25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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…えぇ。微力ながら。 [イアンへと畏まって頭下げつつ。]
因果なものです、わたしには…生きたものの見分けはつきませぬ。 私の力を使うときには、あやまちであろうと…もはや手遅れ。
天満月さまのものだけが、役立てばよいのですけれど…
(153) 2010/08/07(Sat) 13時頃
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…それと、もういくつか気がかりが……
[声潜めて囁くは、いつかの夜に見たものたち。]
闇夜に…、庭や屋根に潜んでいた者たちが居りました。 草の陰には夜光が、月差す屋根には桜色の髪の猫が如き子が…
彼らから、目を離さぬよう。
(157) 2010/08/07(Sat) 13時頃
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わたくしは、夜光の先代と浅からぬ因縁もございます。 …ともすれば、命を狙われるかも。
(160) 2010/08/07(Sat) 13時頃
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獣同士のつがいでは、子は生まれぬ…と? それでは…五匹居るならそれを全て…となるけれど、ほんとうに?
天満月様も、人の子。 情に流されては居ないと信じたくはありますが…。
高嶺はわたしと同じ血を引きますゆえ、彼がそうならばわたくしもおそらくは…。 かりょうは私の手元におりますが…彼でなければ無いと思ってしまう以上、わたしも情に流されてしまっているの…か。
(170) 2010/08/07(Sat) 14時頃
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天満月様。
そなたの目が曇っておらぬことを、わたくしは信じとうございます。 どうか、たぶらかされず孤高にいてくださいませ。
[それだけを告げ、その場を去る。]
(172) 2010/08/07(Sat) 14時頃
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[からころと、下駄を鳴らして廊下を行く。]
刷衛さまは、どちらへ? [なにより気がかりは、同じようにセンターから来たと聞いていたのに、 イアンは…まるで刷衛が最初から居なかったかのように振舞っている。
いったいこれは、どういう事なのか。 人に声をかけ、彼を探した。]
(175) 2010/08/07(Sat) 14時半頃
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刷衛さま。 [仏間に姿を見つければそっと身を寄せて、問う。]
イアンに、私のことを話したのですが…それは貴方には伝わっていますか?
同じくセンターの者だと聞いているのに、 イアンは、貴方のことはまるで気づかず…まるで最初から居なかったかのように振舞うのです。 旧い仲ゆえ、どうにも違和感が…
彼が…あの方恋しさのあまりに気が狂れてしまっていたら、 権限を握らせたままでは、危険かもしれませぬ。 勝手に思い込みだけで、誰かを殺めてしまうやも。
どうか、彼から目を離さぬよう。
(176) 2010/08/07(Sat) 14時半頃
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ランタン職人 ヴェスパタインは、始末屋 ズリエルの居る部屋を出て、腰トントンしながらからころ廊下を…
2010/08/07(Sat) 15時頃
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[歩みが多少重いのは、あとさき考えず無理をした報いなのだししょうがない。 ふと行き違うは、夜光と虎鉄。]
おや、お前たち…。 [しばし足を止め、二人を眺める。]
(180) 2010/08/07(Sat) 15時頃
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[虎鉄の姿を見て、数度瞬き、眉を寄せる。]
体調を崩したようだったけれど、もう良いの? ご自愛なさいな。
[淡く笑いかけ、夜光にも目をやる。] イアンが、お前は人狼の病に侵されていないと言っていましたね。 検査を受けてきたの?
(185) 2010/08/07(Sat) 15時半頃
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ランタン職人 ヴェスパタインは、小僧 カルヴィンが離れの自室でおとなしくしているのが見えると、いとおしげに目を細めた。
2010/08/07(Sat) 15時半頃
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あと…イアンは妙なことを言っていました。 獣と契れば獣ではない、と。
そんな話は…聞いたことがない。 寧ろ、獣と交わっているのは、獣の仲間か…仲間でなくとも病がうつってしまうのでは…。
(186) 2010/08/07(Sat) 15時半頃
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彼には、気をつけたほうが良いかも知れん。
それに…、いつだかイアンが言っていました。 天満月の御子息に取り入り誑かす方法を教えて欲しい…と。
(187) 2010/08/07(Sat) 15時半頃
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[霞は、嘘は言っていない。事実の全てを伝えては居ないが。
話したことが、不信の種として芽吹くことはありやなしや?]
誰かがわたしを探していたら、部屋に居ると伝えておくれ。 昨夜は、かりょうが甘えるものでね。ついつい夜更かしを…
では、失礼? [からりと下駄の音涼やかに、雛鳥の待つねぐらへと帰る。*]
(188) 2010/08/07(Sat) 16時頃
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─ しばし前、仏間にて ─
[線香をあげさせてもらったあとで、背筋を正して刷衛の前に座る。]
宴を止める前までは…共に舞楽を合わせたときは、あんなふうではなかったのに。 仇を討ちたい一念で、功を焦っているのかも知れぬ。
…かれはいま、とてもあやうい。 [そんな懸念を、縋るように告げた。]
(191) 2010/08/07(Sat) 16時頃
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わたくしの?
ええ、これは元より生まれついてのものだと、そう教わり育てられました。 喰われてしまうかと恐ろしく、それ故名乗りが遅れましたが。
ロビンが枕元に現れ、 言い伝えは本当だったとわかりましたから。 …それゆえ。
(193) 2010/08/07(Sat) 16時頃
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[噂はひとときで千里を走る。 ロビンが人喰いの獣だと。 法師がそれを、命と引き換えに滅したと。
そのロビンと情を通じ交わった花が喰われず生きている。 群衆は、無知にして愚かしい。 誰がその行為が、畜生の如く人に子を孕ませる技などとは知らぬ事。
ならば、その…疑いの先は?]
