30 ─今夜、薔薇の木の下で。
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フィリップは、身じろぎするかのように、微かに震えて。
2010/09/08(Wed) 21時頃
掃除夫 ラルフは、メモを貼った。
2010/09/08(Wed) 21時半頃
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― 屋根裏部屋 ―
[そして、フィリップの服から落ちたビー玉をそのポケットに戻して…。フィリップになるべく何かを着せようとしている。
ともかく、今は離れるつもりはない。 むしろ、いろんな想いが入り混じって、
俯いた。]
(145) 2010/09/08(Wed) 21時半頃
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―屋根裏部屋― [零れるのは情事の名残を思わせる掠れた甘い吐息。 薄ら開かれた翡翠はまだ虚ろに、夢を見てるかのようで。]
―――… ん、
[肌に触れられると、鼻に抜けた声。 緩く首を横に振るのはただそれだけのことに 甘さを身体が覚えてしまうから。
…… ふ、
泣いているかのような、笑ったかのような吐息。 目覚めてから初めて、翡翠がぼんやりとセシルを見て]
(146) 2010/09/08(Wed) 21時半頃
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セシルは、先輩…と小さく呟いた…。
2010/09/08(Wed) 21時半頃
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─ 薔薇園 ─
暑い日が続いてるのに、よくまあ萎れもせずに繁ってるなあ。
[感嘆とも呆れともつかぬ口調で、色とりどりの咲き誇る花々を見る。
ふと、足元に目を向ける。
幾ひらかの、赤い花弁。]
……自然に散ったって感じじゃないな、これ。
[一枚手にとって、しばらくじっと見つめて]
そういう事も出来るんだな……。
(147) 2010/09/08(Wed) 21時半頃
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―廊下― [軽やかな足取りで廊下を駆ける。 まるで――そんな筈は無いのだが――交わった相手から活力を吸収しているかのように。]
(148) 2010/09/08(Wed) 21時半頃
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[虚ろな翡翠は後輩にはどのように映ったか。 硝子の色と常の色、それともまた違う溶けた色。 刷り込まれた快楽に、新たな色を覚えて。]
―――… ……
…うご け…な ぃ…
[身体が、下半身が溶けてしまったかのようで。 ぽつりとそう囁いた。]
(149) 2010/09/08(Wed) 21時半頃
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[濃厚な むせかえるような香り。
拾い上げた花弁を口にした。薄いそれに歯を立てると、ほのかに苦い。]
蒼薔薇は確か……。
[再び歩を進め始める。]
(150) 2010/09/08(Wed) 21時半頃
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>>149 ああ、先輩……
[ごめんなさい、はとても小さく……。]
動けない? じゃ、何か欲しいものがあったら持ってくるよ。 もしくは移動したいなら、手伝う。
(151) 2010/09/08(Wed) 21時半頃
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ルーカスは、ディーンの姿が視野に入ったような気がした。
2010/09/08(Wed) 21時半頃
ディーンは、ルーカスに、再度少し聲を大きくして「薔薇園に行くのはお勧めしないぞ?」と言葉を投げた。
2010/09/08(Wed) 22時頃
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―――……
[翡翠はセシルを見つめて何か謂いたげに。 声にはならず代わりにただ甘い吐息ばかりが零れて、
傷の残った掌が、何か握ろうと緩く開閉される。]
(152) 2010/09/08(Wed) 22時頃
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──まあ、「蒼薔薇」が咲いてるわけはない、か。もし咲くなら、世紀の大ニュースだもんな。
[たどり着いたのは、花を付けていない一本の老木の前。]
[暫しそこに佇んだまま、じっと薔薇の木を見つめ
つ、と伸ばした手は、枝を掴み そのまま折りとった。]
(153) 2010/09/08(Wed) 22時頃
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ルーカスは、ディーンに、すみません、と会釈を一つ。
2010/09/08(Wed) 22時頃
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>>152
ああ、うん まだ、約束、叶えてないものね。
[何かを握ろうとするフィリップの手。それはビー玉を探しているのかな、と思った。
フィリップの声が出ず、深い呼吸をする口唇。 また、口付けたくなる。 見蕩れてしまう。
そう、ぼんやり、気がつけば見蕩れていて…。]
(154) 2010/09/08(Wed) 22時頃
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[折った枝から、荒々しい手つきで葉をむしり取る。 枝を握る手にも葉をもぎ取る手にも、幾つもの傷が付いているが、意に介する様子はなく。] ……この木を丸裸にするの、どれくらい時間がかかるんだろうな。
[温度の感じられない視線を、目の前の植物に向けた。]
(155) 2010/09/08(Wed) 22時頃
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―廊下― [寮内はまるで無人であるかのようにひっそりと静まり返っている。
少し前であればディーンがいたシャワー室の前に来ると、ロビンは足を止める。 そぉっと窺うように中に歩を進めるが、既にそこは無人。 しかし、水脈(みお)の如く濃密な薔薇の香りの軌跡残り、確かにそこに薔薇の棘に呪われた者が居たと示していた。
ふと思いつき、着衣を無造作に脱ぎ捨ててシャワーブースに入る。 熱い湯を全身に浴びるのは、穢れを洗い落とす為ではない。羞恥でもない。 「何事も変わっておらぬように装わねばならない」という邪知がそうさせるだけだ。]
(156) 2010/09/08(Wed) 22時頃
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― 中庭/薔薇園 ―
[ルーカスはかけた聲が聴こえないのか、薔薇園の中へとフラリと行ってしまう。ディーンは溜息を吐くと、洗濯物を終えたこともあり、彼の人の後をつける。 右眼だけの視界にも、ルーカスの奇異な行動は見てとれて。 相手の視界にきちりと入るような位置につけると]
―――……何をしているんだ?
