199 Halloween † rose
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[欲は底なしに深く、深く。 二つの緋色の瞳が身体の振動で揺らめくたび、背を甘い快楽が駆け抜けていく。 こうして知らなかった彼をまた一つ知る。 恥じらいの声をあげる>>175様子に、ため息とともに笑みを零すが、それすら重なった唇の合間に消えてゆく。]
っく、……ぁ、気持ち、 い、 ……ふ、まだ、……もっと、 ぁ——
[彼の声だけが脳を支配するように、自らの声を飲み込もうとしても、 重ねられた熱が、擦り合う指先が、さらに男を追いつめる。 粘膜が絡まりあい、ぷつりと離した>>176。 いつか一つになることができたら、焦がるる想いはなくなるのか——そんな行き過ぎた想いすら、過る中。
水音に混じる声音はさらに甘やかに。 至近距離で涙の玉が緋色に浮かぶ、まるで、闇夜の月のように。]
——……ッん、 ニコラエ、
[綺麗なのは、 ——ガラスより繊細で、愛おしい君。]
(201) oranje 2014/11/02(Sun) 22時頃
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[一際大きく響く声>>177と、揺れる身体。 彼の指を覆うようにあてていた手を、その背に回し]
ぁ、 ん ——……あ、ぁッ! ……、!
[爆ぜる熱が、散っていく。しなやかな背に彼の鼓動を強く感じた。 男もまた、ニコラエとともに欲を吐き出して、息をすることも忘れ]
っ、は、……ふ、ああ、…… あ、……ん、ニ……コラエ、
[息も絶え絶えに、まだ熱く震える唇を重ねた。 このまま余韻に浸って閉じてしまいたい双眸は開いたまま、ニコラエの蕩けるような相貌を見つめる。 彼が己の名前を呼んで、愛を囁いた>>177。その声音を、忘れないように心に刻んで]
(202) oranje 2014/11/02(Sun) 22時頃
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愛してる、ずっと、……—— 一緒だ
[悦楽に揺蕩うまま、それでも尽きぬ欲を 言葉にして、再びの誓いを**]
(203) oranje 2014/11/02(Sun) 22時頃
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—— 来る、11月1日 ——
[目を覚ましたのは、自宅のベッド。 いつもよりももっと遅い、目覚めであった。
あれからしばらくニコラエを離すことはできなかったが、やがてこの地を去るのなら一人で行いたいこともあるだろうと、男は一人戻ってきた。 目覚めたその場に、彼の温度は存在しない。 抱き合って眠った何度めかのハロウィンのように、白いシーツの上に手のひらを滑らせても、彼にぶつかることはない。]
…………、ああ 終わった……んだな。
[カーテンを引けば、窓から見える風景にもう、オレンジ色は混ざらない。 まるで夢を見ていたかのように。
——けれど、“夢ではない”と囁くように ベッドサイドでガラスの靴が *緋く輝く*]
(204) oranje 2014/11/02(Sun) 22時頃
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小悪党 ドナルドは、メモを貼った。
oranje 2014/11/02(Sun) 22時頃
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—— 11月1日 その後 ——
[ニコラエがいなくなる日。暫しの別れの日。 理解していながら——男は、必死に机に齧りついていた。
見送って果たして、己の決意が揺らがぬか。 堅牢だと思っていたそれも、あの緋色の前では無に帰してしまいそうで]
用法容量を守った上で、1度の施術で8割方快方。 痛みや違和はなし。液体の色に抵抗はあったものの、テクスチャは濃く眼球を覆う質感が保護の点でも大変優れていると感じた。 副作用……、尻尾。発症は点眼から3時間程。 同時に点眼した左目を中心に全身に熱が広がり、意識を失う。 尻尾はレッサーパンダ科レッサーパンダ属のそれに似ており、自在に動かすことも可能。 感触は、……書くべきかな……
(232) oranje 2014/11/03(Mon) 00時半頃
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[今は、キリシマへ提出するレポートに集中できることがありがたかった。 書き記す合間にも、その行間に、ニコラエの姿を幻視して]
————…………、ああ、
[今はまだ、互い違いの色。 いつか消えてしまうその左の緋色を、ゆっくりと閉じた。
暫しの別れを告げるように、荘厳に、*鐘が鳴る*]
(233) oranje 2014/11/03(Mon) 00時半頃
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—— 空白の間に ——
[ハロウィンが終わってから、男の周りは少々慌ただしかった。というのも、多数に目撃された路上での熱烈な口付けが些か問題になったのだ。
呼び出された校長室で滔々と叱責をうけるのはいつぶりか。 教え子の前でその姿を見せてしまった不注意に関しては、素直に反省し何度も頭を下げた。 けれど、]
……彼は、俺の大切な人です。
[同性を愛したと、それに戸惑う声は思いのほか多く だから男は変わらず、そう言葉にし続けた。
彼の店に急ぎ走った、あのときに握りしめていた手のひら。 今は重ねる手はなくとも、同じように、握りしめた。]
(253) oranje 2014/11/03(Mon) 02時頃
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[あのハロウィンの日から、一日一日が長くも、短くも感じる。 何度も繰り返したその中で出会った、数々の顔を思い出し。
