315 【La Mettrie〜存在という機械が止まる時】
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[ようやく 満たされた――]
[念願の解放を得た男は、ゆるり周囲を窺い立ち上がる。 暮夜の漆黒を背景に、纏わりつくように瞬く無数の蛍光虫。 やがては自分も、そのような光の一粒へと還るのだろう。 光をチラチラ弾く淡金髪はそのままに、同色の睫毛を持ち上げると、凡庸な茶褐色の瞳が潤んでいた]
――会いたかった 『 』
[愛おしい恋人を撫ぜる手つきに、光が踊って女のかんばせを浮かび上がらせる。 男の首にも胸にも紅い刺青は見当たらず、若者らしい健康的な肌色と体躯、険と血の色の失せた双眸。 老成と諦観の念もなく、蕩けるような笑みを浮かべた彼は、成人の誕生日の前夜――幸福の絶頂にあった『ジャルダン』の姿をしている]
(+2) 2023/01/04(Wed) 02時頃
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[押し寄せる闇波に削られていく世界。 僅かに残った白の聖域ラメトリー。 つい数刻前まで聞いていた声が、妙に懐かしく響く>>3>>4]
――もう飲まねぇよ 頼まれたって ゴメン だ
そりゃあ ラルフン中じゃ オレなんて 渇いた渇いた 血が欲しい飲みたい渇いた ばっか言ってる ヘマトフィリア だろうけどさー
違ぇから! オレじゃねぇからそれ!
[肩を怒らせ、届かないのをいいことに力いっぱい罵った。 飢餓が満たされると、不毛の表皮に覆われていた感情が噴出してきて、うまく抑制できない]
(+3) 2023/01/04(Wed) 02時頃
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でも 大事なコトは 覚えてる 忘れないで 良かった
『ジャーディン』も ちゃんと残ってる
[面映げにラルフの姿を眺めてから、やがて踵を返した]
だーかーらー すぐこっち 来ンなよ 莫ぁ迦
[ポツポツ灯る夜光虫を少数引き連れて、ラメトリーを彷徨い始めた*]
(+4) 2023/01/04(Wed) 02時半頃
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城のベッドで寝てた オンナ や 墜ちた オトコ
――見あたらなかった ミタシュ とやらも ここに居ンのかな それとも
[もう薄れてしまったのだろうか。 乱れ飛ぶ蛍光虫の群は、星空の流星群に包まれているようで、本当に綺麗で切ない。 中にはもっともっと前に、ラメトリーを訪れた者たちも、紛れ込んでいるのだろう]
(+7) 2023/01/04(Wed) 15時半頃
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あれ?
[生きていた頃の癖で、見間違いかと目を擦る。 死に際は、さっさと血を飲めと命令する寄生体に抗うのに必死で、周囲を全く把握していなかったから。 マリオとの再会を喜ぶマーゴは、当然今頃自分だけ欠けた食事の席で、みんなとスープを分け合っているものと思っていた]
なん で 嘘だろ マーゴ……?
[よく似た別人だろうと虚しく願いながら、茶色い瞳をしばたたく]
(+8) 2023/01/04(Wed) 15時半頃
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ジャーディンは、マーゴの方に手をのばしかけて、躊躇い握りこんだ*
2023/01/04(Wed) 15時半頃
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[向い合わせでお互い問い合うこと数秒。 彼女の理不尽な死にやるせなさは募るのに、少し可笑しくなって失笑した]
オレは ラルフの血でなく 『生命の導き』を 飲んだから
[生前より穏やかな口調で、紅蔦紋様も自傷の瘡蓋もない首元を、はだけて見せる]
おかげで 大事な人に 会えた
マーゴには……? 結局何も 聞けず終いだったけど 会いたいヤツは いた?
(+11) 2023/01/04(Wed) 16時頃
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そっか
[家族か、血縁か、想い人か。 事情は知らないから、どことなく、諦めた風なマーゴに、下手な慰めも思い浮かばず]
じゃあ マーゴは もう少し 生きていたかった……?
