157 南十字四丁目
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―数ヶ月後・南十字村―
[定期便が出ている日、久しぶりに南十字村に降り立った。 あの日、四丁目にいた人物で、クリスから消息がわかったのは数人だった。 窈の遺体は見つからなかったし、麻由実は遺体として発見された。 向こうで死んだのかどうかもよくわからないまま。 今でもたまに夢に見る]
春乃、いくよ。
[緩やかに復興し始めた南十字村。 その様子は、幼ないながらもわかったのだろう。 診療所に向かうタクシーの中、建て直しの真っ最中の学校が見えた時には、はしゃぐような声が聞こえた]
クリス先生。 おじゃまします。
[仮説の診療所。 いつものように座って漫画を読んでいる姿が見えた]
(33) しふぉん 2013/12/28(Sat) 20時半頃
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[春乃のカウンセリングが終わるまで暫し。 ぼうっと窓の外を眺める。 新しい建物が立っているところもあれば、まだ瓦礫が残っているところも結構ある。 全員が戻れるようになるには、どのくらいかかるのだろう。
どのくらい話していたのか、扉が空いて、明るい顔の春乃がでてきた。 連れてきて良かったなぁと思いながら、腰を上げる]
じゃあ、今度先生がお話するから、ちょっと待っててね。
[そんなに時間はかけられない。 ことばを選ぶように、しばし迷って。]
相談っていうほどでも、ないんですけどね。
(34) しふぉん 2013/12/28(Sat) 20時半頃
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[歌声混じりの足取りは遅く、旅館につく頃にはひどく世界は静かだった。 南十字四丁目。閉じた世界は、輝く星ばかりが命を主張している。 どこかで、車のエンジン音がした。 誰か出ていったのだろうか、いや。 今のこの南十字村に、敢えて車で向かうような場所など、あまりない。 ましてこの時間では――誰かが覚悟を決めた、という方が、まだ信憑性のあるものだった。]
は、――そっ、か。
[旅館はほとんど、人気もなかった。 あまりあちらこちらを歩き回らずとも、わかる。 人が何かをしているような空気はなかった。]
(35) mmsk 2013/12/28(Sat) 20時半頃
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[もしも。 もしもみんなが、もう道を選べているのなら。残るも、向かうも、選択できたのなら。 殺人鬼めいた使命感など、何の役にも立たない。 板の間にへたりと座り込んで、胸元に忍ばせたナイフを見た。
次は、自分の番だった。]
約束、したもんね。
[心中しよう。そんな口約束を、守ろうとしている。 自分が死にたいのか、向こうに行きたいのか、行動の基準はそんなところにはなかった。 窈が待っているのだと、妄信に近くそう思って。]
(36) mmsk 2013/12/28(Sat) 20時半頃
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でも、こんなんじゃ、こんなんじゃだめ、もっと。
[このナイフでは、自分は殺せない。 誰かをどうこうするのにだって、全身の体重を勢いよく込めなければならない。 それを自分に対して行うなんて、どだい無理な話だ。 ふらり、と旅館を彷徨う。もっと大きな刃が、確実にあるはずだった。 ここは旅館で、人が寝泊まりして、そして食を満たす場所なのだから。]
(37) mmsk 2013/12/28(Sat) 20時半頃
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[厨房を、暗がりの中で見つける。 幾本もの包丁が、そこにはある。 腐っても旅館であるここは、日本刀めいた申し分ない刃物の宝庫といえた。
一際刃渡りの長いのを、手にとった。]
――悪いお姉ちゃん、だなぁ、
[いざとなれば、怖かった。 手が震えて、刺せそうにないのは、まだ無意識に疑っていることの証拠なのだろうか。 ゆるりと首を振って、凶器に決めた包丁を、流し台の戸に挟んで固定した。 目をつぶる。何度も深呼吸をする。一歩、二歩、下がる。]
(38) mmsk 2013/12/28(Sat) 20時半頃
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[そのまま、流し台に向かって体当たりをかました。]
(39) mmsk 2013/12/28(Sat) 20時半頃
