94 眠る村
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― 回想/夜半 ―
で、手当のお礼にキスの一つでもしてきたのかい?
[行きと同じくがちがちで戻ってきたフィルの頬を指して。 そうやって揶揄するうちに夜も更ける。
――保護者は迎えに来なかった。。 逃げては探してくれるのを待つ――この10年毎日そんなことの何度繰り返しだ。 いずれ呆れられて迎えに来てくれなくなる日がくるかもしれないことくらい 想像できないわけではなかったが。
押し寄せるのは、後悔と落胆。]
……、所詮他人だよ。
[そんな独り言。 結局はフィルと二人宿屋に泊めてもらうことにしてあてがわれた部屋で寝台に潜り込み――]
(35) 2012/06/14(Thu) 16時頃
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― 朝 ―
――、あぁ
[目が覚めた時余りにも静かだったから、一瞬自分が何処にいるか判らなかった。 兄弟子の声も先生の声もしない。 落ち着かない程の、静けさ。]
……
[いたたまれなくなって、寝台を抜け出す。 気を紛らわせようとフィルを起こそうとして。]
――…、トリィ。 言ってやんなよ。エッチ、エッチって。
[フィルの相方に呆れつつそう言って。 幸せそうな寝顔を見ていたら何だか無性に腹が立ったので思い切り頬を引っ張ってから部屋を出た。]
(36) 2012/06/14(Thu) 16時頃
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― 宿 ―
[扉を開けたところで別の客室の扉を開けているブローリンが見えた>>41。 部屋に入るな、と言われて怪訝そうな顔を向ける。]
泥棒でも入ったのかい?
[呑気に問いかけてから、ふと廊下の窓ガラスに映る自分の姿を見た。 寝乱れて幾つか外れたシャツから覗くのはあまり男らしからぬ薄い腹。 その右側に浮かぶ、青黒い何か。]
うっわ何これ。 夜の間にフィルに蹴られ、…――?
[打ち身かとあざに触れて――――
――――]
(57) 2012/06/14(Thu) 20時頃
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[
カタァン――…
固い何かが床に転がる音に我に帰った。]
な、
[嘘だろ、と。 喉まで出掛かった言葉を飲み込んで。 ブローリンが入っていった部屋へ、止められたとしても無理矢理踏み込む。 今のが、白昼夢とかでないならば、僕は――]
……ッ
[転がる2つの死体を獣の影が貪り食う、幻影――]
(59) 2012/06/14(Thu) 20時頃
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[息を飲んだまま、しばらく動けなかった。 夢じゃない。 嘘でもない。
――じゃあ、センセーは?]
寝ちゃってる、の……?
[見捨てられたわけじゃないかもしれない。 けれど、無事じゃないかもしれない。 慌てて踵を返すと、外に飛び出した。]
(61) 2012/06/14(Thu) 20時頃
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― 自宅 ―
[10年前両親が失踪したあの日から。 学者の家が自分の家になった。 実の家よりも馴染んだ扉に手を掛けると無用心にも鍵は掛かっていなかった。]
センセー! 起きてんのォ?
[探す手間も惜しくて玄関先から声を掛けるが、返事はない。 足を踏み入れるとリビングのソファで崩れるように眠っている兄弟子たちの姿。]
……、
[思い切り蹴り飛ばした。 ――当たり前だが、目は覚まさない。]
(62) 2012/06/14(Thu) 20時半頃
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センセ……
[半開きになっていた書斎の扉。 中を覗きこむと机に突っ伏した男の姿が見えた。
――息はしている。]
な、んだ…… 寝てただけとかさァ。 酷いよねェ。 僕一晩中待ってたのに。
[かけっぱなしになってたメガネを外して、上着を背中に掛ける。 このまま事が終わるまで眠っていてくれ、と心の底から思った。]
(63) 2012/06/14(Thu) 20時半頃
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― 自宅→宿 ―
[暫く待ってみたけれど、この家の住人たちが目を覚ますことはないようだった。 年重なくせに頭の悪くて意地の悪い兄弟子たちにも加護はあるらしい。 頭はいいけれど生意気な少年が体格に優れた兄弟子たちにどういう扱いを受けるか。]
――…アンタたちは食われても構わないのにねェ。
[もう一度振り上げた足の容赦の無さにそれは現れていた。 ごと、と重い音を立てて床に転がるのを鼻で笑って。 宿へと戻ると、>>166トリの口癖を真似するハナの姿。]
エッチなフィルがハナに悪い言葉教えちゃったのかい。 悪い奴だねェ。
(170) 2012/06/15(Fri) 00時頃
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[項垂れて、顔を上げるフィリップに後ろからチョークスリーパー。]
僕がどうしたのォ?
