88 吸血鬼の城 殲滅篇
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[エリアスの生み出した魔法の風の刃がヘクターの肌を裂いて血飛沫を巻く。]
そっ……!
[それはさして効かないだろう……と告げる間はなかった。 開いた数多の傷口はたちまちのうちに塞がり、男が動じた気配は全く無い。>>1:294]
(3) 2012/04/30(Mon) 00時半頃
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[不吉に嗤う男の腕が、凝集させた闇を開放する。>>1:295 放たれた闇は暴風となって吹き荒れ、離れたところに立っていた錬金術師をも翻弄した。]
待
[全身にまるで絡みつくような闇に攫われ、捥ぎ取られるように暗黒の中に放り込まれる。 右手に握り締めた試験管は出番を失ったまま――]
(6) 2012/04/30(Mon) 00時半頃
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レオナルドは、11に現れた。
2012/04/30(Mon) 00時半頃
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―看守部屋― [埃っぽい空気の臭いが鼻腔を擽る。 ゆっくりと目蓋を開ければ、窓から差し込む弱い光が、積み重なった木箱や樽の輪郭を縁取る。 身を起こそうとして、軽い眩暈を感じ頭を振った。]
ここは……
[どうやら物置のような場所らしい。 あの闇に吸い込まれて強制転移させれた、といったあたりだろうか。 と、そこで、まだ試験管を握り締めていたことに気付いた。]
……よかった。割れていませんね。
[ほっと安堵の溜息を吐いた。 大事そうに試験管をしまうと、ついでに身に着けているものを改めた。 ポーチやベルトに吊るした機具、背嚢も一式揃っており、薬壜なども割れたり失われたものはない。 ようやく人心地ついて辺りを見回した。]
(24) 2012/04/30(Mon) 01時頃
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[周りに、他の討伐隊メンバーの姿は無い。どうやらはぐれてしまったようだ。]
この場所はまだ来たことがないようですね。 部屋の形からして、塔のどちらかのようだ。
[がさがさと紙の束を取り出し、見取り図とスケッチを指でなぞり確認する。]
(26) 2012/04/30(Mon) 01時頃
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―― 地下聖堂 ――
[眠る女の魂が薔薇の花束に包まれる。
ヘクターの使役する影が運んできた薔薇の花はあの時と同じ色か。
高貴な香りを纏う花弁がふわ、と揺れて――]
――…ン、ぅ
[夢現の頼りない声が吐息と共に零れた]
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[立ち上がると、紙束をまとめ、ベルトに留め付けた。 空いている木箱の中身を確認したりと、一通り中を捜索する。]
弓矢や剣は得手ではありませんし。 特に使えそうなものはなさそうですねえ。
[持っていって使えそうなのは松明くらいだろうか。 それよりも外に出られなければ意味がない、と一つだけ存在する分厚い木の扉に手を掛けた。 鍵は掛かっておらず、あっさりと扉は開いた。]
(31) 2012/04/30(Mon) 01時頃
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[外は夜闇に包まれていた。 眼前にはうっそりと城壁が聳え立ち、背後の出てきた方を見れば塔が立っている。 湖面は闇に沈んでかすかな水音のほかは何も聞こえない。]
ああ、ここは南東の塔だったんですか。
[随分と遠くに飛ばされたものだ、と呟く。 それにしても城にいた時間から考えると、まだ日の暮れる時刻ではないはずだが、それほど長い間気を失っていたということだろうか。]
(32) 2012/04/30(Mon) 01時半頃
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[ヘクターと名乗るあの魔人は、昔討伐された吸血鬼で間違いないのだろう。 一度滅びてなお復活したのだとしたら、これ以上望むものはない。 だが問題は彼がどこにいるのか分からないことだ。]
……別れたのは好都合、と考えた方がいいのでしょうかね?
[そんなことを独り言ちながら、城へと向かった。**]
(34) 2012/04/30(Mon) 01時半頃
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[聖堂の中央に横たわる女の睫が震える。
一拍置いて深紅の双眸が同じ色の花を映した。
はたり。
瞬きをするは状況が理解できぬから。
黒犬が残したあの薔薇は
ドナルドの刀子が散らしたはず]
[ゆっくりと身を起こし
貫かれたはずの胸に手を宛がう。
傷はない。
纏うドレスも破れてはいない。
腕に負う傷も
脚の火傷も跡形なく消えていた]
[それに伴い女を苛んでいた痛みも消えて
ぼんやりと自らが死んだと知る]
此処は――…?
[辺りを見回すがこの場所に覚えはない。
会いたいと願った主の姿も其処に無く
不安げな表情が過ぎる]
[不安と寂しさを紛らわすは薔薇の花。
香りに包まれているうち
此処が怖い場所でないと思えるようになる]
聖堂……?
