112 燐火硝子に人狼の影.
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[静かに寝台を降りれば眠る姿へと毛布を掛け直しただろう。 傷を隠さぬその姿に、また少し、目を伏せる。 もし。『居ないはずの物が見える』話をしたならば。 ――彼も、私を拒絶するのだろうか。]
…嫌いにならないで。
[小さく呟けば、頭を振って。そのまま部屋を後にする。 先程もう一人の方の彼が歩いていたのは、調理場の近く辺りだったろうか。裸足のままで廊下を早足で駆ける。 近付くにつれて、やがて漂う赤く錆びた様な匂い。 …そして、廊下を彩る赤い赤い、導>>124があった。]
…入るね。フランシスカ、さん。
[不思議と心は静かだった。少し開いた扉へ手を掛け、そして。]
(27) 2013/02/07(Thu) 22時頃
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[赤く染まる部屋の中を渡った先。 寝台に眠る彼女の表情はきっと、穏やかだったろう。 被せられたシーツは捲らない。 私も嫌だし、彼女も見られて嬉しい物ではないだろうから。 綺麗なままの腕を取れば、生乾きの血が垂れてきたけれど。 気にせずに、その指先を握る。 グラス越しに触れた時と同じ様で、違う。
冷たい指先だった。]
(28) 2013/02/07(Thu) 22時頃
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[彼の傷痕。廊下を立ち去るあの影。 …真実は見えてきた。けれども、それでも。]
……私は誰も、選べない。
[きっともう、終わりは近い。そんな予感がした。 私も。殺されるのだろう。 ……それで、良いと思った。]
(29) 2013/02/07(Thu) 22時頃
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メアリーは、フランシスカの横に座り込んでいる。*
2013/02/07(Thu) 22時頃
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……
[個室の扉は開け放したまま ベッドの上に腰掛けてぼうやりと窓の外を眺めている]
(30) 2013/02/07(Thu) 22時半頃
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読書家 ケイトは、メモを貼った。
2013/02/07(Thu) 22時半頃
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――翌朝までのこと――
[あんな申し出をしてしまったのだ。恥ずかしくない訳がない。 実際、メアリー>>25の動揺、困惑するような様は伏した目の内にも見えていて――。 けれど彼女は、笑みと共に、この申し出を受け入れた。]
うん。
傍に、居て、くれ。
[己の手を取る少女の手は柔らかく、小さく。その温もりが直に伝わる。 ―――あぁ。嬉しい。 その時確かに、そう、感じた。
眠る前に、男は黒い上着を脱ぐ。それを敷き布団代わりに。 そして、何も言わずに、左の肩口の牙痕をメアリーに示した。 己が何を言わんとしているか、彼女にも恐らく伝わったのだろう。]
(31) 2013/02/07(Thu) 22時半頃
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[この宵は。 古い傷跡の齎す苦しさが、和らいで感じられたものだった。]
(32) 2013/02/07(Thu) 22時半頃
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――翌朝・メアリーの客室――
[夢か現か、といったところで、ふと身体に何かが掛かる>>27。 ぼんやりと、少女の声が、聞こえてくる。]
―――――… めあり ぃ 、
[『嫌いにならないで』。 そう、聞こえた気がした。 ぱちりと目を開け、ゆっくりと身体を起こせば、其処にメアリーの姿はとうに無い。]
メアリー?
(33) 2013/02/07(Thu) 22時半頃
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シーシャは、辺りを見回しながら、脳裏に繰り返されるは「ふたり」のあかいこえ。
2013/02/07(Thu) 22時半頃
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[広間の椅子に座り、男は黒檀の杖を手遊ぶ。 仕込み剣は飽くまで護身用のお守り。 使う心算なくとも贈り主の代わりに傍に置く]
人狼を殺さねば――… 人が喰らい尽くされる。
[男の声に恐怖の色はない。 杖の継ぎ目をそろと指の腹でなぞり 思案げに翡翠を伏せた]
(34) 2013/02/07(Thu) 23時頃
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[重厚な、内と外を隔てる扉。 この扉はいつだって外側から開かれる。 内側から開かれる時があるなら、それは――
一定の距離から近寄る事なく、その場を離れる。 広間を通りかかり、ルーカスの姿>>34を見つければ、 ゆるりと微笑みを向けただろう。
足はそのまま、廊下の奥へ。]
(35) 2013/02/07(Thu) 23時頃
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[何時か、ルーカス――と名乗る人狼に問われたことがある。 『私達に喰われたくない者がいるなら』、と。 男はその時、一人の少女の名を挙げた。 ふたりの人狼は、「少なくともその時は」この望みを聞いてくれていた。
問いに対し、己自身の名を先ず挙げなかったその男は。 この時に、ふっと意識することとなった。 その人間の少女の存在が、己の心の内を占めはじめていたのだと。]
