202 月刊少女忍崎くん
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ジェームスは、ポケットから携帯を取り出す。
2014/11/18(Tue) 14時半頃
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──人楼高校、学内廊下──
[──身長に見合った大きな手が、 画面と文字が大きいシルバー用の携帯のキーを ぽち…、ぽち…。とぎこちなく打つ。]
… … …
[ややも背中を丸めて、ぶつぶつと小声を溢しながら、 体格差で余計小さく見える携帯の画面にメールを入力していく。]
(30) 2014/11/18(Tue) 14時半頃
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[不器用、というわけではないが機械全般が大概不得手な忍崎の携帯は、通話とメールができるだけのごくシンプルなものだ。]
い、く ……、と
[その上、一文字が大きいせいで、画面に表示できる文字数に 限りがある。ゆえに打つメールは基本短い上、妙にカタコト感が漂っていた。]
(31) 2014/11/18(Tue) 14時半頃
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ジェームスは、送信画面から顔を上げ、
2014/11/18(Tue) 14時半頃
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…………
(しかし、行く と、いうか──)
(32) 2014/11/18(Tue) 14時半頃
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[また、当人の打つ速度自体も遅いため]
……ついたな
[文章を打ち終わり顔を上げたときには、 おばけ屋敷で行き会ったススムや白銀から少し遅れて、 第二体育館が既に見えるところまで*到着していた*。]
(33) 2014/11/18(Tue) 14時半頃
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──第二体育館、書道部パフォーマンス──
[そうして、忍崎が体育館の中に滑り込めたのは、 栗栖が開始の口上を述べる少し手前だった。
この後音響もやるらしい放送部に、栗栖がマイクが戻されるタイミングで一度携帯と周囲を確認はしたが、知り合いの姿を見つける前に、書道部たちがさっと配置についた。]
(来ているなら後で合流できるか)
[客席側でいつまでも移動しているのも悪い気がして、目の前の書道部に視線を戻す。
けれど、そんなことを頭の隅だけでも考えていられたのは、 本当に、最初の最初だけだった。]
(34) 2014/11/18(Tue) 17時半頃
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[書道部の部員達が筆を持ち、渋い音楽に合わせて、 白い紙の上に色が乗せられていく。
それはやがて空と山と海の姿を現した。
筆を持つ部員も音楽にあわせて入れ替わり はいっ!!!と珍しい大声で掛け声をかけ 保が部長のゴロウと並び筆を走らせる。
部長とサボりがちとはいえ、 書道部のエースの達筆はさすがだった。
それに加えても身体全身を使ったパフォーマンスは 観客たちの目をすっかり釘付けにしていた。]
(35) 2014/11/18(Tue) 17時半頃
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[体育館に集まっている人数はそれなりに多く、 中には妙にカラフルな特攻服を着た一団の姿もあった。]
(すごいな)
[純粋に感心しながら、中央に書かれる大きな「祭」の字を 見下ろす。こういうときは、背が高いのが役に立つ。 すごいな。ともう一度内心で繰り返す。
書道部のひとつのことに向けて全員で向かっている熱気は、 自然と、目と心を奪うものだった。──いいな。と思う。]
(36) 2014/11/18(Tue) 17時半頃
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[感心してみている間にも、栗栖がてんってんっと赤で点を落としていく。
その途中、観客へのサービスだろうか、 観客席に栗栖の視線が投げられた。
紙の上には、でんっ とこれまでに比べ 斜めに滑った勢いのある点が残される。
締めの表現だろうか。
そう思っていれば、部員の手で明るい花火の中心になった他の点とは違い、そこにはどうやら保が向かうようだった。]
(37) 2014/11/18(Tue) 17時半頃
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[栗栖が書いた勢いのある赤い点にあわせて、 保が黒筆で「日本」の 日 を書いていく。
おお。そういう演出だったのか。と、 至極素直に納得して頷いた。
勢いのある字体は、保にしては少し珍しい。と思いはしたが、 栗栖の書いた一筆にあわせたのだろう。 「合作」というものは、そういうものなのかもしれない。
完成した全体の作品に違和感はなく、 ソイヤ!の掛け声と共に、 ゴロウが書いた「祭」の下に「大漁」と 栗栖が大きく書き上げていく。
今、紙の上にいるのは保と栗栖の二人で、 その二人もほぼ同時に一筆を仕上げた。]
(38) 2014/11/18(Tue) 17時半頃
