118 津 村
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[グラウンドのベンチに座って一休みをしてから、「うぇーい!お茶」を、一くち飲んだ。ほうと長い溜息が出て、気付けば体が軽くなったような気がしていた。
……やれる。いける! 別段、肉体の疲労恢復と共に、わずかながら希望が生まれたわけではない。
高熱による謎のハイテンションであった! 今ならなんでも出来る気がしていた! この元気の良い緑茶飲料のパッケージが如し! 足元が覚束ないが、それは些細な事だ! 打って走る!先輩と交代できたら球を捕る! 今日はほぼ、最後の部活となる。 本日以降は部室の片付けと、打ち上げが部活の内容だ。 ならば、今日ばかりは楽しさに身を任せるべきである!]
(24) gekonra 2013/04/18(Thu) 21時半頃
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[結果。球は零したし、防具にも感謝したし、たくさん転んだし、空振りもしたし、ろくな働きは出来なかった。 いつもの調子でプレイできなかった事を名取は残念に思う。 それでも今日部活に出られなければ、後悔をしたろう。
部活を終えて、皆汗まみれで、お疲れなどと声を交わした。 名取は些細な事すら可笑しくて、にこにことした。 部活の最後には、中には涙する者もあって、名取も大いに貰い泣きをした。
それらの名取らしからぬ表情は、高熱による謎のハイテンションに因るものであったが、泣きじゃくっていたのもあって、流れと雰囲気から、部員の誰もが名取に「お前今日おかしくね……?」と言ってやることは出来なかった。]
(25) gekonra 2013/04/18(Thu) 21時半頃
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― なとり生花店 ―
[昨日、ふらふらの状態で、暗くなってから帰宅した後は、昏々と眠った。 家族はほぼ最後の部活である事を知っているから「疲れてるんだねえ」と、それ以上は皆触れないようにして、夕食もとらず寝続ける兄を放置した。 寝飽きるほど寝た翌朝、重い体を引き摺って、居間へ行き、まず母親の口から知ったのは、学級閉鎖の事。 名取は目を丸くした。 次いで、学園祭が中止になる事。]
……そうか……。
[皆がっかりするだろう。 関町や千彰、しまちゃんや妹はとくにだ。 名取は、気の毒に思った。]
(26) gekonra 2013/04/18(Thu) 21時半頃
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― 自室 ―
[低い音がどこかで聞こえた気がする。 たぶんあれは、ケータイが震える音だったんだな、としばらくしてから気がついた。]
うぅ……さむ……
[のそのそと布団から出ると、温かいと思っていた部屋の空気が実際そうでもないということを身を持って知る。 ケータイどこやったっけそういえば。 そういえば倒れてから見てない。 たぶん、壁にかけてある制服の、右ポケット。
あった。
メールが数件。電池が死にかけている。ベッド脇の充電器に向かいながら、メールをチェック。クラスメイトから。父さんから。メルマガ。メルマガ。アカリンから。メルマガ。]
……あ?
[確かにそれは、アカリからのメールだった。>>22]
(27) asaihaka 2013/04/18(Thu) 21時半頃
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律は?