転がった焼き栗、ぶつかって荒げた声、 透明な鉤爪、東洋の不思議な菓子、 猫型のロリポップキャンディ、共に味わった揚げ菓子。 いつも迷惑をかける友人や、可愛い弟分、気難しくも優しい薬屋。 麦の穂が金色の狼の鬣のように靡くその季節に、かけがえのない存在がひとつ。]
————、……
[男が紡ぐその名は、魔女の魔法のように遠くまでは届かないけれど。 美しい緋色はいつでも、思い出すことができるから。]
(255) oranje 2014/11/03(Mon) 02時頃
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—— 来る、春の日に ——
[雪が解け、花が咲いた。 教え子たちが手を振って、男の元から去っていく。
教師として、なんとか留まることができた男は 望み通り、最後の児童を送り出すことができた。 あの日以降、変化する目も揶揄する言葉もあったが、手を振り別れる彼ら彼女らの表情が晴れやかなものだったから、男は口許に笑みを引くことができた。]
「先生」
[見送る男に、声をかける児童が一人。 それはかつての、小さなシーツのお化け。]
(256) oranje 2014/11/03(Mon) 02時頃
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「お兄さんは、元気?」
[男はただ黙って頷いて、「卒業おめでとう」と送り出す。 その背中が遠り、やがて見えなくなっても、見守り続けていた。
あれから、ニコラエがこの街から去ってから。 彼の住んでいる場所がどこであるか、聞いていなかったことに気がついた。 大凡の国はわかるものの、それ以外のヒントはない。]
(257) oranje 2014/11/03(Mon) 02時頃
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[——それでも、男は荷物をまとめて街を出る。 挨拶は簡素に、しかし下げた頭は深々と。 飛んでくる言葉は様々であったが、そのどれもが男の胸を震わせた。
故郷を、去るということ。 種族の壁を越えてしまったら恐らく、もう二度とここへは戻れまい。 大きいようで、小さい。温かくて騒がしい、そんな街。 この街が本当に、大好きで。
朽ちた木製の扉の前>>@57、店主のいないその場所に向かって、男はまた頭を下げる。 先に出て行ってしまった彼らは今、どこにいるのだろう。
いつも迷惑をかけていた友人には、来年のハロウィンの約束を取り消せばなるまい。 その邂逅は、叶ったか。]
(258) oranje 2014/11/03(Mon) 02時頃
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——……元気で。
[その声は、微かに震えたが、男は黙して歩き出す。 背負うのは、布袋一つ。 中には最低限の着替えと、生活用品と、ランプ。 そして、]
[——かけがえのない緋色を湛えた、ガラスの靴が**]
(259) oranje 2014/11/03(Mon) 02時頃
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—— 或る国で ——
[電車を乗り継ぎ、辿り着いたのは異国であった。 今まで使用していた言語は通じ難く、春を迎えるまでに少しだけ学んだ挨拶や単語で、街行く人々に尋ねる。]
『この国の綺麗、 場所 静か 山奥』
[できるだけ丁寧に頭を下げて尋ねても、強面であるだけで避けられる。 目指している場所も、曖昧で首を振られるばかり。
しかしその中で、学んだ単語を拾った。 “吸血鬼”、と。 吸血鬼にでも会いにいくのか。通常なら冗談としか取れぬそれに、男は刹那動きを止める。
緋色の二つの目。彼は、ニコラエは。ヴァンパイア。]
(275) oranje 2014/11/03(Mon) 04時頃
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[未だ伝記の残る、ヴァンパイアの住むと云われた城。 尋ねれば気味悪がられ、さらに避けられた。 それでも地図を買い、拙い言葉で尋ねては歩いた。
途中、かつて城下街として栄えた地に立ち寄ると 街行く女性は赤と白のより紐のついた小さな花を身につけて、どこか浮かれたように行き交っている。 異国のその光景は、懐かしいハロウィンを連想させた。]
……、そうだ
[だから、男も立ち寄った店でより紐を買う。 開いた荷の中のガラスの靴に括り付けて、彼と再び会えるようにと、願いを込めて。]
(276) oranje 2014/11/03(Mon) 04時頃
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[城下町を抜け、別の街へと向かうべきか、地図を確かめていれば森林を奥へと伸びる狭い道がある。 しかしその道は地図では断たれ、先の存在は無い。]
……獣道か、
[しばらく悩むも、通りへ引き返そうと踵を返せば、
——からり、
と布袋の中でガラスの擦れる音が小さく鳴った。 まるで、引き止めるかのように。 結うた紐が、結びつけるように。
それを呼ぶ声と、判断するのは些か都合が良すぎるか。 それを彼の音だと、想うのはあまりに安易か。]
……ニコラエ、
[それでも。]
(277) oranje 2014/11/03(Mon) 04時頃
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—— ——
[闇雲に走り、細い道を駆け抜ける。 それはやがて道ですらなく、高い草木が行く手を阻み。 やはり違うかと何度引き返そうかと考えたが、どうしても先程の音が頭を離れない。
ガラスの靴を持って迎えに行くと、約束した言葉は。 その願いは、誓いは。魔法となって彼の元へ導いてくれないか。]
……はっ、 ……はあッ!
