231 獣ノ國 - under the ground -
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落胤 明之進は、メモを貼った。
2015/07/15(Wed) 16時半頃
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……クラリッサ。 どこかに痛みはあるの?
[ピクリとも動かない>>76彼女に呼びかける。 やはり、薬の作用が強すぎたのだろうか。 彼女からの反応はなくて、焦りが全身に広がるのが分かった]
ねえ、クラリッサ。 私の声が聞こえる?
[両肩を交互に叩きながら。名前を呼ぶ。 焦る内心とは裏腹に。 嫌になってしまうほど、医者としての判断は冷静で。 彼女の意識レベルを確認しようとする]
大丈夫、クラリッサ―――
[必死に呼びかけながら。 あの日の出来事がフラッシュバックするのを止められない]
(87) 2015/07/15(Wed) 18時半頃
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― ―
大丈夫。兄さん、兄さん……!
[ベッドで身体を痙攣させる兄に。私は必死にしがみつく。 薬効が強すぎたのだ。彼の身体がそれに追いついていない]
そんなこと言わないで。私が助けるから。
[なあ、俺はヒトとして死ねるか。兄は言った。 私は言葉に詰まってしまう。“実験”は成功とは言い難くて。兄の腕はまだ、斑な毛に覆われている。 完全なヒト化には、まだ程遠くて。でも]
大丈夫、実験は成功したわ。成功したの。
[毛むくじゃらの手を握って。どうして、真実を言えようか]
兄さん、もうあなたは人間よ―――
[最期に呟いた。残酷な嘘]
(88) 2015/07/15(Wed) 18時半頃
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[がらり、と扉が開く音に我に返った。 振り返ると。ジリヤがそこに立っていた>>82。 激昂する彼女に、一瞬言葉を詰まらせる。 それでも、“管理人”として彼女は立ち上がり]
何をした、って言われても。 ……“治療”を行った結果よ。
[言い訳は、しない。 クラリッサを見下ろしながら、悪びれもせずそう言った]
出て行ってもらえるかしら、ジリヤ。 今はあなたに構っているヒマはないの。 クラリッサの“治療”を続けなければいけない。
[気丈に振る舞いながらも、内心は焦りで満ちていて。 只事ではない様子のクラリッサを、見遣った**]
(89) 2015/07/15(Wed) 18時半頃
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治療か?
[見下してくる女医にそう問う。ギリッと歯の奥で音がする。爆発しそうな怒りを、上着が押さえつける。あの状態になっている以上、イカレ女医をぶん殴ってもクラリッサはよくならない]
なぁ、それは治療かって聞いてンだよ、イカレ女医。
悪いところ治すのが治療だよな?クラリッサは何処が悪かった?外に出せねえ理由のあるようなケダモノだったか?あ?
自分に聴き直せよ、イカレ女医。それでも治療だって言い張るなら、治療対象間違ってンぞ?
[落ち着け、落ち着け、相手はただの、イカレではない。イカレ“女医”なのだ。後始末できるのも、奴しかいない、筈なのだ]
(90) 2015/07/15(Wed) 19時頃
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― 第一図書室 ―
[ 出口では無い方から聞こえてくる足音>>85に 僕は本を持ったまま 本棚の影に隠れる。
ごくり、と喉が鳴り 嫌な汗が背中を伝って
( 兄さん、 )
羽音は無いから 居ないか…足音の主と一緒か。 そう思った頃だろうか 聞き慣れたおとと共に 何かを咥えた兄が肩に乗る。
…………?
僕はそれの中身をちらりと読んだあと ――暖炉の脇に立つ人影と 目があった。]
(91) 2015/07/15(Wed) 19時半頃
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[ 目の前にいるのは”管理者”である人間、其れすなわち。
何を企んだ?と詰問されるのではとか 彼の立場と、メモの文字の意味だとか ぐるぐる、足りない頭にいろいろなものが渦を巻く。]
あ、……………。
[ 声は喉に阻まれて 本の香りの中に消えてしまう。 兄の無事を喜ぶ余裕もなく、僕は焦りばかりを浮かべて 微かに震える手でシャツの裾を掴むだけ。]
『 モウ マイゴ! シナイ! ツカマラナイ!』
[ かけられた声>>85に対して喚く兄に、やんわりと手を添え 僕を責めも、焦りもせずに去る背中を 凝視して。]
(92) 2015/07/15(Wed) 19時半頃
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上に行っても無駄だって言いたいのか!
