88 吸血鬼の城 殲滅篇
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……。…ぁ、……
[ヘクターの声と哄笑を 赤く染まった視界で振り返る。
彼の上機嫌の理由に見当はつかず、 戸惑った様にただ、獰猛な瘴気を纏う主を見上げた]
………悪い。
[下がれとの命令にそう返し、 眩暈を堪えながらゆっくりと距離をとる]
(116) 2012/05/03(Thu) 21時頃
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[血が溢れる腹部を押さえ込みながら、 いつ倒れこんでもおかしくない身体を気力だけで支えているが、 まっすぐにはたっていることが出来ず、戦いにはほど遠いありさまだった。
不意に、耳障りな嗤い声が響き、その声のしたほうに視線を向けて]
――……ムパムピスっ!
[視界に入ったのは彼の身体に深々と突き刺さった闇の剣]
ムパ……
[思わず身体が動きそうになるが、足音で意識を引き戻される。 血濡れの手で額の汗を拭うと、再び手を伸ばして 痺れた手で、長剣を漸く掴んだ]
(117) 2012/05/03(Thu) 21時頃
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[音を立てないよう、慎重に、手首から先の動きだけで杖の位置を動かしていく。 石床の表面を軽く削り、言葉の代わりに触媒となる文字を。 しかし、それが最後まで綴られることはなかった。]
―――!?
[目の前で吸血鬼が嗤った。人間の様に。 可笑しくて堪らない喜劇を見ている時の様に大声を上げて。]
(118) 2012/05/03(Thu) 21時頃
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――――ぐ……うァああぁぁぁぁぁぁぁッ――…ッ
[鋭い剣の切っ先が振り下ろされ、無防備に仰向けになった身体に突き立てられた。 痛みと衝撃に悲鳴が上がる。]
[呼吸をするだけで鈍く響いてくる鋭い痛み。意識を失うこともできない。 男の背中が遠ざかり、生理的な涙が滲みぼやける視界に、ジェフリーに向かい歩いていく吸血鬼の姿が見えた。]
(119) 2012/05/03(Thu) 21時頃
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── 南の塔 ──
[影のごとく無音で着地すると、そのまま修道士の元へと歩み寄る。
剣で床に縫い止められた姿は、自分が吸血鬼と化したその時を思い出させた。 苦鳴は、肌に突き刺さる。
黙らせろと命じられたそれを忠実に実行するため、修道士の傍らに膝をついた。]
(120) 2012/05/03(Thu) 21時頃
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[彼自身の祝福魔法によって動きのきかなくなった左掌を、その歯列の間に含ませる。
歯牙を立てたいならそうすればいいと視線で促した。]
(121) 2012/05/03(Thu) 21時頃
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……師に対してか。 それは有難いというべきか。
[怪我などひとつもない身体ですら満足に戦えるかどうか わからない相手。 だが、そのヘクターを前に一歩も引く気はなかった]
答えは決まっている。 ……お前らを倒して、ムパムピスを助ける。
[腹を押さえていた手をどけると、戦う意志を示すように剣を構えた]
(122) 2012/05/03(Thu) 21時頃
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ドナルドは、ムパムピスに話の続きを促した。
2012/05/03(Thu) 21時半頃
ドナルドは、ヘクターに話の続きを促した。
2012/05/03(Thu) 21時半頃
ムパムピスは、ドナルドに話の続きを促した。
2012/05/03(Thu) 21時半頃
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[ヘクターと金髪の剣士の間で交わされる言葉に、耳を澄ます。]
よい戦士だな、あれは。
[意識を保っているのがやっとだろう修道士の額に、屍めいた冷たい指を伸べて、その前髪を掻き揚げた。]
おまえたちが、その血を姫に捧げてくれる気になってくれたなら、おれは感謝するのだが。
(123) 2012/05/03(Thu) 21時半頃
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ほう? そうか。
[選択肢に無い答えを言った剣士に対し、 上機嫌なままの笑みを向ける。]
確かに。 あいつならそう言うだろうなぁ。
[うんうん、と頷きながら棍を斜め右前に低く構え、]
(124) 2012/05/03(Thu) 21時半頃
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ドナルド。ヒュー。
その修道士を、適当にばらしておけ。
[命じるやいなや、修道士を押さえつけていた影と、 床に縫い止めていた剣を、もろともに消す。
まるで、抗えとでも言うように。 戦いによらぬ死には、価値がないといわんばかりに。]
(125) 2012/05/03(Thu) 21時半頃
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――っ…ッ…!??
