208 【突発誰歓】ーClan de Sangー【R18薔薇】
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……馬鹿正直に話したきゃ話せばいいじゃねぇか。 珍しいことでも、ない、……
[例えば二人まとめて風邪を引いたとして。 その原因を明日以降、覚えていられる保証はあるのだろうか。 包帯を変える手付きこそ覚えていれど、交わした会話は覚えていない。 きっとこれも、そんな風に忘れてしまう事の一つになるのではないだろうか。
そんな予感を振り払うように、目を閉じる。目を開く。
どちらが衝動に負けているのか、もう、わからない。 強制力のない懇願は、その返答>>303に振り払われる。 それに向けた視線は、僅か不満の混ざるものだった。 けれど、続く言葉に一瞬だけ瞳は丸く見開かれて。]
―――……、あ、ァっ、
[何と返すか躊躇っているうちに、肌に刻まれる赤い跡。 包帯を避けるように残された朱に、かっと肌が熱くなる。 そんな風に熱を帯びた肌に唇を押し付けられていれば、男女の交わりとは違う、愛撫を受ける側であっても熱は集まるというものだ。]
(7) 2014/12/24(Wed) 09時頃
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仕、置き、……?
[ぼうっとした声で、クアトロの言を繰り返して 下衣を寛げさせる動きに、自ら腰を浮かせ、早く開放を、と無言で強請った。 クアトロ以外。そう、今は、クアトロだけを。
これからも、と、彼が内に抱くとは知らず、見下ろすのは白いバンダナの巻かれた腕。 汚すぞ、と静止することもできないでいれば、そっと指先でその結び目に触れた。]
……っ、そんな、……焦らすな、よ…… あ、っ、 ……あ、 ァ、
[声を跳ね上げ、身動ぐ度に、背の方でじわり、じわりと滲む感覚。 伸ばした指先を見上げる瞳の方へと伸ばせば、普段はバンダナの下にあるその髪に触れた。
堪え性は、元より無い。 熱を放ったのは、その口の中だったか、外だったか、―――それとも寸前に堰き止められたか。
何れにしろその唇が離れたならば、次は自分の番だと言わんばかりに、荒い息の中、姿勢を入れ替えるよう促しただろう。 されるばかりは、性に合わない。*]
(8) 2014/12/24(Wed) 09時頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2014/12/24(Wed) 09時頃
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っは、ぁ、…… ……ッぁ、 あ、 ――――― ……、
[果てる瞬間上がるのは、一際高い声。 その唇の向こうに放った熱を飲み下すのを見下ろすようにしながら、荒い息のまま体を起こす。 貼りついていた背のガーゼが、包帯の内で剥がれていく。 その感覚に眉を寄せながらも、熱のまわった上体を起こした。]
……次、交代、 俺ばっかじゃ不こ……
[不公平だ。 そう告げようとした言葉が途切れたのは、額を叩く軽い衝撃によって。 先程まで熱を孕み、見上げる視線を潤ませていたのは何処へ行ったか。
ぱち、と呆気にとられるように瞬く。]
(25) 2014/12/24(Wed) 15時半頃
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[繰り返される、「仕置き」の言葉。 付け加えられる、「また今度」の言葉。
僅かに眉を寄せれば、大袈裟に溜息を一つ。]
……物覚え悪いの、わかってるくせに。
[わざとらしく、唇を、尖らせる。]
(26) 2014/12/24(Wed) 15時半頃
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……悪い、 ……今日は寝る。 『また今度』……続き含めて全部、しようぜ。
……包帯変えて。
[そう告げて、顔を寄せれば頬に唇を押し当てる。 挨拶のように、触れるだけで離れれば、首を傾げて返答を待つ。
どうせ包帯の結び目は、自分じゃ上手く解けやしない。*]
(27) 2014/12/24(Wed) 15時半頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2014/12/24(Wed) 16時頃
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― 翌朝 自室 ―
[良くない夢を見た。 けれど、その夢の内容すら曖昧だ。
曖昧なのは、夢の事だけだろうか。 昨晩、交わした言葉がもう、曖昧だ。 相手がクアトロであったことは、覚えているのだけれど。
寝台の上、そんなようなことを考えながら体を起こしたのはきっと朝食のベルが鳴るよりずっと前。 昨日立てた、今日の予定を思い出しながら寝台から抜け出る。
洗い物を入れた籠を抱え、早朝の空気の満ちる廊下を行く。 下位の者に頼むという発想は、無かった。 働く事の方が性に合っている。 それはきっと、此処に来る前からもそうだったのだろう。
裏庭に出れば洗濯道具を引っ張り出し、朝陽の元、汚れたシャツを手で洗っていく。 自分がここに来て、何年が経っているのだろう。 洗濯道具だって、もっと便利なものが登場しているのだろうが、気付けば手に馴染んだ方法を用いていた。]
(31) 2014/12/24(Wed) 16時頃
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[深い紺のシャツを、洗剤を溶かした水へと浸す。 黒く固まった血液が、じわりと溶けては泡に紛れていった。]
