88 吸血鬼の城 殲滅篇
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[肩に残る灰を指先にとり、口に含む。 舌先に広がる、強い苦み。]
―――おまえの抱えている苦悩がそれほどに重いなら、 すべて、忘れてもいい。 なにもかも無くして、まっさらになってもいい。
[降り積もる灰の前で、腕を貫いた杭を引き抜く。 浄化の力に爛れ、血の止まっていた傷口を 灰のまとわりつく刃で、さらに深く切り裂く。]
(234) nekomichi 2012/05/06(Sun) 19時頃
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みたびの、闇の祝福を受けよ。 闇の寵児たれ。ドナルド・ジャンニ。 オレの魂が滅び砕け散る瞬間まで、 おまえを慈しみ愛すると約束する。
(235) nekomichi 2012/05/06(Sun) 19時頃
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だから、
――― 戻ってこい。
(236) nekomichi 2012/05/06(Sun) 19時頃
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[鼓動のリズムで噴き出し、溢れる血を 惜しみなく灰へと降り注ぎながら、
闇の主は強い眼差しで、紅に染まりゆく灰を見つめていた*]
(237) nekomichi 2012/05/06(Sun) 19時頃
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[騎士が礼をすれば其処に留まる空気が流れる。 肌で其れを感じながら待つのだけれど動きの感じられぬ間があった。 呼気に混じる音に思わず伏せた睫が震える。 声を掛けようとくちびるが僅かに開かれるが 音を結ばぬまま閉じて、断りの声を聞いた。
顎へと触れる指に促されるまま顔を上げる。 傍からみれば口接けを待つ乙女の姿にも似るが 幸い周囲に人目は無く気付くものも無く。
騎士の髪が頬へと触れる。 くすぐったそうな吐息を漏らし ヒューの白き牙をその身に受け入れた]
(238) helmut 2012/05/06(Sun) 19時頃
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――…ン、
[チクと刺すような痛みは一瞬。 吸血という行為が齎す甘い痺れがその背に奔る。 女の手指が縋るように騎士の胸へと纏わるも 震えるくちびるがそれ以上の音奏でるを耐えるように結ばれた。
肌に感じるは信頼寄せる騎士の息遣い。 穿たれた牙が引き抜かれる気配に軽く喉を反らした。 女は絡めた手を下ろし蕩けかけた深紅の双眸を露にする。 彼が口にした血の量は僅かで 礼には及ばないと、ゆるゆる首を振ってみせた]
(239) helmut 2012/05/06(Sun) 19時頃
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貴方には沢山、貰っているから……
私の命をヒューが必要とするなら それは私にとって喜ばしいこと
[狂うことはないという騎士に頷きを返し]
我が騎士が飢えに悩まされることあらば 今日のように命の雫を貴方に捧げる
(240) helmut 2012/05/06(Sun) 19時頃
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[微笑む騎士の誓いに綻ぶような笑みを浮かべ]
――…ヒュー 貴方は私の自慢の騎士よ 貴方が私の騎士である事を 誇りに思います
[凛とした声を其処に響かせた*]
(241) helmut 2012/05/06(Sun) 19時頃
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[考えるように伏せられていたジェフリーの顔が上がり、 視線が交差する。 心の奥底まで見透かされそうな真っ直ぐな眼で、 光を見失い、どこにも戻れなくなった自分に新たな道を示す。]
……はい。その言葉を頂いたからには…
神に定められた戒律からではなく……私の意思で…
[服の袖で顔を拭い、ジェフリーに笑顔を向ける。
喪失の記憶、絶望感は、きっと忘れることはできないだろう。
それでも、それ以上に、自分にとって大切になるであろう言葉を 記憶の中に刻み付けることができた。]
(242) uyuki 2012/05/06(Sun) 20時頃
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ジェフリー・ハリソン様、 修道士ムパムピスは…… [言いかけて軽く首を振り言い直す]
…マティアス・デイヴィースは、貴方を唯一永遠の主として お仕えすることを誓います。
貴方の為にも…私はこれからも生き続ける。 吸血鬼として。 ――この、世界で。
[隠し続けた本名と共に、誓いの言葉を口にする。]
「ムパムピス」は、聖務につく者が精神支配を避けるための通名なのです。勿論普段はその名前で呼んで頂いて構いませんから。
(243) uyuki 2012/05/06(Sun) 20時頃
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[ジェフリーが立ち上がり、剣を拾い上げている。 自分も杖を拾おうと手を伸ばすが、聖別されたそれは近づくだけで熱を持ち、手にすることは叶わなかった。]
…さよなら。今まで、ありがとう。
[目を伏せ、心の中で聖なる杖に別れを告げる。]
「 では行こうか。」
はい…っ!どちらの部屋を通っていきますか? 吸血鬼が、下のエリアに移動しているのは確かなのですが、気配を探るには…
(244) uyuki 2012/05/06(Sun) 20時頃
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――えぇぇぇぇっっ!???