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――南十字村――
[意識を失い、項垂れていたはずの女の身体。 傷つき心肺の弱っていた、生存は絶望的なそれが、剥げたマニキュアの痛々しい爪を微かに動かして、かつんと担架代わりの固い机を叩いたのは、いつ頃のことだったろうか。]
(40) mmsk 2013/12/28(Sat) 20時半頃
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私、地震が起こった記憶がないんです。 揺れも何も感じなくって。 いつの間にか、ほんの数人の女性だけを残して、他の村人全員が神隠しにあったような。 夢にしては、現実的なことがあったんですよ。
[今でも、どちらなのかわからない。 本当だったのか、ただ夢を見ていたのか。 クリスに大方説明し終えても、よくわからない。
ただ、触れた唇の温もりだけは、はっきりと覚えていた]
あの村……、南十字四丁目。 いまでも、たまに夢に見るのです。 けれど、なんどみても、あの時ほど鮮明ではなくて。
なんだったのでしょうね、あれは。
[ぽつんぽつんと語り終える]
(41) しふぉん 2013/12/28(Sat) 20時半頃
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[部屋にクリス先生を案内して、 狭いところだけど…と席を勧めた]
[志乃の話>>@9を聞けば、少し驚いたのち]
いますぐにでも、会いに行きたいくらいです
[笑って答えた]
(42) RainyTrain 2013/12/28(Sat) 21時頃
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− →某病院 −
[週末が待ち遠しくて、 何度も時計を見て過ごした数日間]
[そして、今日。 クリスの案内で病院へ向かう]
[途中で 花屋に寄らせてもらって。 買い求めたのは小さなブーケ]
志乃ちゃん、元気かな?
[そんなことを話ながら、 少し急いたように歩いた]
(43) RainyTrain 2013/12/28(Sat) 21時頃
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――某病院・個室――
[ベッドに座って本を読んでいる。 白い布団に隠された足元は、人体として不自然に凹凸がなく、 災害の後遺症は根深く残る。]
……
[読んでいた本を閉じると、退屈だとばかりに窓の外を見て。 もう見飽きた景色、けれど少しずつ季節の変わる外の様相。 南日本の雪解けの時期は早い。 冬と春の中間で外はまだ寒いが、 春になっても同じように景色を眺めるのだろうかと思うと 少しだけ億劫な気持ちになった。]
(44) bloody 2013/12/28(Sat) 21時頃
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− 某病院 − [プレートから志乃の名前を確認すると、 ノックするために手を上げる。 …が、少し躊躇って深呼吸]
(会ったら、何を話そう…)
[地震の後、めまぐるしく動いていたせいで 志乃と会ったのが 随分 昔のような気がしていた]
「お見舞いですか?」
[しばらく時間が経っていたのだろう。 怪訝な顔の看護師に声をかけられ]
あっ、はい。
[勢いでノックした。 返事はあるか少し待って、どちらにせよ ドアの隙間から部屋に滑り込んだ]
(45) RainyTrain 2013/12/28(Sat) 21時頃
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[響くノックの音に、瞬いて。 診察の時間には早いな、と思いながら どうぞ。と小さく促した。
開く扉にゆっくりと視線を移して その人物を視認した瞬間、手にしていた本を、落とす。]
…… 怜歌
[一瞬言葉を失って。 何か言いたいのだけれど 唇が動くだけで上手く言葉にならない。 やがてぎこちなく笑うと、彼女を手招いて、 ベッドのそばの椅子に促した。]
……来てくれた、のね。うれしい――
(46) bloody 2013/12/28(Sat) 21時半頃
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[志乃の手に招かれて>>46 ベッドの傍に置かれていた椅子に腰掛ける]
志乃ちゃん、会いたかったよ
[何を話せばいいか…なんて悩んでいたのに、 その言葉は するりと出てきた]
そうそう。 これね、途中で買ってきたの。
[橙色のブーケを差し出す]
オレンジは 元気が出る色なんだよ。
[志乃ちゃんに元気だしてほしいから…と 付け加えて 笑う]
