246 朱桜散華
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[ 名前を呼ばれて、視線を彼女のほうに向ける。>>1:114 へにゃりと弱い笑みを浮かべる彼女に見上げられれば、 どんな顔をすればいいのかわからないとでも言いたげな、 微かに困惑した顔が見えただろうか。]
[ 長の家に帰りたくない日はあるかと、 そう問われれば、こくこくと何度も頷く。
あそこは、長の屋敷は本当は好きではない。 婆様が死んでからずっと、 お世話になっていることには違いないけれど。]
……、 ……ぅ。
[ 一晩過ごせるようなところと言われて。 思い当たるような場所は、ひとつしかなかった。]
(3) 2016/04/23(Sat) 01時頃
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……。
[ 小さく手招きをすると、促すように前を歩く。 途中、彼女がついてきているかを、何度か後ろをむいて確認して]
…。
[ ふと、何かに気づいたような顔をすると、それまで足早だった歩を彼女の歩幅に合わせるようにしてゆっくり進める。 そうして、村外れにある一軒家>>1:46まで彼女を連れていくだろうか。*]
(5) 2016/04/23(Sat) 01時頃
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肥代取り 置壱は、メモを貼った。
2016/04/23(Sat) 01時頃
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―― 昨晩・道端 ――
[ 困らせるつもりじゃないと>>6 小さく笑っていう日向に首を横に振る。
困っているわけではなくて、 心配だったり寂しそうだと思った相手に どんな顔をしたらいいのかわからなかったのだけど。 うまく伝わる気がしなくて、途中で諦めた。]
……?
[ 帰りたくないと何度も頷く様子に目を細めるのが見えれば 僅かに首を傾げる。 怒られるかもしれないと、本当は思っていた。 でも、帰りたくないと思っているのも事実だった。
あそこのおとなたちは皆、用事のないときは、 己を居ないものとして扱おうとしてくるから。]
(12) 2016/04/23(Sat) 01時半頃
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[昼間のうちに掃除をちゃんとしておけばよかったと、ところどころ埃が落ちている家の中を見て少しばかり後悔する。 少しため息に似た音が、彼女にも伝わっただろうか。 確かに雨露が凌げる場所であることには、変わらないのだが。
彼女に礼を言われれば、首を横に振る。 ひとりでだいじょうぶか、と首を傾げてみせたがそれより先に昼間の親子の話をされて>>9]
………、 …………。
[ ものすごく、気まずそうに視線を逸らす。 何かやらかしてしまったというのはおそらく彼女にも伝わっただろう。 だが、続いた言葉には思わず顔を上げて目を瞬かせた。]
……?
[ 悪いことをしたら、怒られるのが普通だと思っていたから。 なんだかふわふわと落ち着きない気持ちになって、いいのか、と自分より小さな彼女を見下ろして首を傾げた。]
(13) 2016/04/23(Sat) 02時頃
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[ 伸ばされた手に特に抵抗することなくされるままになる。 指先で傷を撫でられれば、びく、と微かに身体をこわばらせた。>>10]
……、……ん。
[――傷を舐めるな、水でちゃんと洗え。 かつて目の前の彼女と一緒に暮らしていた女も同じことを言っていた。 彼女――おもんがいなくなってからは、そのいいつけも守らなくなっていったけど。 不思議と目の前の彼女が、あのときのおもんに重なって。 気がつけば、こくん、と小さく頷いていた。]
[心配じゃない、と言えば嘘になるけれど。 門限までに帰らないと、長やおとなたちにまた怒られるから。 小さく、彼女に手を振って、屋敷のほうへ戻った。*]
(14) 2016/04/23(Sat) 02時頃
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肥代取り 置壱は、メモを貼った。
2016/04/23(Sat) 02時頃
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―― 祭り前日・夜 ――
[ 日向を産婆の家に連れていったあと、長の屋敷にこっそり戻る。
裏口からそっと忍び込むように戻ると、屋敷の中がなんだか騒がしい。 それを不思議に思わないことはなかったけれど、下手に手を出すと怒られると思ったから。 特に何か聞くこともなく、そっといつも自分が寝起きしている納屋のほうへと歩いていく。]
……、……。
[ 握られた手は温かかった。>>10 昔、小さな頃に婆様が手を握ってくれたときのことを思い出して。 少し、心の臓のあたりがふわふわ温かくなる。 明かりのない納屋を手探りで進んで寝床に辿り着くと、 そのままうつらうつらと櫓を漕ぎ始めた。]
(37) 2016/04/23(Sat) 11時半頃
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―― 祭り当日・早朝 ――
[ ――声が、聞こえた。
「役目を果たせ」と、 聞き覚えのない、だけど懐かしい声。]
……、……?