[右眼の紫は薄い色でルーカスの手元にある手折られ葉をむしり取られて行く枝を見ながら、問いかけた。]
(157) 2010/09/08(Wed) 22時頃
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…… て、
[深く、浅く呼気が零れる口許から声が零れて。 掌は緩く握られて動きを止める。 探し出せなかったものに、翡翠が潤んで]
… いて…
…い て…よ…
[甘く乞うように繰り返してふるりと身体が震える。 見上げる姿は無意識に誘うかのような空気を醸しだしていた。]
(158) 2010/09/08(Wed) 22時頃
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[ルーカスが自らの枝を折ったことを蒼薔薇は感じている。]
(愚かな)
(何を勘違いしている)
(愚鈍な輩め)
(159) 2010/09/08(Wed) 22時頃
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ディーンは、葉がむしり取られる度に、身体に倦怠感を覚えるのは、生気を吸い取られているからであろうか。
2010/09/08(Wed) 22時頃
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あ、ディーン先輩、ですか。
何を、か。そうですねえ、もしかしたら化け物退治になるかもしれない事、ですかね?
勝手な思い込みですけど。
[青空の下で、この所謂「書斎の人」という印象の上級生に会うのは珍しいように思う。]
(160) 2010/09/08(Wed) 22時頃
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本屋 ベネットは、メモを貼った。
2010/09/08(Wed) 22時半頃
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― 薔薇園 ―
化け物退治、ね……――― 私も、化け物のようなものか。
[ルーカスが葉をむしる度に、倦怠感に襲われるのは、蒼薔薇が失くした生気をディーンから補おうとするからだろう―――……酷い眩暈に襲われる。
ルーカスの答えに、言葉を返す最中に、ぐらりと傾ぐ身体。 それは、遠まわしに蒼薔薇の精が、ルーカスの行動を阻止しようとしているかのよう。]
(161) 2010/09/08(Wed) 22時半頃
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[身支度を終えるまでは然程長くない。 まだ湿り気を帯びた髪から水滴が滴るのも構わずに、再び駆け出す。 今度は惑わされず、開ききって散りかけた薔薇の馨りを追おうと、最後に「その人物」を見かけた地点から順番に捜索を始める――]
(162) 2010/09/08(Wed) 22時半頃
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>>158
[フィリップは声もうまく出せないようだ。 だから耳を傾けて、
それが、今そこにいていいことを示しているのを確かめると、またぎゅうと抱きしめた。]
――……フィル先輩…… ごめん、フィル先輩が、やっぱりオレ、大事…。
[そして、見上げてくる口唇に、やっぱり口唇を合わせたくて、顔を近づける。]
(163) 2010/09/08(Wed) 22時半頃
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[廊下を抜け、人の気配のする空き部屋の前を通り過ぎ、そして、]
(164) 2010/09/08(Wed) 22時半頃
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セシルは、ふと、痛みを感じて、腕をみた。
2010/09/08(Wed) 22時半頃
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はい? 「私も化け物」……って、それどういう
って、先輩?