[息はあがり、草木で皮膚が細かく破れても。 高かった陽が落ち、やがては夜が訪れようとしていても。 導かれるように只管に前を向き、走り続けて]
(278) oranje 2014/11/03(Mon) 04時頃
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——あ ッ!
[足元に這っていた蔦に爪先を取られ、勢いよく躓く。 拍子に背負った布袋が飛んで、中身が勢い良く散蒔かれた。
ガラスの靴が、最後の夕陽に煌めいて、緋色を散しながら低い草の上を滑って行く。 身体を横たえたまま、視線を向けたその先にあったのは。 闇に覆われる寸前の、荘厳で大きな影。 求めていた、いにしえの城に似た。]
(279) oranje 2014/11/03(Mon) 04時頃
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——……ニコラエ! 迎えに来たぞ!
[もし、これが全て夢で。都合のいい演出だとしても。 彼がその城の影から、闇を纏いて出てこなかったとしても。 今目を閉じればきっと、彼の腕の中に包まれる幻想を視ることができる。
せめて、——神に誓ったのだから。 それくらいの我侭は許してほしい。
だから男は、その名を呼んで、 色の違わぬ二つの瞳を、閉じた*]
(280) oranje 2014/11/03(Mon) 04時頃
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[名を、呼ばれた>>285。 一瞬気を失っていたようだ、顔をあげれば月明かりに照らされる誰かの姿。 這いつくばった身体を起こし、手を伸ばせば、その腕が男を包んだ。]
——……、ニコラエ、
[嗄れてもいない、罅割れてもいない、己の声が その名を、抱きしめてくれる彼の名を、呼ぶ。 声が、指先が、香るノーツが、彼を示してくれる。]
約束しただろ、迎えに行くって、
[そのわりに格好のつかない再会ではあったが、それほどまでに早く、会いたかったのだ。]
(299) oranje 2014/11/03(Mon) 18時半頃
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あ、っぅ
[冷たい舌先が、切れた皮膚をなぞった>>286。 痛むような悩ましいような。感覚にふると身体を震わせた。
空いた手は、ニコラエの金糸を、緋色を、頬を。辿るように触れて]
……泣かないでくれ
[零れて行く透明な硝子の雨。 浮かべたのは、笑み。緋色の二つの瞳を間近で視るように、彼の額に自らの額を押し当てた。 泣き止ます方法は相変わらずわからない。だがそれも、彼と生きていくのなら、何れは解ける謎なのだろうか。]
(300) oranje 2014/11/03(Mon) 18時半頃
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ここにいるよ。 な?……ニコラエ。ずっと一緒だ。
[闇が深まる中。月の光は白く、辺りに降り注ぎ。 吸血鬼と人間の再びの出会いは、赤と白の紐を結うたガラスの靴だけが、知っている**]
(301) oranje 2014/11/03(Mon) 18時半頃
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小悪党 ドナルドは、メモを貼った。
oranje 2014/11/03(Mon) 18時半頃
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—— 夜 城下街 ——
[手を引かれてやってきたのは、昼間に通った城下街。 ここ数日の旅の疲れは、繋いだ指先から感じるニコラエの存在で癒されている。]
どこに行くんだ?