[と、母親に尋ねると、律の体調は回復していないらしい事を知らされる。昨日も三十八度の熱があったらしい。 心配から、眉根が寄った。 自分もだるいなどとは、言っていられぬ。あちこち痛むのも、単純に寝すぎである事と、昨日頑張り過ぎたせいだと決めつけた。]
医者いったほうがいいんじゃないのか。 おれ連れてくよ。
[父母には仕事があろうから、そのように買って出る。 その名取の声も、少しばかり掠れていた。 母親からは、あんたも風邪なんじゃないのかと言われて、首を傾げる。]
昨日、喉を使いすぎたんだと思う。部活で。
[言い訳ではなく、本気だ。 >>6:+3 前日妹の言ったものと殆ど同じ内容であったことは名取は知らない。 傾げた頭の中の脳みそまで片側に寄ったような頭の重さを感じながら、咳払いをし、居間を後にして、律を呼びに向かった。]
(28) gekonra 2013/04/18(Thu) 22時頃
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― 津村市総合病院 ―
[傍らの妹に声をかけるため、まず、咳払いをする。]
混んでるな。
[病院に到着して、スリッパに履き替え、院内を見渡している。 名取には、縁遠い場所であるから、少し珍しそうにしながら、律と共に診察券を出しに向かった。 名取の目からは、律は風邪のせいでぼんやりしているように見えた。人にぶつかってしまいそうな気がして、名取は時折妹の腕をひいた。]
(29) gekonra 2013/04/18(Thu) 22時頃
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[診察までが、長そうだ。 診察室の前に居る人数は、なかなかのものである。 洟をすすって、律の手をひいて、空いている席についた。
診察室前の人々を、暇に任せて眺めてみると、老人ばかりというわけでもない。両親くらいの年齢のひと、先生くらいの年齢のひと、そして自分とあまり変わらないのではないかという位の若者が、近くに座っていた。
おや、と思う。 その若者が、見覚えのある顔だったからだ。>>8 なんだったかな、と記憶の糸を手繰ると、脳裏に浮かんできたのは、たばこだ。 便所だったか中庭だったか、はたまた、名取の所属する三年生ばかりの弱小運動部の部室棟及び部室棟脇が、顧問もほぼほぼ来ないため、こっそり喫煙スポットになっている(無論部員の三年生が使用中である)せいか、どこで遭遇したのかも思い出せない。
風邪をひいたのだろう。名取は気の毒に思った。 先輩は、マスクをして、眠ったようにしている。 さて、この先輩の名前は、なんであったろう。]
(30) gekonra 2013/04/18(Thu) 22時頃
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[田所さん。川尻さん。笹中さん。 誰かの名前をよばれるたび、一人がゆっくり立ち上がって、診察室へ入っていくのを、ひりひりする目で追った。 注意して聞いていないと、ぼんやりして聞き逃してしまいそうだ。]
律、寝ててもいいぞ。
[まだまだ長そうだと判断し、妹の様子を心配げに見てから、そう声をかけた。
背凭れに体重を預け、目を擦る。体のだるさに、溜息をついた。 富良野さん。次の名前が呼ばれている。 辺りを眺めていたが、誰も立ち上がらない。 富良野さーん。もう一度看護婦が呼んでいる。 名取は、あっと思った。]
(31) gekonra 2013/04/18(Thu) 22時頃
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[すぐに立ち上がった。その際椅子についた手が、火照って汗ばんでいるのが分かった。 近くにいたマスクをつけた若者の傍へ迷わず歩み寄り、]
富良野さん。
[と声をかけた。 看護婦が呼んだ名前をヒントに、漸く名前を思い出した。 起きない。一瞬間違ってたら可哀想だし恥ずかしいなとも考えながら、少し屈んで肩を叩いた。]
富良野さん。
[目蓋が持ち上がるのを確認して、更に声をかけた。]
呼んでいる。
[名取は、顔を看護婦の方へ向けた。]
(32) gekonra 2013/04/18(Thu) 22時頃
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[どうやら富良野は、理解してくれたらしく、掠れ声で謝っていた。咳き込みながら立ち上がった様子に安心するやら心配するやら。 律の隣へ戻り、腰をおろしかけた。 そこで、名取兄弟に視線をおいて、富良野が言ったことに、兄のほうは目を瞬いた。一度、富良野の顔を見上げてから、律と顔を見合わせる。
これを切欠に、名取の体調不良は、*ばれる事と相成る。*]
(33) gekonra 2013/04/18(Thu) 22時頃
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[充電器をザックリと携帯に突き刺して、慌てて布団の中へ戻る。まだ自分のぬくもりが感じられるが、そんなことどうでもいい。]
どうしてる…って………
[『寝てる』か?『風邪ひいちゃった★』か? いつもの俺ならどう答える?っていうかなんでメール送ってきたんだ俺に。あぁ、芸人が風邪ひーてるからか……。 いろいろ、メールの理由に思考を巡らす。さっきまで学祭を、アカリのことを考えてあまつさえ少し泣いてしまったので、なんだか恥ずかしい。]
……アカリンも学級閉鎖んなったの、ショックなのかな…
[スマホの画面を指が踊る。ペタペタ、サラサラ。]
(34) asaihaka 2013/04/18(Thu) 22時頃
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[メールを打っていたら鼻水が垂れてきた。ティッシュを2枚乱暴に取ってズビっとひとかみ。]
―――――――――――――――― From: chichichichichiaki-0829@docodemo.ne.jp To: illumina_town@easyweb.ne.jp 件名:(*´ェ`*) ―――――――――――――――― アカリ〜ン!元気?俺風邪引いちゃったよ〜(´xωx`)正確にはインフルなんだけど! 学祭やんないの残念だね〜まぁ来年あるしせっかくの休みだしゆっくりしてりゃ〜いいよね〜♪♪ アカリンの鬼嫁姿見たかったなぁww残念(*´艸`*)ププ!