(47) RainyTrain 2013/12/28(Sat) 22時頃
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神様が――、そう、かもしれませんね。
[あれだけの被害の中、無傷で生還した。 直後に気を失っていただろうにかかわらず。 もらったお茶を飲みながら、聞こえたクリスの問いに一瞬動きを止めた。 ぱちりと瞬きを、ひとつ]
戻りたい……、とは、違いますね。 私は…、こちら側の世界に戻ってきたいと思って、向こうで、殺してもらったのです。 ただ、心残りはあるかもしれません。 殺してもらった時に、一緒に死んでくれと言えなかったことが。 共に戻ろうと言えなかったことが。
[何度か言おうと思った。 けれども、確実に戻れるとも限らない上に。 麻由実が、あまり帰りたくないように、みえてしまったから]
(48) しふぉん 2013/12/28(Sat) 22時頃
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私の勝手で、戻ってこれるあてもないまま、彼女をも殺すわけにはいかなかったので。 現に、彼女は遺体で見つかっていますから……、 もし共に死んでいたら遺体ではなかったかもと思うと、どこかやりきれなくて。
……、でも、彼女があのままで過ごしたいと思っていたのなら……、 これはこれで良かったのかな、と。
[こうして他の人に、四丁目のことを話したのは初めてだった。 言葉にすると、思いのほかおちついてきた。 麻由実の遺体は、穏やかそうな顔だったときいた。 自分が悔やんでも、それが彼女の選択だったのならば。]
きいていただいて、ありがとうございました。
(49) しふぉん 2013/12/28(Sat) 22時頃
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[空気が穏やかになる。 怜歌という存在がいるだけで、病室が暖かく感じた。]
私も、会いたかった。
[照れくさそうにはにかんで、傍に座る怜歌を見る。 彼女が差し出すブーケ。手を伸ばして受け取った]
ありがとう……とても、綺麗ね。 元気――…うん。
[少しだけ、己の足元を見やっては、軽く瞑目。 怜歌は会いに来てくれた。 あれは夢じゃない――あの悲しい別れは、別れじゃなかった。]
……元気、出さなきゃね。 怜歌がそう願ってくれるなら。
(50) bloody 2013/12/28(Sat) 22時頃
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[ブーケをそっと置くと、ベッドで少しだけ身動ぎ]
……怜歌。 私ね、あの震災で足を……失ったの。 片側の目も、ね。
酷い状態なのに、それでも神様はまだ生きろっていうの。 残酷だわ――……だけど
……わた、し
[そっと怜歌に手を伸ばし、握って欲しいと希うように首を傾げて]
前みたいにしゃんと立つこともできなくなった。 そんな私、だけど ……それでも。
怜歌を、想っても、いいですか。
(51) bloody 2013/12/28(Sat) 22時頃
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[足があるであろう場所を見て、視線を戻す]
……。
[伸ばされた手を 左手で包むように握り、 右手は眼帯をした顔へ]
…………。
[頬の感触を指先で弄び、 そのまま するりと後頭部へ手を伸ばすと 口づけようと身を乗り出した]
志乃ちゃんの全てを、愛してるよ
(52) RainyTrain 2013/12/28(Sat) 22時半頃
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――…っ
[優しいことば。 いとおしいことば。 じんわりと目頭が熱くなる。]
……私も、愛してる
[そっと怜歌の頬に手を添えて、くちづけを受け入れる。 触れる――くちびるは、 いつかの別れのキスとは違う、 ぬくもり。]
(53) bloody 2013/12/28(Sat) 22時半頃
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はい……、ありがとうございます。
[くしゃりと撫でられる髪。 差し出された飴玉は、まるで子供にするみたいに。 そういえば、あの時にも飴玉をもらったっけ。 普段見るものよりも大きな飴玉は、どこか懐かしくて。 ここにきた子供達が安心するのもわかるような。]
おまたせ、春乃。 いい子で待ってたね。
[片方のほっぺたに、大きな飴玉が膨らんでいた。 それで静かだったのだろうか。 もとから騒ぐ子ではないけれど。