[不意に抱き上げられると、ジェフリーはそのまま走り出し、 躊躇いもなく、建物の屋上から身を躍らせる。
浮遊感。冷たい風が頬を撫でる。
思わず肩に手をかけ、しがみついた視線の先で 屋上が、城が、見る見るうちに遠ざかっていく。]
(245) uyuki 2012/05/06(Sun) 20時頃
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…今、気づきました。 ジェフリー様って、堅実派に見えて意外と… 大胆な行動をされますよね。 [思わずぽつりと呟いた。]
[恐怖感はない。跳べると、確信しての行動だとはわかっていたが、それでも何も試さず屋上から飛び降りることは 自分にとっては予想外過ぎる。]
――いえ、何でもありません。 独り言…です。
[怪訝そうな表情を向けられ、笑いながら答えると、この変則的な空中散歩を楽しむことにした。]
[行き着く先は深い森。 新しい、「道」の始まりがそこにあった。**]
(246) uyuki 2012/05/06(Sun) 20時頃
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[やっぱり、と続けられたヘクターの言葉>>229に 深紅の双眸がまあるく見開かれる。 本当に、と尋ねたくなる衝動を抑え]
若し、そのように…… 以前と違って映るのなら
ヘクターさまを想い待ち続けた時間が 私をそのように変えたのでしょう
[主の心の内を知らぬまま 晴れやかな笑みを彼へと向けた]
(247) helmut 2012/05/06(Sun) 21時半頃
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ヘクターさま、――…我が君
[強き宣言と共に差し出された掌に 女は己の掌をそっと重ねてその眸を見上げる]
お預かりしていた“The Earl of Avallone”の称号を 今、あなたさまにお返し致します
“ My Lord ”
[主従であり父娘でありながら そのどれとも違う響きで呼び掛けた華は アヴァロンの領主の傍らで楚々と咲き誇る**]
(248) helmut 2012/05/06(Sun) 21時半頃
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[吸血鬼が常人離れした能力を持つことは知っていたから、 飛ぶことに何も不安はなかった。
ただ、ムパムピス―― マティアスがびっくりして振り落とされないかだけが心配だった。 彼も心配だったのか、ぎゅっとしがみついてくる身体に 安心と、それから頼られていることへの喜びを感じる。
想像以上の速さで、地面が近づく。 風の心地良い冷たさと、近くにマティアスの鼓動。 この素晴らしい時間が、すぐに終わってしまうのが惜しいと思う]
(249) el900m 2012/05/06(Sun) 21時半頃
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「…今、気づきました。 ジェフリー様って、堅実派に見えて意外と… 大胆な行動をされますよね。」
[そうぽつりと零れた言葉に、怪訝そうな表情を向けると、 マティアスは笑いながら独り言だという。 その笑顔につられたのか、 今まで見せたことのない笑顔が自然と浮かんだ]
石橋を渡っているだけでは、 為せぬことだってある――……。
(250) el900m 2012/05/06(Sun) 21時半頃
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ああ、それから、マティアス。 その呼び方はやめてくれ。 ジェフでいいといったろう?