・・・・・・・・■
…… あー……俺のバッカやろう…
[ここまで書いて。書いた文をすべて消す。]
(35) asaihaka 2013/04/18(Thu) 22時頃
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―――――――――――――――― From: chichichichichiaki-0829@docodemo.ne.jp To: illumina_town@easyweb.ne.jp 件名:寝てた ―――――――――――――――― 学級閉鎖残念だなあ、楽しみだったんだけど。 アカリンは風邪引いたりしてない?引いてなくても大事にして。 END ――――――――――――――――
(36) asaihaka 2013/04/18(Thu) 22時頃
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チアキは、メールを送信した。
asaihaka 2013/04/18(Thu) 22時頃
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[携帯のバイブレーション。低く耳元で唸るそれが、浅い眠りから意識を引き起こした。 熱い身体をどうにか動かして腕を外に出して、携帯を手に取る。 メール受信:2件。ひとつは父親から。仕事場の昼休みに送ってきてたらしい、気づかなかった。 もうひとつは、今さっき受け取った、返信メール。]
ね、てた……
[ぼうっとする頭で、無意識のまま読んだメールは、一文字一文字口に出ていた。 がっきゅうへいさ、たのしみだった。 そういう返事が返ってくるんだろうと思って送ってた。だから、すとんと胸に落ちてくる。]
(37) mmsk 2013/04/18(Thu) 22時半頃
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かぜ、ひいたりしてない、
[誰もいない部屋に自分の熱に枯れた声だけがぽろぽろ落ちる。 学級閉鎖だ、風邪を心配されるのは当たり前で。 でも、このメールに今なんて返事をしていいか迷ってしまった。 素直に、引いてないって、言えればよかったのに。]
(38) mmsk 2013/04/18(Thu) 22時半頃
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―――――――――――――――― From: chichichichichiaki-0829@docodemo.ne.jp To: illumina_town@easyweb.ne.jp 件名:おこした? ―――――――――――――――― ごめん。 わたしも、わりとたのしみだったな。 そっちも、おだいじにね。 END ――――――――――――――――
[自分の体調には触れないままの、お大事に。 引いてなくても大事にして、と言われたから、そっちこそ、とばかり。 指を何度も動かすのが億劫で、変換キーは一度も触れられることのないまま、短いメールが電波に乗った。]
(39) mmsk 2013/04/18(Thu) 22時半頃
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[その振動音は間を開けずに鳴った。手に握っていたので高速でケータイのロックを外してメールを開く。 From『関町 あかり』。なんだか顔が赤いのは熱のせいだろう。 メールを開くと、いつもとは程遠い文章が表示された。顔文字絵文字が少ない、というか皆無なのはいつも通りだけど、漢字変換がひとつもないなんて。]
……アカリン、あんたウソがヘタクソね。
[ただ眠いだけだったらどうしよう。とちょっと思ったけど、眠かったらメールなんかしてこないヨネ?と強引に解決。 それに、たぶん、俺が「寝てる」とだけ送ったように。 「風邪を引いた」なんて言ったら、"そう、じゃあお大事に……"と返事がきて、このやりとりは終了するのがイヤだったんじゃないかって。]
……ぐじゅ…… んぁ……
[鼻をかみながら、またメールを打つ。メールのおかげかわからないけど、昨日よりは楽になっている気がする。]
(40) asaihaka 2013/04/18(Thu) 22時半頃
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あー、長くなっちまうなぁ…… 短く打とうみじかく……みじかく……
[相手は多分風邪っぴきなんだから。でもなんとなくメールを送ることはやめがたく。ただ使えるだけの気を使う。]
―――――――――――――――― From: chichichichichiaki-0829@docodemo.ne.jp To: illumina_town@easyweb.ne.jp 件名:ありがとー(*´∀`) ―――――――――――――――― 楽しみだったのかぁ、嬉しい。 ところで、学祭中止だけど、文芸部の文集はどうするの? もし本にしなくても、アカリンが書いたのがあれば読みたい。
END ――――――――――――――――
(41) asaihaka 2013/04/18(Thu) 23時頃
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チアキは、自然に件名に顔文字を入れてしまっていたことに送信してから気づいたが、後の祭りだった。