[燭台の淡い灯火を頼りに
自身の居る場所にあたりをつける]
[女は燭台をじっと見詰め
炎が強まるよう念じる。
肉体を失っても魔力は失われぬのか
この場でのささやかな干渉が叶う。
先ほどより明るくなる室内。
薔薇の色も鮮やかに映り女は緩く微笑んだ]
[聖堂で見つけた鏡に魔法を掛ける。
其れは此処でない何処かを映す魔法。
城の様子を映し出す鏡。
女は平らな面をそっと撫でる。
深紅の双眸に映り込む光景は――**]
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―城の外― [明かりが必要……と感じ、持ち出した松明を早速活用することにした。 化学反応で光を発する灯器は温存する。先に何があるか分からぬ以上、出来るだけ損耗を抑える必要がある。 点火用の火打ちの指輪を取り出して指に嵌めようとして、右手に巻いた布を見遣る。]
…………。
(62) 2012/04/30(Mon) 10時頃
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[手の平にべったりと付着した血。 乾きかけたそれは、傷によるものではなく、屋上で――>>1:206
思い切って、赤に汚れた白布を剥ぎ取って捨てた。 小指の付け根の傷はもう血は止まっていた。
火打石の指輪を打ち鳴らす。 飛び散った火花が火種をつくり、その火を移した松明がめらと燃え上がる。 それは一面の闇の中で、頼りなくも人間の領域を主張するかのように光の輪を広げた。]
(63) 2012/04/30(Mon) 10時半頃
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[投げ捨てた血染めの布にそれを押し付けると、じりじりと燃え始めた。 しばしの間、その前で燃える炎の色を眼鏡のレンズに映していたが。
踵返し再び城へと歩き出した。]
(64) 2012/04/30(Mon) 10時半頃
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―城の外― [城壁に沿って進む。 角を曲がったところで漸く扉を見つけた。 位置的には大広間に通じる裏口と言ったところだろうか。
念の為もう少し先まで歩いてみると、胸壁を支える脚柱が並んでいた。 隙間はあるが、人間が通り抜けられるほどではない。 松明をその間に差し込んでみると、樹のようなものが見えた。それ以上は闇が濃くてはっきりしない。 北の塔も気になるが、ぐるりと周りを巡っても出入り口らしきものは見付からなかった。
それでは、と扉の方に戻りかけたその時、]
(65) 2012/04/30(Mon) 11時頃
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[じわり、と足に絡みつく冷気。 さっと松明で足元を払うと、影でできた手のようなものが地面から伸びて、足を掴んでいた。 炎が薙ぎ払ったのに、わずか影の切れ端のようなものが零れただけで退く様子は無い。 振り払って避けようとしても、すぐに縋りついて離れない。]
これは厄介な、
[錬金術師の使える武器は、物理ダメージを与えるものが殆どだ。 こういった、実体のない魔法生物に効く攻撃手段は持っていない。 何とか手を振り切ろうと不器用なステップを繰り返しながら、ポーチから試験管を取り出す。 這い登る冷気が腿の辺りまで広がってきた。]
(69) 2012/04/30(Mon) 12時頃
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[手だけでなく、人を模した上半身までが蟠る闇から這い出て、こちらに伸びてくる。]
こんなところで使いたくはない、んですが、
[先刻旧城主ヘクターと対峙した時に、選び出した薬。 全身の身体機能を上昇させる賦活剤。 使えば、体力のない彼でも戦士並の筋力と運動能力を得ることができる。 わずか2本しかなく、効果時間は短い。 今ここでこれを使えば……あとは確実に時間との勝負になる。]
(70) 2012/04/30(Mon) 12時頃
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[が、ここを先途と割り切った。 薄赤い薬液の入った試験管を口に運び、飲み下した。
身体に熱が篭り、効果が現れ始めたと感じた瞬間、少し離れた場所に見える扉に向かって猛然と走り出した。 対処しようがないのながら、逃げればいい。 振り切れる保証は無いが、時間が限られている以上かかずらわってはいられない。]
(71) 2012/04/30(Mon) 12時頃
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[影が滑るように追いかけて来るのを何とかかわし、扉に飛びつく。 取っ手を掴んで乱暴に押し引きすると、果たして扉に鍵は掛かっていなかった。 慌てて滑り込んだ後、勢い良く音を立てて扉を閉めた。 部屋の中の様子などを確認する余裕もない。 扉の隙間から影が入り込んでくるのを警戒するのが精一杯だった。]
(72) 2012/04/30(Mon) 12時半頃
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―大広間― [効果の切れぬうちに出来る限り先に進まねば、と急いで振り返って。
そこは最初に足を踏み入れた大広間だったが、趣がすっかり変わっていた。 家具や大テーブルが積み上げられ、ちょっとした障壁を築いている。>>>>53 そして、その前に立っていたのは、革の武具を身に着けた戦士――アヴァロン伯の騎士だったヒューだ。]
(73) 2012/04/30(Mon) 12時半頃
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[レンズの奥の目が丸くなる。]
あなたは……
[そういえば、彼はいつの間にか姿を消していたのだった。 ここで討伐隊のメンバーを迎え撃つ準備をしていたのか……と思い至った。**]
(74) 2012/04/30(Mon) 12時半頃
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―大広間― 私はあなたに敵対するつもりはない……と言っても聞く気はないでしょうね。
[苦笑いを浮かべ、ベルトにぶら下げた小袋を探る。 ちらりと背後の扉に視線を走らせた後、改めて竜牙兵とヒューに向き直った。
耐火袋に入った爆弾の数はみっつ。 吸血鬼の対応如何で、自ら戦わねばならない事態――討伐隊を敵にせねばならないような場合――に陥った時のために秘匿していたものだ。 もともと火薬や機関は専門外であるため、これだけの数を準備するのが精一杯だった。]
(82) 2012/04/30(Mon) 14時半頃
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[カシャカシャと骨のなる音とともに、サーベルと円盾を構えた竜牙兵がこちらに迫ってくる。 これらを使うことも、相手が人間でないのなら躊躇はない。
掴み出した陶製の球から延びた導火線に、火打石の指輪で点火する。 それを、アンダースローで骨の兵士たちの真ん中に放り投げ、斜め後方へ飛び退った。]
(85) 2012/04/30(Mon) 14時半頃
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[ころころと竜牙兵の足元へ転がったいびつな球体は、わずかの時間を置いて爆裂した。 爆発とともに、内部に仕込まれた金属片が四方へ飛び散る。**]
(86) 2012/04/30(Mon) 14時半頃
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レオナルドは、ドナルドたちのいる2階まで、くぐもった爆発音が届いたかも知れない。
2012/04/30(Mon) 14時半頃
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