22 共犯者
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−夜の森>>74−
[逞しさとも神秘性とも程遠いイアンの膚に、小さな赤が丁寧に刻み込まれる。何かに縋るように、ヴェスパタインの闇色の髪を指で梳き、宵の空を見上げた。
月がぼんやりと滲み、イアンの視界の中で徐々に大きなものとなってゆく。そしてそれは、彼の中で熱く蠢く悦楽の価値とほぼ同じものであった。]
………っ………は
[「かれ」の顎が、自分の下肢で暴れる肉塊の食らっているのは、すぐに分かった。噛み切られるのは一瞬であろうという恐怖感が背筋を駆け抜けるが、それ以上に快楽に己の身が押し潰されてゆくのを、彼自身が止められる筈も無かった。
それから。 程無くして、イアンの視界の中にある月は元の大きさに戻ってしまった。 荒い息を吐き、彼が信奉する男の手管により吐き出されたものを思い、言いようのない羞恥と悦びの狭間で震えながら、草むらの上で膚を晒したまま、ただじっと横たわっていたのだった**]
(77) 2010/08/11(Wed) 12時半頃
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記者 イアンは、メモを貼った。
2010/08/11(Wed) 12時半頃
記者 イアンは、メモを貼った。
2010/08/11(Wed) 13時頃
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−朝の森:>>76−
これは「御使い様」を森に還す儀式……
[言われて、ふと言葉を止める。 そして、ミッシェルのことを見て、朧げに郷里の婚約者のことを思い出していた。脳が何かに焼かれ焼かれるように、仄かな熱cを帯びてくるのを、イアンは感じていた。]
……「そうなの」? うん、伝承というのは、時代の流れと共にいつの間にか変わるものだともいうし。その時代に合わせて皆勝手なことを言うんだよね。
まったく、皆はその言語の変遷を研究するなんて馬鹿げていてくだらないって言うけれど。 どうして君は皆と一緒になって否定したりはしないの? 相変わらず不思議だね、君は。
[木に凭れて、安らいだような笑みを見せる。だがその目は、ミッシェルの向こう側にある何かを見つめていた。]
(78) 2010/08/11(Wed) 13時頃
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−朝の森−
……ああ、そうだ。 君に渡さなくてはいけないものがあるんだ。
私の帰りが遅くなってしまうかもしれないから、送って貰うように頼んだんだ。君を護ってくれる力を、君にあげるよ。
……今いる場所はね、不思議な力に満ちているんだ。ヒトならざる者の力が未だに生きている森なんだよ。君が幼い頃に一緒に読んだ絵本のような話だろう?
お伽話のように幸せなことばかりではなくて、夜の森は昏くて恐ろしい顔をも持っているけれども。
ああ、いつか君にその写真を見せなくちゃね。 君は私の書く記事にいつも手厳しいから、写真じゃなくちゃ納得してくれないでしょう?
……ちゃんと、届けるから……ね……
[木に凭れていたイアンの身体が、ずるずると崩れ落ちていった**]
(79) 2010/08/11(Wed) 13時頃
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記者 イアンは、メモを貼った。
2010/08/11(Wed) 17時半頃
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―深夜の森>>77― [ イアンの放った生命の雫を、喉鳴らし甘露と飲み下す。 羞恥と快楽の余韻に震える肉体を見下ろし、『それ』は満足げに赤い舌を閃かせて口唇にこびりついた汚れを舐め取った。]
お前の味、だ。
[ 囁き膝裏を掬い、イアンの下肢を大きく割り開いて、もう一度からだを重ねる。 『それ』は最後に残された、肉の狭間の唯一触れていない部分にも舌先を捻じ込み、開口部を押し開いて内臓を暴いた。]
(80) 2010/08/11(Wed) 18時頃
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―深夜の森 >>80―
[身体を「かれ」の思うがままに動かされ、脚を大きく開く恰好となる。さすがに羞恥が先立ったのか、沈黙を守れと言われていた筈なのに、小さな声を上げてしまう。
肉を穿つ舌の感覚が、神経を刺激する。 本人は身を捩って抵抗しているつもりなのに、第三者から見ればもはやただ悶えているようにしか見えないだろう。