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[駆けでてきた一年生が、紙にとんっと判を押す。それと共に、 栗栖がよく通る声で、はいっ!と掛け声をかけ、]
────。
[そこで ぴたり と、これまでの6分間、 休まず動いていた紙の上が静まる。]
(39) 2014/11/18(Tue) 17時半頃
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[演技を終えた呼吸音が聞こえるかどうか。 そんな静けさの後、ありがとうございました!と 大きく終了の声が上がる。]
…
[一息をついて、ぱち、と手を叩く。
拍手の音がひとつあがって、それにつられたように、 ぱち、ぱち、ぱち と音が連なり、
やがて体育館一杯にふくれた大きな拍手が、
書道部に向けて*送られた*。]
(40) 2014/11/18(Tue) 17時半頃
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──第二体育館、書道部パフォーマンス終了後──
[拍手で、演技の本番中に張り詰めていた緊張感は少しゆるむ。体力のない保がその場に座り込むのが見える。
あれは夏の書道パフォーマンス甲子園に向けてだったが、 筋トレ特訓で一時客用の布団と一室が保用になっていた時期を思い出せば、よくがんばったな。という気がわいた。]
(そういえば、 鷹野は間に合ったか?)
[これは、あいつも見れているといいな。と、 そんなことを考えて、再度左右を見渡す。]
(44) 2014/11/18(Tue) 18時頃
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[と、見えたのは平均台の上で揺れる結んだ髪だった。人波に遮られながら、お疲れー!とジャージの袖が振られている。 掲げられたカメラもはっきりと見えた>>46。]
──鷹野!
[未だ生徒が回りに残り騒がしい中だった為、呼ぶ声は普段より張り上げたものになった。こっちだ。と手をあげて、所在を示す。]
(47) 2014/11/18(Tue) 18時頃
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[とはいえ、身長差からも体育館内での合流は些か難しそうで、小柄な鷹野にこちらまで来させるのはなおのこと無理がありそうだった。]
悪い。迎えに行ってくる。
[ススムと白銀に視線で鷹野の位置を示してそう言いおき、 じゃあ。と軽く手を上げて平均台へと向かった。]
(50) 2014/11/18(Tue) 18時頃
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[肩がぶつかる体育館内は、トラックよりは走りにくいが、そうも転ばされるようなことはない。 悪い、と声をかけて一年生と思しき男子生徒に道を譲ってもらい、鷹野の前までたどりつく。]
…、乗ったままでもいいぞ?
[慌ててた様子で平均台を降りる鷹野を軽く押しとどめて、メールの件については ああ。と思い出したように頷いた。]
気にしなくていい。
タイミングが開始ぎりぎりだったし、 俺の方でも、パフォーマンス中に 携帯を見る余裕はなかっただろうしな。
[鷹野もそれだけ集中していたということだろう。余所見させてしまうような勿体無いことにならずにすんでよかった。と、ぽん。となだめるように結わえられた上から軽く頭に手をのせた。]
(51) 2014/11/18(Tue) 18時半頃
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[写真の整理はどうだった。と軽く尋ねながら、 書道部が集っている中心の方を眺めやる。 どうやら書き上げられた作品は、暫く体育館に飾られるようだ。]
いい熱気だったな。
[と、素直に感心をしながら、共同作業というのは悪くないネタだな…と、しっかり手にはメモ帳が携えられていた。]
(52) 2014/11/18(Tue) 18時半頃
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[確かこの後にも、氷見山の出る劇があるのだったか。と思う。 たぬき姫だか、たぬき王子だったかの筈だが。と、 パンフレットを改めて見下ろす。]
…
[窓の外の日は既に天頂を過ぎて、 地上近くで丸く浮かんでいる。 文化祭も半ばを過ぎて、そろそろ*終盤だ*。]
(53) 2014/11/18(Tue) 18時半頃
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──第二体育館──
[ぴんぽんぱんぽーん↑ と、校内放送が掛かる。 書道部のパフォーマンスが終わって次は、講堂でどうやら演劇部が『たぬき王子』をはじめるらしい。]
『おーい』
[と、横合いから声をかけられて、ん。と振りかえる。わいわいと感想を言い合っていた一団の向こうから、中身を交代したのだろう辰次が手をふっていた。]
『聞け、真の勇者サマが出たぞ、 真の勇者サマが』
[笑いながら、がにまたで歩き来るクラスメイトの言に、 おお。と軽い感嘆をもらした。]
(58) 2014/11/19(Wed) 01時半頃
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[真の勇者。それはすなわち、登場人物全員から、スタンプを集めた人間が出たということだ。一応、途中でのリタイアでも、集めたスタンプ数に応じて賞品を渡すようにはしていたが、真の勇者、の称号はすべて回りきった人にしか使わないルールだ。]
魔王は?
