにどうしてだろうか。 家人もメイドも誰も気づかない。 だから、彼女のシーツがいつも届くとは限らない
けれどそれでも良かった。 自分だけが見つけた小さな楽しみ。
洗いざらしたシーツの手触りの向こう。 誰がいるのか興味が湧いた。 今日はアタリで昨日は外れ。 明日は無理でも ああ、もう少し楽になれば行けるかな]
(249) 2013/10/04(Fri) 21時半頃
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[それから幾日か]
[洗濯屋が通る屋敷の小径。 おろした金の髪がそよ風に流れる心地よい日]
…ああ。 君だろ?
[横を過ぎただけですぐに判る。 とくべつ真白なシャツと石けんの匂い。 彼女を呼び止めた男の目には嬉しさが滲む]
(250) 2013/10/04(Fri) 21時半頃
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トウゼンだよ。
[とっておきを見つけたみたい。 誇らしげにほころぶ顔は少年じみる。 握られた手の感触に特別な真白を想い、 ぎゅっと握り返すは握手に似る。 その手に光る指輪はまだ無くて――]
(251) 2013/10/04(Fri) 21時半頃
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[若様と呼ぶなと不貞腐れたのは どれくらい月日が経ってからのことだろう。 その頃には、ひと目なく肩書きなく 話せるほんの短い時間を都合できる程度には 偶然の装い方も慣れてきた。
ともだちとは、 そんなしゃべり方をせんだろう。 ふつうに、話せ。
命令口調の友達がどこにいるのかと。 ばつの悪さにその日はふいと背を向けた]
(252) 2013/10/04(Fri) 21時半頃
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