[ ( 指紋認証、開けることができない ) それらをわざわざ教える理由は ( 僕等が知った小さな希望も無駄だと ) そういう意味にしか取れずに。
図書室から、彼の背中が消える間際 叫んだ声は 届くだろうが
返事があるかは 定かでない。**]
(93) 2015/07/15(Wed) 19時半頃
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― 第一図書室→自室 ―
[ 僕は、兄に聞きたいことがやまほどあった。
向こうで見たもの、明に連れられてきた理由 咥えてきたメモの経緯、いろいろ いろいろ。
夜、梟の部屋を尋ねる前に考えておかねばと 焦りばっかりを抱えて自室に戻る。
それでなくても言葉の足りない兄の”偵察結果”は 把握をするのに なかなか骨が折れるだろう。**]
(94) 2015/07/15(Wed) 19時半頃
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……“治療”よ。 彼女をヒトにするための。
[アマルテアは、ジリヤに向かって言い切った]
ケダモノ? 自覚があったのかしら。
[頭に血が上っていた。タイミングが悪い。 ジリヤに傷つけられた頬も、腕も。 まだ完全には治りきっていない。 どうして。この子は。 こんな大変なときに、自分の邪魔をするのかしら]
ヒトになれば、あなた達は外に出られるわ。 それを、私は手伝ってるだけ。
[間違っていない。間違っていない。 自分は。決して。間違ってはいないんだ**]
(95) 2015/07/15(Wed) 20時頃
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…まずテメェが人になれよ
[その答えには、そう返す。ここまで来てそう言える事に、ほとほとあきれ果てる]
てめーにわかるように猿語で話してやっただけだよ。 質問に答えろよ。クラリッサの何処に問題があった
[今にも殴りかかりそうで震える腕を、なんとか抑える。そのタイミングでは、ないんだ]
手伝い、ねぇ? なぁ、今手伝えてるのか?クラリッサを
[息を吸え、大きくだ、上着からの匂いを、体に廻らせろ、落ち着け、本当はこれだって、女医の邪魔になってるんだ、殴るなんてもっての他だ]
(96) 2015/07/15(Wed) 20時半頃
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―― 回想 ・ ロッカー前 ――
………さあ。 私には到底、
[ 男の瞳に「 惑い 」>>65が映った 。 実の感覚を知らない、惑いである 。 「 好き ? 」誰が。 何を? ……誰を?
嗚呼、そんなのは、彼女の行動を見れば解る。 彼女の表情を見れば―――解ってしまう。 男は彼女の質問に、はぐらかした答えを送った。 ……否本当に知らなかった。教えるほどには。 青年期、幾つか恋を囁かれることはあれど 。……男は滑稽にも、崇拝を知り恋慕を知らない 。]
怪我? 、 ……貴女は私を傷付けたくて傷付けてるわけでは、無いのでしょう。
[ ―――それでも彼女に優しさを分けてしまうのは、はたして。 男の中でぐるりと違和感が渦巻いた。 元来の男と掛け離れて、気持ち悪い気分だった。 違和感はぐるぐる、胸中を踊っている。
男の代わりに” 針 ”に刺さった彼女の手のひらには、紅が滲んでしまっただろうか。 ……例え滲まずとも、その手のひらに触れ離したことをしただろうけれど 。 ]*
(97) 2015/07/15(Wed) 21時頃
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[ ―――擦られる紅を視界の隅に押さえながら、男は彼女の声を聞いた。 秘密棟へは帰らない。 ……これは困った。して、どうしようかと考えあぐねる。 女医に部屋を移すことでも、提案しようか。と。 ]
医務室。 ……女医と、―――否
[ 彼女にしては珍しく――然程珍しくもないか? 女医への敵意も見せずに、…然しそれにしては怪我の様子を伺う素振りも見えないが――” 穏やか ”に見える風体で紡ぐのには、小首を傾げた。 首裏を擽る髪が、鬱陶しい。 前を揺らめく髪が、鬱陶しい。 …男は髪をはたと掃いた。 ]
私が行って邪魔をするのも ――
[ 悪いでしょう、と続けようとした刹那。飛び出した姿>>81に呆気に取られつつ、何かあったのだろうかと目をしぱしぱと瞬かせた。 名残風と、自身のそれとは違い、明るく煌く彼女の髪を見つめながら。
―――さあ、追って良いものか?
男はゆるりと踵を返した 。 胸に残る、違和感が気持ちが悪い。 ……男はそのまま、秘密棟へと。 ]**
(98) 2015/07/15(Wed) 21時頃
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―― → 秘密棟 ――
………目が痛いものですねえ…
[ 久方振りに来た其処の前。 咲き乱れる造花を男は冷えたそれで見下した 。 何を以ってそうも咲くのか。 何故どうして、咲けるのか。 本来持つべき根も無く―――そこまで本物に似て、咲ける意味は。
ただ「 造花 」と一蹴されたなら意味も無い戯言を、ただひたすら。 考えては不機嫌気に舌を打ち、庭へと靴先を踏み入れた 。――刹那に。 ]
………、?