[ うっすら目を開ける。 手に違和感を感じて其方を見れば、いつのまに取り出したのか真っ赤な珊瑚の簪が握られていて、小さく首を傾げる。
懐に簪をしまい直して、目を擦りつつ外を見れば、既に空は白みはじめていた。
……何か、夢を見ていたような気がする。 「役目を果たせ」と言われたような気がする。 何をどうすれば良いのかは、よくわからないけど。]
(38) 2016/04/23(Sat) 11時半頃
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[ 小さい頃、婆様にも同じことを言われたことがある。 「お前の母親も、そのために村にやってきたのだ」と。 「だからお役目のためにも、お前は生きろ」と。
「婆に何かあったら里長の指示を仰げ」とも言われたから 里長にお仕えするのが、己の『役目』を果たすということなのかと思っていた。 だから、どんなに帰りたくなくてもお屋敷に戻ったし、 日々を繋ぐために里長に仕えて飯と雨露を凌ぐ場を貰って今迄生きてきた。 ……婆様に言われたことを、ちゃんと果たすために。]
(39) 2016/04/23(Sat) 11時半頃
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……。
[ 昨日からずっと、左肩に違和感がある。 ぞわぞわと皮膚の内側から擽られるような、突き上げられるような、そんな違和感。 「役目を果たせ」という夢の中の声と相まって、なんだか酷く落ち着かない。]
[ 何はともあれ、まずは起きて仕事をしないと。 とはいえ今日はお祭りだから、最低限の仕事がすめばあとは自由にしていいことになっている。
日向は、あれからどうしただろうか? あれから、特に何もなければよいのだけど。 馬たちの世話が終わったら、婆様の家に様子を見に行ってみよう。 そう思いながら、納屋を出て外に出る。*]
(40) 2016/04/23(Sat) 11時半頃
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―― 祭り当日・朝 ――
[ 馬たちの世話を終えて、婆様の家に向かう。 厨からこっそり竹筒を拝借して裏手の井戸で水を汲む。 ついでに屋敷の裏手の森に回るとそこで野苺を摘んだ。 綾崎の家は裕福だから、もしかしたら彼女にとっては美味しいものではないかもしれないけど。]
[ 村外れまで駆けていく途中、誰かの悲鳴を聞いたような気がした>>19 驚いてぱちぱちと目を瞬いたあと、嫌な予感に駆られて駆け出す。]
……、……っ!
[既に辰次が駆け出したあとだったか>>28 血の気の引いた志乃を日向が支えているのが見えた>>25>>27]
(41) 2016/04/23(Sat) 11時半頃
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……。 ……?