[寂しそうな華奢な肩に触れかけて、手を引っ込めた]
(+15) 2023/01/04(Wed) 18時半頃
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楽しみだったのにな 食事に誘われて 折角 マーゴが準備してくれてたのに ごめん
あの食卓を見て オレ 血ぃ貰えるより 嬉しかったんだよな
ありがとう
[ラルフに感謝を述べた時よりは素直に、声に出せた。 それでもどこか照れの残る頬を掻きながら、柔らかくはにかむ]
ああもうっ うまく励ませねぇけど だから――
(+16) 2023/01/04(Wed) 19時頃
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オレは マーゴに 感謝してる だからそんな 寂しそうな顔は
[見ていられなくて。 マーゴの頭を、髪が乱れるほど乱雑にワシャワシャ撫でる。 "誰か"の代役になんて、なれやしない]
ロイエってのか 見た見た あン時は 血ぃ美味そうなのに 勿体無い としか 思えなかったけど
マーゴは生きてる時も 知ってたんだな
(+17) 2023/01/04(Wed) 19時頃
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ジャーディンは、ばつが悪くて、手はすぐに離してしまった*
2023/01/04(Wed) 19時頃
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そもそも なんでマーゴまで 死―― オレはともかく 『生命の導き』で 助かるンじゃ ねぇのか
[フェルゼなら詳しいのだろうか。 水は彼のものではない、との言葉通り、生死をどうこうできはしないだろう。 きっと、自分たち以外にも多くの『願い』を背負って、断れず、見守っていた。 交わした言葉は少なかったが、彼の身に可能な限りの便宜は忖ってくれていた感じがしたから、恨む気持ちは湧いてこない]
(+22) 2023/01/05(Thu) 00時頃
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マーゴが 生きていれば マリオはあんなに 泣かなくて済んだのに?
まあ 順番が逆だったところで いずれはって気もするが
[未練がないと言うよりは、望むことを遠慮しているように見えた。 自分は過度に牙を剥いて周囲を威嚇して、マーゴは固く閉ざして頼るのを恐れて。 根本は似たような自衛だろうから、こうなった以上、もっと欲張りになってもいいのに、ともどかしさを覚える]
じゃあ オレもマーゴも 一緒に食卓を囲むくらいまでは 生きたかった――ってことで
……そうすりゃ マリオも 少しは打ち解けてくれたかな
(+23) 2023/01/05(Thu) 00時頃
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[不覚にも、乱れ髪に縁取られた笑みに、ドキリと肩が跳ねた。 いつも、どこか張り詰めたような緊張感を纏っていたマーゴが、あまりにあどけなく笑うものだから。 愚かしい優越感の裏で、とりあえずラルフに謝っておく]
そんな 可愛い顔も できンじゃん ――ずっと 頑張ってきたんだな マーゴは
[聞けばロイエにもマーゴにも妹がいたらしいから、気丈な振舞いの一因はそれかと納得した。 物分かりのいい、お姉さんの顔。 きっとそれも美徳なのだろうが、もう一度崩したくて、今度は眉間を軽くつついた]
もう 肩の力 抜きなよ 折角 イイ笑顔なのに 『勿体無い』
[此方も今や頚や手首に視線が吸い寄せられないのだから、清々しい気分だ]
(+24) 2023/01/05(Thu) 00時頃
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[彼らがマーゴの亡骸を言葉少なに弔った後、厨房へ向かうならふらりとついて行く。 勿論マーゴも誘って、ちゃっかり自分の席を確保すると、足を組み頬杖をつく姿勢。 生きていても死んでいても自分の眼前に器はないが、律儀に食事が終わるまでその場で、参加者の気分を味わうのだ。 未然に叶えられてしまった焦がれた光景より、陰鬱な空気にはなっていただろうが]
――飲んでみたかったな
[まともな味覚を失って久しく、そもそも血以外の味が思い出せない。 温かそうなスープからたちのぼる湯気が、そんなはずないのに目に沁みて、そっと目頭を押さえた*]
(+25) 2023/01/05(Thu) 18時頃
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ジャーディンは、エンジェルシイラの咆哮が、世界の軋みのように聞こえた*
2023/01/06(Fri) 00時頃
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