asaihaka 2013/04/18(Thu) 23時頃
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んん、
[睡眠は短く、うつらうつらと浅い。 携帯の震えを感じるけれど、次の返信をすぐにまた返すだけの気力はなかったから、少し待たせることになった。 50分後、どうにか動いた頭でメールを読み始め。]
部活……
[部活の話を見て、そういえば芸人はこれが新入生を得る大きなチャンスだったはずなのに、風邪を引いたことも中止も災難だったろう、とか、佐々木は何部だったっけ、とかゆるゆると考える。]
(42) mmsk 2013/04/18(Thu) 23時半頃
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―――――――――――――――― From: illumina_town@easyweb.ne.jp To: chichichichichiaki-0829@docodemo.ne.jp ―――――――――――――――― 部誌は、先輩に聞いてみないと、かな。 表紙もかいてもらったから、ちゃんとつくりたいけど。 一応書いてるけど、おまけみたいなものだから、期待しないで。 END ――――――――――――――――
[今度は、少し思考を巡らせたあとだから頭が冴えていた。 変換キーを経由するのも、それが間違っていないか考えることもどうにか出来て、ほとんど普段と変わらないはず。 一つ前のメールですでに嘘がつけていないなんてことには気づけないけれど。]
(43) mmsk 2013/04/18(Thu) 23時半頃
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[返事を待っていたらいつの間にか眠っていたようだ。 携帯がチカチカ光っているのを見て慌てて画面を見る。時間を確認し、結構時間が経ってしまったことに焦る。顔まで被っていたからか、布団の中はとても蒸してしていて気持ち悪い。ぶはぁ、という声とともに顔を出し、布団も動かして冷たい空気を入れると気持ちが良かった。それでも、熱が上がってる気がする。 ぼうっとしながら見るメール。 アカリから返ってきた文章はいつも通りの文章で。もしかしてさっき違う人からメールが来たんじゃないかってぐらい。]
……
[もう時間も時間だし、自分の体力も持たないなと思って、さっき言えなかったぶんのメールを作る。 返事が帰ってこなくても別に良い。後日何か言われたら、全部熱のせいにして、全部冗談だったと言おう。]
(44) asaihaka 2013/04/19(Fri) 00時頃
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―――――――――――――――― From: chichichichichiaki-0829@docodemo.ne.jp To: illumina_town@easyweb.ne.jp 件名:部誌出るといいねー ―――――――――――――――― アカリンの文章は好きだ。 一回も言ったことないけど、1年の時に部誌読んで、いいなぁと思って、何回も読み返した。名前覚えて、顔も見に行ったよ。 2年になってクラスおなじになったとき、なんか嬉しかった。 だから期待しないでと言われても困る。
END ――――――――――――――――
(45) asaihaka 2013/04/19(Fri) 00時頃
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― 津村市総合病院→帰り道 ―
[北野さん。 なんて名前が、会計のほうで呼ばれていたのはどのタイミングであったろう。 その辺りの話は、あくまで名取律の友人の話であり、なにより名取五郎自身がぼんやりと上の空で居たため、さておく。
もし妹が兄の不調に気付いていたとして、もしも提案されても、医者にかかるのは、名取は丁重にお断りしたろう。 なぜなら、混んでいるからだ。 これ以上病院で待ちぼうけているのは、この上なく無駄である事のように思われた。 ついでにいえば、律を送り届けてからでないと気がかりである。 こんな所でまた何分も何時間も律を待たせるわけにもいかないし、一人で帰れというのも可哀想だ。 そういうわけで、名取兄妹は、用が済み次第、帰路につく形となるであろう。]
(46) gekonra 2013/04/19(Fri) 00時頃
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[さて、朝や寝起きというのは、基本的に体温が幾分下がっているものである。 だから、朝は、だるいけれど、しんどいけれど、それでも妹と共にバスなど使って、病院へ連れていくことが出来ない程だとは、考えなかった。そも熱など計っていないが。
起きてから時間がたっていく毎に、体温は上昇を続けていく。 病院から出る頃には、足元だの頭だのをふらつかせるようになっていた。 バスに乗る。その頃には少しづつ、咳が出はじめて、口元を押さえて顔を顰める。]
げふ げほ ……ずず
[耳鳴りがする。バスの揺れが気持ち悪い。 頭が痛い。顔があつい。でも眠ると、律と一緒に乗り過ごしそうだ。 律から顔を背けて、バスの椅子に頭をあずけたまま、ひたすら咳きこむ。 早く着かないかなと気が急くのは、本当に胸がむかむかしてしょうがなかったからだ。]