……借り、返さないと……
[誰かに、貸しを作っていた。 ただそれだけを断片的に思い出せば、慎重にその糸を手繰ろうと試みる。 せめて、誰が口にしたのかという事だけでも、思い出せれば。
けれど、細く弱い記憶の糸が切れてしまえば溜息を一つつく。 無駄だと、わかっている。 いつだって、そんな風に忘れていくのだから。
ゆるりと首を一つ横に振れば、紺に紛れてしまった黒い赤を洗い落とすべく、洗濯作業へと没頭していく。*]
(32) 2014/12/24(Wed) 16時頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2014/12/24(Wed) 16時頃
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― 晩 自室にて ―
ん。……あとついでに、軽くで良いから汗拭いて。
[布はそこ、新しい包帯はそこに、と其々の方を指差して。 図書館でそうする様に、寝台の上に腰かけたまま、背を向ける。
解かれる包帯、露わになる背。 ガーゼをあてる手つき、包帯を巻く仕草、これらの感覚は、よく知っている、覚えている。
触れた唇に上がりかけた声を飲み込めば、灰のシャツに袖を通す。 その最中、腕に巻いたままのバンダナの存在に気付くだろう。 いいのか、と、視線で問うも、言葉が得られなければ詮索はしなかった。 促されるままに、寝台へと横たわる。]
……部屋、戻っていいぞ、
[そう告げるも、きっと彼は部屋を出ない。 観念したように目を閉じれば、寝息が聞こえだすのも直ぐだろう。 額に触れた唇に、くぐもった声にならない音を発して。]
(39) 2014/12/24(Wed) 17時頃
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― 朝 裏庭 ―
[裏庭の一角、適当な木にロープを張れば、洗った服を干していく。 残り半分といったところでベルの音が聞こえれば、自然、手は焦るものとなるだろう。
それでも、地面に落とすといった失敗はせずにすべてを干し終われば、捲っていた袖を解く。 その片腕、包帯だけでないものが結わえられていることをようやく思い出すか。]
………
[あの時、このバンダナを腕に巻いた彼の真意はわからない。 貰ってしまってもいいものなのだろうか、それともこれは借りたものだったか。 どうしてこうも、記憶が曖昧なのだろう。 他の者よりもずっと、ずっと記憶が残らないのは何故なのだろう。
脳裡に甘く響くのは、吸血鬼の「忘れてしまえばいい」という、幼子をあやすかのような言葉。
結び目に軽く触れ、暫し浸るように考え込んだ後。 袖を元のように戻して、掃除道具を戻しに向かう。 開いた襟の奥、鎖骨に残る紅い跡は未だ、思い出せず。]
(41) 2014/12/24(Wed) 17時半頃
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― 食堂 ―
[食堂まで早足で向かえば、いつも通りの定位置に腰かける。 隣席に、いつもの姿は既にあっただろうか。
椅子につけば、皿に乗せられたクロワッサンを取り、端を一口齧って。]
……、
[何をしているのだ、と、我に返る。 まだ、席に誰が着いているのかも確認していないというのに。
―――― こんな失敗、した事は無かったというのに。
食べかけのクロワッサンを皿に戻せば、行儀悪く片膝を抱える。 「食えよ」と言う声と、「待て」と告げたかつての声と。
包帯の向こう、痛まぬ筈の傷が疼く気配。 膝頭に額をつければ、目を伏せた。]
(43) 2014/12/24(Wed) 17時半頃
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……木乃伊じゃない、……です。何度も言わせんな、……言わせないで、ください。 一回くらい、まともに、ヒューって、……呼んで、……
[冗談めかした言葉に反論する声は、言い淀む。 僅か、と称するには少し長い時間の間の後、緩やかに首を横に振った。
この声が、自分の名を正しく呼んだことは、ある。 それも、つい昨日の事だ。
何故、それを直ぐに思い出せないのか。 きつく、眉を寄せる。
忘れればいいと、遠く囁く声。 本当に、忘れてもいいのだろうか。 答えが見つかる前に、その疑問すらも遠のいていく。]
(53) 2014/12/24(Wed) 19時頃
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……発音できないわけじゃないんなら、名前で呼んでください。 それに、俺はこの色、気に入ってるんで。 チョウスケさんには、見窄らしく見えるかもしれねぇけど、……
[皿の上に手を伸ばし、一口を齧ったところで言葉も、動きも止まる。 まだ温かなクロワッサンはさっくりと香ばしく、バターの香りがした。]
そう、……ですね。 ……美味い、……です。
[パンを皿に戻し、顔を伏せながら、食事を始めるチョウスケへと答える。 言葉に嘘は、無かった。]
(54) 2014/12/24(Wed) 19時頃
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……覚えていた、けど。 いつ、忘れるかわからない、……。
[絞り出すように、吐き出す声。 もっと、色々な事を忘れているのではないだろうか。 大切に、覚えていなくてはいけないようなことも。
見窄らしい色、上等な色、ときて、次は“同じ”赤毛頭と。 僅か、顔を上げればクロワッサンを齧る横顔に視線を向け苦笑する。