[余りに濃密な闇と瘴気が入り混じる部屋。 剣より与えられる苦痛の為に、騎士の存在に気づいたのはその手が口内に差し込まれ言葉が封じられた後だった。]
(126) 2012/05/03(Thu) 21時半頃
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[そして、改めて剣士に視線を向けた。
―――来いよ。
さらに下げられた棍の先が、剣士を誘う。]
(127) 2012/05/03(Thu) 21時半頃
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ふーーッ! …―ゥ…っ [言われるまでもなく、眉を寄せて力を込め、異物に噛みつき排除しようとする。 生者のものとは異なるひやりとした掌は、全力で歯を立てているにも関わらず、痛覚を失っているかのように動くことはない。]
………――ッ ……
[掌にしっかりと噛みついたまま騎士を睨み付け、その呟き>>123に小さく首を左右に振った。 言葉は発せられなくても、否定を顕しているのは誰の目にも明らかな表情だった。]
(128) 2012/05/03(Thu) 21時半頃
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ムパムピス……。 私がこの男に勝つまで、耐えろよ。
[ムパムピスの元へ駆け寄るわけにはいかない。 そんなことをすれば、それこそヘクターの思う通りに 二人とも殺されてしまうだろう
激しい憎悪が募る時ほど、冷静に判断をしなければならない――。 それも師からの教えだった]
(129) 2012/05/03(Thu) 21時半頃
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――!?
[腹部に差し込まれた痛みが消えたのは突然だった。
空気が軽い。
手足を封じていた圧迫感もない。]
[生命線とばかりに離さず持ち続けていた杖を振り上げ、目の前の騎士に突き立てようと腕を大きく振り上げた。]
(130) 2012/05/03(Thu) 21時半頃
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[残る力を振り絞って、ヘクターとの間合いを一気に詰めて]
はっ……! [大きく――跳んだ]
[二度と同じ過ちは繰り返さない。 手が届かないのなら跳べばいい。
跳躍と同時に剣を振り上げると、 斜めから首をめがけて、刃を振り下ろした]
(131) 2012/05/03(Thu) 22時頃
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[>>115 剣士への提案には、軽く眉を顰める。]
…趣味悪ィ。
[衣服の胸元を引っ張って顔を拭い、 何とか視界を取り戻す。
清浄な刃で抉られた左眼は 変わらず激痛を伝えてきたが、 飲んだばかりの始祖の血が作用しているのか 意識ははっきりと研ぎ澄まされていた]
(132) 2012/05/03(Thu) 22時頃
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[修道士の示した否定の圧力に、奥に緋を宿した頑な琥珀が狭まる。]
抗うつもりなら、支度を整えられよ。
[ヘクターの下知もあった。 立ち上がる間は待つ、と騎士としての礼節から告げるつもりだったが、食いつかれた左手で動きを封じられたところに、影の束縛を離れた修道士の必死の一撃が迫っていた。]
(133) 2012/05/03(Thu) 22時頃
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[――適当に。 主の命令に肩を竦めながら、 其れが、思っていたようなものでないことに安堵する。]
…どっちがマシとも言えねえか。
[呟き、ムパムピスの元へ地を蹴り跳んだ。 彼の元にはヒューが居る。 恐らく出番はないだろうと思いつつ 再びワイヤーを引き出す]
(134) 2012/05/03(Thu) 22時頃
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――― 良い
[並みの人間ならば動けぬほどに傷ついている剣士が 真っ直ぐにこちらへ駆け、飛ぶ。
それでこそ、と笑みが浮かぶ。]
(135) 2012/05/03(Thu) 22時頃
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……が、まだ遅いッ!