『勇者サマが悪の心を切り裂いてくれたんで 本当の姿を取り戻して、ハッピーエンド』
そうか。
『もう悪いことはしたらだめだよ、だと』
[勇者に言われたのだろう台詞の口真似をして、くっく、と辰次は笑った。]
(59) 2014/11/19(Wed) 01時半頃
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クラスの方はどうだ?
『順調順調。 あ、でもいっぺん見に来いよ』
[魔王役のアテレコけっこー面白いからお前らもやれよ。と、好意の誘いは鷹野にも向いた。 『魔王』は皆でつくった人形なので、ボイスチェンジャーを使えば女子でも役を果たせるようになっている。]
『そっちは劇見にいく感じか? まっ、そいじゃまたあとでな』
[そんな話をおいて辰次は栗栖の方へ、『おーい、今のすごかったなーっ』と手を振って歩いていった。]
(60) 2014/11/19(Wed) 01時半頃
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[──そうして]
(61) 2014/11/19(Wed) 01時半頃
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[それからの後半戦も、前半と同じ位に、 たいへん慌しい行動スケジュールだった。
── 講堂で氷見山の舞台を見たあと、文芸部に寄って、既に残り僅かになっていた『珠玉』を入手して、東西仮装対決のイイネ!欄に笠原が満足気に紙を付け足しているのその上から、赤ずきんの写真に「メルヘンでとってもかわいいと思います!」と、一見女子が書いたのかと思えるような字を線の細い鉛筆で書き足し、クラスに戻って最後の魔王役を何故か生身で忍崎が勤めることになり、そのアテレコを鷹野が務め小森につっこみを入れられながらなんとか最後の『勇者』に記念品を渡し終えた。
その間に鷹野が撮った写真は、 551枚にもなった。]
(62) 2014/11/19(Wed) 01時半頃
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[忍崎の資料写真他、学祭の思い出用の写真も含むが、 さすがに良く撮ったものだと思う。]
──それから、廊下にて──
──ん、 現像にか?
[そう聞いたのは「資料用の写真、早くあった方がいいかなと思って」と、笑う鷹野へだった。まだ何か回るところあるかなあ? と、言われて、いや。とそこでは首をふった。]
(63) 2014/11/19(Wed) 01時半頃
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[早く手元にあるならそれに越したことはないのは確かで、 また別に時間をとらせて現像してもらうよりは、 いっそ手早く済ませてしまった方がいいのかもしれない。]
じゃあ、あとで落ち合おう。
[場所はメールする。と、そう伝えて 写真部の部室に行く背を見送った。]
(64) 2014/11/19(Wed) 01時半頃
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──二年三組教室前廊下──
[駆けていった鷹野の背を見送り、 携帯で時間を確認する。]
(…………。
今のうちに準備をするにも、 少し時間が足りないか)
『あれ。まどかは?』
ん?