呼んでもらったタクシーに乗りこみ、春乃がばいばい、と手を降る傍ら、深く礼をする。 車中、春乃と話しながら。 次は一人、ゆっくりと墓参りにこよう、と思った*]
(54) しふぉん 2013/12/28(Sat) 22時半頃
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[同じ気持ちを聞いて>>53 頬が あたたかくなるのが わかった]
[南十字四丁目。 あの夢では、自分から口づけるなんて 恥ずかしくて出来なかった]
[でも、今は。出来ると思った]
(いいえ、したかったの)
志乃ちゃんが好きだから。
[彼女の髪を梳いて、そっと抱きしめる]
(55) RainyTrain 2013/12/28(Sat) 22時半頃
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[好き、という言葉が 幸せで、堪らなく嬉しくて。 怜歌を優しく抱き返し、 軽く頬ずりをした。]
ありがとう……ありがとね、本当に。 私、好きだなんて言ってくれる人に 出会えるなんて思っていなかった。
逆にね、誰かをこんなに好きになることも ないと思っていたの。
……でも今は怜歌が愛しくて、しあわせで。
(56) bloody 2013/12/28(Sat) 23時頃
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―――――ね、怜歌
[南十字四丁目で囁いた言葉は形を変えて、 やわらかな音で、彼女に告げる]
二人で、幸せになろう。 私、怜歌を支えたいし 支えて欲しい。
私がたくさん足を引っ張ると思うけれど それでもよかったら
――恋人になってください。
(57) bloody 2013/12/28(Sat) 23時頃
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[志乃の告白>>56>>57に]
(夢から覚めて。 志乃ちゃんを残してきたことが心配で。 でも、きっとまた会えると思ったから。 その時は 私が支えようって決めたんだ)
(だからね、)
(嫌…なんて、言えるはずがないじゃない)
[軽く息を吸って、囁いた]
…うん、私は志乃ちゃんの恋人だよ。
(58) RainyTrain 2013/12/28(Sat) 23時頃
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……うん。
[照れくさそうに笑う。 そっと手を取って、小指を絡ませた。 約束、と。 ずっと傍にいると、いうように。]
離さないからね。 嫌って言っても、そばにいてあげる。
[笑みを含ませて少し悪戯めかす。]
学校あるんでしょう? …でも、退院の時には、必ず来てね。
[それまで頑張るから、と微笑んだ。 怜歌のためなら頑張れる、リハビリも幾らでもすると決意する。後にクリスの話も聞けば、その意識は余計に強くなるだろう>>@4]
(59) bloody 2013/12/28(Sat) 23時半頃
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[指切りで約束を交わし>>59 ニコリと微笑むと、続けられた言葉に]
それ、私が嬉しいことだよ
[なんて 茶化した]
大学が早く終わったら来たいなぁ。 あ、でも面会時間があるんだっけ。 あとで看護師さんに聞いてみるね。
[頭の中でスケジュール帳を開いて確かめて]
志乃ちゃんが退院できるの、待ってるね。 その日が来たら、一緒に帰ろう。
[とびっきりの笑顔を見せた]
(60) RainyTrain 2013/12/28(Sat) 23時半頃
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ふふ。 ずっと一緒ね。ずっとずっと。
[現実はそうはいかないけれど、将来は。 いつかは一緒に暮らせたらいいと、そう思う。]
――怜歌、
[面会時間を考えてくれることも、 退院の日に来てくれることも、 全部うれしい。]
ありがとう。 ……貴女を、ずっと愛してるわ。
[一度南十字四丁目で消えた命が、 再び此処にある奇跡。 ならば最期まで、最期まで――怜歌を愛したいと願う**]
(61) bloody 2013/12/29(Sun) 00時頃
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(そして、たくさんの "愛してる" を紡ごう)
(大切な 志乃ちゃんに)**
(62) RainyTrain 2013/12/29(Sun) 00時頃
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