これは、主としての命令だ。 [真名を他の誰にも聞かれないように、 耳元に口を寄せて囁いた。 これが初めての。 そして恐らく最後の命令になるだろう**]
(251) el900m 2012/05/06(Sun) 21時半頃
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― 南の塔 ―
[全てが終わり、新たな物語が始まる狭間の時。
最後の戦いの舞台となった塔の上で、 闇の主は、静かに外を眺めていた。
暗い霧に包まれた湖。 それを超えれば、そこはもはや昼と夜が混在する世界。]
――――…行ったか。
[闇の痕跡が、残り香のように宙を横切り、 深い森の中へと消えている。 姿を消した"子"へ向けて、牙は剥かずに、小さく笑みを送った。]
帰って来る時を、楽しみにしているぞ。
[生き延びることさえ困難な前途が、"子"を待っているだろう。 それでも帰ってくることは、疑いもしなかった。]
(252) nekomichi 2012/05/06(Sun) 21時半頃
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………しっかし…
[返事が戻ってくるはずもない城の外から目を逸らし、 己の為すべきことを為すべく、城内に足を向ける。
その途中、足を止め、床の一点を見つめた。]
―――……… どうしてくれるんだ。 んなもん置いていって。
[ぽつんと取り残されていたのは、光の聖杖。 しばらく困ったように見ていたが、まあ良いかと階段を下りる。
世の中、なるようになるものである**]
(253) nekomichi 2012/05/06(Sun) 21時半頃
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[ ――どこかで、声が聞こえていた ]
(254) tatsuru 2012/05/06(Sun) 21時半頃
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[ゆるりと空に融けていく意識。 ほどけていく。 絡まりあった糸が解れるように。 繋いだ手が、離されるように。 この感覚には経験がある、と、 融け掛けた心が、つぶやく。 あの時はとても痛かった。 ばらばらになるような気がした。
痛めつけられた細胞の一つ一つが、 悲鳴を上げて、何かを求めていた。 ――けれど、今のこれは、 酷く暖かい気がして それは、
最期に触れた背の、じんわりとした熱さに似ていた]
(255) tatsuru 2012/05/06(Sun) 21時半頃
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(……すべて…)
[聞き覚えのある声が、囁いていた。 冷厳で無表情な、支配者の響き。
失われた鼓動が、跳ねるような気がした。 聞いていると苛々した声だ。 憎しみに膚が泡立つ感覚。 羨望に渇いた、記憶。 己の大切なものを奪っていく其れ。]
(256) tatsuru 2012/05/06(Sun) 21時半頃
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[耳朶を擽り吹き込まれた、揶揄いと、嘲笑。 わかりきった児戯。かたちだけの優しさ。 それが悔しくて。痛くて。――惨めで。 ……求めて。求めて。求めて、
胸がくるしくなる――声。]
(257) tatsuru 2012/05/06(Sun) 21時半頃
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(……アンタらしくねえだろ。何言ってんの?)
[忘れてもいいと囁く声に、そう、笑う]
(……俺が、蘇るつもりとでも思ってんのかね) (もしそうだったとしても…) (まっさらな俺に何か吹きこもうってか。 ああ、やだやだ)
[肩を竦めたかったが、 もう、その概念さえも失われていた。
ああ、自分は消えかけているのだなと、 残った最後の一片が思う。]
(258) tatsuru 2012/05/06(Sun) 21時半頃
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(………でも、そうだな)
(アンタの謂う通りなのかもしれない) (それもいいのかもな……)
[今の全ての想いを砂に帰してしまえば、事足りる。
まるで生まれながらの吸血鬼のように、 あの男を、純粋に父として慕い その伴侶たるクレアを敬愛し ……そう、弟、という存在も出来たのだ。 鍛えた鉄の様に真摯な目をした、クレアの騎士。]
(259) tatsuru 2012/05/06(Sun) 21時半頃
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(もう何も、感じずに済む。) (人を屠る苦しみを。血を啜る、罪の意識を) (俺が殺したクレアへの想いも、すべて)
(アンタを、……もう、憎まなくても、済むんだ……)
(260) tatsuru 2012/05/06(Sun) 22時頃
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[ゆらりと、忘却への誘惑に意識が薄れていく。 引き戻したのは、同じ声。 ――魂が砕け散る瞬間まで。
力強い其れに、 ……ぴくりと、瞼が震えるような感覚。 息が急くように、思った。 吸い寄せられるように意識が再び纏まり、 その声の元に、引き摺られてゆく。]
(261) tatsuru 2012/05/06(Sun) 22時頃
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(………なんだよ。俺、最後まで) (もう、いいのに) (生き汚ェ、ってことなのかね)
[苦笑するような思考。 此の侭逃げてしまえば自分の勝ちだ。
そうしたいかと自分に尋ね、 そうしなければ、と理性は囁く。 ……けれど、その声が ]
(262) tatsuru 2012/05/06(Sun) 22時頃
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『 戻ってこい 』
[その声が――、自分を呼ぶのだ]
(263) tatsuru 2012/05/06(Sun) 22時頃
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