276 ─五月、薔薇の木の下で。
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[あの時>>3:121意識に染みついた匂いの「色」。 完璧な硝子細工の形かにみえて、けれど意地悪に揺らぐ希薄な煙のような。その形を捉えようと見詰めれば、向こうからも見詰めてきているような、「白」。 そしてそれは決して、悪夢めいた紅い荊の棘に絡まれた訳では無い「色」。
マークの感覚は、はっきりとそう捉えた。 逆に言えば、そのくらいしか、みていなかった。]
(37) 2018/05/23(Wed) 10時半頃
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―廊下―
[中庭に行こうとしていた。 その理由は判らなかった――本当は何処かで解っていた。 眠りから覚めた目がいつも「あいつ」を映していた場所。ただそれだけの理由だ。
進む先、薔薇ばかり香る静かな廊下の先で見えたものは]
あれ。
[三つの人影。より正確には、誰か>>36と、誰かの脚を引きずりながら運ぶ人影>>30。 遠目からでは誰が誰かなんてわかりもしなかったのだが、ただ何か、形の掴めない予感が、ふいに足を止めてしまっていた**]
(38) 2018/05/23(Wed) 10時半頃
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メアリーは、そういえば、いつもあまり帰省していない筈の、
2018/05/23(Wed) 10時半頃
メアリーは、イアンとすれ違った記憶がない。**
2018/05/23(Wed) 10時半頃
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[再び足を動かせば、人影のかたち>>36は幾らか鮮明になる。
運ばれている風のベネットの身にあったことは判らないままで、いつもの「生徒会長」らしからぬ乱れた服装のイアンも目に留まるも。 もう一人を目にすれば、望まない行為の記憶>>3:110と己への悔しさに足が勝手に竦む。それでも、怯えて逃げる心算はなかった。けれども。
その光景を遠目から見た時に、探し求めている人の「まさか」がふっと過った。 だからマークは黙って、真っ直ぐに、医務室へと駆けた。]
(50) 2018/05/23(Wed) 21時頃
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―医務室前―
[真っ直ぐ駆けた心算で、実際どの程度迷ったかは知れない。
そのまさかだった。扉の横に掛かった名札の中に、フェルゼの名は確かにあった。>>30]
なに、やってん、だよ。
[閉ざされた扉の前で、思わず零す悪態。 衝動的に扉を勢いよく開けてしまいそうだった。けれど医務室に居るのは一人ではなく、中にいる彼らを縛るのが薔薇の棘にせよ本物の風邪にせよ、吠えたり泣いたりして騒ぐことはできないと、大人の部分で踏み止まった。 開けない扉に、こん、と額を当てて項垂れる。]
……ばかやろう。
[空振りになった決心を抱えたまま、扉越しに吐いた悪態は、誰に向けたものだったろう。*]
(52) 2018/05/23(Wed) 21時頃
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―→中庭―
[医務室前からここまで、どうやって歩いたかの記憶はない。気が付けば、赤い紅い花をつけた薔薇の木の前にいた。 踏み出せば、びちゃ、と草の下の土が音を立てる>>10。 そのまま木の匂いを今一度知るように、顔を寄せた。]
どうして、 捕えるのが、薔薇なんだろう。
[これだけ狂おしく香り続けても、人を捕え縛るものであっても。 それでも、薔薇という花の匂いは嫌いになれない。 寧ろマークにとっては、微睡の中に寄り添い続けた花であることに変わりは無くて]
(62) 2018/05/23(Wed) 21時半頃
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[明けぬ夜の中で絶えずに在り続ける香りは、何時かは終わる生の中で咲き誇る花なのか。 それとも枯れて散るまいとあがく花なのか――>>0:220
問うても答えない赤い薔薇からは程無く離れる。 木立を歩いた先>>40に、見慣れた人影をひとつ、否、ふたつ見つけた。]
ユージン先輩。 それに――ケヴィン先輩、ですね。
[上着の下で横たわる姿>>14を見下ろして確かめてから、声を掛けた。悠人が掛けた言葉>>63までは聞こえていないまま]
何があったのかとかは、だいたい想像がつくんですけど。
[そう、前置きしてから]
(65) 2018/05/23(Wed) 21時半頃
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メアリーは、>>64その声は、確かに、マークに届いていて
2018/05/23(Wed) 21時半頃
