308 【R18】忙しい人のためのゾンビ村【RP村】
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[ これからのことを考えるはずだったのに、 あっという間に場は静かになってしまったわ。
少しの沈黙のあと、 唇をちろりと舐めてご主人が尋ねたの。
ところで、その車のキーはどこに?
ご主人はじっとわたしのことを見ていた。 胸の内まで見透かそうとするみたいにね。]
……どうしてそんなことを尋ねるの?
[ 戸惑って、問いを返したわたしに、 ご主人はだってアンフェアじゃないですか≠ニ。]
(+43) 2020/10/24(Sat) 21時半頃
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[ アンフェア? キーの保管場所を教えないことが?
きっとわたしは納得のいかない顔をしたんでしょう。 ご主人は当然だとも言いたげに言葉を続けるのね。
だって、協力すると約束したじゃないですか
なんだか少しまずい空気だった。 わたしとご主人はお互いを見つめあって、 少しの間黙りこくっていたように思うわ。
そうすると突然、 奥さんが仲裁するように口を開いて、 わたしたちの間に割って入ってきたのね。]
(+44) 2020/10/24(Sat) 21時半頃
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[ 彼女ははじめにご主人を窘めたわ。 脅すような言い方やめてちょうだい エドワーズさんが警戒して当然だわ そう言って、彼の前に立ったのね。 わたしのほうを向いた彼女は言った。
ごめんなさいね、夫も気が立ってるの。 あなたの言うとおり、状況が悪すぎて。 けれど、助けを呼びに行くのも、 実際難しいのは分かってくださる?
丁寧な物言いにわたしは当然うなずいたわ。 彼女の言っていることはまっとうに聞こえた。]
(+45) 2020/10/24(Sat) 21時半頃
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[ わたしがうなずくのを見て、 奥さんはどこか安心したようにも見えたわ。
そして、それに≠ニ言葉を続けようとしたの。 どこかぎこちのない笑みを浮かべて。
どうしてかしらね。 そのときの彼女、なんだか嫌な感じだった。]
(+46) 2020/10/24(Sat) 21時半頃
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そんなことで揉めなくたって、エドワーズさん。 ほら……ここにはまだ食べるものがあるじゃない
(+47) 2020/10/24(Sat) 22時頃
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[ ── え? * ]
(+48) 2020/10/24(Sat) 22時頃
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[――やだ。 そう言って顔を膝に埋める青年が小さく見えて、 まるで昔に戻ったみたいだなと笑う。]
私も、……君も。 キャロルにはなれそうにないな。
[その名を聞いて、シーシャの肩が跳ねたように見えた。 目端にちらつく動きに視線を外し、目を閉じる。]
……せめて、食事はとりなさい。
[昨日ここに来てから何も食べていないのだろう。 意識のなかった間に強盗でも入っていない限り、 ・・・・ 人ひとりが生きるだけの蓄えはあるはずだ。
空腹はない。 それなのに喉の渇きばかりが頭を満たしていく。 眠るフリをして、あたたかいものから目を逸らした。]*
(+49) 2020/10/24(Sat) 22時頃
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「なんでって、お前、配信してただろ それで近くに来てるんじゃねえかと思ってな
植え込みン中で伸びてんのを確保した。 ……あ、左手無理に動かすなよ」
[丁寧に忠告してくれる元帥の言う通り 右手だけを動かして起き上がる。
よくよくみれば左腕は固定されていて 誰かが治療してくれたのだとわかった。
投げ渡される乾パンの袋を慌てて受け取って ぱさぱさに乾いた口に放り込んでは あまりの湿り気のなさに噎せた。
げらげらと元帥の笑う声が聞こえる。]
(+50) 2020/10/24(Sat) 22時半頃
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でもさ、なんで、俺なんか
「生き残りだから? 食料は心もとねえけど だからと言って人手を減らせば あいつらの数の暴力に負けるからな」
[腐った死体どもの。
と、元帥は言った。 その一瞬だけ、死んだ目にきつい眼光が宿った。 多分、目の前の男もまた、 ゾンビに大切なひとをやられたんだろう。]
(+51) 2020/10/24(Sat) 22時半頃
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俺がゾンビになってたらって考えねえの
「噛み傷がないから問題ないだろうと判断した。 駄目なら、――――」
[その手が鉈を手に取る。 俺はひきつった笑いを浮かべて首を横に振ると、 せめて茶化すように冗談を口にした。]
噛み傷ないって、確かにないけどさあ まさか寝てる間に剥いたりとかしてないですかにゃ?! きゃーーおまわりさー いでっ
[黙って水入りのペットボトルで殴られた。ひでぇ。]
(+52) 2020/10/24(Sat) 22時半頃
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「服の上からでもフツーにわかんだろーが。 お前もう一回ゾンビの群れに放り込むぞ」
ふぇー。やめて。ごめんなさい。勘弁して。
[俺は配信の時みたいに軽薄に笑う。 笑いながら、滲んできた涙を拭った。 手渡されたペットボトルの蓋をあけて水を飲む。
ようやく、震える声で「ありがとう」の言葉が出た。 知ってる人と話せることが、 こんなに嬉しいなんて、知らなかった。]
(+53) 2020/10/24(Sat) 22時半頃
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[乾パンを喉に流し込んだところで、 がちゃりと扉が開かれる。
数人の男たちが、 ネコ元帥に向けてひらりと手を振った**]
(+54) 2020/10/24(Sat) 22時半頃
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[ 彼女の言っている意味が理解できなかった。]
(+55) 2020/10/24(Sat) 22時半頃
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──どういうこと?