[ これはどういうことだろう、と首を巡らせれば。 鼻先を薄紅の花弁がよぎっていった。 ――桜が、咲いている。 咲かずと言われたはずの、桜の花が。]
[ いや、今はそれよりも。]
…。
[ 志乃と日向に近づくと、何か手伝えることはないかと身振りで訴える。 彼女たちが休めそうな場所を見つけて落ち着いたなら、 そっと水の入った竹筒を志乃に差し出した。**]
(42) 2016/04/23(Sat) 11時半頃
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肥代取り 置壱は、メモを貼った。
2016/04/23(Sat) 11時半頃
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[近づいてきた己を見てか、志乃がびくりと身体を震わせるのが見えて立ち止まる。>>47 怖がらせた、と思ってそのまま志乃から距離を置きながら、彼女が腰を下ろすのを見守った。 竹筒を渡せば、意外そうな顔で礼を言われたが。]
……。
[言われなれない言葉に一、二度瞬きをしてから、それからぶんぶん首を横に振った。]
(51) 2016/04/23(Sat) 19時半頃
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[ 桜の花だよね、と問う日向の声に頷く。>>44
ためしにひらり空に舞うひと片を掴まえれば、春には見慣れたあの薄紅が、その手のうちにあった。]
…… ……。
[ 長が死んだ。>>45 手のひらの桜を見ていたときに聞こえてきた言葉に視線を下ろしたまま一度、二度と瞬く。 それから、ほうけたような顔をして日向と志乃の顔を交互に見つめただろうか。]
(52) 2016/04/23(Sat) 19時半頃
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[ 見に行ってくる、という日向の声に>>46 ついていこうと一歩を踏み出す。 そのままあとをついていこうとして、ふと気づいて志乃のほうを振り返るが>>49]
[ 竹筒を渡されれば、素直に受け取る。 ……心配じゃないと言えば、嘘になるけど。 それでも自分がそばにいるよりは他の人間が一緒にいたほうがいいだろう。 坂を上る日向について、桜の木の下へ。*]
(53) 2016/04/23(Sat) 19時半頃
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置壱は、日向坂を上る途中、大丈夫かとその背を見やった。
2016/04/23(Sat) 19時半頃
肥代取り 置壱は、メモを貼った。
2016/04/23(Sat) 19時半頃
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―― 桜の木の下 ――
[ はらり、はらりと舞い散る花弁を見上げれば、 それは淡雪を思わせる儚げで美しい桜の花。>>54]
…
[ 坂を上り終わった先にあったのは、咲かずの桜と呼ばれていたはずの桜が美しい花を咲かせる光景と、散った桜の花弁に埋もれる物言わぬ長の姿だった。
坂が終わる少し手前で、日向に並行する位置から手前のほうへ歩を進める。 長の姿が見えたならば、無言で日向とのあいだに立つだろうか。 その死体が、彼女の目に入らないように。
とはいえ完全に隠し切れるものではないから、彼女自身が見ようと思えばその姿を見ることは容易だろう*]
(57) 2016/04/23(Sat) 21時頃
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―桜の木のそば―
[確証、と言われると>>62少し困ったような顔をするが 辰次が変わって状況を説明してくれた。>>65 それを肯定するよう日向のほうに向き直って頷く。]
……、……。
[悼むように目を伏せる日向の顔をじっと見つめる。 こういうとき、どんな顔をすればいいのかわからない。 ……婆様が死んだとき、己はどうしたのだったか。]
(79) 2016/04/23(Sat) 23時頃
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[巫女の伝承。 それはこの場にいた二人も同じことを考えていたらしい>>66>>67 困惑したような辰次の声と、どこか表情の読めない顔をした日向の声が交互に響く。 二人を交互に見つめていれば、やがて>>70>>71]
……。
[『依り代』を見つけて、殺す。 それはつまり、里の『誰か』が長を殺したということで。 そしてその『誰か』を、見つけて殺さないといけない。
……でも、その『依り代』を探す手段がわからない。 む、と眉根を寄せて俯く。 心なしか左肩の違和感が少し大きくなったような気がして 無意識のうちに右手で肩をさすっていた。*]
(80) 2016/04/23(Sat) 23時頃
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肥代取り 置壱は、メモを貼った。