[ 広い庭。その中でも一際目を引く桜の木のした。……――誰か>>86が居るではないか。 男は興味半分に、足を寄せた。寝入りでもしていれば脅かしてやろうとさえ ―――思えば ]
……、 …月見さん?
[ ―――― その影は、投げた声になにか返すことでも、しただろうか ]**
(99) 2015/07/15(Wed) 21時頃
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―第一棟・廊下―
[獣がなぜ迫害されるのか。結局それは、獣がマイノリティだからだと私は思っている。 例えば人数比が逆転すれば? 迫害されるのは人間の方だろう。“何の獣の特徴も持たない、奇妙な生き物”として。 そうなれば、今度はあの女医は、人間を獣に“なおす”研究でもするのだろうか]
……くだらないわ。
[その声は、我ながら吐き捨てるような響きだった。 届いた、クラリッサの謝罪の声が、ジリヤの焦った声が、頭から離れない。 きっともう止めるには間に合わない。きっと既にクラリッサは生死の狭間にいて、そこに自分が押しかけても、邪魔になるだけだと冷静に判断してしまう。 私は自分が異常だとは思っていない。私は、こういう生き物なのだと思っている。だから、“なおす”と称して命を危うくする薬を投与する行為は度し難いと思っているけれど、それでもあの人間は女医で、賽は投げられてしまった今、クラリッサの生存率を上げるためには必要だ。 頭ではそうわかっている。けれどその現場を見てしまったら、きっと私は冷静ではいられない。邪魔になるとわかっていながら、あの女医を詰るだろう。 だから、行けない]
(100) 2015/07/15(Wed) 21時半頃
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―――うるさい。
[ピシャリ、とジリヤに言い放つ。 ああ言えばこう言う。何もかもが気に入らない。 どうしてこの子は。 人の神経を逆撫でさせるようなことばかり]
いい加減にして。 本当に邪魔ばかりするなら出ていきなさい。
[震える唇で、やっとのことで言葉を漏らす。 冷静になれ。お前は医者だろう。 クラリッサの腕を握ると、脈を測った]
……っ。
[アマルテアの頬には汗が伝っている**]
(101) 2015/07/15(Wed) 21時半頃
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[嗚呼、けれど本当に苛々する。 私に言わせてみれば、健康なクラリッサに命を危うくする薬を投与する行為は、治療ではない。医療行為ではない。 それは……実験というのだ。 そして、実験をする人間のことを、医者だと私は思わない。 そういう人間は、医者ではなく]
マッドサイエンティストと言うのだわ。
[小さな声で毒づいた。 女医の葛藤を知らない獣の私は、何の迷いもなくそう断罪をするのだ]
(102) 2015/07/15(Wed) 22時頃
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[落ちた意識の中に、不意に響いた声。
ジリヤのものでも、アマルテアのものでもなく、聞いたことの無いような男の人の声。
"俺は、人して死ねるか"
閉ざされた世界の中で何度も、何度もそれは響く。
わたし、は....]
(103) 2015/07/15(Wed) 22時頃
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―第一棟・食堂―
[いつもなら、とうに眠っている時間で。けれどこんな状況で眠れるわけもなく。 一度自室に戻り、クローゼットから取り出した施設の地図をポケットにつっこむと、私は食堂で珈琲を受け取った。いつものように背もたれを横向けにして、椅子に座る。 眠れない。けれど医療室に行くこともできない。今の私には、なにもできない]
……何をやっているのかしら、私。
[砂糖もミルクも入れず、苦い珈琲を啜る。 暖炉の秘密のことも、地図を手に入れたことも、チェビイを警戒して、そして誰かが暴走することを恐れて、言えなかった。 けれど、もっと早く言っていれば。人間にならずとも外の世界へ行ける可能性を示唆していれば。こんなことにはならなかったかもしれない]
私は、愚かだわ。
[無力感に打ちのめされて、テーブルに突っ伏した]
(104) 2015/07/15(Wed) 22時頃
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[
私は、死にたくなんかない! 生きて外に出て、自由を知りたい!
]
(105) 2015/07/15(Wed) 22時頃
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…『治療』なら邪魔しねぇよ。 せめて一度くらい、女医らしいところ、アタシに見せろ
[ぎり、と髪がかすった傷跡をえぐって、自制する。黙れ、黙るんだ。アイツの言う通り]
お前だって、クラリッサを殺したい訳じゃ、ないだろうがッ…!