(195) 2010/08/07(Sat) 16時半頃
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[不在の間に雛鳥が気を回してくれていたことがありがたく。 つめたく冷やされた淡い果汁は、乾いた喉に心地が良かった。]
おや…… かりょう。わたしの手鏡を知りませんか? このくらいの大きさで黒檀縁の…
何処で落としてきてしまったやら。 宴席か、それとも庭ででしょうか…
[本当は、そんな鏡など元より持ってなど居ない。 ただ、今一時は傍から離す必要が。]
(303) 2010/08/08(Sun) 00時半頃
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…探してきて、貰えないか? [頼み込んで送り出せば、暫くは戻ってこないはず。
そのうちに着替えるは武家風の地味な羽織。 化粧っけの無い顔に、長い髪をキリと結い上げれば、 余程親しい物以外は、同じ顔の片割れと区別は付くまい。]
(310) 2010/08/08(Sun) 01時頃
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[先程使用人に託した書状は、そろそろ夜光の名を継ぐ若き花の元へと届くか。 名前を伏せたそれは、イアンの件で折り入って話が、と。
閑話休題。 この時代、指紋や遺伝子解析などの鑑識の高度な技術は既に絶えて久しい。 そうでなければ、皆の勘に任せて投票で処刑するものを決めるなど、そんな馬鹿げた手段をこのような重大な事件の中で取りうるはずがないのだから。]
(318) 2010/08/08(Sun) 01時頃
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[ひとりで来るよう指定したのは、人のあまり通らぬ裏庭の納屋。]
(320) 2010/08/08(Sun) 01時頃
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[納屋の中は、たとえ昼であろうと薄暗い。 灯火ひとつが目を引くように少し奥の行李の上に置かれ、己は影に身を潜めて待つ。]
(328) 2010/08/08(Sun) 01時半頃
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[奥の灯火へと進んでいく夜光。 身を潜めたその前を通り過ぎたのを見計らい…
ガタリと倒される古い戸板は、袋の鼠の退路を断つか。]
(335) 2010/08/08(Sun) 02時頃
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…わざわざここまで呼びつけてしまって、すまなかったね。
[ゆるりと物陰より姿を現す。 同じ顔の片割れのごとき装いではあるが、その艷めいた笑みは別な姿で見覚えのあるものだろう。]
我らにも色々と事情があってね。…恨むなとも、許せとも言いません。 ただここで、我らが糧になってもらうまで。
(342) 2010/08/08(Sun) 02時頃
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…天満月殿は、獣を探すことが出来る。 イアンはそれを手先として利用しようとしている。
そしてそれは、我らに取っては…とても都合がよろしくないもので。 [ざわり、室内の空気がざわめき、灯火が揺れる。 一歩一歩と、彼のところへと歩み、その白い手を首元へと伸ばす。]
(347) 2010/08/08(Sun) 02時頃
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"それ"が、そこにあるはずはない。 "それ"をお前に貸してくれるものなど、居るはずもない。
何故なら、"それ"の持ち主は、去年の夏の祭りの夜に…
[握ろうとした白鞘巻は、霞のごとく夢のように消える。]
ここで、みなの糧に饗されましたから。
(352) 2010/08/08(Sun) 02時半頃
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[振られた刀は、避けもせぬ。 なぜならもとより最初から、刀はそこには無かったのだから。 祭の夜の夢の名残が、己が散ったことを受け入れられなかっただけ。]
(354) 2010/08/08(Sun) 02時半頃
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恨むならお恨みなさい。 憎むなら呪い殺すほど憎んでかまわぬ。
…先の夜光から、聞いているでしょう。 あの男は、己が為ならどんなことでもする、と。
[がしりとその手は夜光の肩へ。 凄惨にして獰猛な、獣の笑みが灯火に映える。]
(358) 2010/08/08(Sun) 02時半頃
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そなたも逝くが良い。 …共に学んだ友の元へ。
[白い頬へ、鮮やかな返り血が飛んだ。]
(360) 2010/08/08(Sun) 02時半頃
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[食い荒らされて尽くして暫く後、誰かにそれが見つかる頃、 無惨になった亡骸はくしゃくしゃになった書状を握っておりました。
そこには、誰が書いたともつかない平凡な字で、
「イアン」 「折り入って話が」]
(371) 2010/08/08(Sun) 02時半頃
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[友が、主が、それに気づいて辿り付く頃には、
もうそこには、獣の姿は、無い。]
(374) 2010/08/08(Sun) 03時頃
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[血塗られた花主が己の花を屠ったことが広まる頃、 その花主の姿に似せた男は、僅かに血の香を匂わせて、そっと南端の自室へと戻る。
扉を閉め、一人であることを確認して、満足そうに己の腹を撫でた。 雛鳥が巣へと戻る前に、湯を浴び痕跡は全て隠した。
いまだ、見つかるわけには行かぬ故。 果たせていない約束がある。]
(376) 2010/08/08(Sun) 03時頃
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ランタン職人 ヴェスパタインは、小僧 カルヴィンを待ちくたびれたか腹が満たされたせいか、寝台に突っ伏して眠っていた。*
2010/08/08(Sun) 04時頃
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