2016/04/23(Sat) 23時頃
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[むぅ、と左肩をさすりながら暫く思案したような顔をしていたが、 声をかけられればきょとと瞬いたあと、首を横に振る。>>81 それから、何か思いついたか辰次の袖をちょんちょんと引っ張って。]
……ぉ、……。
[片方の手のひらを上に向けて、 反対側の手をその手のひらの上でひらりひらりと左右に動かす。 昔のこと、もっと言うならば以前巫女を封じたときの伝承を調べればわかるのではないかと訴えるが、果たして意味は通じるだろうか。*]
(83) 2016/04/23(Sat) 23時半頃
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[>>84心配そうな視線と声に。]
……、……。
[ふるふると小さく首を横に振る。 とはいえ気まずそうに視線を逸らすその姿は、 昨日あの家で叱られそうになったときと同じもので。
ごめん、と短い謝罪と共に彼女が駆け出していったのを うまく引き止められずに見送った。
仕方がないので辰次になんとか説明しようと試みるが]
……ぅ
[意図したことの半分か、下手をしたら それよりももっと通じていないかもしれない。 それでも、「ここより前」という意味ではある意味合っているので迷った末にこく、と頷いた。*]
(96) 2016/04/24(Sun) 00時頃
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[むぅ、と唇を噛んでいると、視界の端に見覚えのある姿>>93]
……、
[ちょいちょい、と辰次の手を引っ張って、 香月が長の亡骸に手を合わせる姿に視線を送った。*]
(98) 2016/04/24(Sun) 00時頃
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[ 香月の存在に気がつくと同時に、 周囲に人が集まり始めていたことにも気づく。>>102]
……。
[ 無駄だとはわかっているのだが、どうしても人の多い場所は苦手で。 なんとかして辰次の影に隠れようとする。]
……、……。
[ 香月に声をかけられれば、>>108 辰次の背後でおずおずと会釈する。 気がつけば無意識のうちに左肩をさすっていた。
香月が特別、嫌いなわけではない。 というより特別縁があったわけでもなく、たまに村のどこかで会ったときに挨拶するくらいだったが。 ただ、そのときに彼のあの目で見られるとぞわ、と左肩のあたりが粟立つような感覚を覚える。 それが、どうにも苦手だった。 妙案は出たかい?と首を傾げられれば、一瞬戸惑ったあとふるふると首を横に降った*]
(111) 2016/04/24(Sun) 00時半頃
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肥代取り 置壱は、メモを貼った。
2016/04/24(Sun) 01時頃
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[その背に隠れようとする己にかけられる小さな声。>>113 顔を上げれば、肩越しに振り返る辰次の顔が見えただろうか。]
……、
[周囲のおとなたちの視線が、肌に刺さる。 『どうしてお前が此処にいる』と 無言のうちに責められているようで、酷く居心地が悪い。 それでも、安心させようとする彼の気持ちは伝わって。 息苦しい心地が、少しだけ楽になった。]
[『依り代』を探す呪いがある、という香月の言>>118>>119 己よりずっと年長のこの男のことだから、 何もかもをその目で見透かしてくるのではないかと思ったが どうやらそうではないらしい。
そうだと言われても、きっと信じた気がするのだが。 長の亡骸を見下ろす眉間の皺>>120、 その心の機微までは己はきっと読み取れない。]
(145) 2016/04/24(Sun) 09時半頃
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[長を弔わなければ、と言われれば>>124 こく、と頷く。
そうして空を見上げれば、 曇った空とぽつり、ぽつりと鼻と頬を打ち始める滴。
(……あめ。)
さっき駆け去った日向の事も気がかりではあるけれど。 それでも雨が降りそうな中、長の亡骸を放っておくこともできなくて。
何か、己に手伝えることはあるだろうか? 辰次の袖を引いて首を傾げる。 何か手伝えそうならその指示に従おうとし、 特に何もないようなら香月と一緒に初動だけ手伝ってから、 日向を探しに行こうとする。]
(146) 2016/04/24(Sun) 10時頃
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[その場を立ち去ろうとしたとき、 丁度此方にやってくる亀吉の姿が見えた。>>125]
……、……。
[少しぎこちなく、会釈をする。 優しげな彼の面を見るたびに感じてきた、 ぐるぐるした、形容し難い己の心の内を隠すように。]
……?