[クラスの撤収作業を手伝うか、と踵を返しかけて、入れ違い来た制服姿の小森にどうした?と首を傾いだ。]
(69) 2014/11/19(Wed) 01時半頃
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『あ。忍崎ひとり? あー。まいっか。
あのさ、ひとり外回りが戻ってなくって。 ケータイにも繋がんないから、 じゃー、数人で探すかってなってさ』
[「まあ後夜祭後の打ち上げどうする?ってぐらいの連絡なんだけど、手ぇ空いてたら探してきてくんない?」との頼みを請け負えば、再度校内を歩き回ることになった。]
(70) 2014/11/19(Wed) 01時半頃
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[じゃあよろしく。とそう任されて、他を探しにいく。という小森とも その場でわかれることになった。]
(……探すならいっそ人が少ないところか)
[そのあたりにいるのなら、他の誰かが見つけるだろう。 となると、何処を探すべきかはおのずと絞られる。]
(71) 2014/11/19(Wed) 01時半頃
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──人楼高校、屋上──
[フェンスの向こう、文化祭も佳境を過ぎて マンションビルの谷間に茜色が落ちてゆく。]
────。
[校庭を見下ろすと、校門から各々の荷物を抱えて帰りはじめる、一般入場者たちの姿が見えた。]
(78) 2014/11/19(Wed) 01時半頃
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[生徒達はこのあとも打ち上げ会なり、 撤去作業が残っているにしろ、 文化祭は、緩やかに終わりを見せ始めている。]
(……それでもまあ、 歩き回っただけの甲斐はあったか)
[ここ暫くの間に抱えていた悩みには、 なんとなく、今日一日で出口のようなものが 見えたようなそんな気がしていた。]
(79) 2014/11/19(Wed) 01時半頃
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[涼やかな風が屋上を吹き渡る。
下方から聞こえる男女入り混じる声は 賑やかさの名残は十分残していたが、 人がいない屋上からは、少し遠い。]
…、…
[小森からは少し前に、「見つかった!」と連絡があった。
ただ、眺めのいいここでどんな人が来ていたのかを 改めて確かめたいような気がして、 鷹野との待ち合わせ場所をここ、屋上にした。
フェンスの上に腕をおき、黙って校門の方を眺めていれば、 人波からひとつぶん頭ぬけた赤い風船がゆらゆらと揺れながら校門の方へゆくのが見えた。]
(80) 2014/11/19(Wed) 01時半頃
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[ああ。あれは、うちのクラスの。と思う。
スタンプを集めたカードは、 二年三組の教室にある、 はじまりの村から魔王城にたどりつくまでに 出くわす困難に打ち勝つ力となる。
──という設定だが、
スタンプを集め、王城の川向こうにある(という名目で壁に描かかれた)魔王城にいる魔王を撃退できた『勇者』には、 王様から褒章がでるシステムだ。]
(81) 2014/11/19(Wed) 01時半頃
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[宝箱型に装飾した紙製のボックスに、 菓子類と『魔王』の脅威から、 皆を助けてくれた勇者への 登場人物たちからの感謝の言葉を書いたメッセージカードをつめて渡すのだが、それに、風船を括ったらどうか。と言い出したのは確か小森だったはずだ。
「目立つし宣伝にもなるでしょ」と、 小森は言っていたが、 なるほど確かにその通りだった。]
(あれはたしか、 鷹野が写真を撮っていた子か)
[風船がなければ気づかなかったかもしれない。大人や生徒たちの背に紛れて、赤いフードの女の子は、風船をつないだ箱を抱えて、隣の母親へと一生懸命、何かを話しかけているようだった。]
(82) 2014/11/19(Wed) 01時半頃
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[もとより目はいい方だ。 小さな横顔に浮かべられた表情までもよく見えた。]
……
[その姿を遠くから眺めおろして 暫し後、 す。と手帳を開いて、ペンを構える。]
(83) 2014/11/19(Wed) 01時半頃
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[──シャ、シャ、と紙の上をシャーペンの先が走る。視線は遠く、校門の方から動かさないまま]
──ちょっとまっててくれ
[ばたん! と勢いよくドアが開いてもそちらを見もせず、 たったの一言きりを向けるだけ。]
(84) 2014/11/19(Wed) 01時半頃
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[鷹野まどかの小柄な背丈が傍に来る間にも、 視線は一度もそちらを向かない。]
……
[遠い小さな一点に集中しているせいか、途中で途絶えた質問に答えが返ることはなく]
(87) 2014/11/19(Wed) 01時半頃
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[名前とそのまま!とその言葉に反応してか 一度そこで、動いていた手が止まった。]
…それ。 もうなくてもいいぞ?
