25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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[小夜更けて、深き眠りを破るのは、絹裂くような誰かの悲鳴。
奥座敷の褥は赤き血に染まり、中で眠るは鏡写しの二人。
否、片方の躯は、無惨に喰い荒らされて居る。]
(0) 2010/08/09(Mon) 01時半頃
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[騒然とする屋敷の中を、身を起こしつつゆるりと睨んで。 帰らねばならぬ。
…約束を、したのだから。
またも何処かで上がる悲鳴。 灯火を誰かが倒したか、屋敷の何処かから火の手が上がる。]
(2) 2010/08/09(Mon) 01時半頃
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私は、僧としては浅ましすぎるのです。
[ゆるりと笑んで]
慎み深いわけでもなく。
仏の道にありながら、色々なものを欲しました。
お前も、その一つ。
欲して、手に入れても、心を動かすことはなく。
父は、私にそれを教えたかったのかも、知れぬ。
花を愛でる心。
口で言っても、心で解せねばわからぬこと。
お前が、いなければ。
そんな貌とは どんな貌だ…
[眉尻下げる胡蝶を流し見遣る紫苑色は
困ったような、怒ったような。
糸の絡む指先が更に絡まれば
そっと力をこめ
現世へと眼を向ければ]
…朧様
[主の名を、呼んだ。]
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[亡骸から形見をもらう必要など無い。 形見は既に、はらの中に収めた。 衣の帯を締め直し、枕元に置いていた懐剣を手に取る。
悲鳴に駆けつけた下男たちを斬り捨て突破しようとするも、その剣筋は態と急所を外したもの。
彼岸への道筋の、邪魔はさせぬと言いたげに。]
(4) 2010/08/09(Mon) 02時頃
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……人も元は獣であった故か
否、主さまの其れは主さま故でしょう
[苦い笑み]
欲して其の手に入れて
喰われても良いほど、心動かされたなんて
帰って報告は出来ませんね。
このまま私と、
[ちらり盗み見る
現世の交わり
高い嶺の灯火が消え――]
…………?
[否、彼方で明々と燈っているのは
思わず身を乗り出す]
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…かりょう……!
[呼ぶはただ、己を待つ愛しい雛の花たる名。 密かに胸の中で送る名は、義父から受けた家紋の名。]
(8) 2010/08/09(Mon) 02時頃
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[屋敷を走る、悲鳴。怒号。 獣が出たと。高嶺の当主が喰われたと。]
(10) 2010/08/09(Mon) 02時頃
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[屋敷に火が灯る]
お前と?
[身を乗り出す様に手は離さず、ただ腕の戒めは解く]
友が、気になりますか。
行きますか?
声は届かぬとも、思いは伝わるかも知れぬ。
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[屋敷を染めるは赤き月。 焔の赤に、血飛沫の赤。
白装束を真っ赤に染めて、駆ける素足を阻むは何か。]
(12) 2010/08/09(Mon) 02時頃
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…――――いいえ。
[続く言葉は音にならず
首を振った。
手は繋がったまま、見上げて囁く]
往きません。
何処にいても見えるのですから
主さまの傍に居りましょう
さいごまで。
[そうして、冬色は現世を見遣る]
『…隠れて、…隠れて、』
[聴こえる声は現世に近い狭間の場所から。
混乱の屋敷の中で掻き消える程のか細い、幼い声。]
[消えた気配は形を作る。
己の命の果てた地に赤を踏みしめ降りるは黒い獣、鉄色の瞳。
其の肉体に質量があるのなら、たす、という音が聞こえようものを
けれどその体は地に着くや否や人の姿へと転変する。
黒い獣の姿は消えて
床の上に残るのは眠るように伏せる人の姿]
[ふわりと浮かび、直ぐ消える影。
燃える色のべべ着た切り揃えられた髪の童。]
[受け取られた黒い笛の上で光が瞬く。
明之進の言葉を肯定するように。
悲鳴。怒号。炎。
人の形は崩れ、光が螺旋を描くように舞う。
邦夜に迫る危険を直接振り払うことは出来ないが。
護りたい。願いそうして主の傍に添う**]
ですか。
[傍にいるという花のその視線の向こうを見る]
すべて燃えたら。
終わるのか。
燃えても、此方には関係なく。
けれど留めているのがこの屋敷なら、すべて燃えればそれが最後なのかもしれません。
[花へ後ろから手を回し、包むように抱いて]
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…くっ! [切り裂かれる薄衣の袖。鮮やかな赤が散る。
遠く聞こえるは、恋歌う鳥の声。]
(19) 2010/08/09(Mon) 02時半頃
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『…隠れて、…隠れて、』
[ふわりと浮かび、また直ぐ消える幼い姿。
その両手には赤と白、二つの花を大事に抱えて。]
[聞こえる喧騒、見える世界が赤く染まっていく
少しずつ少しずつ
其れは勢いを増すのだろう]
……燃えて、尽きて
そうしたら
[背後の温もりに身体を預け、
迦陵頻伽の囀りを聴く]
お別れの時です
主さま
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[手をとって、隠れなければ。 ふと、脳裏をよぎるのは…無理やり引き剥がされた小さな手。
そっと片手は、己の腹を優しく撫で…前へと、向き直る。
あの時とは違う。今度は、手をとって引く方にならなくては。]
(21) 2010/08/09(Mon) 02時半頃
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[新たに増える姿。
目の端に映し、また花を見る]
別れといえど。
私はこの手をはずすつもりはありません。
そう言ったでしょうに。
[もそり、と起き上がる様は獸の姿に似ていた。
色切子の色彩の下でゆっくり体を起こし
一つ二つと瞬き重ねて立ち上がる。
死んだという実感がない。
蓮の花の匂いはあれど、
それを塗り込めるように灰墨の匂いがしていた]
[起き上がる姿
同じ、人に非ずとされるもの。
冬色で窺うように流し見る]
人が死して 行く先に
獣のゆきみちは、ありやなしや
[握った主の手に少し力込めて
背を靠れさせたまま、吐息ひとつ]
……この先が、赤く染まって見えぬ故
不安が胸を埋めたのです
傍に居るよ、セシル
……ずっと此処に……
[桜の内に微かな微かな気配
傍に人ある今は、聞き取れもしないような声だけど]
[燃えている。焔は闇を塗りつぶすように
紅く、紅く、紅く。
白い鳥は蝶の傍に在りて
主の姿を探す。
絡めた指を、握り締めた。]
…―― 紅い ……
[「隠れて 隠れて」
幼い子供の声が、焔の中で揺らめく。]
主さま
……どうか、この手
さいごまで繋げて置いてくださいね。
[淋しげな冬の色した瞳を揺らし
背の温もり感じながら、吐息をもう*ひとつ*]
『隠れて―――かすみ、』
[またふわりと、]
『―――…かすみ、』
[浮かんでは消える童は見つけられぬ姿を呼んで]
『―――…かすみ、』
[呼んで、]
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[死から生へと向き直ることを決めたものが居る。 いまだ死を願うものは、何を選んでいくのだろう。
己は死するため懸命に生きる。阻む焔を、超えねばいけぬと睨みつけた。**]
(39) 2010/08/09(Mon) 03時半頃
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『………見つかってしまう………。』
[か細い、啜り泣く声。童は花達と膝を抱えて蹲り]
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