[頭を下げたところで、不思議そうに首を傾げる。 いつも彼が使っている杖と、少し形が違うような。 とはいえ刀など見る機会もそうないのですぐにおいそれとわかることもないだろうが*]
(147) 2016/04/24(Sun) 10時頃
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肥代取り 置壱は、メモを貼った。
2016/04/24(Sun) 10時頃
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―― 桜の木の下 ――
[手伝おうとした矢先に、それは起きた>>129 周囲のおとなたちがどよめく。 目の前にいた辰次が声を荒らげるより早く>>134 香月が反応した>>134 肩口に掴みかからんばかりの様子は、周りの干渉を拒む何かがあった。
「村中の誰だって信用できねぇ。」 「この中の誰が魔物だっておかしくねぇんだ。」
丁助の言葉>>136が、刺さる。 肩に触れていた掌を握り締めて、目を逸らした。 それから、気持ちを切り替えるように辰次の袖を引いて 長の亡骸を村人が持ってきた布で包むのを手伝った。]
(163) 2016/04/24(Sun) 16時半頃
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[気ぃつけてな、という声に頷いてから丘を下る>>162
志乃はもう、家に戻ったのだろうか? さっき彼女が腰を下ろしていた場所にその姿は見えなかった。]
……。
[まさかあの娘が、と遠巻きに聞こえてくる声に首を傾げる。>>50 最初に長の死体を見たのが、志乃だったから? でも、あの死体に空いた穴は志乃みたいな若い娘にできるようなものじゃない。 そのくらい、己にだってわかる。]
(164) 2016/04/24(Sun) 16時半頃
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……、…………。
[――…ぽつぽつ、と雨が降る。 雨宿りをしようと立ち寄ったのは 丘からそれほど離れていない産婆の家。
戸を開けて中に入った頃には、雨足はどれほどになっていたか。 ふるふると頭を振って水滴を振るい落とす。 雨具はないかときょろきょろ家の中を探しているうちに、 見つけたのは婆様が書き残していた紙束。 物心ついた頃、よく文机に向かって何か書いたことを思い出す。 何を書いていたのか、己は文字が読めないからさっぱりわからないけれど。
あの話――巫女の伝承と母にまつわる話を聞かされたのも、ちょうどそんな書き物のついで、だったような気がする。]
(165) 2016/04/24(Sun) 17時頃
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―― むかしむかしの話 ――
[一人の旅人がいた。 旅をしていたその旅人は、あるとき訪れた村で一人の娘と出会った。
娘はその村の巫女だった。 白い百合のような愛らしい娘だったと伝え聞いている。 それは真実そうであったのかもしれないし、 或いは恋に溺れた者の欲目もあったかもしれない。
ひとつだけ確かなことは、 巫女が旅人に思い焦がれたのと同じように 旅人もまた、巫女のことを想っていたのだということ。]
(166) 2016/04/24(Sun) 17時頃
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[ 村を出るとき、二人は再会の約束を交わしたと伝え聞いている。 別れ際、巫女は旅人の身体に『印』をつけた。 「どうか無事に自分の元に戻ってきますように」と そう、祈りを込めてつけられた『印』。
――…だが、旅人は、戻らなかった。 否、戻れなかったといったほうが正しいか。
旅人にとっても、巫女にとっても不幸だったのは、 旅人がとある名のある家の、その跡取であったこと。
一度は家を捨てて巫女の元に戻ろうとしたものの、 自害しようとする母を振り切ることができず、 結局、旅人は巫女の元へは戻れなかった。]
(167) 2016/04/24(Sun) 17時頃
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[旅人が巫女の元へ出した手紙の悉くは、 父母や家の者たちによって阻まれ、巫女の元に届くことはなかった。 やがて歳月は流れ……巫女が自ら命を絶ったと風の噂に聞くことになった。
それから、旅人は妻を娶り、そうして二人のあいだには子が生まれた。 ――…旅人と同じ『印』をその身に宿して。
我が子に刻まれた『印』を見て、旅人は想った。 「今生は叶わずとも、いつか、遠い遠い我が子が その身に刻まれた印とともに彼女の元に戻る日が来るかもしれない」と。]
(168) 2016/04/24(Sun) 17時頃
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[やがて、長い歳月が流れ、 十五年前、一人の娘がこの村にやってきた。 ――…それがお前の母だと、婆様は言っていた。
この左肩に刻まれた『印』、 それと同じものをお前の母も持っていたのだ、とも。
そうして、母の形見として渡された簪も 元は旅人の持ち物だったのだとそのとき聞かされた。 かつて再会を約束した折、彼女に会ったときに渡したいと買い求めた簪。 それが代々母から娘へと受け継がれ、 そうして最後に受け継いだのがお前の母だった、と。]
(169) 2016/04/24(Sun) 17時頃
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[「だから役目を果たせ」とも言われた。>>39 お前たちが村や宮司の一族に仕えることが巫女への慰めに、償いになるのだと。 少なくとも、婆様はそう信じていたみたいだった。 だから、己もそれを信じて婆様が亡くなった後宮司の家で手伝いをしてきた。
……だけど、思う。 本当に、それが巫女の救いになるのか? 現に、『依り代』と呼ばれるものたちが現れて長は死に、 咲くはずのない、咲くべきではない桜が咲いた。 母や自分がしてきたことは、巫女にとって望むことではなかったのか?]