[少しだけの逡巡、目を眇めて、 素っ気ない声が言う。]
(88) 2014/11/19(Wed) 02時頃
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[フェンスの向こうに投げていた視線を一度手元に戻して、 またシャーペンを走らせる。]
鷹野にだったら、いつ撮られてもいい。
[──もう、確認はなくてもいい。と、 また、前に視線を戻した。]
(89) 2014/11/19(Wed) 02時頃
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[カシャリとシャッター音を耳で受ける。 耳慣れた撮影音ではあったが、横手で受けたのは これが二度目だった気がする。
シュ、と手元に描かれた横顔の目元に最後の一筆を入れて、 そこで初めて隣を見た。]
… そうか
[そこにあった満足気に笑う鷹野の表情に、 自然と、口許が和らぐ。]
(95) 2014/11/19(Wed) 02時頃
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…
今日は本当、鷹野には 随分世話になったからな。
[資料写真もだが、こうして今自分が晴れやかな気持ちで文化祭を終えられるのも、鷹野のおかげだ。
鷹野自身が満足できたのなら、 それに勝るものはなかった。]
(96) 2014/11/19(Wed) 02時頃
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[茜色の光を受けているせいか、 ここまで走ったせいか、鷹野の顔は赤い。
幾度も口を開いては閉じて、 言い出しにくいことを言おうとするように、 声は、中々続かなかった。
45p下からの見上げる視線。 大きな目が一度きつく瞑られて、 何かを決心したように開く。]
(105) 2014/11/19(Wed) 02時頃
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[色々考えたんだけど。と、その出だしではじまった言葉は、
── 一世一代の大告白だった。
赤らんだ顔を真顔で見つめたまま、 僅かの間、静かに黙って]
…俺も、
[次に零れた低い声は、微かな緊張をはらんで、 隣にいる少女にしか届かないくらいに小さく]
(106) 2014/11/19(Wed) 02時頃
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…… 少し、照れるな。
[こういうのは。と、誤魔化すように少し笑って、 思考を読まれたみたいだ。と、冗談交じりに]
でも。俺も、鷹野と同じことを思ってた
[照れくさいけれど、その相手が鷹野だったことが うれしいような、通じ合えたような──そんな錯覚を覚える。]
(107) 2014/11/19(Wed) 02時頃
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すごく…… いい台詞だと思う。
(109) 2014/11/19(Wed) 02時頃
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どうって、本当にすごくいいと思う。 ススムが言ってたストレートさもあるしな
[どう。の意味を提案と捉えたままに、うん。と頷く。]
(111) 2014/11/19(Wed) 02時頃
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いや文化祭中に改めて 真剣な姿ってのはいいな、と 俺も思っていたんだ。
[うん、うん。と嬉しげに繰り返し頷き、 告白の方向性自体はほぼ固まって、 あとは言い回しぐらいのものだったが、 それも、ここでほぼ決まった。]
……しかし、鷹野もそう感じてたんだなあ
[それは素直に、嬉しいと感じる。]
(112) 2014/11/19(Wed) 02時頃
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鷹野がそんなに一生懸命に 考えてくれてたなんてな……
本当に嬉しいし、 今日はすごく助かった。
[いっそ、晴れやかな表情で、ぽん。と、 鷹野の両肩に手をのせる。]
(113) 2014/11/19(Wed) 02時頃
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今度の台詞は、 ぜひこれでいきたいんだが
、 ──それ、使わせてもらっても いいか?
(114) 2014/11/19(Wed) 02時頃
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