そのパンが、半分ほどの大きさになるまで食べ進められたところで、自分も改めて皿の上へ手を伸ばすだろう。 さくりと、その表面に歯を立てて。]
……そういえば、裏庭に洗濯紐を張ったんだけど。……ですが。 洗う物あれば、洗っておくけど、……何か、言ったか? [籠ったような独り言>>56は、よく聞き取れず。 問い掛けながら、首を傾ぐ。]
(57) 2014/12/24(Wed) 20時頃
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[小突かれるままに、傾げた頭は揺れる。 そう言われてしまえば、深く追及はできない。
何でもかんでも、という言葉に、視線を逸らす。 最後の一欠片を、口に運んで。]
……働いている方が、好きだから。 だから、別にチョウスケじゃなくても良い、んだと、思う、……思います。
けど、一番俺に、色々押し付けてくれるの、チョウスケだから。 ……迷惑なら、控える、ます……。……主に何か、仕事を貰うから。
[掃除にしろ、洗濯にしろ。 チョウスケならば、何か仕事を与えてくれるのではと、勝手に抱いた期待だ。 甘えていたのだと、思う。 それは、部屋の掃除を任された回数が、一度や二度で無かったからだろうか。
同じ赤の、違う髪色の方へと視線を戻せば、顔色を窺うように。]
(65) 2014/12/24(Wed) 21時頃
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[もてなしを期待して、この屋敷に来たわけではないのだと、思う。 もしそうならば、こんな風に仕事を探して回っている筈は、ないのだから。 けれど、主に抱く想いは、「救ってもらった」という、ただその言葉だけ。 今も揺るがずにそれを抱き続けられるのは、何故だろうか。
館の掃除をという言葉に、小さく頷く。 当然だ、10人を超える人間が十分に生活できる空間なのだから、二人では到底手が回るまい。 調度品の少ないところから、勝手に着手していこうか。 館内にいれば、何れ誰かに仕事を任されるだろうし。 何も無ければ、読書へと戻ればいい。 今の章を、何度読んだかも忘れてしまったけれど。
そんな風に、大体の計画を立て終えれば、空のカップをテーブルに戻し、席を立つ。]
……ニコラスは、……何か、洗い物とか、あるか? あったら廊下出しといて。 簡単なものなら俺が洗っとくから。
[常通り、優雅な仕草で席へと向かう、もう一人の下位の者へとそう声をかければ、食堂を後にした。]
(74) 2014/12/24(Wed) 21時半頃
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ヒューは、丁助がまだ席にいたのならば、軽く頭を下げて席を離れただろう。
2014/12/24(Wed) 21時半頃
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― 廊下 ―
[掃除道具を取りに向かう為、小走りに廊下を行く。 すれ違う姿が上位の者だったのならば、少しその速度も弛んだだろう。 ついでに、ぎこちない敬語で洗濯に出すものは無いかと問いかけでもしたか。
室内用の箒を取り、適当な場所に見当をつければ慎重に掃き始める。 長い柄が窓にぶつかってしまっては大変だからと、慎重に、慎重に。 一角が終わればゴミを塵取りにとり、また次の区画へ移る。 ゆっくりとだが着実に進んでいけば、“それ”は落ちているのだろうか。
くしゃりと丸められた、厚手の紙。 誰かのゴミかと思いながら、端にちらりとみえる彩度の高い色に興味を惹かれた。 丸まった端と端を持ち、軽く力を籠めて、広げて。]
………? ッ、 うわ、ぁ、 ッと、 ……あー……
[一瞬、そこに何が描かれていたのか、理解が出来ずにいた。 その拍子に手から離れた箒は、見事に庭に面する窓を叩き割る。 結構な音が響いたと、焦りながら落ちた破片に、手を伸ばして。]
(81) 2014/12/24(Wed) 22時頃
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……痛っ、
[鋭い切っ先が、指先に触れたのはほんの一瞬。 けれど、傷を作るには十分な時間。
始めは細い裂け目だったそこは、みるみるうちに血を溢れさせる。 ぷくりと膨らんだ血液の粒は、そのまま指を伝い、ぽたぽたと床に落ちた。
その様子を、呆気にとられたような表情で、見ていた。]
………痛、い、
[既に、いくつも傷があるから、すっかり忘れていた。 新しい傷なんて、久しく負っていなかったから。
傷の痛みとは、こんな痛みだったか。
口を半開きにしたまま、血を流す手と広げられた皺だらけの写真を、交互に眺めていた。*]
(82) 2014/12/24(Wed) 22時頃
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[その頼みを聞き入れたのは、ざっと区切って何区画目の廊下を履いていた時だったか。 廊下の向こうから歩いてきた姿に用はないかと聞けば、代わりに拳が振ってきた。
俺がなにをしたのだろうか。
鈍い痛みの残る側頭部が、昨日とは逆の方向だとは気付かない。 頭を抑えながら、それでもシーツとガウンをと言われれば、この区画を掃き終わったら向かう、と答えただろう。
そして、履き終わる前に、ガラスを割ってしまったわけで。
流れる血液の勢いは、見ている内に収まるだろう。 そのうちに瘡蓋が出来て、傷があったことすらわからなくなる。
傷というのは、そういうものの筈なのに。]
……えーっと、 まず、掃除して、……ガラス割ったこと、言いに行って、それから……
