17 吸血鬼の城
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[宴の終焉が告げられる少し前――。 私はサイモンが閉じ込められていた部屋に行きました。 影に片されたサイモンの遺灰を暖炉から掻き集め 小さな革袋にそれを詰め込んだのです。 次に向かったのは書庫でした。 同じようにメアリーの遺灰をもう一つの袋に詰めて 大事に懐へと仕舞いこみました]
――…貴女たちは此処に留まってはいけない。 貴女に似合う場所は明るい場所だから……
[私は二人に語り掛けるように呟くのです。 たとえ二人に届かなくとも たとえそれが私の自己満足だったとしても 二人をこの場所から解放する事が―― 私が為すべき最後の役目と思っていたのです]
(65) helmut 2010/06/26(Sat) 22時半頃
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[私はローブを目深に羽織り外を目指します。 城門前へと戻る頃にはトーニャの姿は既に無く 散らされた白薔薇の姿だけがありました。 城主の寵愛を受けた白薔薇の見詰める先は城の外。 彼もやがて灰になるのでしょうか。 それとも城主に弔われるのでしょうか。 以前よりも曖昧な存在となってしまった私には 知る由もありません。
懐かしい天上の青に私の胸は痛みます。 そっと近付き膝を折って彼の目蓋を閉じさせ 私はいつか聞いた聖句を彼の為に紡ぎます。 魔性である私の声では、神に届かぬかもしれません。 それでもそうせずにはいられなかったのは 共に過ごした十年が大事だったからでしょうか]
貴方の魂が――… いつか天上へと還れますように。
[私は願いを口にして彼の傍から離れます]
(66) helmut 2010/06/26(Sat) 22時半頃
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[城門は開かれておりました。 誰かが開いたのか自然とそうなったのか 私にはわかりませんでした。 一度だけ私は城へと視線を向けます]
――…貴方は逢えた? 貴方は――…言葉を交わす事ができた?
[聞こえていた聲の中にドナルドの聲は無かったから 彼がどうなったのかはわかりませんが せめて彼の想いが果たされる事を祈っていました]
――……。
[城をみていれば十二年の想い出が頭を過ります。 魔性として生きた十二年の歳月はとても罪深いもの。 けれど城主たる魔性に慈しまれたその時間を 私はしあわせなものとも感じていたから なかなか其処から目を離すことができませんでした]
(67) helmut 2010/06/26(Sat) 22時半頃
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[城門を潜り私は森へと入ります。 薄暗い木々には獣が住んでいるのでしょうか。 不気味さを感じながらも私は前へ前へと進みます。 後ろを振り返る事はありませんでした。 振り返ってしまえば、また囚われてしまいそうだったのです。
どれだけの時間を歩いたでしょう。 森を抜けて私はとある屋敷に辿りつきます。 此処に住んでいた夫婦は娘が消えたのを哀しんで 遠い場所に移り住んだのだと噂で聞きました。 此処は私の生家。懐かしい我が家。 思い出の庭園へと私は足を運びます。 メアリーが時折世話をして呉れていたのでしょうか。 その庭園には記憶の中と同じ白い薔薇が咲き誇っていました]
――…サイモン、メアリー。 此処ならゆっくりと眠れるかしら。
[大事にしまっていた二つの袋を取り出して 私は二人に問い掛け二人の為のお墓を作ります]
(68) helmut 2010/06/26(Sat) 22時半頃
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[薄闇に咲く白い薔薇の庭園――。 其処に住まう娘は十二年前に消えました。 その娘の幼馴染とその妹も姿を消して 暫く経った頃、噂が流れるようになりました。
白薔薇の庭園を夜覗くと 消えたはずの娘の亡霊が姿を現す、と。
其処に亡霊の噂はあれど 其処に吸血鬼の噂はなかったそうです**]
(69) helmut 2010/06/26(Sat) 22時半頃
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水商売 ローズマリーは、花売り メアリーを抱きしめた。超抱きしめた。
helmut 2010/06/26(Sat) 22時半頃
水商売 ローズマリーは、良家の娘 グロリアを抱きしめた。ありがとう!