[それ以降は、傷を深くえぐって黙る。血が床に滴る]
(106) 2015/07/15(Wed) 22時頃
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落胤 明之進は、メモを貼った。
2015/07/15(Wed) 22時半頃
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[……月見さんには、嘘を吐いたことになってしまう、のかな。
そんなことを思いながら、私は目を開けて。 そこには、人の手の繋がった腕が見える....はずだったのに]
あ、れ……?
[確かに開いた視界に広がるのは、一切の光も持たない闇。
そして、辺りを探るように動かす"人の"手は一切の感覚を与えず、私にはその手がいま、どうなっているのかも分からない。
私の行動には、二人もすぐに気付いただろう]
(107) 2015/07/15(Wed) 22時半頃
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……殺したいわけ、ないじゃない。
[掠れた声で、アマルテアは絞り出した。 ジリヤの言葉>>106に、苦虫を噛み潰したような顔になる。 そのとき、クラリッサが呻き声のようなものを漏らした>>107]
目を覚ましたのね。 クラリッサ、私の声が聞こえるかしら。
[必死になって呼びかける。 彼女の異変に、アマルテアは気付き始める。 様子が、どうもおかしい]
もしかして―――見えていないの?
[嘘であってほしい、という気持ちを込めながら。 クラリッサにそう問いかけるのだ*]
(108) 2015/07/15(Wed) 22時半頃
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― 第一図書室 ―
[投げかけられた言葉>>93に、一つ、立ち止まる。]
( ――違う )
(何も知らずにいけば、きっと、きっと お前達は捕まえられてしまうから ――その後のことが想像に難くないから
……だから、)
[彼は未練がましく口を開きかけて、それから。 ――ふ、と笑いを漏らした。]
(109) 2015/07/15(Wed) 22時半頃
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ははっ。
まさか、愚直に上に行けば 逃げられると思っていたのか。
お前さんは馬鹿だねえ。
もう少し……”工夫”がいるだろう? ”鳥頭”じゃあないなら さ。
[くるり、僅かに振り返った瞳は嘲笑の色を灯した。 袂に入れた左手を抜き出し、 とんとん、とこめかみを叩くと、 瑠璃色をちらりと一瞥した後、音も無く歩き去る。
後に何を言われたとて、きっと振り返らずに。*]
(110) 2015/07/15(Wed) 22時半頃
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お、おい、クラリッサ!どうした、聞こえるか…⁉︎
[駆け寄って、探る手を握ろうとして問いかける。あの猫の手が、人になっている。…だが、そんな事はどうでもいい。猿でも獣でも、クラリッサが、無事ならば、それで]
(111) 2015/07/15(Wed) 22時半頃
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あ、先生……。
[何度開閉させても、視界の闇が取り払われることはなく。 見えなくなっているのは、避けようのない事実のようだった]
そう、みたいです。 そうだ、手はどうなってますか。見えないから、分からなくて。 ちゃんと、直ってますか。
[そう言って振った手には、空気の感触すら伝わらないけれど。でも、その形さえヒトの形をしているのなら。
外に、出れる]
(112) 2015/07/15(Wed) 23時頃
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ジリヤ?
[横から、聞きなれた声がする。手を握られたことには気付かなくとも、その存在には気づくことが出来る]
ねえ、私の手、直ってる?
(113) 2015/07/15(Wed) 23時頃
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― → ―
[ざらら、と薄が鳴る音がする。
黒い闇夜に女が一人、 蛇の鱗持ちたる女が一人。 黒髪を靡かせ、蒼い着物を揺らし 其処に、立っている。
( ……、)
彼は静かに、女の名を呼んだ。
( ……、私はどうすればいい。) ( 彼らを逃がすには、)
(114) 2015/07/15(Wed) 23時頃
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[ 女は笑う。 三日月のような笑みをうかべる。 そうして、漆のごとき掌を差し伸べる。 手には、銀に光る 小刀が一つ。 彼は震える手をそれに伸ばしかけて――
――罪を唆す蛇の幻影は、 月影が宵の空に滲むと共に、]
『……、 …月見さん?』
―→現実 第二棟 庭園 ―
[びくっ、と体を震わせて、目を醒ます。]
――――っ!
(115) 2015/07/15(Wed) 23時頃
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治療は成功したのよ。クラリッサ。 あなたの手、もうすっかりヒトのものだわ。
[クラリッサの頭を優しく撫でた。 しかし。その代償に失ったものは、あまりにも大きくて]
……ちょっと、失礼するわね。 クラリッサ、我慢してちょうだい。
[白衣の胸元からペンライトを取り出して、点灯する。 それをクラリッサの目の近くにかざした。 瞳孔の収縮をつぶさに観察すると、ため息ひとつ]
副作用としか考えられない、か。
[固い声で呟いた]
(116) 2015/07/15(Wed) 23時頃
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