[そんな風に、これからするべきことを順序立てていく。]
(95) 2014/12/25(Thu) 00時頃
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……
[主にこの写真を見せたら、何か聞けるだろうか。
写っている面々は、ここにいる者達だろうか。 何時の写真だろう、下手くそな作り笑顔を浮かべて写っている赤い髪は、紛れも無く自分だ。
尻ポケットに写真を突っ込み、ガラスの破片を塵取りに集めていく。 陽の光を受けたガラスの破片は綺麗だったけれど、だからといって放置してはおけない。 裸足で歩く者の事を考え、少しばかり念入りに掃いた。]
……よし、……捨てに行ってから、主のとこ行って、謝るかー……
[ため息混じりにその場を離れる。 足取りは、駆けるような早さ。
ガラスの破片を捨てに向かう最中だったか。 それとも主を探す最中だったか。 弾みで写真が落ちた事には、気付けない。*]
(96) 2014/12/25(Thu) 00時頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2014/12/25(Thu) 00時頃
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[―――写真の不在に気付いたのは、主を探して屋敷を駆けまわった後だった。
どこで落としたのだろう、探しに行っていては、ライジに頼まれていた仕事が遅れてしまうか。 未だ、ガラスのことも謝れていないというのに。
仕方なく、一度部屋に戻れば、「俺が割りました ごめんなさい ヒュー」とだけメモに書き、割れた窓に貼り付けておく。 主が捕まらなかったのだから、仕方がない。 ついでに短く切った包帯を、先程切った指先に結わえた。 こちらは、すでに血が止まっているのだから無意味な気がしたが。
それから、向かったのは施設内、主に次いで最も血の強い男の部屋。 施設の備品を漁りに漁って、新たなシーツとガウンとを手に扉を抜ける。 何か嗅ぎ取ったか、ぐっと眉を寄せれば、まず窓を開いた。 お構いなしだった。
次に向き合うのは、部屋の中央のベッドだろうか。 シーツを張るのは苦手なんだよなぁと、不器用らしい独り言をぶつぶつと呟きながら、作業にとりかかる。 決して良くない手際で作業をしながらも、あの写真の事だけは妙に引っかかっていた。**]
(97) 2014/12/25(Thu) 00時頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2014/12/25(Thu) 00時頃
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[昼餉のベルを聞いたのは、中庭に出した洗い桶の中、回収したシーツを踏み洗いしている時だった。 今はもう人の居ないライジの部屋には、シーツの交換を終えたベッドの上、新たなガウンが置かれている。
このまま昼食に向かうかとも考えたが、この作業が済んでからの方が良いだろう。 ベルが鳴ったという事は、主はいつも通りの場所に居る、ということだ。 そう判断し、シーツの濯ぎを再開する。
結局張ってあった洗濯紐では足りず、新たに用意した洗濯紐へとシーツをかける。 皺にならない様に数度張ったが、改めてアイロンが必要になるだろう。 流石に其処は、自分は関与できないのだが。
洗い桶を元のように戻し、遅れただろうかと小走りに食堂へと向かう。 皿を前に椅子に座り、そのまま艶々と明かりを受け照るクロックマダムを取って。]
………
[また、一口齧ったところでまだ温かいそれを皿へと戻す。 眉を、寄せた。*]
(149) 2014/12/25(Thu) 14時半頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2014/12/25(Thu) 14時半頃
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[しかめ面のまま目の前の皿と向き合っていれば、テラスから二人分の気配が戻る。 一人は定位置通りに隣の席に。もう一人はすぐ傍らの席に。
温かいうちにという言葉に、微か眉を下げて溜息のように息を吐く。 隣が食べ始める前に、そろり伸びた指は、傍らからの声に止まった。]
……犬じゃ、ない、
[苦く、吐き出すのは否定の言葉。 どうしてこうも此方の精神を逆撫でる言葉を選び出せるのか。 こんなに、反抗心を煽るような事ばかり言うのか。 下唇を、噛み締めて。
自分は決して、彼の言葉に従ったわけではない。 そう言い聞かせながら、食べかけのクロックマダムに手を伸ばし、歯を立てて。]
……
[手、という言葉に、視線は自らの掌へと向く。 瞬き。]
(163) 2014/12/25(Thu) 16時半頃
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[水仕事も、掃除も、自分にこなせる事なら何でも引き受けてきた。 そんな掌は、決して綺麗な手とは呼べないものだ。 加えて、先程硝子で切った指先もある。 雑に巻いた包帯の端は、みっともなく解れていた。]
………、それが、何か
[噛みちぎったクロックマダムを飲み込みながら、問いで返す。
言葉の端々に見え隠れする棘々としたものを、隠そうとはしない。]
(164) 2014/12/25(Thu) 16時半頃
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[彼の言葉は、ひどく捻くれて聞こえる。 気遣う言葉を口にする一方で、犬と称する事は否定しきらずに。