helmut 2010/06/26(Sat) 23時頃
水商売 ローズマリーは、ログの流れに追いつけなくなってきた。
helmut 2010/06/26(Sat) 23時半頃
水商売 ローズマリーは、ねー、とトーニャちゃんに頷いた。
helmut 2010/06/27(Sun) 01時頃
水商売 ローズマリーは、小悪党 ドナルドにぎゅーと抱き付いた。尻尾ぱたぱた。
helmut 2010/06/27(Sun) 23時半頃
水商売 ローズマリーは、靴磨き トニーをぎゅむった。おかえりー。
helmut 2010/06/27(Sun) 23時半頃
水商売 ローズマリーは、花売り メアリーを背後からぎゅーと抱きしめた。おかえりー。
helmut 2010/06/28(Mon) 00時頃
水商売 ローズマリーは、花売り メアリーは可愛いなぁ、と和んでいる。
helmut 2010/06/28(Mon) 19時半頃
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― 娘が消えた或る日のお話 ―
[これは遠い過去。 Rosmarinus(海の泡)と消える運命の娘がいました。 けれど娘が悲嘆に暮れることはありません。 何故なら娘の傍には優しい幼馴染の兄妹が居たのですから。 二人の存在が娘の何よりの心の支えだったのです。
病弱だった娘にも望んだ幸せがありました。 それはささやかなもの。 それはありふれたもの。 大事な人たちと限りある時間を共に過ごす。
それは御伽噺の人魚が声を引き換えとして望んだこと。 娘には引き換えなど必要とせず其れを手にしていたから 少しも不幸などとは思いませんでした。
――そう。 娘は幼馴染の兄妹の笑顔を見ているだけで幸せだったのです]
(127) helmut 2010/06/28(Mon) 20時頃
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[白薔薇が咲き誇る庭園にはいつもと同じ光景。 幼馴染のサイモンが娘の隣に居りました。 彼の妹のメアリーは少し遠くで花を愛でているようでした。 サイモンは或る日、娘に小箱を差し出します。 開けば中には丁寧な細工の指輪が静かに輝いておりました]
『───私のローズ。
何があろうと私は君の傍にいるよ。
――これはその約束の証』
[はにかむように微笑むサイモンの言葉に娘は驚きました。 それはとても嬉しく、――そして哀しい申し出。 娘は自分が消えてしまった後の事を考えると サイモンの申し出を受けることが出来ません。 これ以上彼の優しさに甘えてしまえば彼を苦しめることになる。 だから、娘は彼に首を振るのでした]
(128) helmut 2010/06/28(Mon) 20時頃
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『君が頷いてくれるまで、私は待つよ。
だからその時まで、これは君が持っていて――』
[手渡された小箱を娘はぎゅっと握り締め 漸くサイモンに頷き泣きそうな微笑みを向けました]
――…サイモン、ありがとう。 でも、私は…………
[サイモンは娘の薔薇色のくちびるにそっと人差し指を宛て ただあたたかな笑みを浮かべその先の言葉を優しく封じます]
(129) helmut 2010/06/28(Mon) 20時頃
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『寂しがりな君が寂しがらずに済むように
私がずっと君の傍にいる。だから――…』
[泣かないで、とサイモンは娘の目許を拭います。 サイモンはいつか娘が頷くと信じて疑いませんでした。 娘もまた彼の熱意に折れる日が来るだろうと感じておりました。
けれど――、 サイモンが言った『その時』が来ることはありませんでした。 何故なら娘はその夜に消えてしまったのですから。 何時か改めて返事を、と娘は思っていたのでしょう。 娘の部屋には小箱が大事にしまわれていたそうです**]
(130) helmut 2010/06/28(Mon) 20時頃
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[――これは夢。 手を伸ばしても掴めぬ夢。 目を覚ませば消えてしまう儚いもの]
――…っ!
[空へと伸ばされた手は何も掴むことなく ゆっくりと下ろされてゆく。 戻ってきた屋敷の自室の天井は 女に寂しさばかりを思い出させた]
……二人の声が聞きたいわ。 嗚呼、もし聞く力があったとしても…… 私には語り掛けて貰う資格などないわね。
[白薔薇の庭園に佇む二人の墳墓を 憂いに満ちた翡翠が見詰めていた]
(139) helmut 2010/06/28(Mon) 21時半頃
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[屋敷と白薔薇の庭園には穏やかな日々が続いている。 広い屋敷は寂しくて時折誰かを招きたくなるけれど 女は誰も招く事なくただ静かに暮らしていた。
血を口にせずにいれば何時か命も尽きるだろうか。 たとえ口にせずともこれまでの罪が消えるわけではないと わかってはいたけれど贖罪の念が女にそうさせていた。
或る日、女は風の噂を耳にする。 バイルシュミット家の令嬢が無事戻ったという話。 女は懐かしく思いペンを取った。
無事戻れて何よりだという喜びを綴り 貴女だけはもうあの城に戻らぬようにと願いを綴り 送り主の名だけを綴った簡素な手紙を鳥に託した。
あの日、中庭で慰めてくれた彼女が 再び惨劇の宴に迷い込まぬ事を女は密やかに祈っていた。]
(140) helmut 2010/06/28(Mon) 21時半頃
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[闇の帳が下りる頃―― 女は一人白薔薇の庭園で時を過ごす。
ふ、と――優しい風が亜麻色の髪を攫う]
――……、……。
[懐かしさを感じ女の唇が無意識に名を紡いだ。 知らず女の頬には一筋の涙が零れた]
(142) helmut 2010/06/28(Mon) 21時半頃
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[今は誰も居ないその部屋の机には
サイモンから贈られた小箱と あの日持ち帰ったメアリーの花飾りが
女の魔力により朽ちる事なく在り続ける。
何時か力尽きるその日まで――**]
(143) helmut 2010/06/28(Mon) 21時半頃
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水商売 ローズマリーは、花売り メアリーを抱きしめた。ぎゅう。気をつけて帰るのよ。
helmut 2010/06/28(Mon) 22時半頃
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