[ 理解ができなかったから尋ねたわ。 わたしにはまったく見当がつかなかった。 もしかするとわたしの知らないところで、 食糧を隠し持っていたのかと思ったくらい。
ご主人は少しばかり驚いた様子だった。 けれど、なんていうのかしらね。 理解ができていないという風ではなかった。
奥さんはしっかりとした口調で言ったわ。 まっすぐにわたしの目を見ていた。]
(+56) 2020/10/24(Sat) 22時半頃
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ねえ、わかるでしょう。 助けを求めにはいけない。 じゃあ待つしかないじゃない。 誰かが見つけてくれるのを、 ここで生きて、助けを待つしか
(+57) 2020/10/24(Sat) 22時半頃
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[ 揺らぐことのない強い目をしていたわ。 それが最善だと信じて疑わない声をしてた。
……犬、たくさん飼ってるじゃない どうせもうじき餌もなくなるわよね どうせ死んじゃうわ、それならいいでしょう
彼女ははっきりとそう言ったわ。 わたしは信じられない思いで立ち尽くしていた。
そのとき理解したのね。 ご主人は彼女が言ったことではなく、 今わたしにそれを告げたことに驚いてたのね。
けれど、それはとても受け入れられない提案だった。 そんなことを考える人がいるだなんて、 わたしには信じられないような惨い話に思えたわ。]
(+58) 2020/10/24(Sat) 22時半頃
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冗談でしょう?! ばかげたこと言わないで。 ほかに何か方法があるはずだわ。
……そうよ、 わたしのスマートフォン。 家の中でなくしてしまったの、 まだ充電が残っているかもしれない。
見つけたら、そう、 SNSを通じて助けを求めて──、
(+59) 2020/10/24(Sat) 22時半頃
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[ わたしは必死に反論したわ。 絶対に許すわけにはいかないと思ったの。
何かほかに手立てはないかと、 記憶を探って知恵を振り絞って言ったのね。
けれど、奥さんは非常に苛立った素振りで、 ぶんぶんと大きく首を横に振るばかりだった。 そしてヒステリックな口調で叫んだわ。]
(+60) 2020/10/24(Sat) 23時頃
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ないわよ! そんなの出てきっこないし、 助けなんてさんざん求めたわ。 でも、この混乱の真っ只中で、 誰も気に留めちゃくれなかった。
無理なのよ、今はまだ。 状況が落ち着くまで、 なんとかして生き延びないと……
(+61) 2020/10/24(Sat) 23時頃
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[ 奥さんはぜいぜいと肩で息をしていた。 呼吸を整えるように深呼吸をして、 そして、またわたしをじっと見るの。
良いわよね、あれだけいたら、 しばらくの間はきっとしのげるわ
真剣な目でそういう奥さんに、 わたしはこれ以上何と言えばいいの? 代替案が何も思い浮かばない、 自分の頭とこの状況がひたすらに憎かった。]
だめよ、絶対に。 あの子たちを食べるだなんて……
[ わたしの声はいつしか泣きそうだった。 そんなわたしを見たご主人が、 ずいぶんと落ち着いた様子で口を開いたわ。]
(+62) 2020/10/24(Sat) 23時頃
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エドワーズさん、考えてみてください。 普通の状況ではないんです、そうでしょう。 きっと皆そうしています、家畜だけじゃない。 乗馬用の馬やペットのミニブタを食べてでも、 人々は生き延びようとしているはずです。
それと何が違うんですか? 何としてでも生き延びようとすることが、 そんなにも残酷で、醜いことなんでしょうか
(+63) 2020/10/24(Sat) 23時頃
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[ 顔を覆ってしまいそうなわたしの手首を握り、 わたしの目を覗き込むようにして彼は言った。
ご主人もやっぱり真剣な目をしていたの。 正しいことを言っていると信じている者の、 まっすぐで強い眼差しをわたしに向けていた。