果たして、彼の真意はどちらなのか。 既に苦手意識で凝り固まっている以上、公平な目で探れない自信があった。
強制のない声で守れるかと問われれば、下唇を噛み締めたまま俯く。 かつての言葉も、彼の言葉も、自分より上の者からかけられた言葉に、変わりは無い。
そして、かつての言葉を守らずとも、飛んでくる鞭はもう、無い。]
……はい、
[命令ではない、だから拒絶もできる。 けれど、そういって頷いたのは何故なのか。
真意に触れられないまま、僅か目を伏せた。 内を苛立たせる声から、自らを遠ざけるように。]
(173) 2014/12/25(Thu) 17時半頃
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[目を伏せたまま、一口、二口と食べ進めていく。 どちらがいい、という選択肢。
意地悪しろ、なんて頼む方はどうかしていると思うし、だからといってこいつに優しくしろ、と言うのも気が引ける。 答えを口にできないでいれば、食事もそこそこに彼は席を立つ。 厨房へと向かった背中が再び戻って来れば、無意識に向けていた視線を手元へと戻した。]
……手、?
[パン屑の残る指先を軽く払い、言われるままに手を伸ばす。 指先の包帯が解ければ、まだ瘡蓋も新しい切り傷が露わになるだろう。 荒れた掌は、彼の手の中へと収まって。]
蜂蜜?……っちょ、 うぁ、
[とろりとした粘性のそれが、ジェレミーの手を介して自らの手指に塗り込められていく。 触れられたことにより、人肌に暖められた蜂蜜から漂う、甘い香り。
力を込められた方向が悪かったのか、指先の傷はぱくりと口を開き、じわりと出血と痛みを齎した。]
(174) 2014/12/25(Thu) 17時半頃
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[唇を噛む癖が、いつごろついたものかわからない。 記憶が無くなっても、体に癖として残ることがあるのだろうか。 唇に触れた指に、噛みつかなかっただけ褒めてもらいたいものだ。]
……そう、ですね。 主は、料理が上手いから。
[自分のために用意された、温かな料理を、温かなうちに。 主の料理は冷めていたって美味である。 けれど、時間のおかれたものとはまた、段違いに美味しいと感じた。 食事に集中しかけていた意識は、問いかけに引き戻される。]
……褒美?
[何の、何に対する労いなのか。 自分はジェレミーの命令に従った、自分は美味しい食事が摂れた。 それだけで、終わりではないのか。
困惑のうちに、その背は厨房へと消える。 戻ってきたその手には、蜂蜜の容器があったのだろう。]
(187) 2014/12/25(Thu) 19時半頃
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[解かれた指先の傷は、体に刻まれた幾つもの傷の中で最も新しいもの。 痛みを齎す、“普通”の傷。 再び開いた傷跡に、塗りこまれる蜂蜜に指先が震える。]
……ぃ、……
[痛いと訴えたところで、自らの弱みを晒すだけだと悟れば、そっと声を飲み込んだ。
滲んだ血液すらも、蜂蜜とともに塗り込められていくような錯覚。 触れた掌が妙に温かな気がして、居心地が悪かった。]
(188) 2014/12/25(Thu) 19時半頃
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[やがて、蜂蜜は洗い流される。 温められた体温も、風にあたっていれば消えていくのだろう。
手荒れにいい、と言われても、自分には違いがよくわからなかった。 いつだってこれが、自分の手なのだから。 拭われても尚、しっとりと塗れた掌を、薄く開いた赤の瞳は見下ろして。]
……え、でも、まだ、 廊下の掃除が残って、
[今日は雑用をするな、その言葉に反論をすれば、それは命令と切り替わるのだろうか。 何故、という戸惑いを、表情は隠しきれず。
真意を探れぬまま、褒美について言い残してジェレミーは“先約”の方へと向かう。 後に残されたのは、掌を見下ろし眉を寄せる姿のみ。]
……褒美って、何だよ……
[午後に立てていた予定を全て潰され、目の前の皿を空にしても暫し、食堂の椅子に腰かけていたか。*]
(189) 2014/12/25(Thu) 19時半頃
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[空の皿を前に呆然としていれば、食事もひと段落となるのだろうか。 皿の片付けを手伝おうと立ち上がりかけるが、それも“雑用”に含まれるのだろうかと思うと、浮きかけた尻も元の位置へ。
ぱたり、ぱたりと椅子の上、足を揺らして思案する。
誰が犬だ、何がしつけだ。 それならお前は飼い主なのか。
ふつふつと湧き上がる怒りを、ぶつける相手は既にいない。 八つ当たりをする気にもなれずにいれば、足を揺らす速度は早まる。
何が、与える、なのだ。 自分が求めているものを、まるで持っているかのような口ぶりではないか。 自分が求めて、欲して、――――]
………、
[欲しいものとは、何だろう。]
(206) 2014/12/25(Thu) 21時半頃
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[暫くの時間の後。 揺らしていた足を止め、椅子から立ち上がる。 真っ直ぐに、裏庭までの道を行く。
今日は天気がいい。きっと、洗濯物の乾きも直ぐだ。 後に干したシーツの方は未だ濡れているだろうが、先に干したシャツだけでも回収しておくことにする。