(36) 2013/02/07(Thu) 23時頃
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[それでも、人狼たちとの決別も出来ていない。 彼らのこえを聞くうちに、狼の傷跡故の、獣のこえ故の呪縛だけでなく。 ――絆されてしまっても、居たのだから。]
…………は、
[人でありながら人でない。どっちつかずの、苦しさ。]
(37) 2013/02/07(Thu) 23時頃
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[人の命を奪い生きる事を決めた幼いあの日。 あの時から、同時に奪われる覚悟もしていた。
生きようとする強い意志もつ獣なれど 同じだけの思いには敵わぬやもしれぬ]
(38) 2013/02/07(Thu) 23時頃
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[物語の結末はどうなったのか。 思うにそれはきっと幸せな形とは言えない物ではないか。 そう考えるには幾つかの理由があった。
まず一つ。 主要な人物達が先を見据えてはいない事だ。 何もそれが正解だとまでは言わない。
しかし無鉄砲に突き進み バランスを取ることも知らず 欲しいものだけを貪っていれば何時かは破綻する。
物事は案外単純であるのに、 阿呆ほど、難しいと言い余計な理屈をこねくり回す。 その典型が微かに見え隠れしている。]
(39) 2013/02/07(Thu) 23時半頃
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ホレーショーは、本の頁を捲った。
2013/02/07(Thu) 23時半頃
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殺させなんか、しない。
同じにも、させない。
[それは、今「あかいこえ」の方で、告げた意志。 人としての声でも、また、紡ぐ。]
……馬鹿。 お前を嫌いになんて、なれねェ、よ、
[男は上着を羽織り、ひとり部屋を出る。 途中、自警団の男と出くわす。テッドの処刑が済んだことと、フランシスカが喰われたことを聞くこととなる。 ――そうか、と。ただ一言だけを返し、廊下の先へ。]
(40) 2013/02/07(Thu) 23時半頃
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[動かないフランシスカの指先をもう一度、なぞる様に撫でる。 思い返すのはたった数日間の出来事だけれど。 怖かったけれども、それ以上に。 久しぶりに、人並みに扱って貰えた事が。]
……私にとっては、人よりも。 ほんの少しの気遣いだったとしても。 人外の方が、優しかったから。 それが嘘だったとしても、気紛れでも。良いんです。
[だって、]
(41) 2013/02/07(Thu) 23時半頃
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私は嬉しかったから。 優しい人達が、生きてください。それで、良いです。
[本当は、もう少し一緒に居れたら良いなって思うけれど。 その望みを口にすることは、無い。*]
(42) 2013/02/07(Thu) 23時半頃
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[二つ目は主人公を取り巻く環境だ。 一見、成長し、幸せになる為に必要なプロセスであり 大事な要素のように描かれているが。
何の事は無い。 結局はぬるま湯に浸かっているだけの馴れ合いであり 時にはそれを脱却する必要があるのではないか。
冷たい風を知らぬ子供が いざその環境に放り出された時の酷さは なかなか筆舌につくしがたいものがある。
それに気づくものが果たしていたかどうか という一点が、不安要素の一つでもあった。]
(43) 2013/02/07(Thu) 23時半頃
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“害を及ぼすようなら、殺す。 …――ンだろ”
[少女の人狼に、返すこえ。]
“あんた、も ………全部喰らう、心算、で”
[うつくしい男の人狼に、返すこえ。]
“……、………させねェ、よ。あの子、だけ、は”
[揺らぐ。心は、揺らぐ。それでも―――…。 あかいこえ紡ぐ人間はやがて、あかい痕>>3:124を見つけ出す。 立ち薫る鉄錆の花。開いた扉の、その奥を、覗き込む。]
(44) 2013/02/07(Thu) 23時半頃
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――空き部屋――
[中に入れば、嫌悪を齎す赤い生臭い香り。 けれどその部屋に入るを忌避しなかったのは、少女の姿を目の当たりにしたから。 その声が、廊下にも微かに届き聞こえていたから。]
……其処に居たンかよ、メアリー。
[シーツで覆われたものに触れる、その少女>>28>>29の背に、声を一つ。 ここはテッドの部屋ではないから、眠る死者が誰であるかは察せられる。]
(45) 2013/02/07(Thu) 23時半頃
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―広間―
[遠い昔、同じになることを望んだ存在。 彼の返した声に、薄い笑みを浮かべる]
ばか、か。 そうかもしれないな。
[場所を同じくしない彼には聞こえぬ人の声で呟くは 否定ではなく肯定のそれだった]
(46) 2013/02/07(Thu) 23時半頃
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[先に光を見つけられない要素は数えればきりがない。 酔うのは簡単で、幾らでも貪れる。 しかし、そればかりを見ていてはつまらない。 悲観し、結論を諦めて投げ出すよりは、 少しでも解釈を変えて楽しむのが好いだろう。