[フィルの耳元に口を寄せて、クラリスには聞こえない程度の声で言う。]
クラリスばっかり見てるから視野が狭くなってんじゃないのォ?
(174) 2012/06/15(Fri) 00時頃
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それはこっちのセリフだよ。 わざわざ起こさないであげたのに起きてるなんてさァ。
[あのまま眠っていたら、きっと幸せな夢を見続けていたのだろう。 こんな騒動に巻き込まれるよりも100倍は幸せだったに違いない。 あの――2つの死体を食い荒そうとしていた化物が、この幼馴染の中にいるかもしれないなんて。 そんなことは思いたくもない。
きりきりと締め上げつつ、こっそり嘆息を漏らしたところで――]
――ッぐ、
[>>177肘が鳩尾に綺麗に決まった。]
ぼ、僕を殺す気か……ッ!
[呻きつつ、締めあげていた腕を離した。]
(179) 2012/06/15(Fri) 00時半頃
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――…、ンだよそれェ。 僕が寝てて君が起きてんのはいいって道理もないだろ!
[客室へと戻っていくフィルの背中に思い切り舌を出す。 ハナの姿に、口の端を上げるだけの笑みを浮かべた。]
――…、すっごく悪い子。 ハナに悪いこと教えるし、僕に――
[心配かけさせるし。 言葉を飲み込んで、首をかしげてみせた。]
センセーも寝てたよ。 センセー起きたら、また本借りにいこうかァ。 センセーは最近星の本を集めだしたよ。
(188) 2012/06/15(Fri) 01時頃
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気が向いたら僕が読んであげてもいいしィ。
[時折、そうしているのだろう。 物分りの悪い人間は嫌いだけれど。 ハナに本を読むのは苦痛じゃない。]
――、クラリス、ごめん。 僕も部屋借りるねェ。 僕んちは散らかってるわけじゃないけどさァ。
[誰かと一緒のほうが安心できるなんて口が裂けても言わないけれど。]
(191) 2012/06/15(Fri) 01時頃
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兄弟、かァ。 あんなのが弟だったらぞっとしないよォ。
[何故か兄貴にはならないのはご愛嬌。 自分にとっては親や兄弟よりももっと、信頼できる存在であり――]
――…、うん。 宿泊代は後で体で返すよォ。
[フィルが聞いたら卒倒しそうなことを言いつつ。 フィルが戻っていった部屋の扉を開けた。]
(197) 2012/06/15(Fri) 01時半頃
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[既に眠りについたのか、まだ起きているのか。 こちらに背を向けているからどうなのかわからない。 シャツの下のアザ――というよりは刺青のようだ――は よく見れば羽を広げた鳥のようにも見える。
フィルの寝台に転がって、頭の下で手を組む。 重い睡魔が伸し掛かってくるようだった。]
もし君が狼ならさっさと僕を殺したほうがいいかもしれないよォ。 僕は――
[君が人を殺すところなんて見たくないから―― そんなことは胸にしまったまま。
"魂が狼に食われていたかどうか判る"
それがフィリップの耳に届いたか否か――それは、わからない。**]
(199) 2012/06/15(Fri) 01時半頃
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― 宿屋 ―
――…、起こしてってくれればいいのにさァ。
[目が覚めたら隣はもぬけの空だった。 起き上がって乱れたままの隣の毛布をめくりあげる。]
流石におねしょはしなくなったか。 昔みたいに隠すの手伝ってあげようと思ったのにィ。