雑用をするなとは言われていたが、朝の仕事の続きくらいならば許されるだろう。 その後の予定は、その後で決めることにして。
日当たりは悪くないが、決して開けた場所ではない裏庭は、密かに気に入りの場所だった。 気に入り、というよりも、妙な既視感とそれ由来の安心感からか。
乾いたシャツを片腕にかけ、窓越しに施設内を見る。 廊下や談話室、娯楽室。カーテンの隙間から本の柱を覗かせる、図書館。 真っ直ぐに庭へと続く、刈り揃えられた植え込み。]
………、
[シーツ以外の回収を終えれば、木に拵えた不格好な結び目を解き、絡まらぬように慎重に、輪の形へと束ねていく。*]
(207) 2014/12/25(Thu) 22時頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2014/12/25(Thu) 22時頃
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[洗濯紐を束ね、シャツと同じ腕に通して。 さて部屋に戻るかと顔を上げた時、来訪者は現れるか。
濡事という、自分は決して使わない言葉が発せられれば、緩く首を傾ぐ。 少々の間の後、シーツの事と悟れば、はっと思い至る顔。]
……やり直した、方が?
[罰の悪そうな顔で問うも、依頼主の返答はどうだったか。 背後、緩くたわむ紐にかけられたシーツが、風に揺れている。]
……あぁ、えっと、今日はこれで終わり。……です。もう、今日は何もするな、って。 だから、もし何かあるんなら、明日とかにして貰えれば。
……とりあえず今日はもう部屋戻って、本の続きでも読むかなぁ、って思ってて、……です
[そう、この後の予定を口にする表情は、苦笑と呼べるもの。 何か頼みたい事があったのならば、申し訳ないとは思いつつ。 それでも、彼の方が上位ではある。ジェレミーの言葉など、その血の力でもって跳ね除けてしまうのだろう。]
(210) 2014/12/25(Thu) 22時半頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2014/12/25(Thu) 22時半頃
負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2014/12/25(Thu) 22時半頃
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[まさか彼すらも、自分を犬のように思っているとは思わない。 日頃、裸にガウンを纏って歩く姿。 住む世界が違うような気が常々していたせいで、距離を自然と取っていた。 だからこそ、表情から何かを読み取ることは難しい。
やり直しが不要と聞けば、どこかほっとしたような表情を浮かべる。 それにはやはり、ジェレミーの言が大きく響いているのだろう。 洗濯物を取り込む事すら、どこか後ろめたかったから。 確認するように繰り返された言葉に、小さく頷く。]
……手が荒れているから、雑用はするな、って。
[誰の、とは告げず、何故か、だけを口にする。 そこに興味があったかどうか、自分は知る由もない。]
(215) 2014/12/25(Thu) 23時頃
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―――……よ、
[読み聞かせ、と言ったか。
命令ではない、と本能が察す。 けれど、尊大な口調には、有無を言わせぬ物があった。 確かに読書をするとはいった、けれど読書の速度は牛の歩みのようなもの。 とてもじゃないが、上位のものに聞かせられるようなものではない。]
あっ、あのっ、俺……本、読むの遅くて、 …… とてもじゃない、けど、人に聞かせられるようなものじゃ、
[咄嗟にそこまで言えば、口を噤む。 足元を見て、手元を見て、そうしてその顔をそろりと見て。 視線を彷徨わせた後、唇を恐る恐ると開いて。]
……それでも、いいなら、……
[如何されますか、と伺うような声。]
(216) 2014/12/25(Thu) 23時頃
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……そう、手、が、
[荒れているのだと、言うよりも先に手は取られるか。 あまり見られて心地の良いものではない。 荒れている自覚はあるのだし、元より傷の多い手だ。 何となく気不味くなって、視線を逸らしていれば指先に触れる、舌。]
っぇあ? ちょっ、 …… あ、 あぁ、えっと ……あぁ、蜂蜜、です……手荒れに効くって、言われて、その。
[そんなにも、甘い香りが残っていたのだろうか。 掌へと蜂蜜を塗り、洗い流していく手付きを思い出し、ぐっと眉が寄る。]
……じゃぁ、一度俺の部屋寄れますか。 読みかけの本があるから、……それ、取ってくる。
[眠るというならば、部屋は必然的にライジの部屋となるか。 促されるまま足を進め、途中で自室に寄り、本を取ってくるだろう。
世界の民話が集められた、装丁こそ豪華ではあれども内容は子供に向けたものだ。]
(219) 2014/12/25(Thu) 23時半頃
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[それは暗に、自分の部屋なら汚れてもいいと口にしているようなものなのでは。 汚れるとは、一体何をしでかす予定なのか。 自分は、本をただ読むだけではないのか。
それらの事が勿論口に出される事もない。 本が全て移された後の寝台は、常よりも広く空いている。 とはいえ、ライジの部屋のものよりは小さなものだろう。