そういうメッセージを得続けられる本はそう多く無い。 だからこそ人に例えられたりもするのだろう。
なんだかんだ言っても矢張り何処かで 幸せな結末を求めていたりもする。 それがホレーショーという男だった。
予定調和ならば予定調和でいい。 要は楽しめれば、それでいいじゃないか。 無き事を、楽しく感じ過ごすこと。
それも一つの結末と*言えよう*。]
(47) 2013/02/08(Fri) 00時頃
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ホレーショーは、のんびりと欠伸した。
2013/02/08(Fri) 00時頃
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[掛けられる声>>45に振り向きはしない。 振り向かなくても誰かなんてわかっているから。]
…シーシャさんってば。どうして来ちゃうんですか。 もう、決めてるんです。良いんです。
[だから、揺らがせないで欲しいと。苦笑する。 これじゃあ折角、寝ている隙に出てきたのに意味がない。]
(48) 2013/02/08(Fri) 00時頃
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…………馬鹿、
[さっき人ならぬこえでうつくしい獣に向けた言。 言葉のかたち同じ声を、今ここで少女に向ける。 その声>>41>>42が、聞こえてしまっていた、から。 そして今、顔も向けずに言い放つその言葉が。]
急に居なくなっちまったから、だよ。 人を ……惚れさせといて、何抜かすンだよ。何を。
[左手は口許の歯にではなく、銀のクロスの方に在る。 その右手は、振り向かぬ少女の肩へと、伸びる。]
(49) 2013/02/08(Fri) 00時頃
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[薄いくちびるに刻まれた紅い痕。 ちろと赤く濡れた舌がそれをなぞる。 思い出すのは、甘美な血の味。 血の匂いに酔い高揚するあの刹那。 生きているのだと強く感じられる時間]
罪深い化け物、か。
[絵本を共に読んだ妹が漏らした言葉。 人狼がいなくなりみんな幸せになる。 めでたしめでたし。 よかったね。 無邪気に笑う妹に兄は「そうだね」と微笑んだ]
(50) 2013/02/08(Fri) 00時頃
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[「惚れた」に近いは、人外なるものの方にもあった。 かれらは確かに気紛れで――何処か優しくもあったのだと思う。 けれどその緩さに浸ったまま、あの少女の傍に居て。 ――今朝になって突きつけられた、その少女の死の可能性。]
嬉し「かった」、って、何、だよ。 まるで、死にに行くようなモンじゃ、ねェ、か。
[あぁ、何時か誰かにも、似たような言を吐いていたのだったか。 その時は、見殺しにしてしまった、のだけれど。]
つーか、言い忘れてたけど、よ。
(51) 2013/02/08(Fri) 00時頃
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別に、優しく無くたって。 ………生きてて、欲しいンだよ。メアリー。
(52) 2013/02/08(Fri) 00時頃
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[散歩でもするかのように廊下を歩く。 やがて辿り着いた、まだ新しい血の匂いを漂わせる部屋。
その前で足を止め。
中から漏れ聞こえる声を聞いていただろう。**]
(53) 2013/02/08(Fri) 00時頃
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[人狼がいなくなれば妹は喜ぶだろうか。 兄がその人狼だと知れば哀しむだろうか。 人である妹の心は獣である兄には知れない。
「人狼が現れたらグロリアはどうする?」
絵本を読んだ後、尋ねたことがある。 彼女の答えは絵本の中の村人たちが選んだのと同じ。 たたかい、人狼を退治するのだと言った。
『おとうさまやおかあさま。 おにいさまも、わたしがまもってあげるの』
利発な妹はそんなことをいって胸をはる。 退治するといった存在を前に、守る、と。 両立せぬ言葉に、兄は「ありがとう」と妹の頭を撫でた]
(54) 2013/02/08(Fri) 00時半頃
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[馬鹿だなんて、知っている。 だから、それに返す答えは無い。けれど。 生きてて欲しい、その一言に。 漸く彼女の手をゆっくりと降ろして。振り向く。]
…秘密があるんです。 知ったら、皆離れて行っちゃうの。不気味って。 寂しいの、嫌いです。 だから、貴方に知られる前に…死んでしまいたい。
[けれど、もしも。と付け加えて。] どんな私でも、好きでいてくれますか。 ずっと一緒に居てくれますか。 …約束、してくれますか。
[視線は合わせず俯いたまま。 目尻からまた一粒、枯れた筈の何かが零れ落ちた]
(55) 2013/02/08(Fri) 00時半頃
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読書家 ケイトは、メモを貼った。
2013/02/08(Fri) 00時半頃
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[共存など出来はしない。 捕食するものと捕食されるもの。 一時ならば仮初の関係も可能であろうが 長くは続かない。 何れ破綻するのは見えている]
二つに一つ。
[己の心は既に決まっていた]
(56) 2013/02/08(Fri) 00時半頃
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