小さくなったはずの欠けた月が、滲んで揺らぐ。 その景色はイアンの脳裏にしっかりと焼き付いていくのだった――]
(81) 2010/08/11(Wed) 18時半頃
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―朝の森― [木に凭れ、誰にともなく語りかける。]
ねえ…眩しいよ。君は、とても。 清廉な白い光は、時に闇色を貫き、穿つ――…
私は……
[シャツの胸元を強く握りしめ、くつくつと笑う。]
――…自分の「欲求」、か。 そうだね、それで私は私の全てを台無しにした。 これから起こることじゃない。もう既に起きてしまったことなんだ。
だから私はもう戻れないんだ、「ヒト」の世界には。たとえ君が赦そうと言ってくれても、誰が赦してくれたとしても、私の中に僅かに残る「理性」がそれを拒むんだ。
(82) 2010/08/11(Wed) 19時頃
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―深夜の森>>81― [ 『それ』は灼熱の槍でもって、イアンの身体とこころの両方を貫いた。 遠い海の波濤のように、嵐にざわめく樹々のように、それは幾度となく激しく打ち寄せ、イアンを揺さぶり、高波の頂点に押し上げては打ち砕いて夜の底に引き攫った。 それだけでなく、夜ひらく花となって彼の上で揺蕩い、燃え立つ花莟のうちに迎え入れ、イアンの生命の蜜を取り込んだ。 繋いだ身体の境界も判らなくなるほどに蕩けあい――
――けれども草叢の中、失神したイアンの汗みずくの身体を抱いて眠る時。 彼の目の縁に溜まった涙を舌先で拭い取りながら、『それ』の双瞳は寂寞たるいろを湛えていた。*]
(83) 2010/08/11(Wed) 19時頃
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―朝の森―
だって私は――… こんなにも、「月」の引力に頭のてっぺんから足の先まで侵食され、支配されてしまった……
そして、それは何より、自ら選んだことなんだよ。 他でもない私が。 私が「それ」に支配されようと望んだんだ。
だから神の声なんて聞こえなくなっても構わない。 欲しいものは、ヒトの世界の安住ではない。
肉体と精神の脈動――生命の証と、それと引き替えに暴かれる血と肉。私の肉体の中で眠っていたそれが呼び覚まされていくのは、たまらなく快感なんだ。
[目と口許に浮かべるのは、ひどく穏やかで緩やかな笑み。]
ああ、だから…… 私は「かれ」の声が聞こえれば、それで十分なんだ――**
(84) 2010/08/11(Wed) 19時頃
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記者 イアンは、ランタン職人 ヴェスパタインに話の続きを促した。
2010/08/11(Wed) 19時頃
記者 イアンは、ランタン職人 ヴェスパタインに話の続きを促した。
2010/08/11(Wed) 19時頃
記者 イアンは、飾り職 ミッシェルに話の続きを促した。
2010/08/11(Wed) 19時頃
記者 イアンは、飾り職 ミッシェルに話の続きを促した。
2010/08/11(Wed) 19時頃
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―朝の森― [ 木に凭れたイアンの身体がずるずると滑り落ちる。 その視線の先にある筈のミッシェルの姿を、彼は見ていない。彼の目に映っているのは、ここではないどこかの、ここにはいない誰かなのであろう。
『それ』の眼から一切の感情が消えた。 宵月いろの鏡となって、不在の誰かに向かって饒舌に語り続けるイアンの姿をただ映した。]
(85) 2010/08/11(Wed) 19時頃
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―朝の森―
イアン。
……イアン。
[ 『それ』はイアンの名を呼ばう。]
(86) 2010/08/11(Wed) 19時頃
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記者 イアンは、メモを貼った。
2010/08/11(Wed) 20時頃
記者 イアンは、メモを貼った。
2010/08/11(Wed) 20時半頃
記者 イアンは、メモを貼った。
2010/08/11(Wed) 21時頃
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―朝の森 >>86―
……何ですか?