踏み込む背中を止めはせず、彼が何処かに腰を落ち着けたのならば、自分は適当な椅子を引き寄せただろう。 積まれた本の一冊、御伽噺とも呼べないような、民話を集めたもの。 どこまで読んでいたか、この際ならば初めから読み進めてもいいだろう。
引き寄せた椅子に腰掛けながら、初めていいかと視線で問う。]
(223) 2014/12/26(Fri) 00時頃
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[何だか妙な取り合わせだ。 景色は変わらぬ自分の部屋だというのに、主の次に敬うべき存在が、堂々と寝台に横たわっている。 椅子に腰をおろしかけながら、そんなことを思っていたが。]
……あ、……はい、
[そんな風に言われて手招きなどされれば、もう頷くしかないではないか。 できるだけその体を揺らさぬように、そっと寝台の際へと腰を下ろす。 古い革の表紙を、そっと開いて。]
じゃぁえっと、……つまらなかったら、寝てて、いいから。……いいですから。 ……夕飯に起こすんで。
[そう、前置いて。]
……むかし、むかし、……ある、ところに、……
[文字の一つ一つを、指先でなぞりながら読み上げていく。 文字に慣れていない頃は、今自分がどこを読んでいるのか、わからなくなることがよくあった。 その習慣は、今でも抜けていない。]
(230) 2014/12/26(Fri) 00時半頃
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……その、子供は、……よく、働き……
[どんな話だったか、読み始めでは忘れていたが、読み上げるうちにだんだんと結末を思い出していくだろう。 救いも、何もない話だ。
幸せな終わりからは程遠い、民話らしい民話。 内容が薄いとはいえ、読むのに時間はかかるだろう。
時折紙面から顔を上げれば、眠っていないだろうかと確認をする。]
(231) 2014/12/26(Fri) 00時半頃
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……俺に読める話なんて、限られてます、から……
[不服そうな顔に、苦笑する。 最上位ともなれば、年齢も相応に重ねている筈だ。 こんな子供向けの本なんて、はじめから向いていないに決まっている。
けれど中断もせず、眠りもしないで聞いていてくれるのに、少し安堵したか。 読み終わった本を、ぱたりと閉じて。]
……いや、読み終わった話なら、すぐ読めるかな、って あんまり、こういう話は、……
[救いがない話は、あまり好かない。 好かぬ話をされても困るだろうけれど、読み終わった話がこれだけしかなかった。 ただ、それだけなのだと信じたい。]
(238) 2014/12/26(Fri) 01時頃
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[二度三度、重ねて告げられる謝罪に、何のことかと瞬く。 その手が髪に伸びれば、かつて齎した二度の痛みを薄らと思い出すか。
あぁ、と小さな声を上げて。]
元より頑丈なので、気になさらず。 多少のことじゃ、俺は壊れない。……です。
[包帯を巻いた体では、説得力もないだろうが。 へらりと、口角を上げる。]
(239) 2014/12/26(Fri) 01時頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2014/12/26(Fri) 01時半頃
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[伸びてくる手に、微か目を細める。 ここ数日、この手や足に側頭部を殴られてきた記憶ばかりなものだから、そんな風に笑むのはきっとその差異からなのだろう。 逸らされた視線を追うことはない。 ただ自然、背筋は伸びる。]
………、
[夢を覚えていられるのは羨ましい、とは、その様相を見ていては口にできなかった。 覚えていることが、良いことばかりとは限らないから。]
(258) 2014/12/26(Fri) 20時頃
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[毛先を弄んでいた指先が、胸元へと伸びる。 残る情事の跡には、鏡を見ぬ身では気付かず首を傾ぐ。 広げられる襟と、覗く包帯。 自分では結わえられない位置にある、結び目。]
……後で、巻き直して貰えるなら。 それに、……綺麗なものではない、ですよ。
[塞がらぬ傷の他にも、癒えた後の古傷もある。 幾つも、幾つも刻まれた 手と同じく、荒れに荒れた身体。
結び目を解く事ができなければ引き出しから鋏を取り出すだろう。 ガーゼはまだ、そこまで汚れていない筈だ。**]
(259) 2014/12/26(Fri) 20時頃
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[放胆、と音なく唇は追う。 彼の言葉はどこか硬く、難しく。 育ちの違いなのだろうか、自分にできるのは、響きである程度の意味を予測することだけ。]
っぃ、……ぅ、
[手渡した鋏が、乱暴に包帯を割いていく。 時折触れる刃先が、ひやりと肌を撫でていく。 行き場のない指先は、そっとそのガウンを掴んだ。 それでも、動くなと言われたとおり、一通りが済むのをじっと待つ。 新たに傷ができたのなら、それもまた指先のように痛むのだろうか。
それは、胸の内に留めた。]
(262) 2014/12/26(Fri) 22時半頃
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……痛くはない、けど、……血は、止まらなくて ぁ、……ッ、い、