[その問いかけには、看板>>306が答えとなった。 その名は、故郷で見た雑貨店と同じ。]
……虹、
[今ならわかる、その単語の意味が。]
(322) oranje 2014/11/03(Mon) 22時半頃
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[導かれるようにドアをくぐると、広がるのは酒場であった。 カウンターや、テーブル席。ダンスフロアはあの賑やかなハロウィンを思い出させる。]
ああ、勿論。 勉強したよ、色々と。
[冬が過ぎ、春が来るまで。宿題は長期的に計画を立て。 あのキスシーンを目撃した酒場のマスターは、やや苦笑しながらも「小悪党だったもんな」と男の背を叩いて、以前と変わらず接してくれた一人であった。 マスターが教えてくれたのはベーシックなものが殆どであったが、シェイカーが手に馴染むようにと何度も何度も繰り返し作るようにと教育された。]
……準備、してくれたのか?
[陽の下が歩けなくなろうと、眩しい緋色があればいい。 それでも会えなかった合間、彼が自らを思ってこの場を用意してくれていたのなら——想像以上に、想いは似ていたらしい。 伸ばされた手を取って、引き寄せた。]
(323) oranje 2014/11/03(Mon) 22時半頃
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おかしくねぇよ。 そうやって、生きてくんだろ……俺と。
[苦い色が浮かんだ笑みも、その口許に唇をおしあて消えてしまうように。これほどまでに、嬉しいことがあるだろうかと。 「ありがとう」と礼を添えて]
—— はは、登ろうぜ。 この街をきちんと、見てみたい。
[故郷の酒場の屋根から、彼と見渡したように。 ここが終わることのない終の住処になるのなら、全てを知りたくて]
(324) oranje 2014/11/03(Mon) 22時半頃
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—— 屋根の上で ——
[共に見る夜の風景は、何と美しいことだろう。 あの大きくとも小さくともない街より、この城下街は大きくて 全てを見通すことは叶わない。 それでも、暖かに灯る光は、確かに存在している。]
綺麗な街だな。 ……よく見える。
[握りしめたニコラエの手を、さらに強く握りしめる。 ずっとずっと生きて行く、決意を持って。]
……ニコラエ。 俺を、—— 吸血鬼に、してくれよ。
[それが人の命を狩ることも。故郷に戻れぬことになることも。 すべては承知のこと。 けれど選んだのは彼の隣。 彼と人間のように、長く長く 生きて行きたい。]
(325) oranje 2014/11/03(Mon) 22時半頃
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[凭れ掛かるように、痩躯に己が身を寄せた。 全てが終わり、そしてはじまったなら、 ニコラエと自らに「はなまる」をあげよう。
愛という項目に添えた、 彼の名を、永遠に呼んで**]
(326) oranje 2014/11/03(Mon) 22時半頃
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—— ——
[宵の風は冷たく、晒された腹部は震えて 皮膚を破られた刹那、その痛みは鋭くニコラエの指に縋った>>331。]
全部、……やるよ。
[だから全部、ほしい。
男が人間として紡いだ声音は、それを最後に。 唇を合わす合間、二つの黒い瞳は彼を見上げていた。 ああ、吸い取られる感覚は、なんと甘美なものか。 全てが彼のモノとなり、彼が全て己のものとなる。
くらりと頭が揺れ、その瞼を開けるのもできず ゆっくりと閉じ——]
(340) oranje 2014/11/04(Tue) 00時半頃
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—— Curcubeu ——
[からり、からり。 鳴るのはヒールを履かぬ男たちの足音。 片方のステップは滅茶苦茶で、お世辞にもうまいとは言えず それでも片方の上品な足取りにリードされ、くるりとターン。
酒場の隅に、柔らかな光を灯すランプ。 カウンターの上に、ガラスの靴。 結わえた赤と白のより紐は、解けぬまま。
踊り踊り、溺れていく。 閉じた目を、そっと開く。]
ああ、もっと。 ……踊りたい、お前と。
[永遠に、いつまでも。 開いた二つの眼は、ニコラエと同じ *緋色* ]
(341) oranje 2014/11/04(Tue) 00時半頃
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—— 巡りくるハロウィンに ——
[次の年のハロウィン。ニコラエはあの街に行くだろうか。 緋色の目をした男は、誘われても行くことはしなかった。 初めの数年は再会を喜ぶのもいい、だが歳を重ねない姿にいつか違和を抱かれる。 その時が来る方が、男には辛く。
ただ、一つだけ。 男にも仕えるようになった従僕に、頼み事をする。]
(344) oranje 2014/11/04(Tue) 01時頃
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[それは故郷、開店前の飲食店。 飲茶のおいしいその店は、今年もきっと賑わうのだろう。
隅のテーブルの上に 忘れ物のように蝶の形クッキーの包みが一つ。]
「一番だったか? ——ドナルド」
[少し違う形になってしまったことを、彼は怒るだろうか。 それは来年は一番にと約束した、友人へのハロウィンの贈り物**]
(345) oranje 2014/11/04(Tue) 01時頃
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