[ぼんやりとした視線で、宵闇の色を下ろす影を見やる。 そこには、イアンが信奉する「かれ」の姿があった。]
ああ……すみません。 少しだけ、朝の光が眩しすぎて……軽く目眩を起こしていたようです。
もう、平気です。
[ふと緩やかな笑みを浮かべる。]
(87) 2010/08/11(Wed) 21時頃
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―朝の森>>87― [ 穏やかな笑みを浮かべるイアンはもう平静に戻っているようであった。が。]
――…… そうか。
[ 素っ気無く答える表情は変わらねど、瞳の底ひっそりと、哀しみに似たいろが過ぎった。]
(88) 2010/08/11(Wed) 22時頃
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記者 イアンは、メモを貼った。
2010/08/11(Wed) 22時半頃
――それから。
昼の光は彼ら巡礼者に安らぎを一通り与えた後、
その役割を終えて森の奥へと帰って行く。
そして、夜――…彼らは最後の巡礼の刻を迎える。
(#1) 2010/08/11(Wed) 22時半頃
記者 イアンは、メモを貼った。
2010/08/11(Wed) 22時半頃
記者 イアンは、メモを貼った。
2010/08/11(Wed) 22時半頃
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―少し刻は流れて、2枚の葉が摘まれた頃―
……満月。
[ぽつりと呟き、空を見上げる。]
あなたの言った通り、月は満ちました。 そして私の身も心も、完全にあなたに支配されてしまった。
――あなたは一体何者なのです?
「ヒトではない獣」。 私にはそれしか分かりません。
この森があなた達の聖地ということは分かりました。 ですが、その芯の部分――…「あなたが何者か」が分からない。 そして、私はそれを知りたいのです。
(89) 2010/08/11(Wed) 22時半頃
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―満月の夜― [ ――血塗れた手はそのままに。
降り注ぐ月光の下、森にぽっかりと開いた空き地に二人は立っている。 全き円の形を取り戻した月は、黄金の円盤が夜空に嵌め込まれているとさえ。]
何者かを知れば、答えが出ると言うのか。 それで理由がつくと言うのか。
[ クッと薄い口唇の片端が歪む。] 「ヒトではない獣」。 お前自身がそう理解しているではないか。
(90) 2010/08/11(Wed) 23時頃
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お前は俺が、お前の全てを捨てるに足る神であって欲しいのか。 お前が繰り返す、信仰告白どおりの存在であって欲しいのか。
[ 嘲りに似て――けれどもそれは、怒りにも似ていた。]
(91) 2010/08/11(Wed) 23時頃
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―満月の夜―
それ以上のお答えは、下さらないのですか?
……いいえ。 その必要は無いのかもしれません。
「ヒトではない獣」を目の前にして、今の今まで殺されなかったという「それ」だけで、私にとっては十分なのだと思います。
[血に濡れた風が渦巻き、月の方へと昇ってゆく。]
ああ――…「あなた」。 私は、もはやヒトではなくなりました。 私はヒトの身をしておきながら、ヒトの事を裏切り、そしてたくさんのヒトを死に追いやりました。
――そこで、ひとつお伺いしたいのですが。
(92) 2010/08/11(Wed) 23時頃
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[月明かりを頭上に浴び、「かれ」の目を真っ直ぐに見て告げる。]
私は、あなたがあなたの神に捧ぐ生贄にはなれませんか?
精神は「獣」でありながら、肉体は「ヒト」の態(なり)をしている私は、果たして「ヒト」なのでしょうか?それとも「獣」なのでしょうか?