[抱かれるように傾いだ体。 触れる息に、指先に、震えた息をその胸に押しつける。 痛まぬとはいえ、皮膚の薄い部分なのだ。 その指先が傷に触れる度、ガウンを握る指がぴくりと震える。]
………、
[問いかけに、暗い赤の瞳は薄く、開かれる。]
……旦那様に、口答えなんてしたら、……余計、酷くなる、から、
[耳よりも深くに響く、呻くような喚くような声は、今は遠い自分の声。 きつく、指先を握り締める。]
(263) 2014/12/26(Fri) 22時半頃
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痛いのは、嫌だ、…… ……死にたく、ない、……
[譫言のように、懇願の言葉を吐き出す。 額を押し付け、硬く目を閉じた。]
(264) 2014/12/26(Fri) 22時半頃
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……犬じゃない、です……。
[その否定を、ここに訪れて何度口にしてきたか。 胸元に顔を押し付けての否定は、篭った音となるだろう。
ガウンを握る指の力は、緩むことはない。 背に触れていた指が顔へと近づけば、鉄錆の香りに瞼を開く。 最も傷の多い背を撫でていたのだ、じわりと滲む赤に、きっとその指先は汚れてしまう。
馴染んだ血の香りだと思っていたのだが、どうやらそうでもないらしい。 は、と、短く息を吐き出して。]
……ほん、とう、に?
[薄く開いた唇が、微かに声を紡ぐ。 血の気が失せ、白くなっていた指先に、赤が戻る。]
(268) 2014/12/27(Sat) 00時頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2014/12/27(Sat) 00時半頃
負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2014/12/27(Sat) 00時半頃
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[小奇麗にしているとも言い難い。 見目が良いとも到底言えない。 傷も多く、仕事も達者にこなせないこの身体に、価値があると思った事はない。 だからこそ、せめてと価値を得ようと仕事を欲す。 誰かに求められる存在なのだと、捨てられる事のないようにと、縋るように、求める。
衝動の向く先に、浅い知恵でどこまで理解が及ぶか。 死にはすまい、その言葉には確かに頷ける。 長く負っている傷だが、特別清潔にしていなくとも蛆の一匹どころか、化膿する気配すらなかった。 悪化することもなければ、完治することもない。 まるで、その状態で固定されているかのように。
口腔内に突き入れられた指先に、舌を這わせる。 指紋の細かな溝に滲んだ赤を、舐めとっていく。]
……っん、 …… ァ、ふ、…… 好き、……好んで、舐める味じゃ、ない、……
[唇を離し、素直な感想を述べる。 唾液の糸は、直ぐにでも途切れるだろう。]
(278) 2014/12/27(Sat) 01時頃
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与えられたくば、……与えろと。 そういう風に、……世界は、成り立っていると、
[食事が得たいのならば、その為に働くように。 心の安寧が欲しいのならば、それ相応の対価を。
傍に居るだけ、それだけで何が満たせるのか。
薄い自我、自信も誇りもない行き方。 ただ無意味に、身と心を削っていく日々。 削ることで満たされる、心。]
……傍に居るだけで、……いい、筈が、
[それは、幼少期から植え付けられていた、教え。 いくら施設で長く過ごそうとも、幼い頃をそう過ごしてきたのだ。 そう簡単に、意識は変わらない。
問う声は、不安に、震える。]
(283) 2014/12/27(Sat) 02時頃
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[欲している。 その言葉に、瞳が、心が揺れる。 笑む表情は、とても自然だった。 自分はあんな風に、笑えるのだろうか。 眉は、寄るばかりだった。]
……不要になるんじゃ、って 捨てられるんじゃ、って、……
それが、不安で。
[その不安が付き纏うのは、きっとこの最上位の者に対してだけではないのだろう。 仕事を乞うチョウスケへも、また同様の不安を抱いている。 突き詰めればもっと、もっと、根本から。 捨てられることへの、心的外傷。]
……情、
[口の中で、短く反芻する。 ゆっくりと、首を傾いで。]
(287) 2014/12/27(Sat) 03時頃
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……ただ、貴方の傍にいるだけで、いい?
[問う声は、泣きそうなほどに震える。
信じてもいいのか。 裏切るのではないだろうか。
何度目かにもなる、確認するかのような問い。]
(288) 2014/12/27(Sat) 03時頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2014/12/27(Sat) 03時半頃
負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2014/12/27(Sat) 03時半頃
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