……言葉が出てこないの。 ノーリーンを撃ったときと同じよ。
彼らの言うことは間違っていないようにも思えた。 けれど、わたしの心は確かにノーと言っていたわ。
それでも小さく首を横に振るわたしに、 ご主人は畳みかけるように言葉を重ねたわ。]
(+64) 2020/10/24(Sat) 23時頃
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お孫さんを死なせたいんですか? 私は、息子に生きていてほしい
(+65) 2020/10/24(Sat) 23時頃
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[ 喉がからからに乾いていたわ。
魂を吸われてしまったみたいに動けないわたしに、 ご主人は考えておいてください≠ニ言った。
その場を去っていく二人の背を見送りながら、 わたしの頭の中はもうめちゃくちゃだった。
あの子にひもじい思いをさせたくないわ。 いつか自分の綴った言葉が頭の中に響いていた。 けれど、そんな惨いことが許されるはずない。
ねえ、そうでしょう? わたし、何かおかしなことを言っているかしら。]
(+66) 2020/10/24(Sat) 23時頃
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[ お願い、答えて。いのちに優劣があると思う?**]
(+67) 2020/10/24(Sat) 23時頃
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― 数日後・コーヒーショップ『abbiocco』 ―
[あれから何日が過ぎただろう。 窓から覗く空模様だけでは、正確な時間は掴めなかった。 壁掛け時計の針は、濁った膜に覆われてよく見えない。
畑の間を走る道路から、車の音は聞こえなかった。 規制がかかったか、 あるいは車に乗る人そのものが少なくなったのだろう。 数少ないエンジン音も、明らかに壊された形跡のある ドアを見れば、速度を上げて走り去っていく。
ここを訪れる者はいない。 孤独が満ちるはずだった――それなのに。
例外は、いつもと変わらぬ体勢のまま俯いている。]
(+68) 2020/10/24(Sat) 23時頃
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[最初、彼がその場を離れた時、助かったと思った。 好きな方を選べと言ったけれど、 あんなもの、二択の皮を被った一本道だ。 悔いのない選択など、今ここには存在しなかった。
しかし彼はすぐに戻ってきた。 その手にあったのは、 申し訳ばかりの缶詰と土のついたままの野菜だ。
彼はコートの袖で拭った人参に齧りつく。 眉間に皺を寄せ、泣きそうな顔をしている癖に、 目の光だけは消えないまま。]
……ふ、 ふ。
[思わず小さな笑い声が零れた。 シーシャが視線だけでこちらへ問いかける。]
(+69) 2020/10/24(Sat) 23時頃
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ふ……いや、すまない。 前言撤回しようと思ってね。
私はキャロルにはなれないが、 ははおや 君は、キャロルによく似ているよ。
[薪を燃やす炎に似た赤毛を思い出す。 太陽が落ちて来たみたいな笑顔を思い出した。 シーシャは虚をつかれたような顔をした後、 一瞬だけ眉間の皺を解いて笑みに近い表情を浮かべた。]
(+70) 2020/10/24(Sat) 23時頃
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[それからずっと、10フィートの境界は保たれている。]
(+71) 2020/10/24(Sat) 23時頃
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[寝る時は私のベッドを使いなさいと言ったけれど、 シーシャは頑として聞かなかった。 生きる為に必要な分だけ動き、 必要ない間はすべて店の壁に背を預けて過ごしていた。
会話はほとんどない。 日に何度か彼の名を呼んでは、拒否の一言で幕を閉じる。 あの日から、状況は平行線のままだ。今日も駄目だった。
――嗚呼、 そんなことをしている間にまた夜が来てしまうのに。 空が暗く滲んでいくのを、濁った左目で見つめていた。]*
(+72) 2020/10/24(Sat) 23時頃
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