[まだ両親が居た頃は、互いの家で寝泊まりすることもあった。 学者の家に住むようになって、フィルの体に傷が絶えなくなった頃から こうやって一緒に寝泊まりすることも無くなった。]
大体フィルが早起きのときっておねしょしたときだったのになァ。
[毛布を戻すと、ベッドを整えて部屋を出た。]
(234) 2012/06/15(Fri) 16時半頃
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[足は死体が在った部屋へと向く。 ドアノブに手を掛けたが、鍵が掛かっているようだった。 こつんと扉に額を当てる。 あのとき見えた影は加護が見せたものか、はたまた幻だったのか。
――刺青はかく語る。 青い炎につつまれ灰と化した者の魂を視せる、と。]
フィルが灰になればフィルが人狼かどうか判る。 でもフィルを灰にしてまでそんなこと知りたいとは思わないなァ。
どうせ加護くれるんならもうちょっと役に立ちそうなのくださいよォ。 ねえ、ご先祖様。
[歪められた口元は、笑みよりも泣き顔に近い。**]
(235) 2012/06/15(Fri) 16時半頃
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― 昼/宿屋 ―
["体で返す"を実践しようとモップを持って廊下を数度往復。 せめて自分が使わせてもらってる部屋くらいはと部屋の清掃もする。 妙に手馴れてるのは脱走の刑罰に掃除があてがわれることが多いからだろう。 渋々家の廊下を往復する間に、紅茶の香りが漂ってきて。 仏頂面の少年にカップが差し出される――そんな日常が、遠い。]
僕が居なくなったら、誰が掃除するんだろうなァ。
[モップの柄に顎を乗せて、一休み。
『私の家に来るか?』
いい子で待っていろと言い置いた両親は戻って来ず。 言われたとおり待ち続けたけれど空腹と寂しさに耐えかねて。 ナタリア婆さんの前で大泣きしたあの夜に差し出された手を 未だに素直に取ることが出来ない。]
(307) 2012/06/15(Fri) 22時半頃
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[新しい家はなんだか自分の居場所が無いみたいで。 夜半にこっそり家出してフィルの家――というか彼の部屋に忍び込んだ。 強盗と間違えたフィルが泣きながら謝り倒したっけ。 明け方大慌てで探しに来た保護者を見て、何だかすごく安心したのも覚えている。]
――…、服、洗おう。
[物凄く懐古的な気分になっていることに気付いて、頭を振った。 着替えを取りに戻るにはなんだか面倒だったから、 クラリスがいれば一言断りをいれて洗濯場を借りる。 シャツを脱ぐとざばざばとこれまた慣れた手つきで洗濯を始めた。]
掃除も洗濯も出来るなんて僕いいお嫁さんになるよねェ。 あとは料理が出来れば完璧かな。
[洗い上がったシャツをぱん、と広げてロープに掛ける。 寒い季節ではないから、夜の帳が近づく頃には乾き始めるだろう。]
(316) 2012/06/15(Fri) 23時頃
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[ハナとフィルが猫と鳥探しに出てから暫くして。 多少湿り気はあるものの、何とか着れる程度には乾いたシャツを着て、食堂の方へと戻る。 カウンターで行儀の悪い座り方をしている男を見ると、自分も同じように座る。]
ケヴィンに見つかったら怒られるよォ。 ハナが真似するってさ。
[クッキーが残っていれば手を出すだろう。 話題に上げたふたりとも今は姿が見えない。]
(332) 2012/06/15(Fri) 23時半頃
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シメオンは、噂をすれば何とかだねぇといいつつ座り方は直さない。
2012/06/15(Fri) 23時半頃
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