[石床の表面が削れるほどに踏みしめ、 身体を横へと逃がしながら棍を引き、 落ちてくる軌道を読んで、突き上げた。
チッ、と音を立てて髪の毛が幾筋か飛び、 首に近い肩を刃が通り抜けて、血しぶきが上がる。 それすらも、心地良いと思う。]
(136) 2012/05/03(Thu) 22時頃
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ムパムピスは、ジェフに話の続きを促した。
2012/05/03(Thu) 22時頃
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……ちぃっ!
[ヒューに向けたムパムピスの一撃。 修道士の杖目掛け、漆黒のワイヤーを繰り出した。
莫大な聖力を込めた其れに 鋼糸がどれだけの間耐えられるかは不明だが]
(137) 2012/05/03(Thu) 22時頃
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[手に持つ杖は、メイスにしては軽く、杖にしてはやや重厚。 殴打によるダメージではなく、対屍・死霊系の敵に対して聖属性の魔法を叩きこむことを目的とした物だった。]
[身体能力に劣る自分が単身で、遥かに高い身体能力を持つ吸血鬼に対抗できるのは、属性特化の聖術のみ。 ヘクターの気まぐれによる解放ではあったが、痛む身体を堪えて腕に力を込めた。]
(138) 2012/05/03(Thu) 22時頃
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[空中からでは、ヘクターが身体を逃がす動きにも、 下から突き上げる行動にも、臨機応変に対応できずに、 胸部に激しい衝撃を受ける]
ぐ……ぁっ……
[呻き声とともに、身体は簡単に宙を舞い、 受け身もとれぬまま床に打ち付けられた。
剣も打撃の衝撃で手から離れて、 倒れたままでは手を伸ばしても届かないところに、 からんと音をたてて、転がった]
(139) 2012/05/03(Thu) 22時半頃
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[仰向けに転がったまま 目が霞んで、意識が閉じそうになるのを 辛うじて持ちこたえている
革袋に入った、もう1本残っている青い薬。 どれくらいの時間を開ければ、 副作用を心配しなくともすむのか。
頭の中を支配することは、その考えだった]
(140) 2012/05/03(Thu) 22時半頃
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―――ッ… [聖なる力を全開で撃ち込もうとした時、杖の端がドナルドのワイヤーに絡め取られる。>>137]
黒い鋼線…呪いに侵されたアイテム…
――聖なる裁きを阻む物よ 正しき形を思いだし、 清らかなる姿に還れ!
[浄化の聖術を唱える。ワイヤーごと、持ち主に聖なる力を流し込もうと聖別された杖に詠唱の力を加えた。]
(141) 2012/05/03(Thu) 22時半頃
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――ぐ…っ…… [声に力を込めたことで剣に突かれた腹部の傷と抉られた足が痛む。思わずよろめきバランスを崩す。]
(142) 2012/05/03(Thu) 22時半頃
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[棍の一撃で吹き飛び、地に落ちた剣士へ向かい、 半身を赤く染めて、悠然と歩み寄る。 途中、転がった剣の柄を足で踏みつけて、立ち止まった。]
なあ。 なんで貴様が今まで生きていたか、わかるか?
(143) 2012/05/03(Thu) 22時半頃
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それはな。 [問いに答えが返るのを待たず、 自ら、先を明かす。]
最初に"娘"を傷つけたのが、貴様だからだよ。
[この剣で、刺し貫いた。 どれほど洗おうと、どれほど他の血にまみれようと、 微かに感じる"娘"の血の臭いが、それを教える。]
(144) 2012/05/03(Thu) 22時半頃
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だから。
[剣の柄を蹴り飛ばし、剣士の側へ押しやる。]
立てよ。 もう少し、オレを愉しませろ。 最後の最後まで苦しんで血反吐を吐いて死ね。
"娘"のために、最後の一滴まで血を流せ。
(145) 2012/05/03(Thu) 22時半頃
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