……、……。
[「役目を果たせ」と、夢の中の声は言っていた。>>38 鬼子の自分に何を望まれているのかは、わからない。 でもこのままにしていたら辰次や日向が殺されてしまう。 ――…それだけは、嫌だった。**]
(170) 2016/04/24(Sun) 17時頃
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置壱は、華月斎雨宿りしながら香月の言葉を思い出していた。
2016/04/24(Sun) 21時頃
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―― 村外れの家 ――
[探していた雨具を見つけたものの、なんとなく懐かしくて 見つけた紙束>>165をぱらぱら捲ってみるが、残念ながら文字は読めないので内容はわからない。 ただ、あのとき聞いた昔話も、こんなふうに書いてあったりするんだろうか、とぼんやり考える。]
[辰次みたいに、文字が読めたらよかったのにと思う。 婆様は教えてくれるつもりだったみたいだが、その前に死んでしまった。]
……、…………。
[気がつくと、空もだいぶ暗くなってきた。 片付けないと思ったが、元々この家に訪れる者などなく。 また、今度来たときに片付ければいいかと考えてしまう。 それよりも、雨がこれよりひどくなる前に行かないと。 見つけた雨具を身につけて、外へと駆け出す。*]
(184) 2016/04/24(Sun) 21時半頃
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―― 綾崎の家から外へ ――
[雨降るなか、畦道を人影を探してきょろきょろと視線を巡らせる。 あれから綾崎の家のほうへ日向を探しにいったが、結局彼女には会えずじまいだった。]
[むぅとひとしきり思案していたが、懐から笹の葉に包んだ野苺を取り出すと、できるだけ雨の当たらない場所を選んでそっと置く。 日向が外から帰ってきたら、気づいてもらえるように。
腹が減ると、気持ちはどんどん弱っていくから。 帰ったら、少しでも気持ち、紛れたらいい。 勿論、ちゃんと見つけられるのが本当は一番いいけど。
それから、一度家を振り返る。 あの人も、おもんもここで暮らしてたのだと思うと少し不思議な気持ちになる。]
……、……。
[探そう。 もう一度笠を被り直すと、雨降る外に駆けていく。*]
(185) 2016/04/24(Sun) 22時半頃
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肥代取り 置壱は、メモを貼った。
2016/04/24(Sun) 23時頃
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―― 畦道 ――
[ぱしゃぱしゃ、道をかけていると>>192]
…!
[雨の中、りん、と澄んだ音が微かに聞こえた。 この音には覚えがあった。
どこから、聞こえてきたのかと慌ててあたりを振り返れば]
「あれ……置壱?」
[不思議そうに響く、探し人の声。>>193 蹈鞴を踏む様子にわたわたと駆け寄れば、その手に絡む風鈴に目がいった。]
[彼女がこちらに抱きつくようならば、そのまま抱きとめて]
(200) 2016/04/24(Sun) 23時半頃
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……ぁ、
[戸惑うような、微かな声が零れる。 それでも、疲れたという声が聞こえれば]
…………。
[日向の頭に、それまで被っていた笠を被せる。 それから彼女の手に絡んだ風鈴を壊さぬよう注意を払いながら、その身体を抱き上げて彼女の家まで運ぼうとする。*]
(201) 2016/04/24(Sun) 23時半頃
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肥代取り 置壱は、メモを貼った。
2016/04/25(Mon) 00時頃
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