[異な事を言うな、と思う間に、よろめくディーンを見て、慌ててそのそばに駆け寄った。]
(165) 2010/09/08(Wed) 22時半頃
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― 屋根裏部屋 ―
――……
[フィリップにまた口付けようとした時、腕に痛みを感じて、咄嗟に押さえる。]
――……ぁ?
[見れば、白いシャツの二の腕の部分に赤い染みがついた。]
(166) 2010/09/08(Wed) 22時半頃
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見つけた。
[次なる餌食を求めて彷徨い歩く赤毛の獣の姿を見出し、口の端を吊り上げた。]
(167) 2010/09/08(Wed) 22時半頃
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ルーカスは、ディーンを急いで引き起こした。
2010/09/08(Wed) 22時半頃
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[抱きしめられると直に触れる温かさに 掠れた吐息がまた零れて。]
―――…ん、 … ……
[セシルの声がちゃんと届いているのかもわからない。 ただ口付けられるのならば…其れを拒むことはなく。 甘い行為を―――…拒む、はずがなく。
伏せられた翡翠の中に宿るのは蒼の欠片。 長い、長く深い行為の中で陥落した身体は 目の前の彼を求めて、けれども目の前の彼ではなく]
…セシル…
[それは悦びの声、極上の甘さを教えてくれた 蒼い花の名前は 知らないから…そう、呼んで、
けれども口付けがないのなら、痛む声が聴こえたのなら。 ふと不安を抱いた時のように…翡翠が見つめた。]
(168) 2010/09/08(Wed) 22時半頃
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―――……はっ、ぁ
[傾いだ身体はそのまま地面にくずおれる。 呼吸を整える為に息を吐けば、傍に寄るルーカスには蝶を誘うような薔薇の匂いがすることだろう。]
私は、蒼薔薇に呪われた身だからな。 お前が、アレを傷つけると、どうやら生気を吸い取られるらしい。
やれやれ、私だけなら佳いのだがね。 おそらく、アレを傷つければ 生命に危険あるものが私以外にも居そうだ。
[聲は聴けずとも、裡に巣くった薔薇の根は、同じ呪いを受けた物に繋がっている。 助け起こされながら、事情を説明した。]
(169) 2010/09/08(Wed) 22時半頃
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――……血?
[行為の最中、服は脱いではいなかった。 だけど、今、違和を覚えて、白いシャツのボタンを外す……。
その肌に、全身のところどころに、赤いポツリとした傷ができていた。
それは、まるで、葉を引きちぎったあとのような。]
――……あ
[そして、その傷の一つ一つから、細く、血が流れはじめる。]
(170) 2010/09/08(Wed) 22時半頃
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[蒼い茨の紋様は既に半身に拡がっているようだ。 外から見える部分だけでも、アイパッチの下から首筋に掛けて、侵食が進んでいる。 熟れた馨りは末枯れる薔薇のそれ。 酷く消耗しているように見えるのは、ドナルドの精気が吸われ尽くされる寸前であるからか、それともルーカスが本体である蒼薔薇の樹に損傷を負わせた所為か。]
(171) 2010/09/08(Wed) 22時半頃
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ロビンは、ドナルドにゆっくりと近付いてゆく。**
2010/09/08(Wed) 22時半頃
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(フン 忌々しい)
(これぐらいで、滅びるぐらいなら)
(宿木を食って出る)
[蒼薔薇がセシルの中で、
薄く嗤った。]
(172) 2010/09/08(Wed) 22時半頃
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セシルは、庭の老木が本当に小さな芽を出した。
2010/09/08(Wed) 22時半頃
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先輩?どうしたんですか。って言うか、大丈夫ですか?
[何故、ディーンからも薔薇の香りがするのだろう。]
え…… ちょっと待って下さいよ。蒼薔薇に呪われた身……って、
そんな……。
[助け起こしたディーンの口からは、俄には信じ難い、だが、目の前の少年を見れば納得せざるを得ない話。]
ごめんなさい、──何てこった。
(173) 2010/09/08(Wed) 22時半頃
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セシルは、身体に細く流れはじめた血を隠すように、またシャツを羽織る。
2010/09/08(Wed) 23時頃
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[真紅の獣は、近しい気配を感じて振り向く。 その顔に表情は無く、不覚刻み込まれた目元のクマ。 その鋭い隻眼だけは爛々と、獲物を見つけた肉食獣のように。
蒼薔薇の木が傷つけられるたびに、呪いの茨が食い込むのか、苦しそうに息を荒げた。]
(174) 2010/09/08(Wed) 23時頃
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