――…私はそれが知りたいのです。
(93) 2010/08/11(Wed) 23時頃
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記者 イアンは、メモを貼った。
2010/08/11(Wed) 23時頃
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[ 長い沈黙の後。]
――お前は俺に喰われたいのか。
[ 尋ねるのではなく、それは確認。]
(94) 2010/08/11(Wed) 23時頃
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……そういうことになると思います。
[ふと緩い笑みを浮かべ、風の流れる方を見つめる。]
私には、帰る場所もありません。もしこの取材を終えて本国に帰ったとしても、私の心はここにあらずでしょう。
それに、あなたは私をどこかに連れて行くことなどできないでしょう?たとえ私があなたの信奉者となったとしても、私の身はヒトのまま――…ヘクターのように、私はあなたの横を歩き、「同胞」と呼ばれることは、未来永劫ないでしょう。
――…いいえ、私は誤魔化してはならない。
この血と肉を。 沸騰しそうなくらいに熱く煮えたぎるそれを。 月が満ちているうちに、あなたの中に取り入れて欲しいのです。
あの時ヘクターが、マーゴさんにしていたように。 ――…余計な感情は、要りませんけどね。
[すっと右手を差し出し、ヴェスパタインの双眸を見つめた。]
(95) 2010/08/11(Wed) 23時頃
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[ すう、とひとつ大きく息を吸った。
『それ』は暫し瞑目し――再び目を開けた時には、月の黄金に輝く瞳は蠱惑を湛えて煌いていた。]
(96) 2010/08/11(Wed) 23時半頃
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[ 口唇が艶冶な微笑の形を刻む。 差し出された手に合わせ、重ねるように手を伸ばし、招く。 言葉は無い。 ただ、誘(いざな)う――ここへ来い――と。]
(97) 2010/08/11(Wed) 23時半頃
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[一歩、また一歩、イアンは「かれ」の方へと近づく。 それが「死」への旅路であることは分かっていても、なお。]
あなた。
月が、綺麗ですね。
――…今宵は、いちばん、綺麗です。
[深い深い金色の目を見つめ、肺のあたりから熱い溜息を吐き出した。]
(98) 2010/08/11(Wed) 23時半頃
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[かつて彼は言った。 彼が本当のことを言っている時は、いちばん嘘をついている――…と。
では、今こうして、満月の下で無言劇を繰り広げている時はどうなのだろう?かれは嘘をついているのか、或いは――]
(そんなことは――…どうでもいいことです。)
[そして、「かれ」のヒトならざる逞しい肉体に、己の胸が合わさる程までに近づき、イアンは目で告げる。
時は満ちた、と。]
(99) 2010/08/11(Wed) 23時半頃
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記者 イアンは、「かれ」の手を、ぐっと握った。
2010/08/11(Wed) 23時半頃
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[ かつて「ヘクター」と呼ばれた同胞にしたように。 ほんの一夜前、彼を差し招いたように。
腕を広げ、イアンを待つ。 自らの内に招き入れるために。
『それ』もまた、うっすらと開いた唇から欲望に濡れた熱い息を吐いた。]
(100) 2010/08/11(Wed) 23時半頃
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[ 彼の手を握り返し、腕を引いて抱き取る。]
イアン、お前が欲しい。
お前を、喰らいたい。 お前を、丸ごと、くれ。
[ 待ちかねたように、擦れた声で囁いた。]
(101) 2010/08/11(Wed) 23時半頃
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[ 胸を合わせ――深い、深い口接けを。]
(102) 2010/08/11(Wed) 23時半頃
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[首を仰け反らせ、完全に満ちた月を見上げる。 逞しくもなく、神秘的なものでもなく――ただ人間の形をしているだけの肉を、「かれ」の御許に差し出す為に。
月が滲み、視界の中で大きくなる。 そう――昨晩かれに侵入された、あの時のように。]
(103) 2010/08/11(Wed) 23時半頃
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(願わくば、この痛みを、この恐怖を――書き留めておきたい。けれどそれは叶わぬ希望でしょう。
今こうして、私の身ひとつに刻んで、私個人の「痛み」に昇華して、それで全てを終わりにしよう。)
[深い深い口接け。 それは、この世で最後に刻まれるであろう、柔らかな悦楽。 これから与えられる、痛みを伴う快楽の前に味わう、甘い甘い美酒なのだ。]
(村に残る人々は、私が「遺した」記事を読む人々は、きっと私のことを「狂人」と呼び、後の世まで揶揄することでしょう。
けれど私は――…それでいいのです。 この悦楽を、この熱を、私の身ひとつで独占できる。 それは誰にも与えずにいよう。 そう――…これは私だけのもの――…)
(104) 2010/08/12(Thu) 00時頃
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[ ――……そうして彼は、自らを灼き尽くす情欲と食欲の軛を解き放った。
イアンを組み敷き、下肢を押し開き、肉の剣で貫き、抉り、打ちつけ、掻き乱し、逃れることも許さず徹底的に蹂躙する。 愛撫する口唇と肉を噛み裂く牙は手を携え、彼の全身を朱で染めた。
『それ』はイアンの肉を二つながら貪る――生贄たちにそうしたように、だが、もっと時間を掛けて、快楽と苦痛の時を引き伸ばすように。]
(105) 2010/08/12(Thu) 00時頃
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