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花はいつかは、枯れて散るもの。 花の終わりの先に朝が来る。
そういうこと、なんでしょうか。
[声を発さぬ筈の薔薇の木からあたかも発されたかのように、すこし遠くから届いた声>>64。 それに今応える形で、悠人の目を見て言った。*]
(66) 2018/05/23(Wed) 21時半頃
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咲いたことがなかったなんて、まるで先輩が花みたいじゃないですか。
[マーク自身が自分を花に準えていたことは棚上げして、射干玉を見据えたまま軽く笑ってみせた。>>70]
それにさっきから、呪いだとか何とか、 まるでユージン先輩が、何もかも知ってる黒幕みたいです。
[実際のところまでは判らない。けれど、]
……本当に、こんな辛い思いさせやがって。 殴りまではしませんけれど、罵るくらいはさせてください。
[唇を引き結んで、悠人を睨みつける。 今のケヴィンの表情までは判らない。医務室の面々の顔も見ていない。それでも自ら紅い荊――おそらく「呪い」のいろを掠めて知っている自覚はあった。]
(72) 2018/05/23(Wed) 22時半頃
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……それと、先生。じゃなかった、先輩。 回答はまだ終わりじゃないです。
[「及第点」>>69なんて言葉を聞いたものだから、つい軽く冗談を混ぜてしまいつつ]
花が枯れて残るのは、種。 その種からまた草木が芽吹いて、新しい花を咲かせる。 永遠に咲く花なんてありはしないけど、 散りながら、何度も命を繋いでいくことができる。
そのことはもう、僕自身、ちゃんと判っている心算です。
[最後の言葉を言い切った時の笑顔は、中庭でいつも見せてきた以上に、確りとしたものになっていた。*]
(76) 2018/05/23(Wed) 22時半頃
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メアリーは、イアンのあの時の眼差し>>51も、辛いものだったのかな、と思う。
2018/05/23(Wed) 22時半頃
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[そう言う>>79なら本当に殴ってやろうかと右腕を挙げてはみたものの。向けられた笑みの中にかなしみを垣間見て、結局そのまま腕は宙で止まってしまった。
花が種を残すとだけ言えばまるで理科で習う話みたいだ。けれど悠人>>80は明らかに目を丸くしていた。 「誰かと一緒」なんて言葉に、ふっとひとりの人を思う。 丁度その「あいつ」>>1:104と何処か似た言葉>>82が、ひびく。]
……ありがと。 先輩にまで言われるなんて、思ってませんでした。 まるでそれこそ、ずっと見てくれてたみたいだ。
[折角大人らしく笑ってみせたところで、結局、泣き笑いになってしまった。 悠人の前で泣いたのは、これが初めてだった>>2:50。]
(95) 2018/05/23(Wed) 23時半頃
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[振り上げたままだった右腕を、不意に悠人の手に伸ばした。それはまるであたかも、咲く花の花弁を手に取って確かめる「花占い」のよう。 彼が言う通り本当に射干玉の黒がみえるかとか、本当に、見守り続けてきた「花」だったりするのかなとか、それくらいの意思だ。
マークの手は果たして、悠人の手に届いただろうか。届いたとしても、その匂いの「色」を辿るのはもう少し後のこと。 ――そして、この顛末がどうであれ、]
(97) 2018/05/23(Wed) 23時半頃
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オスカーが――… う、ウソだろ!?
[その話>>83には動揺した。何が彼をそうさせたかは、判らないまま]
……僕の所為、なのか。
(99) 2018/05/23(Wed) 23時半頃
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メアリーは、「僕の所為」と思わず零した低い声が悠人に届くかは知れなかったが、
2018/05/23(Wed) 23時半頃
メアリーは、とにかく、大集合との提案には頷いた。 共に向かい駆ける足は速く、右手で抑えた胸は、痛いくらいに鼓動を早めて**
2018/05/23(Wed) 23時半頃
メアリーは、ロビンの上着を掛けられたケヴィンをその場に残してしまったまま**
2018/05/24(Thu) 00時頃
メアリーは、この夜の終焉を、程無く知ることとなる。**
2018/05/24(Thu) 00時頃
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