(47) gekonra 2013/04/19(Fri) 00時頃
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[本当のことだった。 だからって、それで好きになったんじゃない。 アカリは真面目で、がんばりやで、責任感強くて、勉強できて、正しいことができて、悪いことをただすことができて、肌が綺麗で、髪がきれいで、つんけんしてるけどたまにやさしくて。それでいてああいう綺麗な文章がかけて。でもたぶん他にも知らないことがたくさんある。
からかって、イヤミを言われて、にらまれたりするだけで楽しかった。 友達になれただけで単純に嬉しかった。 学祭の準備、本当に楽しかった。
まだ、気持ちは伝えられない。 まだ、もう少し…… せめて、直接会って。 顔を見て言うんだ。だからそれまでは……
メールを送り終えて、そのまま意識がどこかに飛んでいく。 朝起きて、送ったメールを見て、ものすごく後悔するかもしれないけど、今はなんだか熱のせいか満ち足りた気分だった。**]
(48) asaihaka 2013/04/19(Fri) 00時頃
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[バスが到着する。 律を連れ、青ざめたまま立ち上がった。 節々が痛む。 早足にバスを降りた。我慢だ。我慢。我慢。我慢。 咳き込みながらバスのステップを下り、律を振り返り]
先に帰ってろ。
[と言う。 律がなんで?という顔をしている気がする。]
いいから。
[と、つい厳しい口調でぴしゃりと言って、先に帰るようにせかす。 もう家は間近だ。一人でも大丈夫だろう。]
(49) gekonra 2013/04/19(Fri) 00時頃
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[我慢。我慢我慢我慢。家までもつか? 一歩踏み出す。揺れが気持ち悪いし、足からふぅっと力が抜けるようだ。 息を大きく吸う。口を押さえる。 胸のむかつきが、一向に収まってくれない。 我慢、我慢我慢がま あ 無理だこれは。
名取五郎は諦めた。 我慢の許容を超え、名取は無理をしない事を選んだ。]
(50) gekonra 2013/04/19(Fri) 00時頃
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[バイブレーション。またメールだ。 誰、なんて思わなくても、自ずとわかる。 開いたメールの文章は、とてもくすぐったいものだった。]
すき、か。
[本当に、おまけみたいだと思ってた。 先輩は熱意があって、面白いものを書いてる。 自分は部員として、それの添え物を書いてるんだと思ってた。 だから自分のものに、好きなんて言葉が返るなんて、思ってなくて。 この感情を今の体調のまま、言葉にするのはとても難しい。]
(51) mmsk 2013/04/19(Fri) 00時頃
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……っぷ、ふ…… ぉええ げぇほ げぇえほ、うぇえほ、げぇ、ぇほ、おえ
[本当にごめんなさいすみません、失礼します。 吐いた先は近所の空き地の隅である。 心の中で何度も謝りながら、わずかに食べた朝飯がすっかり茶色くほぐれたものと、胃液をぼたぼたと地面に吐いた。
近所のおばあさんにその様子を発見され、背中をさすって頂いたご恩を、名取は決して忘れないであろう。
無理をしていた事を叱られながら、*名取はしっかり悪化させてしまった風邪で、数日寝込むこととなった。*]
(52) gekonra 2013/04/19(Fri) 00時頃
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[だから返事は、とても短い。]
―――――――――――――――― From: illumina_town@easyweb.ne.jp To: chichichichichiaki-0829@docodemo.ne.jp ―――――――――――――――― 教室でまた、いっぱい話そうよ。 END ――――――――――――――――
[千彰に送ったメールは、これきり。 後は返ってきても、何も書かなかった。メールのやり取りは会話みたいで楽しいけれど、起きているのも良くないのは、わかってる。 携帯をベッドの端に放り投げて、布団に沈んだ。 また話そう。それはまた話す意思があるということで。
好き、の意味が、向かう場所が、文章だけでないだなんて、気づくにはもっと時間が必要だけれど。 学級閉鎖が明けるまでにちゃんと治さなくちゃ、と心に秘めて休息に向かわせる、ほんの少しの楽しみ**]
(53) mmsk 2013/04/19(Fri) 00時頃
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置壱は、ごろちんさいごのさいごにごちそうさまでした(かぜてきないみで)**
chiz 2013/04/19(Fri) 00時頃
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